薬効分類 | 抗真菌薬 > トリアゾール系抗菌薬 |
一般名 | ポサコナゾール注射液 |
薬価 | 27079円 |
メーカー | MSD |
最終更新 | 2024年08月改訂(第9版) |
通常、成人にはポサコナゾールとして初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は300mgを1日1回、中心静脈ラインから約90分間かけて緩徐に点滴静注する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉錠剤と静注液は医師の判断で切り替えて使用することができる。
ただし、臨床試験において静注液の長期投与の経験は限られており、静注液の添加剤スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムは腎機能障害のある患者で蓄積し、腎機能の悪化等を引き起こすおそれがあることから、静注液の投与は最小限の期間とし、経口投与可能な患者には、錠剤を選択すること〔9.2.1参照〕。
7.2. 〈造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防〉投与期間は好中球減少症又は免疫抑制からの回復に基づき設定すること。急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群の患者では、好中球減少症の発症が予測される数日前に本剤による予防を開始し、好中球数が500cells/mm3以上に増加後、7日間程度投与を継続すること。
7.3. 〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
1). 造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防。
2). 次記の真菌症の治療:侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉本剤を投与する前に、原因真菌を分離及び同定するための真菌培養、病理組織学的検査等の他の検査のための試料を採取すること(培養等の検査の結果が得られる前に薬物療法を開始する場合でも、検査の結果が明らかになった時点でそれに応じた抗真菌剤による治療を再検討すること)。
5.2. 〈真菌症(フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉他の抗真菌剤が無効あるいは忍容性に問題があると考えられる場合に本剤の使用を考慮すること。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 肝機能障害:重度肝機能異常(0.6%)、胆汁うっ滞(0.4%)、肝毒性(0.2%)、黄疸(0.1%)、胆汁うっ滞性肝炎、肝不全、肝炎(いずれも頻度不明)があらわれることがある〔8.1、9.1.2参照〕。
11.1.2. 溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(いずれも頻度不明)。
11.1.3. QT延長(1.4%)、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)(頻度不明)〔8.2参照〕。
11.1.4. 副腎機能不全(0.1%)。
11.1.5. 低カリウム血症(4.7%)。
11.1.6. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens−Johnson症候群)(頻度不明)。
11.1.7. 脳血管発作(頻度不明)。
11.1.8. 急性腎障害(0.4%)、腎不全(0.2%)。
11.1.9. 汎血球減少症(0.1%)、白血球減少症(頻度不明)。
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(5%未満)貧血、発熱性好中球減少症、好中球減少症、脾臓梗塞、血小板減少症、骨髄機能不全、(頻度不明)好酸球増加症、リンパ節症、凝血異常、出血。
2). 心臓障害:(5%未満)心房粗動、徐脈、洞性徐脈、上室性期外収縮、頻脈、(頻度不明)心電図異常、動悸。
3). 耳及び迷路障害:(頻度不明)聴力障害。
4). 内分泌障害:(頻度不明)血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン減少、偽アルドステロン症。
5). 眼障害:(5%未満)複視、羞明、霧視、視力低下、脈絡膜硬化症、光視症、(頻度不明)暗点。
6). 胃腸障害:(5%以上)悪心、下痢、(5%未満)腹部不快感、腹部膨満、腹痛、肛門直腸不快感、便秘、口内乾燥、消化不良、小腸炎、心窩部不快感、おくび、軟便、鼓腸、胃炎、胃食道逆流性疾患、口唇乾燥、口腔腫脹、口腔内潰瘍形成、口腔障害、口腔知覚不全、レッチング、口内炎、嘔吐、腹部圧痛、腹水、胃腸障害、(頻度不明)膵炎、口腔浮腫、胃腸出血、イレウス。
7). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(5%未満)無力症、胸部不快感、胸痛、悪寒、疲労、びくびく感、注入部位疼痛、注入部位静脈炎、注入部位血栓、倦怠感、粘膜炎症、浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、発熱、口渇、歩行障害、(頻度不明)疼痛、舌浮腫、顔面浮腫。
8). 肝胆道系障害:(5%未満)肝機能異常、高ビリルビン血症、黄疸眼、(頻度不明)肝圧痛、固定姿勢保持困難。
9). 免疫系障害:(5%未満)移植片対宿主病、(頻度不明)過敏症。
10). 感染症及び寄生虫症:(5%未満)アスペルギルス感染、細菌感染、蜂巣炎、毛包炎、歯肉膿瘍、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、肺真菌症、コリネバクテリウム感染、単純ヘルペス。
11). 傷害、中毒及び処置合併症:(5%未満)皮膚擦過傷。
12). 臨床検査:(5%以上)ALT増加、(5%未満)AST増加、血中Al−P増加、血中ビリルビン増加、血中クレアチニン増加、血中LDH増加、血中マグネシウム減少、血中リン減少、血中カリウム減少、CRP増加、胸部X線異常、心電図QT間隔異常、心電図ST部分上昇、心電図異常T波、心電図T波逆転、γ−GTP増加、肝酵素上昇、肝機能検査異常、肝機能検査値上昇、血小板数減少、QRS軸異常、トランスアミナーゼ上昇、体重減少、白血球数減少、血圧上昇、ヘモグロビン減少、後骨髄球数増加、血小板数増加。
