海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前
Iacovacciらは前立腺癌を対象に、 放射線治療誘発性消化管毒性の予測因子としての腸内細菌叢の役割について、 観察コホート研究MicroLearnerで検討した。 その結果、 特定の腸内細菌叢のプロファイリングは消化管毒性リスクに関連しており、 治療前の腸内細菌叢解析によって患者の消化管毒性リスクを予測する臨床意思決定ツリーを作成したと報告した。 本研究はeBioMedicineにて発表された。
根本的に食習慣そのものが放射線に対する反応をどのように調節し得るか、 また高リスク患者の腸内細菌叢そのものが食習慣の特徴とどのように関連し得るかを調査するには、 研究デザインにlimitationがあります。
放射線治療が誘発する消化管毒性リスクが高い患者を特定するため、 線量以外の因子を探索することは重要である。 これにより、 個別化治療プロトコルを確立し、 患者のQOLを改善することが期待される。
著者らは、 腸内細菌叢が放射線治療による消化管毒性の発生にどのように関与しているかを調査するため、 放射線治療を行う前立腺癌患者の腸内細菌叢を検証した。
治癒的な高線量の放射線治療を受けた前立腺癌患者244例を対象とした。
消化管毒性はCTCAE v4.0を用いて放射線治療中に毎週評価し、 各評価時点の平均グレードが1.3超を超える症状が少なくとも1つあれば 「持続的な急性消化管毒性を発症している」 と定義した。
患者の微生物叢の構成割合は、 放射線治療開始前の患者の便サンプルから収集した腸内細菌叢を基に、 16SrRNAシーケンス解析を用いて定量化された。
急性消化管毒性の発生と有意に関係していた要素は以下の2点だった。
- 放射線治療前の多様性 (α多様性) が低いこと
- ベースライン時のコア細菌属の種類が少ないこと
次に腸内細菌叢の特徴が消化管毒性を予測するかどうかをさらに検証するために、 発見コホートを階層的にクラスタリングし、 コア細菌属の多変量解析を行った。 その結果、 毒性発生率が0~60%の範囲にある8つのクラスターが形成された。
また機械学習を用いた解析により、 毒性発生率が高い細菌叢*の相対的存在量に基づき、 治療中に急性消化管毒性を発症するリスクが高い患者を予測する臨床意思決定ツリーを開発した。
これらの結果から、著者らは 「患者の便サンプルを用いた腸内細菌叢プロファイリングは、 前立腺癌における消化管毒性リスクの放射線治療前予測を向上し、 臨床でより効果的に使用できる可能性が示唆された」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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