肝外転移のない切除不能な肝細胞癌患者において、 シスプラチンの肝動脈注入の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験の結果より、 高い奏効率が示された。
原著論文
▼解析結果
Phase II study of hepatic arterial infusion of a fine-powder formulation of cisplatin for advanced hepatocellular carcinoma. Hepatol Res. 2008 May;38(5):474-83. PMID: 18430093
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第Ⅱ相試験の概要
対象
肝外転移のない切除不能な肝細胞癌患者
方法
- 80例に、 シスプラチン65mg/m²の肝動脈注入を、 4-6週毎に繰り返した。
- シスプラチン濃度は1.43mg/mLで、 2ml/分の速度で注入した。
- リピオドールやゼラチンスポンジ、 バルーンなどの血栓作用を有する物質の併用は禁止され、 治療期間中だけでなく経過観察期間中も肝細胞癌に対する他の治療も禁止された。
評価項目
- 主要評価項目:奏効率
- 副次評価項目:奏効期間、 有害事象
第Ⅱ相試験の結果
患者背景
- 70例 (87.5%) が肝硬変を基礎疾患としていた。
- 48例が再発肝細胞癌で、 前治療を平均3.6回受けていた。 そのうち46例で抗癌剤が使用されていた。
奏効率
33.8%
(95%CI 23.6-45.2%)
CR 0例、 PR 27例、 NC 37例、 PD 11例
単変量解析および多変量解析
年齢、 Child分類、 血管浸潤の有無 (門脈および肝静脈) 、 抗癌剤治療歴の有無、 投与経路を調べ、 血管浸潤のみが治療効果に影響する唯一の優位な因子であった (オッズ比 0.224) 。
奏効期間 (中央値)
36日
(範囲:28-142日)
有害事象 (AE)
- 30%以上の患者に認められたのは、 食欲不振、 全身倦怠感、 嘔吐、 発熱であった。
- 白血球減少、 好中球減少、 血小板減少、 ASTの上昇が50%以上の患者でみられた。
- 肝機能検査項目の多くは薬剤投与後1週間以内に異常値のピークを示し、 回復するまでの日数の中央値は、 AST 5日、 ALT 7日、 ビリルビン 5日、 アルブミン 7日であった。
- 血清クレアチニン値と尿蛋白値は、 それぞれ23.8%と25.3%で上昇し、 ピークは薬物投与後1~2週間後で、 回復までの日数の中央値はクレアチニンで11日であった。
著者らの結論
肝外転移のない切除不能な肝細胞癌患者において、 シスプラチンの動注療法は局所および全身の毒性を有するが、 治療効果は高く、 有効である可能性が示唆された。