13). 代謝及び栄養障害:(5%未満)食欲減退、水分過負荷、低カルシウム血症、低血糖、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、マグネシウム欠乏、高カリウム血症、食欲亢進、(頻度不明)電解質失調、食欲不振、高血糖。
14). 筋骨格系及び結合組織障害:(5%未満)関節痛、関節炎、四肢腫瘤、筋骨格痛、頚部痛、四肢痛、背部痛。
15). 良性、悪性及び詳細不明の新生物(嚢胞及びポリープを含む):(5%未満)骨髄異形成症候群。
16). 神経系障害:(5%未満)失語症、浮動性めまい、味覚不全、頭痛、灼熱感、認知障害、意識レベル低下、脳症、痙攣発作、傾眠、味覚障害、(頻度不明)錯感覚、ニューロパチー、感覚鈍麻、振戦、末梢性ニューロパチー、失神。
17). 精神障害:(5%未満)異常な夢、錯乱状態、不眠症、睡眠障害、幻覚、幻視、悪夢、(頻度不明)精神病性障害、うつ病。
18). 腎及び尿路障害:(5%未満)慢性腎臓病、緊張性膀胱、腎機能障害、(頻度不明)腎尿細管性アシドーシス、間質性腎炎。
19). 生殖系及び乳房障害:(5%未満)骨盤液貯留、(頻度不明)月経障害、乳房痛。
20). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(5%未満)咳嗽、鼻出血、しゃっくり、鼻閉、口腔咽頭痛、胸水、胸膜痛、湿性咳嗽、呼吸不全、頻呼吸、鼻粘膜障害、(頻度不明)肺高血圧症。
21). 皮膚及び皮下組織障害:(5%未満)皮膚炎、ざ瘡様皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、皮膚乾燥、紅斑、点状出血、皮膚そう痒症、発疹、斑状皮疹、斑状丘疹状皮疹、麻疹様発疹、そう痒性皮疹、皮膚病変、中毒性皮疹、じん麻疹、寝汗、(頻度不明)脱毛症、小水疱性皮疹。
22). 血管障害:(5%未満)高血圧、低血圧、起立性低血圧、血栓性静脈炎、血管炎。
2.1. エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン投与中、ジヒドロエルゴタミン投与中、メチルエルゴメトリン投与中、エルゴメトリン投与中、シンバスタチン投与中、アトルバスタチン投与中、ピモジド投与中、キニジン投与中、ベネトクラクス<再発又は難治性の慢性リンパ性白血病の用量漸増期>投与中(ベネトクラクス<再発又は難治性の小リンパ球性リンパ腫の用量漸増期>投与中を含む)、スボレキサント投与中、フィネレノン投与中、アゼルニジピン投与中、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン投与中、ルラシドン塩酸塩投与中、ブロナンセリン投与中、トリアゾラム投与中、リバーロキサバン投与中の患者〔10.1参照〕。
2.2. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
8.1. 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔9.1.2、11.1.1参照〕。
8.2. QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)があらわれることがあるので、本剤の投与前及び投与中は定期的に心電図検査及び電解質検査(カリウム、マグネシウム、カルシウム等)を行い、必要に応じて電解質を補正すること〔11.1.3参照〕。
8.3. 本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること〔10.2参照〕。
8.4. 本剤の投与に際しては、アレルギー歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 他のアゾール系抗真菌剤に対し薬物過敏症の既往歴のある患者:類似の化学構造を有しており、交差過敏反応を起こすおそれがある。
9.1.2. 重篤な基礎疾患(血液悪性腫瘍等)のある患者:重度肝機能障害が発現し、致死的転帰をたどるおそれがある〔8.1、11.1.1参照〕。
9.1.3. 体重120kgを超える患者:本剤の投与中は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること〔16.6.1参照〕。
(腎機能障害患者)
9.2.1. 中等度以上の腎機能障害(eGFR<50mL/min/1.73u)のある患者:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、投与する場合には血清クレアチニン値を観察し、血清クレアチニン値上昇が認められた場合には錠剤への切り替えを考慮すること(添加剤スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムが蓄積し、腎機能障害を悪化させるおそれがある)〔7.1参照〕。
9.2.2. 重度腎機能障害(eGFR<20mL/min/1.73u)のある患者:本剤の投与中は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(本剤の曝露量が大きくばらつくおそれがある)〔16.6.2参照〕。
(生殖能を有する者)
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
ポサコナゾールは主にUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1A4を介して代謝され、P−糖蛋白(P−gp)の基質である。また、CYP3A4を強く阻害する。腸管ではP−gpを阻害する可能性がある〔16.4、16.7.1参照〕。
10.1. 併用禁忌:
1). エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン<クリアミン配合錠>、ジヒドロエルゴタミン、メチルエルゴメトリン<パルタンM>、エルゴメトリン〔2.1参照〕[麦角中毒を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
2). シンバスタチン<リポバス>、アトルバスタチン<リピトール>〔2.1、16.7.2参照〕[横紋筋融解症を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
