海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前

京都大学大学院社会疫学分野の井上浩輔氏らの研究グループは、 高齢の糖尿病患者を対象に、 GLP-1受容体作動薬 (GLP-1RA) による認知症発症リスクを、 DPP-4阻害薬と比較して評価することを目的に、 target trial emulationを実施した。 その結果、 両薬剤間で認知症発症リスクに有意差は認められなかった。 試験結果はAnn Intern Med誌において発表された。
本研究の対象は2型糖尿病患者に限定されており非糖尿病患者への一般化は困難です。 現在、 糖尿病の有無に関わらずセマグルチドの認知症予防効果を検証する第Ⅲ相試験が進行中ですので研究結果が期待されます。
GLP-1RAは血糖降下作用、 体重減少効果、 心血管イベント予防効果が知られている。 また近年、 GLP-1RA使用と認知症の発症リスク低下の関連が報告されているが、 観察研究には方法論的な制約が存在していた。 本研究は、 より厳密な手法でGLP-1RAとDPP-4阻害薬 (DPP-4i) の認知症発症リスクを比較することを目的とした。
RCTを模倣した観察研究であるtarget trial emulationが設定された。 対象は、 2016年1月~2020年12月に米・Medicare Fee-for-Serviceを利用した66歳以上の2型糖尿病患者のうち、 メトホルミン使用歴があり、 ベースラインで認知症の既往がなく、 2017年1月~18年12月にGLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬を新規開始した患者が登録された。 主要評価項目は認知症の新規診断 (診断日の1年前を発症日と定義) であり、 副次評価項目は年齢層別 (<75歳、 ≥75歳) の認知症発症リスクの比較だった。
GLP-1RA群2,418例、 DPP-4i群4,836例が登録された。 追跡期間の中央値は1.9年で、 GLP-1RA群96例、 DPP-4i群217例が認知症を発症した。 30か月時点における両群のリスク差は-0.93% (95%CI -2.33-0.23) で、 リスク比は0.83 (95%CI 0.61-1.05) だった。
年齢層別の解析では、 <75歳集団のリスク比が0.64 (95%CI 0.46-0.93) であったのに対し、 ≥75歳集団では1.22 (95%CI 0.74-1.66) と、 集団間で異なる傾向を認めた。
本研究の限界として、 BMI、 血糖コントロール、 糖尿病罹病期間のデータ欠如による残余交絡、 アウトカムの誤分類、 追跡期間の短さが挙げられた。
著者らは、 「高齢の糖尿病患者において、 GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と比較し、 認知症の発症率に有意差は認められなかった」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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