薬効分類 | 麻薬性オピオイド |
一般名 | メサドン塩酸塩錠 |
薬価 | 184.8円 |
メーカー | 帝國製薬 |
最終更新 | 2024年03月改訂(第1版) |
本剤は、他の強オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。
通常、成人に対し初回投与量は本剤投与前に使用していた強オピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、メサドン塩酸塩として1回5〜15mgを1日3回経口投与する。
その後の投与量は患者の症状や状態により適宜増減する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 初回投与量
7.1.1. 本剤の薬物動態は個人差が大きく、他のオピオイド鎮痛剤との交差耐性が不完全であるため、本剤と他のオピオイド鎮痛剤の等鎮痛比は確立していない〔1.3参照〕。
7.1.2. 次記換算は、初回投与量を選択する際の目安であり、換算比は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の投与量により大幅に異なる(患者の症状や状態、オピオイド耐性の程度、併用薬剤を考慮して適切な用量を選択し、過量投与にならないよう注意すること)〔1.3参照〕。
7.1.3. 経口モルヒネ量60mg/日未満のオピオイド鎮痛剤からの切り替えは推奨されない。
[投与量換算(本剤初回投与時の目安)]
1). モルヒネ経口剤60≦〜≦160mg/日:メサドン塩酸塩15mg/日(5mg/回×3回)。
2). モルヒネ経口剤160<〜≦390mg/日:メサドン塩酸塩30mg/日(10mg/回×3回)。
3). モルヒネ経口剤390<mg/日:メサドン塩酸塩45mg/日(15mg/回×3回)。
7.2. 初回投与時
7.2.1. 本剤投与後少なくとも7日間は増量を行わないこと(本剤の血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要することから、7日未満の増量は過量投与となる可能性がある)〔1.3、7.4.1、16.1.2参照〕。
7.2.2. フェンタニル貼付剤から本剤へ変更する場合には、フェンタニル貼付剤剥離後にフェンタニルの血中濃度が50%に減少するまで17時間以上かかることから、剥離直後の本剤の使用は避け、本剤の使用を開始するまでに、フェンタニルの血中濃度が適切な濃度に低下するまでの時間をあけるとともに、本剤の低用量から投与することを考慮すること。
7.3. 疼痛増強時
本剤服用中に疼痛が増強した場合や鎮痛効果が得られている患者で突発性の疼痛が発現した場合は、直ちに速効性のオピオイド鎮痛剤の臨時追加投与(レスキュー薬の投与)を行い鎮痛を図ること。
7.4. 増量
7.4.1. 本剤初回投与後及び増量後少なくとも7日間は増量を行わないこと(呼吸抑制を発現するおそれがある)〔1.3、7.2.1、16.1.2参照〕。
7.4.2. 鎮痛効果が得られるまで患者毎に用量調整を行うこと。鎮痛効果が得られない場合は、1日あたり本剤1日投与量の50%、1回あたり5mgを上限に増量すること。
7.4.3. 本剤を増量する場合には、副作用に十分注意すること〔1.3参照〕。
7.5. 減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと(副作用等により減量する場合は、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと)。
7.6. 投与の中止
本剤の投与を中止する場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること(副作用等により直ちに投与を中止する場合は、退薬症候の発現に注意すること)。
他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な次記疾患における鎮痛:中等度から高度の疼痛を伴う各種癌。
(効能又は効果に関連する注意)
本剤は、他の強オピオイド鎮痛剤の投与では十分な鎮痛効果が得られない患者で、かつオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とするがん疼痛の管理にのみ使用すること〔14.1.1参照〕。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):顔面蒼白、血圧低下、呼吸困難、頻脈、全身発赤、血管浮腫、蕁麻疹等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2. 依存性(頻度不明):連用により薬物依存を生じることがある。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、あくび、くしゃみ、流涙、発汗、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、散瞳、頭痛、不眠、不安、せん妄、痙攣、振戦、全身筋肉痛・全身関節痛、呼吸促迫、動悸等の退薬症候があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、1日用量を徐々に減量するなど、患者の状態を観察しながら行うこと〔8.6、9.1.11参照〕。
11.1.3. 呼吸停止、呼吸抑制(いずれも頻度不明):息切れ、呼吸緩慢、不規則呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと(なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する)〔1.2、2.1、8.1、8.2、8.4、9.1.5、13.2.2参照〕。
11.1.4. 心停止、心室細動、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心不全、期外収縮(いずれも頻度不明)、QT延長(15.4%)〔1.2、8.1、8.3、9.1.2−9.1.4、13.2.3参照〕。
11.1.5. 錯乱(頻度不明)、せん妄(7.7%)。
11.1.6. 肺水腫、無気肺、気管支痙攣、喉頭浮腫(いずれも頻度不明)。
