薬効分類 | 免疫抑制薬 > mTOR阻害薬 |
一般名 | エベロリムス錠 |
薬価 | 635.5円 |
メーカー | ノバルティス ファーマ |
最終更新 | 2019年07月改訂(第1版) |
〈心移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして1.5mgを、1日2回に分けて経口投与する。なお、開始用量は1日量として3mgまでを用いることができる。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。
〈腎移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして1.5mgを、1日2回に分けて経口投与する。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。
〈肝移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして2.0mgを、1日2回に分けて経口投与する。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。なお、原則、エベロリムスの投与開始は移植後4週以降とする。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉食事の影響があるため、食後又は空腹時のいずれかの一定の条件下で投与し、本剤の血中トラフ濃度を測定し、投与量を調節すること〔16.2.1参照〕。
7.2. 〈効能共通〉カルシニューリン阻害薬及び副腎皮質ホルモン剤と併用すること(カルシニューリン阻害薬を併用しない場合、十分な効果が得られないおそれがある。本剤の類薬(シロリムス)の試験において、移植3ヵ月後にシクロスポリンの投与を中止した腎移植患者において、急性拒絶反応の発現率がシクロスポリンの投与を継続した患者に比べて有意に増加したとの報告がある。また、海外臨床試験において、移植5ヵ月目にタクロリムスの投与を中止した肝移植患者において、急性拒絶反応の発現率がタクロリムスの投与を継続した患者に比べて有意に増加した)。
7.2.1. 〈効能共通〉心移植及び腎移植においては、併用するカルシニューリン阻害薬はシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤又はタクロリムスのいずれか1剤とすること〔17.1.1−17.1.3参照〕。
7.2.2. 〈効能共通〉肝移植においては、通常、併用するカルシニューリン阻害薬はタクロリムスとすること。肝移植においては、併用するカルシニューリン阻害薬としてシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を用いる場合は、本剤は慎重に投与すること(シクロスポリンとの併用は使用経験が少ない)〔17.1.4、17.1.5参照〕。
7.3. 〈効能共通〉本剤の全血中濃度を定期的に測定すること〔16.1.1−16.1.4、16.8.1参照〕(曝露量と有効性、及び曝露量と安全性の関連についての解析から、本剤の血中トラフ濃度(C0)が3.0ng/mL以上の患者では、3.0ng/mL未満の患者に比べて急性拒絶反応の発現率が低いことが認められており、推奨される本剤の治療濃度の上限は8ng/mLである)。12ng/mLを超える濃度での有効性及び安全性の検討は実施されていない。
7.4. 〈効能共通〉本剤の用量調節は、用量変更から4〜5日以上経過してから測定した本剤の血中トラフ濃度(C0)に基づいて行うことが望ましい(シクロスポリンは本剤のバイオアベイラビリティを増加させるため、シクロスポリンの血中濃度が大幅に低下すると(血中トラフ濃度(C0)<50ng/mL)、本剤の血中濃度が低下するおそれがある)〔8.2、16.7.1参照〕。
7.5. 〈効能共通〉肝機能障害を有する患者では、頻繁に本剤の血中トラフ濃度(C0)を測定すること。
軽度又は中等度の肝機能障害<Child−Pugh分類クラスA又はB>を有する患者がビリルビン>2mg/dL、アルブミン<3.5g/dL、プロトロンビン時間>1.3INR(4秒を超える延長)の3項目の内2項目以上に該当する場合には、用量を通常量の約半量に減量し、更に、本剤の血中濃度に基づいて用量調節を行うこと〔9.3肝機能障害患者の項、16.6.2参照〕。
7.6. 〈効能共通〉本剤は併用するシクロスポリンの腎毒性を増強するおそれがあり、また、本剤とシクロスポリン又はタクロリムスの併用により腎障害が発現するおそれがあるため、腎移植患者、肝移植患者及び維持期の心移植患者ではシクロスポリン又はタクロリムスの用量を減量すること(なお、シクロスポリン又はタクロリムスの用量は、シクロスポリン又はタクロリムスの血中トラフ濃度(C0)に基づいて調節する)〔8.5、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、17.1.1−17.1.5参照〕〔表「シクロスポリンの血中トラフ濃度(C0)の記述統計量(B253試験、A1202試験、A2309試験)」、「タクロリムスの血中トラフ濃度(C0)の記述統計量(H2307試験、H2304試験)」参照〕。
7.7. 〈効能共通〉シクロスポリンとの併用にあたってはシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤と同時投与が望ましい。
7.8. 〈効能共通〉本剤と併用するシクロスポリン又はタクロリムスを減量する前に、本剤の定常状態の血中トラフ濃度(C0)が3ng/mL以上であることを確認すること。
