転移性ホルモン感受性前立腺癌患者において、 アンドロゲン除去療法 (ADT) +ドセタキセル (DTX) にダロルタミドを併用する効果を、 プラセボを対照に検証した第Ⅲ相比較試験ARASENSの結果より、 全生存期間 (OS) に対する有益性が示された。
原著論文
▼解析結果
Darolutamide and Survival in Metastatic, Hormone-Sensitive Prostate Cancer. N Engl J Med. 2022 Mar 24;386(12):1132-1142. PMID: 35179323
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ARASENS試験の概要
対象
- 18歳以上、 ECOG-PSが0または1
- 骨シンチグラフィー陽性、 もしくは造影CT又はMRIで転移を確認されたホルモン感受性前立腺癌患者
方法
1305例を以下の2群に1:1で割り付けた。
ダロルタミド (1回600㎎ 1日2回食後) +ADT+DTX (75mg/m² 6サイクル)
プラセボ (1日2回食後) +ADT+DTX
評価項目
主要評価項目
副次評価項目
- 去勢抵抗性前立腺癌となるまでの期間
- 疼痛増悪までの期間
- 症候性骨関連事象 (SSE) 無発症生存期間
- SSEの初回発現までの期間
- 後治療開始までの期間
- 疾患の身体症状の悪化までの期間
- 7日間以上連続するオピオイド使用の開始までの期間
ARASENS試験の結果
患者背景
年齢中央値は両群とも67歳。 79.5%に骨転移、 17.5%に内蔵転移が認められた。 全生存期間の追跡期間中央値はダロルタミド群で43.7ヵ月、 プラセボ群で42.4ヵ月。
- 一次解析の時点 (2021年10月25日) において、 治療期間の中央値はダロルタミド群 (41.0ヵ月) の方がプラセボ群 (16.7ヵ月) よりも長かった。 また、 ダロルタミド群 (45.9%) はプラセボ群 (19.1%) よりも高い割合で、 試験治療を継続中であった。
OS
- ダロルタミド群において、 OSの有意な延長がみられた。
HR 0.68 (95%CI 0.57-0.80)、 P<0.001
- 4年時のOS率は、 ダロルタミド群で62.7% (95%CI 58.7-66.7) 、 プラセボ群で50.4% (95%CI 46.3-54.6) であった。
OSのサブグループ解析
年齢や人種などの事前に規定された全てのサブグループにおいて、 ハザード比の点推定値が1を下回った。
去勢抵抗性前立腺癌となるまでの期間
HR 0.36 (95%CI 0.30-0.42)、 P<0.001
疼痛増悪までの期間
HR 0.79 (95%CI 0.66-0.95)、P=0.01
SSE無発症生存期間
HR 0.61 (95%CI 0.52-0.72)、 P<0.001
SSEの初回発現までの期間
HR 0.71 (95%CI 0.54-0.94)、 P=0.02
後治療開始までの期間
HR 0.39 (95%CI 0.33-0.46)、 P<0.001
有害事象 (AE)
- 有害事象の発現率は両群で同程度であった。
- 重篤な有害事象の発現はダロルタミド群で44.8%、 プラセボ群で42.3%であった。
- 有害事象による死亡は両群で同様であり、 ダロルタミド群4.1%、 プラセボ群4.0%であった。
著者らの結論
- アンドロゲン除去療法とドセタキセルにダロルタミドを併用することで、 OSに対する有益性がみられ、 またダロルタミドを併用しても有害事象の増加は認めなかった。
- 本試験は、 転移性ホルモン感受性前立腺癌患者におけるダロルタミドとアンドロゲン除去療法およびドセタキセルとの併用を支持する結果である。