亀田総合病院
1年前
ミミッカーとは、 Commonな疾患に紛れ、 診断や治療の判断を惑わせる疾患群のことを言います。 Commonな疾患のミミッカーについて理解しておくことで、 鑑別診断の漏れが減少し、 臨床現場において的確な診断を行うことができます。
呼吸器症状を認める患者が、 肺に胸部X線や胸部CTで浸潤影を認めた場合、 まずは市中肺炎が鑑別に挙がります。 しかし、 市中肺炎と同じように限局性の浸潤影を呈する疾患が他にもあり、 肺炎診療のピットフォールとなります。
頻度や疾患の重要度から、市中肺炎の三大ミミッカーとして①結核、 ②特発性器質化肺炎 (COP)、 ③浸潤性粘液産生性肺腺癌 (IMA) を抑えておく必要があります。
肺結核はときに肺炎様の浸潤影を呈します。 注意深く観察すると、 小葉中心性粒状影がどこかに存在していることが多いですが、 粒状影を伴わない場合もあります。
図1 肺炎様の浸潤影(〇)を呈した肺結核の胸部CT所見。 このような浸潤影を呈する肺結核を「結核性肺炎」ともいう。
COPは、 市中肺炎様の浸潤影を呈する間質性肺炎です。 市中肺炎として抗菌薬を投与するも改善しない肺炎として、 呼吸器内科にコンサルトが来ることが多いです。
図2 特発性器質化肺炎の胸部CT所見。 右下葉にair bronchogramを伴う浸潤影(〇)を認める。
IMAは、 粘液産生の強い肺癌で、 肺炎様の浸潤影を呈します。 肺癌の2-10%を占めるとされます¹⁾。 図3の胸部CTは、 最終診断がIMAとなった症例です。
図3 IMAの胸部初見。 胸部CTで右下葉にair bronchogram を伴う浸潤影 (〇) を認める。
💬臨床現場での"違和感"が重要
これらの市中肺炎3大ミミッカーを見逃さないためには、 通常の市中肺炎とは異なる「違和感」を感じるのが重要です。 例えば、 これら3大ミミッカーは、 「呼吸器症状+肺野に浸潤影」という部分は市中肺炎と類似しますが、 市中肺炎と比べると、 経過が緩やかで、 酸素化障害がなく、 全身状態が良いことが多いです。
なので、 市中肺炎の診療で、 病歴上「1ヶ月の緩やかな経過経過」や「肺炎としては全身状態や酸素化が良すぎる」などの臨床所見があれば、 3大ミミッカーである、 結核、 COP、 IMAを鑑別に入れておきましょう。
💬改善が遅い"難治性肺炎"に注意
適切な治療をしても改善しない、あるいは改善が遅い肺炎をnon-resolving pneumonia (難治性肺炎) といいます。 これら3大疾患は難治性肺炎の原因疾患としても重要です²⁾。
これらの疾患は、 時に細菌性肺炎を同時合併して、 市中肺炎と全く同じプレゼンテーションを呈することもあるので注意が必要です。 特にIMAで頻度が高いです。 肺炎診療では、 常に結核と癌の可能性を考えながら診療することが重要です。
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一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
亀田総合病院呼吸器内科 Instagram : https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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