【NEJM】レカネマブ投与、 早期アルツハイマー病の進行抑制に有効 (Clarity AD試験)
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1年前

【NEJM】レカネマブ投与、 早期アルツハイマー病の進行抑制に有効 (Clarity AD試験)

【NEJM】レカネマブ投与、 早期アルツハイマー病の進行抑制に有効 (Clarity AD試験)
van Dyckらは、 50~90歳の早期アルツハイマー病患者を対象に、 レカネマブの有効性と安全性を検討する多施設共同二重盲検第Ⅲ相試験を実施。 その結果、 レカネマブは初期アルツハイマー病におけるアミロイド関連マーカーを減少させ、 18ヵ月後の認知機能および機能の低下をプラセボよりも有意に抑制したが、 有害事象と関連していた。 本研究はNEJM誌において発表された。

📘原著論文

Lecanemab in Early Alzheimer's Disease. N Engl J Med. 2023 Jan 5;388(1):9-21.. PMID: 36449413

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

アルツハイマー病に対する治療薬の待望のpositiveな結果です。 Natureにも取り上げられていますが、 やはりその臨床効果が弱く、 安全性にも懸念があります。 また、 PETまたは髄液検査でアミロイドが検出された早期アルツハイマー病患者が対象となっており、 本邦においては特定の施設のみでの導入になるかと思われます。 年明けのFDAの発表に注目しましょう。

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HDS-R / MMSE / CDR-SBスコア

認知機能の評価法

背景

可溶性および不溶性アミロイドベータ (Aβ) の蓄積により、 アルツハイマー病の病理学的進行が開始または促進される可能性が指摘されている。 レカネマブは、 Aβ可溶性プロトフィブリルに結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、 初期アルツハイマー病患者を対象に検討が行われている。

研究デザイン

対象

陽電子放射断層撮影 (PET) または脳脊髄液検査でアミロイドが検出された50~90歳の早期アルツハイマー病患者1795例 (うち日本人152例*) を対象に、以下の2群に1:1の割合で無作為に割り付けた

*レカネマブの添付文書情報を追記

 ・ レカネマブ群:898名

     レカネマブ10mg/kg 静脈内投与 2週間ごと

プラセボ投与群:897名

主な選択基準は以下のとおりであった。

  1. CDRスコア 0.5~1、 記憶スコア ≧0.5
  2. MMSEスコア 22~30
  3. アミロイドPET又はCSF検査でアミロイドβ病理を示唆する所見が確認される
  4. スクリーニング前12ヵ月以内にTIA、 脳卒中又は痙攣発作の既往を有さない
  5. スクリーニング期の脳MRI検査で、 以下に示すような臨床的意義のある所見なし
  6. 5ヵ所以上の脳微小出血 (最大≦10mm)
  7. 最大径10mm超の脳出血
  8. 脳表ヘモジデリン沈着症
  9. 血管原性脳浮腫
  10. 脳挫傷、 脳軟化、 動脈瘤、 血管奇形又は感染病巣
  11. 多発性ラクナ、 大血管支配領域の脳卒中、 重度の小血管疾患又は白質疾患
  12. 占拠性病変又は脳腫瘍(ただし、 髄膜腫又はくも膜嚢胞と診断される病変で、 最大径が1cm未満であれば除外する必要はないこととした)

主要評価項目

🔢臨床認知症評価尺度 (CDR-SBスコア)の試験開始時点から18ヵ月時点までの変化

記憶、 見当式、 判断力と問題解決、地域社会活動、 家庭生活および趣味・関心、 介護状況の6項目について評価し総合判定を行う。 最小0点~最大18点で、 数値が高いほど障害が大きいことを示す

副次評価項目

PET上のアミロイド蓄積の変化量、 ADAS-cog14、 ADCOMS、 ADCS-MCI-ADLの得点

ADAS-cog14
アルツハイマー病評価尺度の14項目の認知機能下位尺度 (0~90点: 数値が高いほど障害が大きいこ)
ADCOMS
アルツハイマー病複合スコア (0~1.97点: 数値が高いほど障害が大きい)
ADCS-MCI-ADL
アルツハイマー病共同研究の軽度認知障害における日常生活動作評価尺度 (0~53点: 数値が低いほど障害が大きい)

研究結果

CDR-SBスコア [主要評価項目]

試験開始時の🔢CDR-SBスコアの平均は両群とも約3.2であった。 18ヵ月後の調整最小二乗平均はレカネマブ群で有意に低かった。

  • レカネマブ群:3.2 → 1.21
  • プラセボ群: 3.2 → 1.66

差:-0.45、 95%CI -0.67--0.23、 P<0.001

2023/09/26追記:レカネマブ添付文書より以下引用
【NEJM】レカネマブ投与、 早期アルツハイマー病の進行抑制に有効 (Clarity AD試験)

PET上のアミロイド蓄積 [副次評価項目]

698名の参加者を含むサブスタディでは、 プラセボと比較してレカネマブでより大きな脳内アミロイド負荷の減少が認められた (差 -59.1、 5%CI -62.6~-55.6)。

その他の各種スコア [副次評価項目]

ADAS-cog14、 ADCOMS、 ADCS-MCI-ADLの両群間の平均差は、 レカネマブが良好であった。

  • ADAS-cog14:-1.44
(95%CI -2.27--0.61、 P<0.001)
  • ADCOMS:-0.050
(95%CI -0.074--0.027、 P<0.001)
  • ADCS-MCI-ADL:2.0
(95%CI 1.2-2.8、 P<0.001)

安全性評価

レカネマブ群の有害事象は以下であった。

  • インフュージョンリアクション:26.4%
  • 浮腫または滲出液貯留を伴うアミロイド関連画像異常:12.6%

著者らの結論

レカネマブは、 初期アルツハイマー病におけるアミロイド関連マーカーを減少させ、 18ヵ月後の認知機能および機能の低下をプラセボよりも抑制したが、 有害事象と関連していた。 早期アルツハイマー病におけるレカネマブの有効性と安全性を明らかにするため、 より長期の臨床試験が必要である。

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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