3). ピモジド<オーラップ>、キニジン(硫酸キニジン)〔2.1参照〕[QT延長、心室頻拍<Torsade de pointesを含む>等の心血管系の重篤な副作用を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
4). ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉<ベネクレクスタ>〔2.1参照〕[腫瘍崩壊症候群の発現を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
5). スボレキサント<ベルソムラ>〔2.1参照〕[スボレキサントの作用を著しく増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
6). フィネレノン<ケレンディア>〔2.1参照〕[フィネレノンの作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
7). アゼルニジピン<カルブロック>、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<レザルタス配合錠>〔2.1参照〕[アゼルニジピンの作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
8). ルラシドン塩酸塩<ラツーダ>、ブロナンセリン<ロナセン>〔2.1参照〕[これらの薬剤の作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇すると予測される)]。
9). トリアゾラム<ハルシオン>〔2.1参照〕[トリアゾラムの作用の増強及び作用時間の延長を起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇すると予測される)]。
10). リバーロキサバン<イグザレルト>〔2.1参照〕[リバーロキサバンの抗凝固作用を増強させ出血の危険性を増大させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、またP−gpも阻害される可能性があるため、リバーロキサバンの血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
10.2. 併用注意:
1). リファブチン〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、リファブチンとの併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無、全血球数の推移及びリファブチンの血漿中濃度上昇に伴う副作用<ぶどう膜炎等>を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(リファブチンの併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するリファブチンの誘導作用が関与している可能性がある)、ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、リファブチンの血漿中濃度が上昇する)]。
2). フェニトイン〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、フェニトインとの併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(フェニトインの併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するフェニトインの誘導作用が関与している可能性がある))]。
3). ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン等)[神経毒性、痙攣発作、末梢性ニューロパチー、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、麻痺性イレウス等の重篤な副作用を引き起こすおそれがあるので、ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤の投与を受けている患者は、他の抗真菌剤を使用できない場合を除き、ポサコナゾールを含むアゾール系抗真菌剤の併用を避けること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
4). ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の維持投与期、急性骨髄性白血病〉[併用する場合は、ベネトクラクスを減量するとともに、患者の状態を慎重に観察し、ベネトクラクスに関連した副作用発現に十分に注意すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
5). 免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)〔16.7.2参照〕[併用する場合は、これらの薬剤を減量することを考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分に注意し、併用中及び中止時には、併用薬剤の血中濃度をモニタリングし、これらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇する)]。
6). CYP3A4によって代謝されるベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラム、アルプラゾラム等)〔16.7.2参照〕[鎮静の延長や呼吸抑制のおそれがあるため、CYP3A4によって代謝されるベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラム、アルプラゾラム等)とポサコナゾールとの併用は、治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き避け、併用する場合には、これらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
