HOKUTO編集部
16日前
本邦最大のがん専門の学術団体である日本癌治療学会 (JSCO) は、 10月24-26日に第62回日本癌治療学会学術集会 (JSCO 2024) を開催。 同学会理事長で国立がん研究センター東病院副院長/医薬品開発推進部門長の吉野孝之氏が、 「がんちから日本を、 そして世界を元気にする」 と題した理事長講演で、 JSCOが掲げるビジョンや使命等を語った。
今回の理事長講演のタイトル『がんちから日本を、 そして世界を元気にする』は、 JSCOが掲げるビジョンでもある。 同ビジョンには、 JSCOは医療の発展のみならず、 日本の国力強化および持続的成長にも貢献し、 医師・患者間だけではなく日本社会の発展に寄与することを目指すとの思いが込められている。
吉野氏は 「近年、 さまざまな業界がライフサイエンス領域に参入しており、 我々は産官学連携をより強める必要がある。 やがてはJSCOの取り組みが他の産業にも応用可能となる流れを作りたい」 と意気込みを語った。
なおJSCOの会員数は約1万6,000人 (2024年7月時点) であり、 外科医が全体の44% (約7,000人) を占める一方で、 外科以外の20の専門科の医師と薬剤師、 看護師も参加する領域・職種横断的な学術団体である。 この特色を今後も活かし、 職種の垣根を超えた議論を行うとともに、 明日のがん治療に必要な新しい知見を常に取り入れる団体になることを目指すという。
JSCOは現在 「会員数を2万人に増員」 「学会機関誌のインパクトファクター (IF) 上昇」 「認定制度の拡充」 というミッションを掲げ、 それに関連するさまざまな取り組みを行っている。
国際連携・協力はJSCOの重要な取り組みの1つであり、 ①ASCO Breakthroughの開催、 ②米国臨床腫瘍学会 (ASCO) や欧州臨床腫瘍学会 (ESMO) とのフェローシッププログラムを通じた次世代のがん診療の担い手の育成、 ③アジア腫瘍学会 (AOS) の支援、 ④国際対がん連合 (UICC) 日本委員会主催のワールドキャンサーデーへの協賛――などの国際連携を進めている。 これらにより、 欧米やアジアとの関係構築をさらに強化しながらJSCOのプレゼンスを国際的に確立することを目指すという。
また学会機関誌である 「International Journal of Clinical Oncology (IJCO) 」 のIFは現在2.4であり、 これを10点に上昇させることが重要なミッションの1つに置かれている。
IF向上のため、 今年からIJCOの新企画として、 JSCOの各理事らが月に1本ずつ論文を投稿する 「JSCO Board of Directors Series」 や、 承認された新薬等に関する情報を提供する 「PMDA Regulatory Updates」 の掲載が開始されるなど、 同誌の学術的な価値を高める取り組みが進められている。
今後さらに増加が見込まれる医師主導治験については、 効率化を目標に、 旧・認定DM (データマネージャー) ・CRC (クリニカルリサーチコーディネーター) 制度が、 2020年度より 「認定CRC制度」 へと移行された。 これにより、 DMとCRCの資格は一本化され、 申請条件や更新手続き等も明確化される。 臨床試験のデータ管理等に精通したCRCの育成・拡充により、 臨床試験を通じて、 安全かつ有効ながん治療の確立に貢献することが狙いだ。
また、 がん相談支援センターと患者をつなぐ「がん医療ネットワークナビゲーター (がんナビ)」 の拡充も重要なミッションの1つとされている。 2023年3月発出の第4期がん対策推進基本計画においてもがんナビの重要性が記載¹⁾されており、 患者への適切な情報提供を行えるがんナビの認定者数を拡充することで、 より多くの患者を支える未来を実現するという。
さらに吉野氏は、 JSCOにおける最大の使命の1つとして 「社会に拓かれた学術団体となり、 一人ひとりの患者が正確な医療情報を知り得る社会を作ること」 を挙げた。 適切な薬や検査が患者に届く社会の仕組みを作るためには、 学会側が社会とコミュニケーションを取り、 連携する必要がある。
また、 「がんとの共生」 をサポートする上で正しい情報が届くような社会を作っていくこともJSCOの重大な使命になると考えているという。
最後に吉野氏は、 JSCOの最終到達点は 「一人ひとりのがん患者さん、 そして未来のがん患者とそのご家族に 「More Than Happy」 を届けること。 そのゴールに到達するため、 今後も理事や代議員、 JSCO会員らと協力して、 取り組みを推進していく」 と意気込みを語った。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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