7.9. 〈心移植〉心移植における本剤の用量設定の際には、次記を参照すること(心移植患者を対象として、標準量のシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤及び副腎皮質ホルモン剤と併用した本剤1.5mg/日及び3mg/日の有効性及び安全性をアザチオプリン1〜3mg/kg/日と比較した海外第3相試験(B253試験)の結果)。
7.9.1. 〈心移植〉本剤(1.5mg/日及び3mg/日)の平均血中トラフ濃度別の有効性及び副作用発現率
1). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度3ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率44.1%(30/68);副作用発現率64.4%(47/73)。
2). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度3〜4ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率32.7%(16/49);副作用発現率63.0%(34/54)。
3). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度4〜5ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率18.6%(8/43);副作用発現率62.5%(25/40)。
4). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度5〜6ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率22.0%(11/50);副作用発現率57.5%(23/40)。
5). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度6〜7ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率18.9%(7/37);副作用発現率53.3%(16/30)。
6). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度7〜8ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率23.8%(10/42);副作用発現率60.0%(18/30)。
7). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度8〜9ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率21.4%(6/28);副作用発現率63.0%(17/27)。
8). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度9〜10ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率15.0%(3/20);副作用発現率60.9%(14/23)。
9). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度10ng/mL以上:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率16.4%(11/67);副作用発現率77.2%(44/57)。
10). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度の確認できた全症例:副作用発現率63.6%(238/374)。
11). 〈心移植〉本剤投与全症例:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率26.4%(111/420);副作用発現率66.2%(278/420)。
*本剤の平均血中トラフ濃度は、副作用発現例については投与開始から発現までの平均、副作用非発現例では投与開始からカットオフ日(最大450日)までの平均。
*副作用は投与開始からカットオフ日(最大450日)まで、もしくは中止後7日以内に発現したもの。
7.9.2. 〈心移植〉移植後1年間の時期別副作用発現率
1). 〈心移植〉本剤1.5mg/日投与:移植後経過期間〜5日、15.8%(33/209);移植後経過期間6日〜14日(2週)、9.3%(19/204);移植後経過期間15日〜30日(1ヵ月)、23.1%(46/199);移植後経過期間31日〜90日(3ヵ月)、23.0%(44/191);移植後経過期間91日〜365日(1年)、40.1%(73/182)。
2). 〈心移植〉本剤3mg/日投与:移植後経過期間〜5日、13.7%(29/211);移植後経過期間6日〜14日(2週)、13.5%(28/207);移植後経過期間15日〜30日(1ヵ月)、30.7%(62/202);移植後経過期間31日〜90日(3ヵ月)、36.1%(69/191);移植後経過期間91日〜365日(1年)、49.1%(84/171)。
*副作用発現率(%)=(移植後経過期間中に1回以上副作用を発現した例数/移植後経過期間中に1日以上本剤を投与された例数)×100。
7.9.3. 〈心移植〉本剤の血中トラフ濃度の経時推移
