海外ジャーナルクラブ
8ヶ月前

Hansenらは、 再発 ・ 難治性多発性骨髄腫の患者を対象に、 標準治療としてのCAR T療法イデカブタゲン ビクルユーセル (ide-cel) とシルタカブタゲン オートルユーセル (cilta-cel) の安全性、 効果および生存率を比較することを目的として、 後向き観察研究を実施した。 その結果、 cilta-celはide-celと比較して優れた有効性および生存率を示したが、 一部の毒性も高いことが明らかとなった。 この研究結果はJ Clin Oncol誌に発表された。
後ろ向き研究で、 選択バイアスや治療プロトコルも施設で異なるわけですが、 著者らは "this analysis reflects the variability in real-world practice patterns" とポジティブなコメントを述べています。
イデカブタゲン ビクルユーセル (ide-cel) およびシルタカブタゲン オートルユーセル (cilta-cel) は、 B細胞成熟抗原 (BCMA) を標的とするキメラ抗原受容体 (CAR) T細胞療法薬であり、 再発 ・ 難治性多発性骨髄腫 (RRMM) に対して顕著な有効性を示している。 本研究では、 標準治療としてのide-celおよびcilta-celの安全性、 効果、 生存率を比較することを目的とした。
後ろ向き観察研究の対象は、 2022年12月31日までに標準治療としてide-celまたはcilta-celの投与を目的に19施設で白血球アフェレーシスを受けたRRMM患者であった。 治療タイプ別に転帰を比較するため、 逆確率重み付け法 (IPTW) が用いられた。 評価項目は、完全寛解 (CR)、 無増悪生存期間 (PFS)、 全生存期間 (OS)、 毒性であった。
2022年12月31日までに641例 (ide-cel 386例、 cilta-cel 255例) が白血球アフェレーシスを受け、 586例 (ide-cel群350例、 cilta-cel群236例) がCAR-T細胞療法を受けた。 追跡期間中央値は、 12.6ヵ月 (ide-cel) および13.0ヵ月(cilta-cel) であった。 IPTW後、 患者の特徴はよくバランスが取れていた。
cilta-cel群で多く認められた毒性は、 Grade 3以上のサイトカイン放出症候群 (OR 6.80、 95%CI 2.28-20.33)、 感染症 (OR 2.03、 95%CI 1.41-2.92)、 二次原発性悪性腫瘍 (OR 1.77、 95%CI 0.89-3.56)、 遅発性神経毒性 (OR 20.07、 95%CI 4.46-90.20) であった。
免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、 全サイトカイン放出症候群、 重度の血球減少症 (30日および90日目)、 非再発死亡率については両群で差が見られなかった。
cilta-cel群では、 CR以上の達成率が高く (OR 2.42、 95%CI 1.63-3.60)、 PFS (HR 0.48、 95%CI 0.36-0.63) およびOSが改善した (HR 0.67、 95%CI 0.46-0.97)。
なおide-cel群をcilta-celの米食品医薬品局(FDA)承認時期(2022年3月以降)に投与された患者に限定し解析した結果においても、一貫した結果が得られた。
著者らは、 「cilta-celはide-celと比較して、 特定の毒性の発現率が高いものの、 優れた有効性と生存率を示した」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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