メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
6日前
Vertebral osteomyelitis after spine instrumentation surgery: risk factors and management
スペイン国内14病院で2010年~16年に実施された、 多施設後ろ向き観察研究である。 脊椎固定術後にIASIを発症し、 外科的治療を受けた573例の16歳以上の患者を対象とした。
IASIは、 術後60日以内の早期感染と60日以降の遅発性感染に分類された。 診断にはMRIが使用され、 椎体骨髄浮腫、 終板侵食、 椎体高の減少、 T2強調像での椎間板信号変化が確認されたものを特徴的な所見とした。
症例の治療プロトコルは標準化され、 特に感染発症時期 (早期 vs 遅発性) による手術戦略の違いが評価された。
発生率、 複数菌感染とも遅発性感染で多い
椎体炎の発生率は、 早期感染で2% (7/573例)、 遅発性感染で19.1% (12/573例)であった。 感染例のうち19%が複数菌感染であり、 特に遅発性感染での割合が高かった。
リスク因子は高齢や固定デバイス使用など
椎体炎の独立したリスク因子として、 高齢 (60歳以上、 aOR 1.10、 95%CI 1.03-1.18)、 椎体間固定デバイスの使用 (aOR 6.96、 95%CI 2.00-24.18)、 CoNS*感染 (aOR 3.83、 95%CI 1.01-14.53) が挙げられた。
早期感染はDAIR、 遅発性感染はインプラント除去が有効か
早期感染ではDAIRが57.1% (4/7例) に対して実施され、 治療成功率は75% (3/4例) であった。 遅発性感染ではインプラント除去が75% (9/12例) に実施され、 治療成功率は100% (9/9例) であった。 一方、 DAIRでは60% (3/5例) の成功率にとどまった (p=0.067)。
感染時期によらず、 抗菌薬治療期間は長期に
抗菌薬治療期間の中央値は56日 (IQR 51-95日) であった。 早期感染では平均8週間の抗菌薬が使用され、 遅発性感染では12週間以上の治療が必要とされた。
脊椎固定術後の椎体炎は、 頻度は多くはないものの外科的治療方針・抗菌薬の治療期間を含めて頭を悩ませる疾患の1つです。 本研究でも示されたように、 CoNSはCutibacterium acnesなどの比較的病原性の低い菌が起因菌となる場合が多く、 特に遅発性の感染では手術後数ヵ月以上経って緩徐に発症することも多いです。 適切な診断のために、 本疾患を念頭に置く必要があります。
抗菌薬治療期間は、 人工物を有しない化膿性椎体炎と比較して長期に及ぶことが多く、 最低8週間以上、 特に遅発性感染では12週間以上が推奨されます。 外科的なインプラント除去が可能かどうかにより治療期間は異なりますが、 手術からの期間、 骨の癒合、 再手術のリスク、 抗菌薬の副作用などを総合的に考慮し、 整形外科医と十分な議論が必要です。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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