1). 〈心移植〉本剤1.5mg/日投与:本剤の投与期間2日目、血中トラフ濃度1.8±2.7ng/mL、例数148;本剤の投与期間1週目、血中トラフ濃度5.4±3.7ng/mL、例数159;本剤の投与期間2週目、血中トラフ濃度5.4±4.0ng/mL、例数159;本剤の投与期間3週目、血中トラフ濃度5.2±4.4ng/mL、例数155;本剤の投与期間1ヵ月目、血中トラフ濃度5.4±3.9ng/mL、例数147;本剤の投与期間2ヵ月目、血中トラフ濃度5.1±3.5ng/mL、例数152;本剤の投与期間3ヵ月目、血中トラフ濃度5.1±3.8ng/mL、例数143;本剤の投与期間6ヵ月目、血中トラフ濃度4.8±3.3ng/mL、例数108。
2). 〈心移植〉本剤3mg/日投与:本剤の投与期間2日目、血中トラフ濃度4.2±3.6ng/mL、例数157;本剤の投与期間1週目、血中トラフ濃度10.2±6.8ng/mL、例数159;本剤の投与期間2週目、血中トラフ濃度10.0±7.2ng/mL、例数173;本剤の投与期間3週目、血中トラフ濃度10.2±6.6ng/mL、例数150;本剤の投与期間1ヵ月目、血中トラフ濃度8.9±6.0ng/mL、例数135;本剤の投与期間2ヵ月目、血中トラフ濃度8.7±5.1ng/mL、例数141;本剤の投与期間3ヵ月目、血中トラフ濃度9.1±6.3ng/mL、例数133;本剤の投与期間6ヵ月目、血中トラフ濃度8.5±5.6ng/mL、例数109。
(血中トラフ濃度は平均値±SD)。
次記の臓器移植における拒絶反応の抑制:心移植、腎移植、肝移植。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 腎障害(10.6%):腎尿細管壊死等の腎障害があらわれることがある〔7.6、8.5、9.2腎機能障害患者の項参照〕(蛋白尿が認められることがあり、本剤の血中濃度の上昇がリスクとして考えられている)。
11.1.2. 感染症(23.1%):細菌、真菌あるいはウイルスによる重篤な感染症(肺炎、敗血症、尿路感染症、単純疱疹、帯状疱疹、腎盂腎炎等)を併発することがある。また、免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリア又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎やC型肝炎悪化があらわれることがあり、強力な免疫抑制下では急激に重症化することがある〔9.1.1、9.1.2参照〕。
11.1.3. 移植腎血栓症(0.4%:腎移植患者での頻度):腎移植患者において、腎の動脈及び静脈の血栓症のリスク増加により、多くは移植後30日以内に移植腎廃絶に至ったとの報告があるので、本剤の投与に際しては、腎血流量低下、尿量減少等異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
11.1.4. 肝動脈血栓症(0.2%:肝移植患者での頻度):本剤の類薬(シロリムス)の肝移植患者を対象とした海外臨床試験において、肝動脈血栓症の発現頻度がシロリムスを投与しなかった対照群に比べて高く、その多くは移植後30日以内に発現し、移植肝廃絶や死亡に至った例も報告されている。
11.1.5. 悪性腫瘍(1.8%):悪性リンパ腫、リンパ増殖性疾患、悪性腫瘍(特に皮膚悪性腫瘍)があらわれることがある。
11.1.6. 創傷治癒不良:創傷治癒不良(1.3%)や創傷治癒不良による創傷感染(1.0%)、瘢痕ヘルニア(0.7%)、創離開(0.6%)等の合併症があらわれることがある。
11.1.7. 汎血球減少(1.0%)、白血球減少(8.6%)、貧血(6.3%)、血小板減少(5.8%)、好中球減少(0.9%):血小板減少が生じた結果、消化管出血等の出血に至った症例も報告されている〔8.6参照〕。
11.1.8. 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明):本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.9. BKウイルス腎症(0.1%未満)。
11.1.10. 血栓性微小血管障害(0.7%):溶血性尿毒症症候群(HUS:血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする)、血栓性血小板減少性紫斑病様症状(TTP様症状)(血小板減少、微小血管性溶血性貧血、腎機能障害、精神症状を主徴とする)等の血栓性微小血管障害があらわれることがある。
11.1.11. 間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎)(0.6%):死亡に至った例も報告されている。
11.1.12. 肺胞蛋白症(0.1%未満)。
11.1.13. 心嚢液貯留(9.9%:心移植患者での頻度):特に心移植患者において、心嚢液貯留があらわれることがある〔8.7参照〕。
11.1.14. 高血糖(1.0%)、糖尿病の発症(2.1%)又は糖尿病増悪(頻度不明)〔8.8参照〕。
11.1.15. 肺塞栓症(0.1%未満)、深部静脈血栓症(0.2%)。
11.1.16. 急性呼吸窮迫症候群(頻度不明):急速に進行する呼吸困難、低酸素症、両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(頻度不明)凝血異常、溶血。
2). 内分泌障害:(1%未満)男性性腺機能低下(テストステロン減少、黄体形成ホルモン増加、卵胞刺激ホルモン増加)。
3). 代謝及び栄養障害:(5%以上)高脂血症(16.0%)、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、(1%〜5%未満)脂質異常症、(1%未満)低カリウム血症、高尿酸血症。