7). CYP3A4によって代謝されるカルシウム拮抗剤(ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン等)[併用する場合は、これらの薬剤に関連した副作用発現に十分に注意し、また、必要に応じてこれらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
8). CYP3A4によって代謝される抗HIV剤(アタザナビル等)〔16.7.2参照〕[併用する場合は、これらの薬剤に関連した副作用発現に十分に注意すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
9). 抗HIV剤(エファビレンツ、ホスアンプレナビル)〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、これらの薬剤との併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(これらの薬剤の併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するこれらの薬剤の誘導作用が関与している可能性がある))]。
10). ジゴキシン[併用する場合は、併用開始時及び中止時にジゴキシンの血漿中濃度をモニタリングすること(ポサコナゾールの併用により、ジゴキシンの血漿中濃度が上昇するおそれがある(ポサコナゾールによるP−gpの阻害作用が関与している可能性がある))]。
11). ワルファリン〔8.3参照〕[ワルファリンの作用が増強し著しいINR上昇があらわれることがある(アゾール系抗真菌剤でINR上昇が報告されている)]。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ラットにおいて、臨床曝露量(AUC)と同程度の曝露量で、分娩障害、出生仔数減少、生存率低下、催奇形性が認められ、ウサギでは、臨床曝露量(AUC)を上回る曝露量で、吸収胚増加及び胎仔数減少が認められた)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ラットで乳汁中への移行が報告されている)。
小児等を対象とした国内臨床試験は実施していない。
過量投与時、ポサコナゾールは血液透析で除去されない〔16.6.2参照〕。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤調製時の注意
14.1.1. 本剤は静脈内投与の前に希釈すること。
14.1.2. バイアルを室温に戻した後、バイアルから16.7mL抜き取り、150〜283mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液が入った点滴バッグ又はボトルに添加し、最終濃度を1〜2mg/mLとする。
14.1.3. 次の希釈液とは配合変化を起こすので使用しないこと:乳酸リンゲル液、5%ブドウ糖加乳酸リンゲル液、4.2%炭酸水素ナトリウム注射液。
14.1.4. 本剤は保存剤を含まないため、希釈後は速やかに使用すること(速やかに使用しない場合は、冷蔵保存(2〜8℃)し、24時間以内に使用すること)。1回使い切りであり、残液は廃棄すること。
14.1.5. 本剤を希釈後、投与する前に目視で異物がないか確認すること(希釈後の溶液は無色〜微黄色であり、溶液に異物や変色があった場合は使用しないこと)。
14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 本剤の急速静注は行わないこと。
14.2.2. 治療上やむを得ないと判断される場合を除き、他の薬剤<生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液を除く>を同一の輸液ラインを通して同時に注入しないこと(やむを得ず他の薬剤を同一の輸液ラインから同時注入する場合には、配合変化を起こさない薬剤を用いること)。
15.1. 臨床使用に基づく情報
ポサコナゾールを末梢静脈内に単回又は反復投与したときの安全性について、次の臨床試験成績が報告されている。
・ 外国人健康成人9例にポサコナゾール静注液200mgを90分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、注入部位反応が67%(6/9例)で認められた(P04985試験)。
・ 外国人健康成人にポサコナゾール静注液(50、100、200、250及び300mg用量:各9例)を30分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が4%(2/45例)、注入部位反応が16%(7/45例)で認められた(P06356試験パート1)。
・ 外国人健康成人13例にポサコナゾール静注液300mgを30分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が7%(1/13例)で認められた(P07783試験パート1)。
・ 外国人健康成人5例にポサコナゾール静注液100mgを30分間かけて1日1回(初日のみ1日2回)、10日間反復末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が60%(3/5例)、注入部位反応が80%(4/5例)で認められた(P06356試験パート2)。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 幼若イヌの生後2〜8週に静脈内投与した試験において、側脳室拡張の発現頻度の増加がみられたが、5ヵ月の休薬後には本所見の発現頻度の増加は認められなかった。本所見がみられたイヌでは、神経系、行動又は発達に異常は認められなかった。
また、幼若イヌの生後4日〜9ヵ月に経口投与した試験では、脳に同様の所見は観察されなかった。
15.2.2. ラットに臨床曝露量(AUC)の2.4倍以上の曝露量で投与したところ、副腎皮質腺腫及び副腎癌並びに褐色細胞腫が増加した。ラットの副腎皮質腫瘍は、副腎皮質ステロイドの慢性的な産生抑制に続く内分泌系のかく乱と整合するものである。また、褐色細胞腫の増加は、カルシウムホメオスタシスの変化に続発するラット特有の現象であると考えられている。ポサコナゾールを投与したヒトでは、カルシウムホメオスタシスの変化や副腎腫瘍は報告されていない。
(保管上の注意)
2〜8℃。
薬効分類 | 抗真菌薬 > トリアゾール系抗菌薬 |
一般名 | ポサコナゾール注射液 |
薬価 | 27079円 |
メーカー | MSD |