11.1.7. 腸閉塞(3.8%)、麻痺性イレウス、中毒性巨大結腸(いずれも頻度不明)〔2.3参照〕。
11.1.8. 肝機能障害(頻度不明):著しいAST上昇(著しいGOT上昇)、著しいALT上昇(著しいGPT上昇)、著しいAl−P上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.2. その他の副作用
1). 循環器:(頻度不明)不整脈、二段脈、徐脈、頻脈、T波逆転、血圧変動、失神、心筋症、動悸。
2). 精神神経系:(10%以上)眠気・傾眠、(10%未満)振戦、(頻度不明)不眠、めまい、ふらふら感、幻覚、健忘、失見当識、激越、不安、鎮静、気分不快、多幸感、感覚異常、痙攣発作、頭痛、発汗、ミオクローヌス。
3). 消化器:(10%以上)悪心、嘔吐、便秘、(10%未満)下痢、(頻度不明)腹痛、口渇、味覚異常、食欲不振、舌炎、胆管痙攣。
4). 過敏症:(10%未満)発疹、(頻度不明)そう痒症。
5). 血液:(頻度不明)血小板減少症。
6). 泌尿器:(頻度不明)排尿障害、尿閉。
7). 感覚器:(頻度不明)視覚障害(霧視、複視等)。
8). その他:(頻度不明)血管拡張(顔面潮紅、熱感)、潮紅、浮腫、呼吸困難、無力症、脱力、倦怠感、低カリウム血症、低マグネシウム血症、静脈炎、体重増加、無月経、性欲減退、性能力減退。
1.1. 本剤の投与は、がん疼痛の治療に精通し、本剤のリスク等について十分な知識を持つ医師のもとで、適切と判断される症例についてのみ行うこと。
1.2. QT延長や心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、呼吸抑制等があらわれ、死亡に至る例が報告されている。重篤な副作用により、致命的経過をたどることがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること〔2.1、8.1−8.4、9.1.3−9.1.5、11.1.3、11.1.4、13.2.3参照〕。
1.3. 本剤投与開始時及び増量時には、特に患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。本剤の薬物動態は個人差が大きく、さらに呼吸抑制は鎮痛効果よりも遅れて発現することがある。また、他のオピオイド鎮痛剤に対する耐性を有する患者では、本剤に対する交差耐性が不完全であるため、過量投与となることがある〔7.1.1、7.1.2、7.2.1、7.4.1、7.4.3、8.1、13.1参照〕。
2.1. 重篤な呼吸抑制のある患者、重篤な慢性閉塞性肺疾患の患者[呼吸抑制を増強する]〔1.2、8.1、8.2、8.4、9.1.5、11.1.3参照〕。
2.2. 気管支喘息発作中の患者[呼吸を抑制し、気道分泌を妨げる]。
2.3. 麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制する]〔11.1.7参照〕。
2.4. 急性アルコール中毒の患者[呼吸抑制を増強する]。
2.5. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.6. 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢のある患者では、症状の悪化、治療期間の延長を来すおそれがある]。
2.7. ナルメフェン塩酸塩水和物投与中又はナルメフェン塩酸塩水和物投与中止後1週間以内の患者〔10.1参照〕。
8.1. 本剤の投与開始にあたっては、主な副作用、相互作用、投与時の注意点等を患者等に対して十分に説明し、理解を得た上で投与を開始すること。特に不整脈、呼吸抑制等の症状が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指導すること〔1.2、1.3、2.1、8.2−8.4、9.1.3−9.1.5、11.1.3、11.1.4、14.1.2参照〕。
8.2. 高用量の強オピオイド鎮痛剤からの切り替え、呼吸抑制を起こしやすい患者等では、入院又はそれに準じる管理の下で本剤の投与開始及び用量調節を行うなど、重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと〔1.2、2.1、8.1、8.4、9.1.5、11.1.3参照〕。
8.3. QT延長があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び本剤投与中は定期的に心電図検査及び電解質検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。特に、本剤1日投与量が100mgを超える前及びその1週間後、QT延長を起こしやすい患者では、本剤の投与量が安定した時点で心電図検査を行うことが望ましい。異常が認められた場合には、必要に応じて休薬、減量又は中止し、適切な処置を行うこと〔1.2、8.1、9.1.3、9.1.4、11.1.4、13.2.3参照〕。
8.4. 重篤な呼吸抑制が認められた場合には、投与を中止し、呼吸管理を行うこと(呼吸抑制に対しては麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効であるが、麻薬拮抗剤の作用持続時間は本剤より短いので、観察を十分に行い麻薬拮抗剤の繰り返し投与を考慮すること)〔1.2、2.1、8.1、8.2、9.1.5、11.1.3、13.2.2参照〕。
8.5. 本剤を投与する場合には、便秘に対する対策として緩下剤の併用、嘔気・嘔吐に対する対策として制吐剤の併用を、また、鎮痛効果が得られている患者で通常とは異なる強い眠気がある場合には、過量投与の可能性を念頭において本剤の減量を考慮するなど、本剤投与時の副作用に十分注意すること。
8.6. 連用により薬物依存を生じることがあるので、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること〔9.1.11、11.1.2参照〕。
8.7. 重篤な副作用が発現した患者については、本剤の血中動態を考慮し、投与中止時から少なくとも48時間後まで観察を継続すること。
