HOKUTO編集部
1年前
欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)ではPresidential sessionが1つ、その他Late-breaking abstractが8つと、話題の演題がたくさんありました。
転移再発ホルモン受容体(HR)+HER2-乳癌を対象としたTrop2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)のTROPION-Breast01試験をはじめとして、HR+HER2-周術期のKEYNOTE-756試験、CheckMate 7FL試験、monarchEの5年追跡データ、NATALEEのサブグループ解析などが注目されました。
また、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)では、KEYNOTE-522試験の5年無イベント生存率(EFS)、neoTRIP試験のEFSの結果が報告されました。
そのほか、DESTINY-Breast試験シリーズの脳転移症例に対するpooled解析、Dato-DXd+抗PD-L1抗体デュルバルマブのBEGONIA試験など、興味深いデータが報告されています!
【KEYNOTE-756】高リスクER陽性HER2陰性早期乳癌の術前ペムブロリズマブ追加でpCR改善
周術期ペムブロリズマブ併用化学療法は再発高リスクTNBCに対する標準治療となっておりますが、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する有効性を評価しているのがKEYNOTE-756試験です。今回は病理学的完全奏効(pCR)割合の統計学的有意な改善が示されました。免疫チェックポイント阻害薬の効果が得られにくいHR陽性HER2陰性乳癌に対して、まずpCRの改善が示されたことは大きな一歩です! 今後の無イベント生存期間データに期待が寄せられています。
【CheckMate 7FL】高リスクER陽性HER2陰性早期乳癌の術前ニボルマブ追加でpCR改善
KEYNOTE-756試験と同様、HR陽性HER2陰性乳癌に対して、周術期化学療法+ニボルマブの有効性を評価しているのがCheckMate 7FL試験です。こちらもpCR割合の統計学的な改善が示されました。PD-L1陽性 (IC ≥1%)ではpCRの上乗せ効果が24.1%と大きかったのは注目ポイントです。こちらも今後のEFSデータが待たれます。
【monarchE】高リスク早期乳癌術後のアベマシクリブ+内分泌療法、 5年追跡結果も良好
HR陽性HER2陰性乳癌術後では術後数年以内の早期再発だけでなく、 晩期再発の抑制も重要な課題となっています。 そのため、 monarchE試験の5年追跡結果において一貫した再発抑制効果を示しており、 その無浸潤疾患生存率の差が徐々に大きくなっていることは、 臨床的意義のある重要なデータであると考えます。
【NATALEE】HR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのribociclib併用でiDFS改善
HR陽性HER2陰性乳癌の術後としてCDK4/6阻害薬ribociclibの有効性を評価したNATALEE試験のサブグループ解析データが報告されています。主解析データは今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)で既に報告されており、無浸潤疾患生存期間の有意な改善が示されています。病期、リンパ節転移有無、閉経状態、年齢など、いずれのサブグループにおいても一貫した有効性が示されております。今後世界の標準治療となる見込みであり、アベマシクリブとの使い分けについて議論が進むものと思われます。ただ残念ながらribociclibの日本での開発は中止されています。
【KEYNOTE-522】TNBC術前・術後でのペムブロリズマブでEFS改善
再発高リスクTNBCに対する周術期ペムブロリズマブはすでに世界の標準治療となっており、日本においても標準的に使用されています。今回は5年のEFSのデータが報告されました。EFSのハザード比は0.63と、3年時点での報告と一貫しており、その差の絶対値は9%に広がっています。また個人的には、探索的な解析ではあるものの、pCR症例での差が広がっている点に注目しています。
【NeoTRIP】高リスクTNBC術前でのタキサン系/CBDCAへのアテゾリズマ追加でEFS改善せず
TNBCに対する術前アテゾリズマブの有効性を評価したneoTRIP試験ですが、pCRの改善は示されず、また今回の報告ではEFSの差も示すことができませんでした。本試験ではバイオマーカー解析が注目されており、腫瘍におけるCD8+TCF1+Ki67+のdensityが高い症例ではアテゾリズマブ併用群でEFSが良かったと報告されました。周術期免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーは確立していないため、今後さらなる研究が必要とされています。
【TROPION-Breast01】HR+/HER2-既治療乳癌へのdatopotamab deruxtecanがPFSを延長
注目されている新規抗体薬物複合体(ADC)であるDato-DXdの最初の第Ⅲ相試験の結果となります。 HR陽性HER2陰性乳癌で化学療法1~2レジメン治療後に対するDato-DXd単剤の有効性が示されました! 今後標準治療となる見込みです。
【BEGONIA】TNBCへのDato-DXd+デュルバルマブはで奏効79%
【DESTINY-Breast04】HR+/HER2低発現乳癌へのT-DXd、 長期OSでもHR 0.69と良好
【DESTINY-Breast01~03の統合解析】未治療・症候性の脳転移例へのT-DXdでPFSが18.5カ月に
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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