4). 血管障害:(1%〜5%未満)高血圧、リンパ嚢腫。
5). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(1%〜5%未満)胸水[心移植患者での頻度]、咳嗽、(1%未満)咽頭炎。
6). 胃腸障害:(5%以上)下痢、(1%〜5%未満)悪心、嘔吐、口内炎、口腔内潰瘍、(1%未満)腹痛、消化不良、膵炎。
7). 肝胆道系障害:(1%〜5%未満)肝機能検査値異常、肝障害、(1%未満)黄疸、肝炎。
8). 皮膚及び皮下組織障害:(1%〜5%未満)ざ瘡、(1%未満)血管神経性浮腫、発疹、(頻度不明)白血球破砕性血管炎。
9). 筋骨格系及び結合組織障害:(1%〜5%未満)関節痛、(1%未満)筋痛。
10). 腎及び尿路障害:(1%〜5%未満)血中クレアチニン増加。
11). 全身障害及び投与局所様態:(5%以上)浮腫、(1%〜5%未満)発熱、(1%未満)疼痛。
12). 神経系障害:(1%〜5%未満)振戦。
13). その他:(頻度不明)無精子症、卵巣嚢胞。
1.1. 心移植、腎移植、肝移植における本剤の投与は、免疫抑制療法及び移植患者の管理に精通している医師又はその指導のもとで行うこと。
2.1. 本剤の成分、シロリムス又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
2.3. 生ワクチンを接種しないこと〔10.1参照〕。
8.1. シクロスポリン、タクロリムス及び副腎皮質ホルモン剤との併用に際しては、各薬剤の添付文書に記載されている「警告」、「禁忌」、「併用禁忌」、「重要な基本的注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」、「重大な副作用」等の使用上の注意を必ず確認すること。
8.2. シクロスポリンの併用により本剤のバイオアベイラビリティは有意に増加する(健康成人を対象とした単回投与試験において、本剤にシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を併用投与したところ、単独投与時に比べて本剤のAUCは168%(範囲46%〜365%)、Cmaxは82%(範囲25%〜158%)増加した)、従って、シクロスポリンの用量を変更する場合には、本剤の用量調節が必要であると考えられる〔7.4、16.7.1参照〕。なお、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を投与中の心移植患者において、シクロスポリンの薬物動態に対する本剤の臨床的影響はごく軽微であった。
8.3. ダイレクトクロスマッチ陽性等、抗ドナー抗体等の拒絶反応のリスク因子を有する患者を対象とした適切な臨床試験は実施されていない。
8.4. 定期的に血清脂質の検査を行い、高脂血症がみられた場合には、適切な食事指導を実施し、必要により高脂血症用剤を投与するなど適切な処置を行うこと〔9.1.3参照〕。
8.5. 腎障害があらわれることがあるので、頻回に腎機能検査(クレアチニン、BUN、クレアチニンクリアランス等)及び尿検査(尿蛋白等)を行うこと〔7.6、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1参照〕。
8.6. 汎血球減少、白血球減少、貧血、血小板減少、好中球減少があらわれることがあるので定期的に血液検査(血球数算定等)を実施すること〔11.1.7参照〕。
8.7. 特に心移植患者において、心嚢液貯留があらわれることがあるので、使用に際しては心電図、心エコー、胸部X線検査等を行うこと〔11.1.13参照〕。
8.8. 高血糖の発現、糖尿病の発症又は糖尿病増悪することがあるので、定期的に空腹時血糖値の測定等を行うこと〔11.1.14参照〕。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 感染症を合併している患者:免疫抑制により感染症が悪化するおそれがある〔11.1.2参照〕。
9.1.2. 肝炎ウイルスキャリアの患者:肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化やC型肝炎悪化の徴候や症状の発現に注意すること。免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎があらわれることがある。また、HBs抗原陰性の患者において、免疫抑制剤の投与開始後にB型肝炎ウイルス再活性化による肝炎を発症した症例が報告されている。また、C型肝炎ウイルスキャリアの患者において、免疫抑制剤の投与開始後にC型肝炎悪化がみられることがある〔11.1.2参照〕。
9.1.3. 高脂血症を合併している患者:治療上の有益性が、危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(症状が悪化するおそれがある)〔8.4参照〕。
(腎機能障害患者)
腎機能障害患者:シクロスポリンの腎毒性を増強するおそれがある〔7.6、8.5、11.1.1参照〕。
(肝機能障害患者)
肝機能障害患者:血中濃度が上昇するおそれがある〔7.5、16.6.2参照〕。
本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4によって代謝され、腸管に存在するCYP3A4によっても代謝され、また、本剤はP糖蛋白(Pgp)の基質でもあるため、本剤経口投与後の吸収と消失は、CYP3A4又はPgpに影響を及ぼす薬剤により影響を受けると考えられるので、CYP3A4を誘導する薬剤又はCYP3A4を阻害する薬剤を併用したり中止する場合は、必ず本剤の血中トラフ濃度(C0)をモニタリングすること。