8.8. 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.9. 本剤は種々の薬剤との相互作用が報告されていることから、併用薬剤に十分注意して投与すること〔10.相互作用の項参照〕。
8.10. 本剤の医療目的外使用を防止するため、適切な処方を行い、保管に留意するとともに、患者等に対して適切な指導を行うこと〔14.1.2、14.1.3、14.1.5参照〕。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 細菌性下痢のある患者:治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと(治療期間の延長を来すおそれがある)。
9.1.2. 心機能障害又は低血圧のある患者:循環不全を増強するおそれがある〔11.1.4参照〕。
9.1.3. QT延長のある患者:QT間隔を過度に延長させるおそれがある〔1.2、8.1、8.3、11.1.4、13.2.3参照〕。
9.1.4. QT延長を起こしやすい患者:QT延長が起こるおそれがある〔1.2、8.1、8.3、11.1.4、13.2.3参照〕[(1)QT延長の既往歴のある患者、(2)低カリウム血症、低マグネシウム血症又は低カルシウム血症のある患者、(3)心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者、(4)QT延長を起こすことが知られている薬剤投与中の患者]。
9.1.5. 呼吸機能障害のある患者:呼吸抑制を増強するおそれがある〔1.2、2.1、8.1、8.2、8.4、11.1.3参照〕。
9.1.6. 脳器質的障害のある患者:呼吸抑制や頭蓋内圧上昇を起こすおそれがある。
9.1.7. ショック状態にある患者:循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.1.8. 代謝性アシドーシスのある患者:呼吸抑制を起こすおそれがある。
9.1.9. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣を起こすおそれがある。
9.1.10. 甲状腺機能低下症(粘液水腫等)、副腎皮質機能低下症(アジソン病等)又は衰弱者:呼吸抑制作用に対し、感受性が高くなっている。
9.1.11. 薬物依存の既往歴のある患者:依存性を生じやすい〔8.6、11.1.2参照〕。
9.1.12. 前立腺肥大による排尿障害、尿道狭窄、尿路手術術後の患者:排尿障害を増悪することがある。
9.1.13. 器質的幽門狭窄、重篤な炎症性腸疾患又は最近消化管手術を行った患者:消化管運動を抑制する。
9.1.14. 胆嚢障害、胆石症又は膵炎の患者:オッジ筋を収縮させ症状が増悪することがある。
(腎機能障害患者)
腎機能障害患者:排泄が遅延し副作用があらわれるおそれがある。
(肝機能障害患者)
肝機能障害患者:代謝が遅延し副作用があらわれるおそれがある。
本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4、CYP2B6及び、一部CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6で代謝される。また本剤は、CYP3A4及びCYP2B6の誘導作用を有し、P糖蛋白の基質である〔8.9、16.4.2参照〕。
10.1. 併用禁忌:
ナルメフェン塩酸塩水和物<セリンクロ>〔2.7参照〕[ナルメフェン塩酸塩水和物により本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(ナルメフェン塩酸塩水和物はμ受容体のアンタゴニストであり、μ受容体のアゴニストである本剤に対して、競合的に阻害する)]。
10.2. 併用注意:
1). QT延長を起こすことが知られている薬剤(スニチニブ、ダサチニブ、マプロチリン等)、抗不整脈剤(ジソピラミド、プロカインアミド、アミオダロン、ソタロール等)、抗精神病剤[不整脈を誘発するおそれがある(相加的にQT延長作用を増強させる)]。
2). 低カリウム血症を起こす薬剤(利尿剤、副腎皮質ステロイド剤等)[低カリウム血症による不整脈を誘発するおそれがある(カリウム値の低下により心臓の不応期が延長され、さらに本剤の投与により新たな不整脈を誘発することによる)]。
3). 三環系抗うつ剤:
@. 三環系抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン等)[不整脈を誘発するおそれがある(相加的にQT延長作用を増強させる)]。
A. 三環系抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン等)[呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こるおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること(相加的に中枢神経抑制作用を増強させる)]。
4). 中枢神経抑制剤(ベンゾジアゼピン誘導体、フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)、アルコール、吸入麻酔剤、MAO阻害剤、オピオイド鎮痛剤[呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こるおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること(相加的に中枢神経抑制作用を増強させる)]。
5). 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(セルトラリン塩酸塩、フルボキサミンマレイン酸塩等)[本剤の血中濃度が増加したとの報告がある(機序不明)]。
6). 尿アルカリ化を起こす薬剤(炭酸水素ナトリウム等)[本剤の血中濃度が増加したとの報告がある(尿のアルカリ化により本剤の尿中排泄率が低下するため)]。
7). 抗真菌剤(ケトコナゾール(国内では外用剤のみ)、ボリコナゾール等)、マクロライド系抗菌剤(エリスロマイシン等)[本剤の血中濃度が増加するおそれがある(これらの薬剤が本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害することによる)]。
