海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前
Higginsonらは、 重度の息切れが持続するCOPDまたは間質性肺疾患の患者を対象に、 抗うつ薬ミルタザピンの有効性を第Ⅲ相多施設二重盲検無作為化比較試験BETTER-Bで検討した。 その結果、 numerical rating scale (NRS) スコアで評価した息切れの重症度は、 ミルタザピンとプラセボで有意差がないことが示された。 本研究は、 Lancet Respir Med誌にて発表された。
本研究は試験薬が効果がないことよりも、 「息切れの辛さは、 メンタルよりフィジカル面の原因がが多くを占めている」ことを示唆しています。
呼吸器疾患患者では、 しばしば息切れが深刻化する。 抗うつ薬であるミルタザピンは、 呼吸感覚の調節やその反応に対して有望な結果を示している。 また、 息切れにしばしば伴うパニック症状の軽減にも効果がある。
本研究では、 重度の持続的な息切れの緩和に対するミルタザピンの有効性を明らかにすることを目的とした。
COPDまたは間質性肺疾患と診断され、 修正MRC息切れスケールでGrade 3または4の成人患者225例が、 以下の群に1 : 1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、 治療開始から56日時点の、 過去24時間における息切れの程度とした。 息切れの程度はNRSスコア (Numerical Rating Scale) *によって評価された。
過去24時間のNRSスコア最高値は、 両群間で有意差は認められなかった。 プラセボ群とミルタザピン群の調整平均NRSスコアの差は0.105 (95%CI -0.407-0.618、 p=0.69) であった。
この試験は検出力不足であり、 治療効果を判定するために事前に規定された閾値である0.55には達しなかった。
有害事象は、 ミルタザピン群の64% (72/113例) に215件、 プラセボ群の40% (44/112例) に116件が報告された。 うち重篤な有害事象は、 ミルタザピン群で5% (6/113例、 11件)、 プラセボ群で6% (7/112例、 8件) だった。
56日時点の死亡はミルタザピン群で3例、 プラセボ群で2例、 180日時点の死亡はミルタザピン群で7例、 プラセボ群で11例であった。
著者らは、「本研究の結果から、 56日間ミルタザピンを投与しても、 COPDや間質性肺疾患患者の重度の息切れに対する有効性は認められず、 むしろ有害事象を引き起こす可能性が高いことが示された。 これらの知見から、 ミルタザピンは重度の息切れの治療に推奨されない」と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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