HOKUTO編集部
3日前
下部消化管領域における実臨床の課題を専門医の視点から解説するシリーズです。ぜひご活用ください。
前回ではオキサリプラチン併用レジメンにおける末梢神経障害を避けるための維持療法の移行タイミングについて解説しました。 今回はFOLFOXIRI (レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン+イリノテカン) 療法における維持療法の移行タイミングに関して解説します。
FOLFOXIRI療法もオキサリプラチンの併用レジメンですので、 オキサリプラチンについては末梢神経障害の状況をみながら、 同様のタイミングで休薬することを検討します。 しかしイリノテカンはどうするのか、 実臨床で悩むことも多いと思います。 今回はエビデンスをベースにFOLFOXIRI療法の維持療法を解説します。
FOLFOXIRI療法の有効性を評価したのがTRIBE試験です¹⁾。 この試験においては1次治療においてFOLFOXIRI+BEV (ベバシズマブ) 療法とFOLFIRI (レボホリナート+フルオロウラシル+イリノテカン) +BEV療法を比較した試験になります。
同試験ではFOLFOXIRI療法とFOLFIRI療法ともに12コースで5-FU/LV (フルオロウラシル+レボホリナート) の維持療法へと移行していました。 奏効割合は62% vs 50%、 全生存期間(OS)の中央値は29.8ヵ月 vs 25.8ヵ月となっており、 FOLFOXIRI+BEV群で良好な結果となっていました。
この試験では通常維持療法を行うことがない、 FOLFIRI療法も12コースで維持療法となっていた、 という点が大きな限界となっていました。
TRIBE2試験は1~2次治療でFOLFOX (レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン) +BEV併用療法→FOLFIRI+BEV併用療法とFOLFOXIRI+BEV併用療法→FOLFOXIRI+BEV併用療法を比較した試験になります²⁾。
この試験でもそれぞれの治療が8コースで5-FU /LV+BEV維持療法へ移行していました。 OSの中央値はそれぞれ27.4ヵ月 vs 22.5ヵ月となっており、 FOLFOXIRI+BEV群で良好な結果となっていました。
これらの試験の結果から考えると、 8~12コースでFOLFOXIRI療法は5-FU/LV+BEV維持療法へと移行しており、 原則的には8コースで維持療法への移行を検討すべきと考えられます。 維持療法は基本的には5-FU/LV+BEV療法であり、 イリノテカンを残してのFOLFIRI療法はこれらの試験では行われておらず、 有効性のエビデンスはありません。 8コースまでの効果が乏しい場合には12コースまでは行うことはTRIBE試験の結果からは妥当ですが、 それ以上のFOLFOXIRI療法の有効性の根拠は乏しいです。
1次治療でのFOLFOXIRI療法を8コース行うと、 オキサリプラチンの累積投与量は85×8=680mg/㎡となります。 通常のFOLFOX療法でも一度休薬を検討する段階に入ってきており、 患者さんにおいてはしびれが残存している方も少なくありません。 実際にはFOLFOXIRI療法を8コース行った段階で再導入したFOLFOXIRI療法を8コース完遂できる人は限られていると考えられます。
TRIBE2試験においてはFOLFOXIRI+BEV療法後に5-FU/LV+BEV維持療法で病勢進行した方のうち、 FOLFOXIRI±BEV療法を実際に再導入できていた症例は70%程度となっていました。 FOLFIRI療法で再導入していた症例が10%、 そのほかの治療が行われていた症例が20%程度となっており、 必ずしも再導入できるとは限らないということがわかります。 さらに実際に8コース完遂できる人は実際にはもっと少ないと考えられます。
こうした結果を基に考えると、 1次治療でFOLFOXIRI療法を導入した場合、 8コースで5-FU/LVの維持療法へ移行することを検討しましょう。 維持療法中に末梢神経障害の状態を確認し、 2次治療で可能であればFOLFOXIRI療法の再導入を検討します。 2次治療の場合にはFOLFOXIRI療法ができない症例においてはFOLFIRI療法を検討します。
筆者はFOLFOXIRI療法で導入した症例は8コースで維持療法へと移行しています。 2次治療の場合にはFOLFOXIRI療法が8コースできた場合には維持療法へ移行をしますが、 8コース未満である場合やオキサリプラチンが早期中止になってしまう場合 (末梢神経障害やアレルギーなど) ではFOLFIRI療法へ変更して病勢進行まで継続しています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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