8). 肝代謝酵素誘導作用を有する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン)[本剤の血中濃度が低下したとの報告がある(これらの薬剤が本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4等)を誘導することによる)]。
9). セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)[本剤の血中濃度が低下するおそれがある(セイヨウオトギリソウが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を誘導することによる)]。
10). アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、ネビラピン、リルピビリン塩酸塩、ロピナビル・リトナビル配合剤[本剤の血中濃度が低下したとの報告がある(機序不明)]。
11). ジドブジン(アジドチミジン)[ジドブジンの血中濃度が増加したとの報告がある(機序不明)]。
12). 抗コリン作用を有する薬剤[麻痺性イレウスに至る重篤な便秘又は尿貯留が起こるおそれがある(相加的に抗コリン作用を増強させる)]。
13). ブプレノルフィン、ペンタゾシン[本剤の鎮痛作用を減弱させることがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(これらの薬剤は本剤の作用するμ受容体の部分アゴニストである)]。
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(一般に生理機能が低下しており、特に呼吸抑制の感受性が高い)。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット、マウス、ハムスター)で、母動物死亡、死産、胎仔体重減少、催奇形作用(骨化異常、外脳、頭蓋裂、脊髄のねじれ等)が報告されている)。
分娩前に投与した場合、出産後新生児に退薬症候(多動、神経過敏、不眠、振戦等)があらわれることがある。
分娩時の投与により、新生児に呼吸抑制があらわれることがある。
(授乳婦)
授乳を避けさせること(ヒト母乳中へ移行し、母親の経口投与量が10〜80mg/日のとき、メサドンの乳汁中濃度は0.05〜0.57μg/mLになることが報告されている)。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
13.1. 徴候・症状
過量投与時、呼吸抑制、意識不明、痙攣、錯乱、血圧低下、重篤な脱力感、重篤なめまい、嗜眠、心拍数減少、QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、神経過敏、不安、縮瞳、皮膚冷感、無呼吸、循環虚脱等を起こすことがある〔1.3参照〕。
13.2. 処置
13.2.1. 過量投与時、投与を中止し、気道確保、補助呼吸及び調節呼吸により適切な呼吸管理を行う。
13.2.2. 過量投与時、麻薬拮抗剤投与を行い、患者に退薬症候又は麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与する(なお、麻薬拮抗剤の作用持続時間はメサドンのそれより短いので、患者のモニタリングを行うか又は患者の反応に応じて初回投与後は注入速度を調節しながら持続静注する)〔8.4、11.1.3参照〕。
13.2.3. 過量投与時、QT延長がある場合には、硫酸マグネシウム静注、心臓ペーシング等適切な対処療法を行う〔1.2、8.3、9.1.3、9.1.4、11.1.4参照〕。
13.2.4. 過量投与時、必要に応じて、補液、昇圧剤等の投与又は他の補助療法を行う。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤交付時の注意
14.1.1. 強オピオイド鎮痛剤が投与されていた患者であることを確認した上で本剤を交付すること〔5.効能又は効果に関連する注意の項参照〕。
14.1.2. 本剤の投与開始にあたっては、患者等に対して、主な副作用、相互作用、具体的な服用方法、服用時の注意点、保管方法等を患者向けの説明書を用いるなどの方法によって十分に説明すること〔8.1、8.10参照〕。
14.1.3. 患者等に対して、本剤の目的以外への使用あるいは他人への譲渡をしないよう指導するとともに、本剤を子供の手の届かないところに保管するよう指導すること〔8.10参照〕。
14.1.4. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.1.5. 本剤が不要となった場合には、病院又は薬局へ返納するなどの処置について適切に指導すること〔8.10参照〕。
(取扱い上の注意)
アルミ袋開封後は直射日光、高温、多湿を避けて保存すること。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 遺伝毒性:マウス(腹腔内投与)を用いた優性致死試験陽性及び精原細胞の染色体異常試験陽性の結果を示したとの報告がある。また、大腸菌のDNA修復機能への影響並びにマウスリンパ腫細胞遺伝子突然変異への可能性を否定できないとの報告がある。
15.2.2. 生殖毒性:雄性ラット(経口投与)を用い、雌性ラットと交配させた受胎能及び着床までの初期胚発生試験において産仔死亡率増加及び同腹仔死産の割合増加、並びに雄性ハムスター(腹腔内投与)を用いた同試験において用量依存的に生殖行動が抑制されたとの報告がある。またマウス(24ヵ月混餌投与)を用いたがん原性試験において精巣退化が認められたとの報告がある。
15.2.3. 組織過形成(甲状腺):マウス(24ヵ月混餌投与)を用いたがん原性試験において甲状腺濾胞上皮細胞過形成が認められたとの報告がある。
(保管上の注意)
室温保存。
(保険給付上の注意)
本剤は厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、投薬は1回14日分を限度とされている。
薬効分類 | 麻薬性オピオイド |
一般名 | メサドン塩酸塩錠 |
薬価 | 184.8円 |