最終更新 | 2024年08月改訂(第9版) |
通常、成人にはポサコナゾールとして初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は300mgを1日1回、中心静脈ラインから約90分間かけて緩徐に点滴静注する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉錠剤と静注液は医師の判断で切り替えて使用することができる。
ただし、臨床試験において静注液の長期投与の経験は限られており、静注液の添加剤スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムは腎機能障害のある患者で蓄積し、腎機能の悪化等を引き起こすおそれがあることから、静注液の投与は最小限の期間とし、経口投与可能な患者には、錠剤を選択すること〔9.2.1参照〕。
7.2. 〈造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防〉投与期間は好中球減少症又は免疫抑制からの回復に基づき設定すること。急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群の患者では、好中球減少症の発症が予測される数日前に本剤による予防を開始し、好中球数が500cells/mm3以上に増加後、7日間程度投与を継続すること。
7.3. 〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
1). 造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防。
2). 次記の真菌症の治療:侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉本剤を投与する前に、原因真菌を分離及び同定するための真菌培養、病理組織学的検査等の他の検査のための試料を採取すること(培養等の検査の結果が得られる前に薬物療法を開始する場合でも、検査の結果が明らかになった時点でそれに応じた抗真菌剤による治療を再検討すること)。
5.2. 〈真菌症(フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉他の抗真菌剤が無効あるいは忍容性に問題があると考えられる場合に本剤の使用を考慮すること。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 肝機能障害:重度肝機能異常(0.6%)、胆汁うっ滞(0.4%)、肝毒性(0.2%)、黄疸(0.1%)、胆汁うっ滞性肝炎、肝不全、肝炎(いずれも頻度不明)があらわれることがある〔8.1、9.1.2参照〕。
11.1.2. 溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(いずれも頻度不明)。
11.1.3. QT延長(1.4%)、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)(頻度不明)〔8.2参照〕。
11.1.4. 副腎機能不全(0.1%)。
11.1.5. 低カリウム血症(4.7%)。
11.1.6. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens−Johnson症候群)(頻度不明)。
11.1.7. 脳血管発作(頻度不明)。
11.1.8. 急性腎障害(0.4%)、腎不全(0.2%)。
11.1.9. 汎血球減少症(0.1%)、白血球減少症(頻度不明)。
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(5%未満)貧血、発熱性好中球減少症、好中球減少症、脾臓梗塞、血小板減少症、骨髄機能不全、(頻度不明)好酸球増加症、リンパ節症、凝血異常、出血。
2). 心臓障害:(5%未満)心房粗動、徐脈、洞性徐脈、上室性期外収縮、頻脈、(頻度不明)心電図異常、動悸。
3). 耳及び迷路障害:(頻度不明)聴力障害。
4). 内分泌障害:(頻度不明)血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン減少、偽アルドステロン症。
5). 眼障害:(5%未満)複視、羞明、霧視、視力低下、脈絡膜硬化症、光視症、(頻度不明)暗点。
6). 胃腸障害:(5%以上)悪心、下痢、(5%未満)腹部不快感、腹部膨満、腹痛、肛門直腸不快感、便秘、口内乾燥、消化不良、小腸炎、心窩部不快感、おくび、軟便、鼓腸、胃炎、胃食道逆流性疾患、口唇乾燥、口腔腫脹、口腔内潰瘍形成、口腔障害、口腔知覚不全、レッチング、口内炎、嘔吐、腹部圧痛、腹水、胃腸障害、(頻度不明)膵炎、口腔浮腫、胃腸出血、イレウス。
7). 一般・全身障害及び投与部位の状態:(5%未満)無力症、胸部不快感、胸痛、悪寒、疲労、びくびく感、注入部位疼痛、注入部位静脈炎、注入部位血栓、倦怠感、粘膜炎症、浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、発熱、口渇、歩行障害、(頻度不明)疼痛、舌浮腫、顔面浮腫。
8). 肝胆道系障害:(5%未満)肝機能異常、高ビリルビン血症、黄疸眼、(頻度不明)肝圧痛、固定姿勢保持困難。
9). 免疫系障害:(5%未満)移植片対宿主病、(頻度不明)過敏症。
10). 感染症及び寄生虫症:(5%未満)アスペルギルス感染、細菌感染、蜂巣炎、毛包炎、歯肉膿瘍、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、肺真菌症、コリネバクテリウム感染、単純ヘルペス。
11). 傷害、中毒及び処置合併症:(5%未満)皮膚擦過傷。
12). 臨床検査:(5%以上)ALT増加、(5%未満)AST増加、血中Al−P増加、血中ビリルビン増加、血中クレアチニン増加、血中LDH増加、血中マグネシウム減少、血中リン減少、血中カリウム減少、CRP増加、胸部X線異常、心電図QT間隔異常、心電図ST部分上昇、心電図異常T波、心電図T波逆転、γ−GTP増加、肝酵素上昇、肝機能検査異常、肝機能検査値上昇、血小板数減少、QRS軸異常、トランスアミナーゼ上昇、体重減少、白血球数減少、血圧上昇、ヘモグロビン減少、後骨髄球数増加、血小板数増加。
