HOKUTO編集部
4日前
医療での生成AI活用のトップランナー、 大塚篤司先生によるChatGPT講座。 今回は、 必要な情報を効率的に見つけ出す文献検索に焦点をあて、 3つのプロセスに沿ったプロンプトを紹介します!
膨大な医学情報の中から必要な論文を迅速に見つけ出し、 内容を的確に把握することは、 多忙な臨床医にとって大きな課題である。
ChatGPTを検索のアシスタントとして活用することで、 このプロセスを大幅に効率化できる。 今回は、 文献検索の 「あたりをつける」 「内容を掴む」 「信頼性をチェックする」 という3つのステップに対応したプロンプトを紹介する。
活用シーン
目の前の患者に関する臨床上の疑問 (Clinical Question : CQ) をPICO形式で構造化し、 PubMedなどで使用する具体的な検索キーワードを抽出する。
プロンプト例
あなたはEBMに精通した医師です。
以下の【臨床疑問】をPICO (Patient, Intervention, Comparison, Outcome) に分解し、 PubMedで検索するための英語のキーワードと検索式案を提案してください。
【臨床疑問】
2型糖尿病を持つ高齢者に対して、 SGLT2阻害薬はDPP-4阻害薬と比較して、 心血管イベントをより抑制するか?
【出力形式】
1. PICO
P (Patient):
I (Intervention):
C (Comparison):
O (Outcome):
2. 検索キーワード (英語)
Pに対応するキーワード:
Iに対応するキーワード:
Cに対応するキーワード:
Oに対応するキーワード:
3. PubMed検索式 (案)
活用のコツ
● 臨床疑問はできるだけ具体的に記述する。
● ChatGPTが提案した検索式をベースに、 実際の検索エンジンで調整を加える。
●AIに文献検索を直接依頼すると、 存在しない論文を生成する 「リファレンス・ハルシネーション」 が起こりやすいため避ける。
● あくまで 「検索キーワードの抽出」 など、 検索の準備作業に徹する。
活用シーン
見つけた英語論文のAbstract (抄録) を貼り付け、 日本語で要約させる。 特に、 自分の臨床疑問に対してどのような結論 (Answer) を出しているかを明確にする。
プロンプト例
あなたは循環器内科の専門医です。
以下の英語論文の【抄録】を日本語で要約してください。
特に、 研究のPICOと、 私の臨床疑問 「高齢心不全患者におけるSGLT2阻害薬の有効性」 に対する結論 (Clinical Answer) を明確に示してください。
【抄録】
[ここに英文抄録を貼り付け]
【出力形式】
1. 論文のPICO
P (Patient):
I (Intervention):
C (Comparison):
O (Outcome):
2. 研究の要約
3. 臨床疑問への結論
活用のコツ
● 一度に大量のテキストを貼り付けると、 処理できない場合がある。 そのため、 抄録や結論部分に絞って入力する。
● 要約はあくまで一次情報。 重要な論文は必ず全文を読んで批判的吟味を行う。
活用シーン
論文の抄録を読み、 その結果を鵜呑みにする前に検討すべき 「ツッコミどころ」 を洗い出すことで、 批判的吟味の視点を養う。
プロンプト例
あなたは経験豊富な指導医です。
以下の【抄録】について、 研修医にアドバイスするような視点で、 この研究結果を鵜呑みにする前に確認すべき 「ツッコミどころ」 を3つ、 やさしく教えてください。
【抄録】
[ここに英文抄録を貼り付け]
【出力形式】
この研究の 「ツッコミどころ」 は、 例えば以下の3点。
1. (ツッコミポイント1) :
2. (ツッコミポイント2) :
3. (ツッコミポイント3) :
活用のコツ
● 「ツッコミどころ」 という少し砕けた言葉を使うことで、 AIに形式的な回答ではなく、 論文の弱点や注意点をより具体的に指摘させることができる。
● AIの指摘はあくまで 「着眼点」 の提供である。 最終的な論文の評価は、 必ず自身の知識と経験に基づいて行う。
ChatGPTの知識にはカットオフ (学習最終日) がある。 そのため、 ごく最近発表された論文は検索結果に含まれない可能性がある。
最新情報を得るには、 やはりリアルタイムのデータベース検索が必須である。
AIの指摘は、 あくまで"多角的な視点を得るための補助線"である。
提示された 「ツッコミどころ」 を参考にしつつも、 論文の価値を最終的に判断する 「批判的吟味」 の主体は、 医師自身であることを忘れてはならない。
1. "CQの構造化とキーワード抽出"で検索の準備を整え、
2. "論文要約"で効率的に内容を把握し、
3. "信頼性チェック"で論文を深く読み解く視点を得る。
上記のプロセスをAIに手伝わせることで、 医師は論文の内容を解釈し、 臨床現場へ応用するという、 より本質的な業務に時間を注ぐことができる。
AIの生成結果を鵜呑みにせず、 必ずファクトチェックと自身の思考による検証を行うことが極めて重要である。 この新しいツールを賢く使いこなし、 日々の診療と自己研鑽に役立ててほしい。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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