HOKUTO編集部
1年前

本連載は4人の腫瘍内科医による共同企画です。 がん診療専門医でない方でもちょっとしたヒントが得られるようなエッセンスをお届けします。 第18回は虎の門病院・山口雄先生から、 「がん患者さんへの病状説明における実践的な流れ」 です! ぜひご一読ください。

転移がんと診断した患者さんに対して、 最初に行うことは病状の説明です。 皆さんはどのようにこの説明を行っていますか?
がん診療を学ぶ中で、 「正しい病状説明の方法」 を教わる機会は意外と少ないものです。 私自身も、 病状説明について詳しく教わった記憶はあまりなく、 先輩方の面談に同席し、 それらを参考にしながら、 自分なりのスタイルを身につけてきました。
この記事では前回に続き、 私の経験を基に、 転移がんと診断され抗がん薬治療を受ける予定の患者さんに対して伝えるべき内容を、 病状説明の流れに沿ってStep 0~7に分けて解説します。
病状説明開始の前に以下の質問をしておきましょう。
▼病状理解の確認
「病状に関して、 これまでどのような説明を受けておられますか?」
▼疑問の把握
「何か気になること、 これは聞いておきたいことはありますか?」
これらの質問に対する回答によって、 説明内容や話の進め方を調整します。
さらに、 以下のような 「Warning Shot*」 をしておくことも重要です。
「これからお話する内容は、 〇〇さんにとって良くない内容も含まれますが、 今後の治療を考えていくうえでご自分の病状をしっかり把握しておくことは重要と考えています。 すべて包み隠さずお伝えしてよろしいですか?」
まず以下の内容を伝えます。
以下のポイントをおさえながら、 全身的な病態としてがんを理解する必要性を説明します。
この段階で、 患者さんが完治は難しいと察することがあります。
病態を考えると、 全身治療である薬物療法が最適な治療であることを伝えます。
多くの患者さんが抱く 「手術や放射線治療はできないのか?」 という疑問に対しては、 局所治療は有効ではないことを説明します。 手術などに希望をもっている方もいるので 「適応ではない」 の一言で片づけず、 病態として有効ではないことを丁寧に説明しましょう。
また薬物療法と並行して緩和治療も行うことを伝えます。
完治は難しく、 治療の目標は 「病気とうまく・長く付き合っていく」 ことであると説明します。 これまでの説明で 「Warning Shot」 を散りばめてきたため、 「やっぱりそうか」 と多くの方が納得されます。 また、 患者さんにとって一番辛い事実を伝える際には、 「ここからが病状説明で一番重要なところなのですが」 と一言添えることを忘れないようにしましょう。
「完治は難しい」 と伝えても、 一部の患者さんは 「完治はできなくても治療を続けていれば進行をずっと抑えられる」 と考えることがあります。 したがって、 完治が難しいという意味を、 以下の2点で明確に説明します。
伝えた後は、 沈黙を保ち患者さんの感情を引き出しつつ、 気持ちのサポートを行いましょう。 この時 「延命だけでなく生活の質(QOL)を保つことも重要」、 「病状によっては薬物療法を中止し緩和治療に専念した方が良い時期が来る」 などについても説明します。
予後告知希望の有無について尋ねます。
今後は2-3ヵ月ごとに画像検査をしながら治療効果判定を行い、 効果があれば治療を継続することを伝えます。 この点については忘れがちですが、 一部の患者さんは一定期間治療すれば終了になると誤解している場合があるので、 その旨もしっかりと説明しましょう。
最後に、 患者さんが疑問に思いやすい情報 (治療費、 利用できる社会的支援制度、 治療中の食事内容など) を補足し、 その他の質問がないかを確認します。
私は、 患者さんにとって辛い面談の最後を、 できるだけポジティブな言葉で締めくくるように心がけています。
「今の状況はあまり良くありませんが、 我々が全力でサポートしますので、 良い結果が得られるように頑張りましょうね」
また当科では、 Step1~7までの内容を網羅した配布資料を作成し、 患者さんがより理解しやすく、 後から内容を確認できるようにしています。
私の現在の病状説明は、 昔と比べて変化しています。 がん診療の経験を積む中で、 より良い方法を探し続け、 今のスタイルにたどり着きました。 皆さんも本記事を参考にしながら、 自分に最適な方法を見つけていただければ嬉しいです。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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