13). 代謝及び栄養障害:(5%未満)食欲減退、水分過負荷、低カルシウム血症、低血糖、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、マグネシウム欠乏、高カリウム血症、食欲亢進、(頻度不明)電解質失調、食欲不振、高血糖。
14). 筋骨格系及び結合組織障害:(5%未満)関節痛、関節炎、四肢腫瘤、筋骨格痛、頚部痛、四肢痛、背部痛。
15). 良性、悪性及び詳細不明の新生物(嚢胞及びポリープを含む):(5%未満)骨髄異形成症候群。
16). 神経系障害:(5%未満)失語症、浮動性めまい、味覚不全、頭痛、灼熱感、認知障害、意識レベル低下、脳症、痙攣発作、傾眠、味覚障害、(頻度不明)錯感覚、ニューロパチー、感覚鈍麻、振戦、末梢性ニューロパチー、失神。
17). 精神障害:(5%未満)異常な夢、錯乱状態、不眠症、睡眠障害、幻覚、幻視、悪夢、(頻度不明)精神病性障害、うつ病。
18). 腎及び尿路障害:(5%未満)慢性腎臓病、緊張性膀胱、腎機能障害、(頻度不明)腎尿細管性アシドーシス、間質性腎炎。
19). 生殖系及び乳房障害:(5%未満)骨盤液貯留、(頻度不明)月経障害、乳房痛。
20). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(5%未満)咳嗽、鼻出血、しゃっくり、鼻閉、口腔咽頭痛、胸水、胸膜痛、湿性咳嗽、呼吸不全、頻呼吸、鼻粘膜障害、(頻度不明)肺高血圧症。
21). 皮膚及び皮下組織障害:(5%未満)皮膚炎、ざ瘡様皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、皮膚乾燥、紅斑、点状出血、皮膚そう痒症、発疹、斑状皮疹、斑状丘疹状皮疹、麻疹様発疹、そう痒性皮疹、皮膚病変、中毒性皮疹、じん麻疹、寝汗、(頻度不明)脱毛症、小水疱性皮疹。
22). 血管障害:(5%未満)高血圧、低血圧、起立性低血圧、血栓性静脈炎、血管炎。
2.1. エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン投与中、ジヒドロエルゴタミン投与中、メチルエルゴメトリン投与中、エルゴメトリン投与中、シンバスタチン投与中、アトルバスタチン投与中、ピモジド投与中、キニジン投与中、ベネトクラクス<再発又は難治性の慢性リンパ性白血病の用量漸増期>投与中(ベネトクラクス<再発又は難治性の小リンパ球性リンパ腫の用量漸増期>投与中を含む)、スボレキサント投与中、フィネレノン投与中、アゼルニジピン投与中、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン投与中、ルラシドン塩酸塩投与中、ブロナンセリン投与中、トリアゾラム投与中、リバーロキサバン投与中の患者〔10.1参照〕。
2.2. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
8.1. 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること〔9.1.2、11.1.1参照〕。
8.2. QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)があらわれることがあるので、本剤の投与前及び投与中は定期的に心電図検査及び電解質検査(カリウム、マグネシウム、カルシウム等)を行い、必要に応じて電解質を補正すること〔11.1.3参照〕。
8.3. 本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること〔10.2参照〕。
8.4. 本剤の投与に際しては、アレルギー歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 他のアゾール系抗真菌剤に対し薬物過敏症の既往歴のある患者:類似の化学構造を有しており、交差過敏反応を起こすおそれがある。
9.1.2. 重篤な基礎疾患(血液悪性腫瘍等)のある患者:重度肝機能障害が発現し、致死的転帰をたどるおそれがある〔8.1、11.1.1参照〕。
9.1.3. 体重120kgを超える患者:本剤の投与中は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること〔16.6.1参照〕。
(腎機能障害患者)
9.2.1. 中等度以上の腎機能障害(eGFR<50mL/min/1.73u)のある患者:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、投与する場合には血清クレアチニン値を観察し、血清クレアチニン値上昇が認められた場合には錠剤への切り替えを考慮すること(添加剤スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムが蓄積し、腎機能障害を悪化させるおそれがある)〔7.1参照〕。
9.2.2. 重度腎機能障害(eGFR<20mL/min/1.73u)のある患者:本剤の投与中は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(本剤の曝露量が大きくばらつくおそれがある)〔16.6.2参照〕。
(生殖能を有する者)
妊娠可能な女性:妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
ポサコナゾールは主にUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1A4を介して代謝され、P−糖蛋白(P−gp)の基質である。また、CYP3A4を強く阻害する。腸管ではP−gpを阻害する可能性がある〔16.4、16.7.1参照〕。
10.1. 併用禁忌:
1). エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン<クリアミン配合錠>、ジヒドロエルゴタミン、メチルエルゴメトリン<パルタンM>、エルゴメトリン〔2.1参照〕[麦角中毒を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
2). シンバスタチン<リポバス>、アトルバスタチン<リピトール>〔2.1、16.7.2参照〕[横紋筋融解症を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
3). ピモジド<オーラップ>、キニジン(硫酸キニジン)〔2.1参照〕[QT延長、心室頻拍<Torsade de pointesを含む>等の心血管系の重篤な副作用を引き起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
4). ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉<ベネクレクスタ>〔2.1参照〕[腫瘍崩壊症候群の発現を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
5). スボレキサント<ベルソムラ>〔2.1参照〕[スボレキサントの作用を著しく増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
6). フィネレノン<ケレンディア>〔2.1参照〕[フィネレノンの作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
7). アゼルニジピン<カルブロック>、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<レザルタス配合錠>〔2.1参照〕[アゼルニジピンの作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
8). ルラシドン塩酸塩<ラツーダ>、ブロナンセリン<ロナセン>〔2.1参照〕[これらの薬剤の作用を増強させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇すると予測される)]。
9). トリアゾラム<ハルシオン>〔2.1参照〕[トリアゾラムの作用の増強及び作用時間の延長を起こすおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇すると予測される)]。
10). リバーロキサバン<イグザレルト>〔2.1参照〕[リバーロキサバンの抗凝固作用を増強させ出血の危険性を増大させるおそれがある(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、またP−gpも阻害される可能性があるため、リバーロキサバンの血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
10.2. 併用注意:
1). リファブチン〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、リファブチンとの併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無、全血球数の推移及びリファブチンの血漿中濃度上昇に伴う副作用<ぶどう膜炎等>を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(リファブチンの併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するリファブチンの誘導作用が関与している可能性がある)、ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、リファブチンの血漿中濃度が上昇する)]。
2). フェニトイン〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、フェニトインとの併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(フェニトインの併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するフェニトインの誘導作用が関与している可能性がある))]。
3). ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン等)[神経毒性、痙攣発作、末梢性ニューロパチー、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、麻痺性イレウス等の重篤な副作用を引き起こすおそれがあるので、ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍剤の投与を受けている患者は、他の抗真菌剤を使用できない場合を除き、ポサコナゾールを含むアゾール系抗真菌剤の併用を避けること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
4). ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の維持投与期、急性骨髄性白血病〉[併用する場合は、ベネトクラクスを減量するとともに、患者の状態を慎重に観察し、ベネトクラクスに関連した副作用発現に十分に注意すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
5). 免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)〔16.7.2参照〕[併用する場合は、これらの薬剤を減量することを考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分に注意し、併用中及び中止時には、併用薬剤の血中濃度をモニタリングし、これらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血中濃度が上昇する)]。
6). CYP3A4によって代謝されるベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラム、アルプラゾラム等)〔16.7.2参照〕[鎮静の延長や呼吸抑制のおそれがあるため、CYP3A4によって代謝されるベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラム、アルプラゾラム等)とポサコナゾールとの併用は、治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き避け、併用する場合には、これらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
7). CYP3A4によって代謝されるカルシウム拮抗剤(ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン等)[併用する場合は、これらの薬剤に関連した副作用発現に十分に注意し、また、必要に応じてこれらの薬剤の用量を調節すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