メーカー | 帝國製薬 |
最終更新 | 2024年03月改訂(第1版) |
本剤は、他の強オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。
通常、成人に対し初回投与量は本剤投与前に使用していた強オピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、メサドン塩酸塩として1回5〜15mgを1日3回経口投与する。
その後の投与量は患者の症状や状態により適宜増減する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 初回投与量
7.1.1. 本剤の薬物動態は個人差が大きく、他のオピオイド鎮痛剤との交差耐性が不完全であるため、本剤と他のオピオイド鎮痛剤の等鎮痛比は確立していない〔1.3参照〕。
7.1.2. 次記換算は、初回投与量を選択する際の目安であり、換算比は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の投与量により大幅に異なる(患者の症状や状態、オピオイド耐性の程度、併用薬剤を考慮して適切な用量を選択し、過量投与にならないよう注意すること)〔1.3参照〕。
7.1.3. 経口モルヒネ量60mg/日未満のオピオイド鎮痛剤からの切り替えは推奨されない。
[投与量換算(本剤初回投与時の目安)]
1). モルヒネ経口剤60≦〜≦160mg/日:メサドン塩酸塩15mg/日(5mg/回×3回)。
2). モルヒネ経口剤160<〜≦390mg/日:メサドン塩酸塩30mg/日(10mg/回×3回)。
3). モルヒネ経口剤390<mg/日:メサドン塩酸塩45mg/日(15mg/回×3回)。
7.2. 初回投与時
7.2.1. 本剤投与後少なくとも7日間は増量を行わないこと(本剤の血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要することから、7日未満の増量は過量投与となる可能性がある)〔1.3、7.4.1、16.1.2参照〕。
7.2.2. フェンタニル貼付剤から本剤へ変更する場合には、フェンタニル貼付剤剥離後にフェンタニルの血中濃度が50%に減少するまで17時間以上かかることから、剥離直後の本剤の使用は避け、本剤の使用を開始するまでに、フェンタニルの血中濃度が適切な濃度に低下するまでの時間をあけるとともに、本剤の低用量から投与することを考慮すること。
7.3. 疼痛増強時
本剤服用中に疼痛が増強した場合や鎮痛効果が得られている患者で突発性の疼痛が発現した場合は、直ちに速効性のオピオイド鎮痛剤の臨時追加投与(レスキュー薬の投与)を行い鎮痛を図ること。
7.4. 増量
7.4.1. 本剤初回投与後及び増量後少なくとも7日間は増量を行わないこと(呼吸抑制を発現するおそれがある)〔1.3、7.2.1、16.1.2参照〕。
7.4.2. 鎮痛効果が得られるまで患者毎に用量調整を行うこと。鎮痛効果が得られない場合は、1日あたり本剤1日投与量の50%、1回あたり5mgを上限に増量すること。
7.4.3. 本剤を増量する場合には、副作用に十分注意すること〔1.3参照〕。
7.5. 減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと(副作用等により減量する場合は、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと)。
7.6. 投与の中止
本剤の投与を中止する場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること(副作用等により直ちに投与を中止する場合は、退薬症候の発現に注意すること)。
他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な次記疾患における鎮痛:中等度から高度の疼痛を伴う各種癌。
(効能又は効果に関連する注意)
本剤は、他の強オピオイド鎮痛剤の投与では十分な鎮痛効果が得られない患者で、かつオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とするがん疼痛の管理にのみ使用すること〔14.1.1参照〕。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):顔面蒼白、血圧低下、呼吸困難、頻脈、全身発赤、血管浮腫、蕁麻疹等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2. 依存性(頻度不明):連用により薬物依存を生じることがある。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、あくび、くしゃみ、流涙、発汗、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、散瞳、頭痛、不眠、不安、せん妄、痙攣、振戦、全身筋肉痛・全身関節痛、呼吸促迫、動悸等の退薬症候があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、1日用量を徐々に減量するなど、患者の状態を観察しながら行うこと〔8.6、9.1.11参照〕。
11.1.3. 呼吸停止、呼吸抑制(いずれも頻度不明):息切れ、呼吸緩慢、不規則呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと(なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する)〔1.2、2.1、8.1、8.2、8.4、9.1.5、13.2.2参照〕。
11.1.4. 心停止、心室細動、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心不全、期外収縮(いずれも頻度不明)、QT延長(15.4%)〔1.2、8.1、8.3、9.1.2−9.1.4、13.2.3参照〕。
11.1.5. 錯乱(頻度不明)、せん妄(7.7%)。
11.1.6. 肺水腫、無気肺、気管支痙攣、喉頭浮腫(いずれも頻度不明)。
11.1.7. 腸閉塞(3.8%)、麻痺性イレウス、中毒性巨大結腸(いずれも頻度不明)〔2.3参照〕。
