医療の最前線から
20日前
世界中の注目論文を紹介する新連載 「医療の最前線から」、 今回取り上げるのは、 2025年のJAMA誌に掲載された 「心房細動(AF)」 に関するレビュー論文です。 アメリカでは約1,055万人の成人がAFを抱えていると推定され、 脳卒中、 心不全、 認知症、 死亡率の上昇など重大なリスクに関わることが明らかになっています。 2023年のACC/AHA/ACCP/HRSガイドラインでもAF管理の新分類や早期リズムコントロール戦略が提唱されるなど、 最新のエビデンスがまとめられた注目のレビューです。
💡心房細動の疫学とリスク要因
💡新たなステージ分類 (2023年ガイドライン)
💡最新の抗凝固療法と適応基準
💡早期リズムコントロールの意義
💡心不全合併例へのアブレーションの有用性
原著論文で詳細を確認する
Atrial Fibrillation: A Review. JAMA. 2025;333(4):329-342. PMID: 39680399
2023年のガイドラインでは、以下の4ステージに分類され各治療戦略が推奨されました。
Stage 1 : 発症リスク因子を持つが、 AF非診断
Stage 2 : AFが未発症だが、心房構造的変化や電気的異常あり (心電図や心エコーでの異常所見)
Stage 3 : 発作性・持続性のAF
Stage 4 : 長期間持続、リズムコントロール困難
💡本論文では、 Stage1~2の段階で積極的にリスク要因管理を行う意義やさらに細かい分類について記載されています
AF患者における脳卒中予防のための抗凝固療法として、 DOAC (直接経口抗凝固薬) がワルファリンよりも優先して推奨されています。
CHA₂DS₂-VAScスコアが2点以上 (女性は3点以上) の場合は、 虚血性脳卒中または血栓塞栓症の推定リスクが年間2%以上であり、 DOACを選択することで脳卒中リスクを60-80%低減されるとのことです。
💡論文内には各DOACの出血リスクと効果の比較が詳述されています。 アスピリン単独は推奨されないこと (脳卒中抑制効果が弱い割に出血リスクは変わらず有害と判断)、 LAAO左心耳閉鎖術は長期的な抗凝固療法が困難な患者への代替策として言及されています。
発症後1年以内のリズムコントロールが有用とされています。 EAST-AFNET4試験¹⁾などで示されたように、 発症から早期にアブレーションや抗不整脈薬を検討すると、 心不全や脳卒中などの複合アウトカムが改善しました。 また、 AFが無症状の場合でも、 心不全合併や左室機能低下例では早期リズムコントロールの恩恵が報告されています。
💡 心不全 (特にHFrEF) 合併例では、 カテーテルアブレーションが生存率やQOL改善に寄与する可能性が高い旨が多くのRCTで示されています。
心房細動管理の標準化と個別化医療の進展が求められる昨今、 特にウェアラブルデバイスによる早期診断や、 心房細動の進行を抑えるためのライフスタイル介入が今後の研究の焦点となると感じました。 本論文には、 これらの新たな診断技術や治療戦略についての最新知見がまとめられています。 ぜひご一読下さい。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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