8). CYP3A4によって代謝される抗HIV剤(アタザナビル等)〔16.7.2参照〕[併用する場合は、これらの薬剤に関連した副作用発現に十分に注意すること(ポサコナゾールの併用により、CYP3A4が阻害され、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇すると予測される)]。
9). 抗HIV剤(エファビレンツ、ホスアンプレナビル)〔16.7.2参照〕[治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、これらの薬剤との併用は避け、やむを得ず併用する場合は、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察すること(これらの薬剤の併用により、ポサコナゾールのクリアランスが亢進し、ポサコナゾールの血漿中濃度が低下する(ポサコナゾールが基質となるUGT1A4及び/又はP−gpに対するこれらの薬剤の誘導作用が関与している可能性がある))]。
10). ジゴキシン[併用する場合は、併用開始時及び中止時にジゴキシンの血漿中濃度をモニタリングすること(ポサコナゾールの併用により、ジゴキシンの血漿中濃度が上昇するおそれがある(ポサコナゾールによるP−gpの阻害作用が関与している可能性がある))]。
11). ワルファリン〔8.3参照〕[ワルファリンの作用が増強し著しいINR上昇があらわれることがある(アゾール系抗真菌剤でINR上昇が報告されている)]。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ラットにおいて、臨床曝露量(AUC)と同程度の曝露量で、分娩障害、出生仔数減少、生存率低下、催奇形性が認められ、ウサギでは、臨床曝露量(AUC)を上回る曝露量で、吸収胚増加及び胎仔数減少が認められた)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ラットで乳汁中への移行が報告されている)。
小児等を対象とした国内臨床試験は実施していない。
過量投与時、ポサコナゾールは血液透析で除去されない〔16.6.2参照〕。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤調製時の注意
14.1.1. 本剤は静脈内投与の前に希釈すること。
14.1.2. バイアルを室温に戻した後、バイアルから16.7mL抜き取り、150〜283mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液が入った点滴バッグ又はボトルに添加し、最終濃度を1〜2mg/mLとする。
14.1.3. 次の希釈液とは配合変化を起こすので使用しないこと:乳酸リンゲル液、5%ブドウ糖加乳酸リンゲル液、4.2%炭酸水素ナトリウム注射液。
14.1.4. 本剤は保存剤を含まないため、希釈後は速やかに使用すること(速やかに使用しない場合は、冷蔵保存(2〜8℃)し、24時間以内に使用すること)。1回使い切りであり、残液は廃棄すること。
14.1.5. 本剤を希釈後、投与する前に目視で異物がないか確認すること(希釈後の溶液は無色〜微黄色であり、溶液に異物や変色があった場合は使用しないこと)。
14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 本剤の急速静注は行わないこと。
14.2.2. 治療上やむを得ないと判断される場合を除き、他の薬剤<生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液を除く>を同一の輸液ラインを通して同時に注入しないこと(やむを得ず他の薬剤を同一の輸液ラインから同時注入する場合には、配合変化を起こさない薬剤を用いること)。
15.1. 臨床使用に基づく情報
ポサコナゾールを末梢静脈内に単回又は反復投与したときの安全性について、次の臨床試験成績が報告されている。
・ 外国人健康成人9例にポサコナゾール静注液200mgを90分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、注入部位反応が67%(6/9例)で認められた(P04985試験)。
・ 外国人健康成人にポサコナゾール静注液(50、100、200、250及び300mg用量:各9例)を30分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が4%(2/45例)、注入部位反応が16%(7/45例)で認められた(P06356試験パート1)。
・ 外国人健康成人13例にポサコナゾール静注液300mgを30分間かけて単回末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が7%(1/13例)で認められた(P07783試験パート1)。
・ 外国人健康成人5例にポサコナゾール静注液100mgを30分間かけて1日1回(初日のみ1日2回)、10日間反復末梢静脈内投与したとき、血栓性静脈炎が60%(3/5例)、注入部位反応が80%(4/5例)で認められた(P06356試験パート2)。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 幼若イヌの生後2〜8週に静脈内投与した試験において、側脳室拡張の発現頻度の増加がみられたが、5ヵ月の休薬後には本所見の発現頻度の増加は認められなかった。本所見がみられたイヌでは、神経系、行動又は発達に異常は認められなかった。
また、幼若イヌの生後4日〜9ヵ月に経口投与した試験では、脳に同様の所見は観察されなかった。
15.2.2. ラットに臨床曝露量(AUC)の2.4倍以上の曝露量で投与したところ、副腎皮質腺腫及び副腎癌並びに褐色細胞腫が増加した。ラットの副腎皮質腫瘍は、副腎皮質ステロイドの慢性的な産生抑制に続く内分泌系のかく乱と整合するものである。また、褐色細胞腫の増加は、カルシウムホメオスタシスの変化に続発するラット特有の現象であると考えられている。ポサコナゾールを投与したヒトでは、カルシウムホメオスタシスの変化や副腎腫瘍は報告されていない。
(保管上の注意)
2〜8℃。
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