「エビデンスを研究室から地域社会へと広め、 Well-Beingな社会の実現に貢献する」 山形大学Well-Being研究所 副所長 / 医学部 公衆衛生学・衛生学講座教授・今田 恒夫医師 (後編)
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10日前

「エビデンスを研究室から地域社会へと広め、 Well-Beingな社会の実現に貢献する」 山形大学Well-Being研究所 副所長 / 医学部 公衆衛生学・衛生学講座教授・今田 恒夫医師 (後編)

 「エビデンスを研究室から地域社会へと広め、 Well-Beingな社会の実現に貢献する」 山形大学Well-Being研究所 副所長 / 医学部 公衆衛生学・衛生学講座教授・今田 恒夫医師 (後編)
 「病院で待っているだけでは病気は減らない」。 重症患者を診る中で治療の限界を痛感し、 臨床医から公衆衛生の道へ進んだ今田恒夫医師 (山形大医学部教授)。 一方的な健康指導の限界を乗り越え、 個別の行動変容を促すために設立された 「Well-Being研究所」 の取り組みや、 健康管理アプリを開発した経緯などを同氏に聞いた。 

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臨床現場で治療の限界を痛感し、 公衆衛生の道へ

――先生のこれまでのご経歴を教えてください。 臨床医でありながら、 公衆衛生や予防医療に注力するようになったのはなぜですか。

「私は山形県米沢市の出身で、 家の近くには医師がおらず、 具合が悪くなると少し離れた市立病院まで行かなければならない環境で育ちました。 『地域に医師がいないのは問題だ。 地元で臨床医として働きたい』と考え、 山形大学医学部に進学しました。 内科を選んだのは、 全身を診る医師になりたいと思ったからです。 腎臓内科を専門にしたのは、 当時の本学に専門医がいなかったから。 『誰もやっていない分野こそやるべきだ』と飛び込みました。 初期研修を山形市立病院で受けた後、 他の病院勤務を経て、 イギリスのロンドン大学へ留学し、 研鑽を積みました」

 「エビデンスを研究室から地域社会へと広め、 Well-Beingな社会の実現に貢献する」 山形大学Well-Being研究所 副所長 / 医学部 公衆衛生学・衛生学講座教授・今田 恒夫医師 (後編)
※写真はイメージです

「2001年に山形大学に戻り、 腎臓内科医として外来に立つと、 すでに重症化した患者さんが多く訪れることを知りました。 『なんでこんなにひどくなるまで放っておいたのか。 もっと早く見つけていれば、 もっといい治療ができたのに』と感じる日々を過ごしていました。 『病院の中で待っていて、 目の前の患者さんを診ているだけでは病気は減らない。 地域に出て早期発見・早期対応を呼びかけ、 行動を変えてもらう必要がある』と強く思うようになりました」

エビデンスを社会へ届けるため 「Well-Being研究所」 を設立

――そうした思いが、 公衆衛生への関心につながっていったのでしょうか。

「コホート研究を始め、 そのデータをもとに論文を書くようになってから、 さらにその思いは強くなりました。 2010年ごろには、 公衆衛生に軸足を移していかなければならないと感じていました。 2017年に大学から『公衆衛生学・衛生学講座の教授にならないか』と声をかけてもらったときは、 迷わず引き受けました」

――Well-Being研究所設立の経緯を教えてください。

「研究所設立以前も、 コホート研究で得られた成果を地域の健康教室で話していました。 ただ、 年間20回ほど各地を回りましたが、 そこに来てくださるのは健康意識の高い方ばかり。 本当に生活習慣を改善してほしい人には、 情報が届かないというジレンマがありました。 また、 大勢に向けた一般的なアドバイスでは、 一人ひとりの行動を変えることは難しいという限界も感じていました」

 「エビデンスを研究室から地域社会へと広め、 Well-Beingな社会の実現に貢献する」 山形大学Well-Being研究所 副所長 / 医学部 公衆衛生学・衛生学講座教授・今田 恒夫医師 (後編)
研究所外観

「もっと個別に、 双方向で、 本当に必要な人に継続的にアドバイスを届けられないか。 この構想を実現するためには、 膨大なデータを分析し、 すぐに情報を返す仕組みや、 行動変容を促すための専門的な知見が必要です。 そこで、 事務担当者と2人で計画書を作り、 学内の多様な専門家を巻き込んで、 2023年に研究所を設立しました」

――同時に、 健康管理アプリ 「Well-Being YU」 を開発したのですね。

「こうした課題意識から誕生したのが、 2024年秋にリリースした健康管理アプリ『Well-Being YU』です。 このアプリは、 LINE上で手軽に利用できるのが大きな特徴です。 利用者は自身の健診結果を入力することで、 今後5年間のがんや脳卒中などの発症リスクを予測できます。 さらに、 毎日の運動や食事などの生活習慣を入力すると、 設定したAIキャラクターが即座に応援やアドバイスを返信してくれます。 また、 1週間分の記録をもとに医療の専門家が内容を確認し、 個別の状況に応じたアドバイスを週に1回送るという2段構えの仕組みになっています」

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LINEの友だちに追加し、 初期設定を行うだけで簡単に利用できる

「開発にあたっては、 学内のAI・DX担当の教員が自らプログラミングを行い、 LINEの仕組みを活用してくれました。 これにより、 アプリ開発にかかる数千万円のコストを年間100万円程度にまで抑えることに成功したのです」

「アプリの利用は無料で、 ニックネームでの登録も可能とし、 参加へのハードルを大きく下げています。 リリースから約1年半で、 約3000人が利用を開始しました。 現在の課題は、 継続率の向上です。 個人では続かない人が多いため、 昨年から会社単位で取り組むことを勧めています。 企業単位で導入し、 仲間と一緒に取り組むことで継続率が上がることも、 実証実験で確認できています。 今後は企業向けの月次レポートサービスなども展開し、 健康経営のサポートにも力を入れていきます」

――最後に、 読者へメッセージをお願いします。

「若手や中堅の先生方にぜひお伝えしたいのは、 医療や健康づくりにおいて、 多様な専門家とつながることの重要性です。 医師が一人で、 あるいは病院の中だけでできることには限界があります。 私自身、 外来で患者さんに塩分制限を指導する際、 栄養士さんにお願いしたほうが、 ずっと実践的で分かりやすい指導ができることに気づきました。 また、 薬剤師さんや看護師さんの力を借りることで、 より良い医療が提供できるようになりました。 さらに病院の外に出れば、 自治体の職員や地域の皆さん、 そしてアプリの開発エンジニアや行動科学の専門家など、 全く異なる知見を持つ人々がいます。 彼らとつながることで、 一人では到底できない大きな課題の解決が可能になります」

「Well-Being研究所は、 まさにそうした多様な専門家が集い、 大学の専門知を社会に還元するための発射台や土台としての役割を果たしています。 病気を治すだけでなく、 地域社会全体でウェルビーイングを実現していくために、 大学の知見をどのように社会実装していくか。 目の前の患者さんを救う臨床の現場ももちろん大切ですが、 ぜひ病院の外、 地域にも目を向け、 多職種と連携しながら、 予防医療や地方医療DXの最前線に飛び込んできてほしいと思います」

プロフィール

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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