10.1. 併用禁忌:
生ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン、経口生ポリオワクチン、乾燥BCG等)〔2.3参照〕[免疫抑制下で生ワクチンを接種すると発症するおそれがあるので併用しないこと(免疫抑制下で生ワクチンを接種すると増殖し、病原性をあらわす可能性がある)]。
10.2. 併用注意:
1). リファンピシン[本剤の血中濃度が低下することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること(これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
2). 抗てんかん剤(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン等)、抗HIV剤(エファビレンツ、ネビラピン等)[本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、併用する場合には血中濃度を参考に投与量を調節すること(これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
3). アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、フルコナゾール等)[本剤の血中濃度が上昇することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること(代謝酵素(CYP3A4等)の抑制又は競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
4). マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)、カルシウム拮抗剤(ベラパミル、ニカルジピン、ジルチアゼム等)、HIVプロテアーゼ阻害剤(ネルフィナビル、インジナビル、ホスアンプレナビル、リトナビル等)[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、併用する場合には血中濃度を参考に投与量を調節すること(代謝酵素(CYP3A4等)の抑制又は競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
5). オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル[本剤のAUCが27倍・Cmaxが4.7倍に上昇したとの報告があるので、やむを得ない場合を除き併用は避けるが、やむを得ず併用する場合には、本剤の血中濃度をモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること(リトナビルのCYP3A4阻害作用により、本剤の代謝が阻害される)]。
6). 不活化ワクチン(不活化インフルエンザワクチン等)[ワクチンの効果が得られないおそれがある(免疫抑制作用によってワクチンに対する免疫が得られないおそれがある)]。
7). セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)[本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること(セイヨウオトギリソウの代謝酵素誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
8). グレープフルーツジュース[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤服用時は飲食を避けることが望ましい(グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することによると考えられる)]。
9). シクロスポリン〔7.2、7.4、7.6−7.8、8.1、8.2参照〕[シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤との併用により、本剤のバイオアベイラビリティが有意に増加したとの報告があるので、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤との併用に際しては7.2、7.4、7.6−7.8及び8.1、8.2項を参照し投与すること(代謝酵素(CYP3A4等)の競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
10). 抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン<サイモグロブリン>[過度の免疫抑制が起こることがある(共に免疫抑制作用を有するため)。海外で実施された新規心移植患者を対象とした臨床試験において、本剤、シクロスポリン(腎移植よりも高い血中トラフ濃度)及び副腎皮質ホルモン剤を併用し、サイモグロブリン(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン)導入療法を受けた患者集団において、移植後の3ヵ月間に重大な感染症の増加がみられ、特に過剰な免疫抑制状態となりやすい移植前の入院及び心室補助循環装置を必要とする患者においてより高い死亡率との関連が認められた(共に免疫抑制作用を有するため)]。