11.1.8. 肝機能障害(頻度不明):著しいAST上昇(著しいGOT上昇)、著しいALT上昇(著しいGPT上昇)、著しいAl−P上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.2. その他の副作用
1). 循環器:(頻度不明)不整脈、二段脈、徐脈、頻脈、T波逆転、血圧変動、失神、心筋症、動悸。
2). 精神神経系:(10%以上)眠気・傾眠、(10%未満)振戦、(頻度不明)不眠、めまい、ふらふら感、幻覚、健忘、失見当識、激越、不安、鎮静、気分不快、多幸感、感覚異常、痙攣発作、頭痛、発汗、ミオクローヌス。
3). 消化器:(10%以上)悪心、嘔吐、便秘、(10%未満)下痢、(頻度不明)腹痛、口渇、味覚異常、食欲不振、舌炎、胆管痙攣。
4). 過敏症:(10%未満)発疹、(頻度不明)そう痒症。
5). 血液:(頻度不明)血小板減少症。
6). 泌尿器:(頻度不明)排尿障害、尿閉。
7). 感覚器:(頻度不明)視覚障害(霧視、複視等)。
8). その他:(頻度不明)血管拡張(顔面潮紅、熱感)、潮紅、浮腫、呼吸困難、無力症、脱力、倦怠感、低カリウム血症、低マグネシウム血症、静脈炎、体重増加、無月経、性欲減退、性能力減退。
1.1. 本剤の投与は、がん疼痛の治療に精通し、本剤のリスク等について十分な知識を持つ医師のもとで、適切と判断される症例についてのみ行うこと。
1.2. QT延長や心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、呼吸抑制等があらわれ、死亡に至る例が報告されている。重篤な副作用により、致命的経過をたどることがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること〔2.1、8.1−8.4、9.1.3−9.1.5、11.1.3、11.1.4、13.2.3参照〕。
1.3. 本剤投与開始時及び増量時には、特に患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。本剤の薬物動態は個人差が大きく、さらに呼吸抑制は鎮痛効果よりも遅れて発現することがある。また、他のオピオイド鎮痛剤に対する耐性を有する患者では、本剤に対する交差耐性が不完全であるため、過量投与となることがある〔7.1.1、7.1.2、7.2.1、7.4.1、7.4.3、8.1、13.1参照〕。
2.1. 重篤な呼吸抑制のある患者、重篤な慢性閉塞性肺疾患の患者[呼吸抑制を増強する]〔1.2、8.1、8.2、8.4、9.1.5、11.1.3参照〕。
2.2. 気管支喘息発作中の患者[呼吸を抑制し、気道分泌を妨げる]。
2.3. 麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制する]〔11.1.7参照〕。
2.4. 急性アルコール中毒の患者[呼吸抑制を増強する]。
2.5. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.6. 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢のある患者では、症状の悪化、治療期間の延長を来すおそれがある]。
2.7. ナルメフェン塩酸塩水和物投与中又はナルメフェン塩酸塩水和物投与中止後1週間以内の患者〔10.1参照〕。
8.1. 本剤の投与開始にあたっては、主な副作用、相互作用、投与時の注意点等を患者等に対して十分に説明し、理解を得た上で投与を開始すること。特に不整脈、呼吸抑制等の症状が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指導すること〔1.2、1.3、2.1、8.2−8.4、9.1.3−9.1.5、11.1.3、11.1.4、14.1.2参照〕。
8.2. 高用量の強オピオイド鎮痛剤からの切り替え、呼吸抑制を起こしやすい患者等では、入院又はそれに準じる管理の下で本剤の投与開始及び用量調節を行うなど、重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと〔1.2、2.1、8.1、8.4、9.1.5、11.1.3参照〕。
8.3. QT延長があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び本剤投与中は定期的に心電図検査及び電解質検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。特に、本剤1日投与量が100mgを超える前及びその1週間後、QT延長を起こしやすい患者では、本剤の投与量が安定した時点で心電図検査を行うことが望ましい。異常が認められた場合には、必要に応じて休薬、減量又は中止し、適切な処置を行うこと〔1.2、8.1、9.1.3、9.1.4、11.1.4、13.2.3参照〕。
8.4. 重篤な呼吸抑制が認められた場合には、投与を中止し、呼吸管理を行うこと(呼吸抑制に対しては麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効であるが、麻薬拮抗剤の作用持続時間は本剤より短いので、観察を十分に行い麻薬拮抗剤の繰り返し投与を考慮すること)〔1.2、2.1、8.1、8.2、9.1.5、11.1.3、13.2.2参照〕。
8.5. 本剤を投与する場合には、便秘に対する対策として緩下剤の併用、嘔気・嘔吐に対する対策として制吐剤の併用を、また、鎮痛効果が得られている患者で通常とは異なる強い眠気がある場合には、過量投与の可能性を念頭において本剤の減量を考慮するなど、本剤投与時の副作用に十分注意すること。
8.6. 連用により薬物依存を生じることがあるので、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること〔9.1.11、11.1.2参照〕。
8.7. 重篤な副作用が発現した患者については、本剤の血中動態を考慮し、投与中止時から少なくとも48時間後まで観察を継続すること。
8.8. 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.9. 本剤は種々の薬剤との相互作用が報告されていることから、併用薬剤に十分注意して投与すること〔10.相互作用の項参照〕。
8.10. 本剤の医療目的外使用を防止するため、適切な処方を行い、保管に留意するとともに、患者等に対して適切な指導を行うこと〔14.1.2、14.1.3、14.1.5参照〕。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 細菌性下痢のある患者:治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと(治療期間の延長を来すおそれがある)。
9.1.2. 心機能障害又は低血圧のある患者:循環不全を増強するおそれがある〔11.1.4参照〕。
9.1.3. QT延長のある患者:QT間隔を過度に延長させるおそれがある〔1.2、8.1、8.3、11.1.4、13.2.3参照〕。
9.1.4. QT延長を起こしやすい患者:QT延長が起こるおそれがある〔1.2、8.1、8.3、11.1.4、13.2.3参照〕[(1)QT延長の既往歴のある患者、(2)低カリウム血症、低マグネシウム血症又は低カルシウム血症のある患者、(3)心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者、(4)QT延長を起こすことが知られている薬剤投与中の患者]。
9.1.5. 呼吸機能障害のある患者:呼吸抑制を増強するおそれがある〔1.2、2.1、8.1、8.2、8.4、11.1.3参照〕。
9.1.6. 脳器質的障害のある患者:呼吸抑制や頭蓋内圧上昇を起こすおそれがある。
9.1.7. ショック状態にある患者:循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.1.8. 代謝性アシドーシスのある患者:呼吸抑制を起こすおそれがある。
9.1.9. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣を起こすおそれがある。
9.1.10. 甲状腺機能低下症(粘液水腫等)、副腎皮質機能低下症(アジソン病等)又は衰弱者:呼吸抑制作用に対し、感受性が高くなっている。
9.1.11. 薬物依存の既往歴のある患者:依存性を生じやすい〔8.6、11.1.2参照〕。
9.1.12. 前立腺肥大による排尿障害、尿道狭窄、尿路手術術後の患者:排尿障害を増悪することがある。
9.1.13. 器質的幽門狭窄、重篤な炎症性腸疾患又は最近消化管手術を行った患者:消化管運動を抑制する。
9.1.14. 胆嚢障害、胆石症又は膵炎の患者:オッジ筋を収縮させ症状が増悪することがある。
(腎機能障害患者)
腎機能障害患者:排泄が遅延し副作用があらわれるおそれがある。
(肝機能障害患者)
肝機能障害患者:代謝が遅延し副作用があらわれるおそれがある。
本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4、CYP2B6及び、一部CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6で代謝される。また本剤は、CYP3A4及びCYP2B6の誘導作用を有し、P糖蛋白の基質である〔8.9、16.4.2参照〕。
10.1. 併用禁忌:
ナルメフェン塩酸塩水和物<セリンクロ>〔2.7参照〕[ナルメフェン塩酸塩水和物により本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(ナルメフェン塩酸塩水和物はμ受容体のアンタゴニストであり、μ受容体のアゴニストである本剤に対して、競合的に阻害する)]。
10.2. 併用注意:
1). QT延長を起こすことが知られている薬剤(スニチニブ、ダサチニブ、マプロチリン等)、抗不整脈剤(ジソピラミド、プロカインアミド、アミオダロン、ソタロール等)、抗精神病剤[不整脈を誘発するおそれがある(相加的にQT延長作用を増強させる)]。
2). 低カリウム血症を起こす薬剤(利尿剤、副腎皮質ステロイド剤等)[低カリウム血症による不整脈を誘発するおそれがある(カリウム値の低下により心臓の不応期が延長され、さらに本剤の投与により新たな不整脈を誘発することによる)]。
3). 三環系抗うつ剤:
@. 三環系抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン等)[不整脈を誘発するおそれがある(相加的にQT延長作用を増強させる)]。
A. 三環系抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン等)[呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こるおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること(相加的に中枢神経抑制作用を増強させる)]。
4). 中枢神経抑制剤(ベンゾジアゼピン誘導体、フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)、アルコール、吸入麻酔剤、MAO阻害剤、オピオイド鎮痛剤[呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こるおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること(相加的に中枢神経抑制作用を増強させる)]。
5). 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(セルトラリン塩酸塩、フルボキサミンマレイン酸塩等)[本剤の血中濃度が増加したとの報告がある(機序不明)]。
6). 尿アルカリ化を起こす薬剤(炭酸水素ナトリウム等)[本剤の血中濃度が増加したとの報告がある(尿のアルカリ化により本剤の尿中排泄率が低下するため)]。
7). 抗真菌剤(ケトコナゾール(国内では外用剤のみ)、ボリコナゾール等)、マクロライド系抗菌剤(エリスロマイシン等)[本剤の血中濃度が増加するおそれがある(これらの薬剤が本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害することによる)]。