11). ミダゾラム(経口剤:国内未販売)[ミダゾラムの血中濃度が上昇するおそれがある(本剤がCYP3A4の基質となる薬剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある)]。
9.8.1. 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能(腎機能、肝機能、免疫機能等)が低下している)。
9.8.2. 腎移植患者を対象とした臨床試験における母集団薬物動態解析の結果、本剤の薬物動態に65〜70歳の患者(18例)と母集団(673例)との明らかな差は認められていない〔16.6.4参照〕。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験(ラット及びウサギ)で胚毒性・胎仔毒性を含む生殖発生毒性が認められたとの報告がある)。
(授乳婦)
授乳しないことが望ましい(動物実験(ラット)において乳汁中に移行することが報告されている)。
小児等の心移植、腎移植及び肝移植患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。また、乳児の肝移植、幼児の肝移植及び小児の肝移植患者を対象とした海外臨床試験において、成人での臨床試験と比較して移植後リンパ増殖性障害や重篤な感染症、胃腸障害の発現頻度が高いことが報告されている。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
(取扱い上の注意)
光及び湿気を避けるため、PTP包装のまま保存すること。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
ラットを用いた雄性授胎能試験では、0.5mg/kg以上の用量で精巣の形態に影響が認められたほか、5mg/kg用量(治療量の範囲内)で精子運動能減少、精子数減少及び血漿中テストステロン濃度減少し、これに伴って雄の授胎能が低下した(これらの所見は休薬による回復傾向がみられた)。
(保管上の注意)
室温保存。
薬効分類 | 免疫抑制薬 > mTOR阻害薬 |
一般名 | エベロリムス錠 |
薬価 | 635.5円 |
メーカー | ノバルティス ファーマ |
最終更新 | 2019年07月改訂(第1版) |
〈心移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして1.5mgを、1日2回に分けて経口投与する。なお、開始用量は1日量として3mgまでを用いることができる。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。
〈腎移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして1.5mgを、1日2回に分けて経口投与する。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。
〈肝移植〉
通常、成人にはエベロリムスとして2.0mgを、1日2回に分けて経口投与する。患者の状態やトラフ濃度によって適宜増減する。なお、原則、エベロリムスの投与開始は移植後4週以降とする。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 〈効能共通〉食事の影響があるため、食後又は空腹時のいずれかの一定の条件下で投与し、本剤の血中トラフ濃度を測定し、投与量を調節すること〔16.2.1参照〕。
7.2. 〈効能共通〉カルシニューリン阻害薬及び副腎皮質ホルモン剤と併用すること(カルシニューリン阻害薬を併用しない場合、十分な効果が得られないおそれがある。本剤の類薬(シロリムス)の試験において、移植3ヵ月後にシクロスポリンの投与を中止した腎移植患者において、急性拒絶反応の発現率がシクロスポリンの投与を継続した患者に比べて有意に増加したとの報告がある。また、海外臨床試験において、移植5ヵ月目にタクロリムスの投与を中止した肝移植患者において、急性拒絶反応の発現率がタクロリムスの投与を継続した患者に比べて有意に増加した)。
7.2.1. 〈効能共通〉心移植及び腎移植においては、併用するカルシニューリン阻害薬はシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤又はタクロリムスのいずれか1剤とすること〔17.1.1−17.1.3参照〕。
7.2.2. 〈効能共通〉肝移植においては、通常、併用するカルシニューリン阻害薬はタクロリムスとすること。肝移植においては、併用するカルシニューリン阻害薬としてシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を用いる場合は、本剤は慎重に投与すること(シクロスポリンとの併用は使用経験が少ない)〔17.1.4、17.1.5参照〕。
7.3. 〈効能共通〉本剤の全血中濃度を定期的に測定すること〔16.1.1−16.1.4、16.8.1参照〕(曝露量と有効性、及び曝露量と安全性の関連についての解析から、本剤の血中トラフ濃度(C0)が3.0ng/mL以上の患者では、3.0ng/mL未満の患者に比べて急性拒絶反応の発現率が低いことが認められており、推奨される本剤の治療濃度の上限は8ng/mLである)。12ng/mLを超える濃度での有効性及び安全性の検討は実施されていない。
7.4. 〈効能共通〉本剤の用量調節は、用量変更から4〜5日以上経過してから測定した本剤の血中トラフ濃度(C0)に基づいて行うことが望ましい(シクロスポリンは本剤のバイオアベイラビリティを増加させるため、シクロスポリンの血中濃度が大幅に低下すると(血中トラフ濃度(C0)<50ng/mL)、本剤の血中濃度が低下するおそれがある)〔8.2、16.7.1参照〕。