8). 肝代謝酵素誘導作用を有する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン)[本剤の血中濃度が低下したとの報告がある(これらの薬剤が本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4等)を誘導することによる)]。
9). セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)[本剤の血中濃度が低下するおそれがある(セイヨウオトギリソウが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を誘導することによる)]。
10). アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、ネビラピン、リルピビリン塩酸塩、ロピナビル・リトナビル配合剤[本剤の血中濃度が低下したとの報告がある(機序不明)]。
11). ジドブジン(アジドチミジン)[ジドブジンの血中濃度が増加したとの報告がある(機序不明)]。
12). 抗コリン作用を有する薬剤[麻痺性イレウスに至る重篤な便秘又は尿貯留が起こるおそれがある(相加的に抗コリン作用を増強させる)]。
13). ブプレノルフィン、ペンタゾシン[本剤の鎮痛作用を減弱させることがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(これらの薬剤は本剤の作用するμ受容体の部分アゴニストである)]。
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(一般に生理機能が低下しており、特に呼吸抑制の感受性が高い)。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット、マウス、ハムスター)で、母動物死亡、死産、胎仔体重減少、催奇形作用(骨化異常、外脳、頭蓋裂、脊髄のねじれ等)が報告されている)。
分娩前に投与した場合、出産後新生児に退薬症候(多動、神経過敏、不眠、振戦等)があらわれることがある。
分娩時の投与により、新生児に呼吸抑制があらわれることがある。
(授乳婦)
授乳を避けさせること(ヒト母乳中へ移行し、母親の経口投与量が10〜80mg/日のとき、メサドンの乳汁中濃度は0.05〜0.57μg/mLになることが報告されている)。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
13.1. 徴候・症状
過量投与時、呼吸抑制、意識不明、痙攣、錯乱、血圧低下、重篤な脱力感、重篤なめまい、嗜眠、心拍数減少、QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、神経過敏、不安、縮瞳、皮膚冷感、無呼吸、循環虚脱等を起こすことがある〔1.3参照〕。
13.2. 処置
13.2.1. 過量投与時、投与を中止し、気道確保、補助呼吸及び調節呼吸により適切な呼吸管理を行う。
13.2.2. 過量投与時、麻薬拮抗剤投与を行い、患者に退薬症候又は麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与する(なお、麻薬拮抗剤の作用持続時間はメサドンのそれより短いので、患者のモニタリングを行うか又は患者の反応に応じて初回投与後は注入速度を調節しながら持続静注する)〔8.4、11.1.3参照〕。
13.2.3. 過量投与時、QT延長がある場合には、硫酸マグネシウム静注、心臓ペーシング等適切な対処療法を行う〔1.2、8.3、9.1.3、9.1.4、11.1.4参照〕。
13.2.4. 過量投与時、必要に応じて、補液、昇圧剤等の投与又は他の補助療法を行う。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤交付時の注意
14.1.1. 強オピオイド鎮痛剤が投与されていた患者であることを確認した上で本剤を交付すること〔5.効能又は効果に関連する注意の項参照〕。
14.1.2. 本剤の投与開始にあたっては、患者等に対して、主な副作用、相互作用、具体的な服用方法、服用時の注意点、保管方法等を患者向けの説明書を用いるなどの方法によって十分に説明すること〔8.1、8.10参照〕。
14.1.3. 患者等に対して、本剤の目的以外への使用あるいは他人への譲渡をしないよう指導するとともに、本剤を子供の手の届かないところに保管するよう指導すること〔8.10参照〕。
14.1.4. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.1.5. 本剤が不要となった場合には、病院又は薬局へ返納するなどの処置について適切に指導すること〔8.10参照〕。
(取扱い上の注意)
アルミ袋開封後は直射日光、高温、多湿を避けて保存すること。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 遺伝毒性:マウス(腹腔内投与)を用いた優性致死試験陽性及び精原細胞の染色体異常試験陽性の結果を示したとの報告がある。また、大腸菌のDNA修復機能への影響並びにマウスリンパ腫細胞遺伝子突然変異への可能性を否定できないとの報告がある。
15.2.2. 生殖毒性:雄性ラット(経口投与)を用い、雌性ラットと交配させた受胎能及び着床までの初期胚発生試験において産仔死亡率増加及び同腹仔死産の割合増加、並びに雄性ハムスター(腹腔内投与)を用いた同試験において用量依存的に生殖行動が抑制されたとの報告がある。またマウス(24ヵ月混餌投与)を用いたがん原性試験において精巣退化が認められたとの報告がある。
15.2.3. 組織過形成(甲状腺):マウス(24ヵ月混餌投与)を用いたがん原性試験において甲状腺濾胞上皮細胞過形成が認められたとの報告がある。
(保管上の注意)
室温保存。
(保険給付上の注意)
本剤は厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、投薬は1回14日分を限度とされている。
薬剤写真、用法用量、効能効果や後発品の情報が一度に参照でき、関連情報へ簡単にアクセスができます。
一般名、製品名どちらでも検索可能!
※ ご使用いただく際に、必ず最新の添付文書および安全性情報も併せてご確認下さい。