7.5. 〈効能共通〉肝機能障害を有する患者では、頻繁に本剤の血中トラフ濃度(C0)を測定すること。
軽度又は中等度の肝機能障害<Child−Pugh分類クラスA又はB>を有する患者がビリルビン>2mg/dL、アルブミン<3.5g/dL、プロトロンビン時間>1.3INR(4秒を超える延長)の3項目の内2項目以上に該当する場合には、用量を通常量の約半量に減量し、更に、本剤の血中濃度に基づいて用量調節を行うこと〔9.3肝機能障害患者の項、16.6.2参照〕。
7.6. 〈効能共通〉本剤は併用するシクロスポリンの腎毒性を増強するおそれがあり、また、本剤とシクロスポリン又はタクロリムスの併用により腎障害が発現するおそれがあるため、腎移植患者、肝移植患者及び維持期の心移植患者ではシクロスポリン又はタクロリムスの用量を減量すること(なお、シクロスポリン又はタクロリムスの用量は、シクロスポリン又はタクロリムスの血中トラフ濃度(C0)に基づいて調節する)〔8.5、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、17.1.1−17.1.5参照〕〔表「シクロスポリンの血中トラフ濃度(C0)の記述統計量(B253試験、A1202試験、A2309試験)」、「タクロリムスの血中トラフ濃度(C0)の記述統計量(H2307試験、H2304試験)」参照〕。
7.7. 〈効能共通〉シクロスポリンとの併用にあたってはシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤と同時投与が望ましい。
7.8. 〈効能共通〉本剤と併用するシクロスポリン又はタクロリムスを減量する前に、本剤の定常状態の血中トラフ濃度(C0)が3ng/mL以上であることを確認すること。
7.9. 〈心移植〉心移植における本剤の用量設定の際には、次記を参照すること(心移植患者を対象として、標準量のシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤及び副腎皮質ホルモン剤と併用した本剤1.5mg/日及び3mg/日の有効性及び安全性をアザチオプリン1〜3mg/kg/日と比較した海外第3相試験(B253試験)の結果)。
7.9.1. 〈心移植〉本剤(1.5mg/日及び3mg/日)の平均血中トラフ濃度別の有効性及び副作用発現率
1). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度3ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率44.1%(30/68);副作用発現率64.4%(47/73)。
2). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度3〜4ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率32.7%(16/49);副作用発現率63.0%(34/54)。
3). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度4〜5ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率18.6%(8/43);副作用発現率62.5%(25/40)。
4). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度5〜6ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率22.0%(11/50);副作用発現率57.5%(23/40)。
5). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度6〜7ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率18.9%(7/37);副作用発現率53.3%(16/30)。
6). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度7〜8ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率23.8%(10/42);副作用発現率60.0%(18/30)。
7). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度8〜9ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率21.4%(6/28);副作用発現率63.0%(17/27)。
8). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度9〜10ng/mL未満:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率15.0%(3/20);副作用発現率60.9%(14/23)。
9). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度10ng/mL以上:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率16.4%(11/67);副作用発現率77.2%(44/57)。
10). 〈心移植〉本剤の平均血中トラフ濃度の確認できた全症例:副作用発現率63.6%(238/374)。
11). 〈心移植〉本剤投与全症例:グレード3A(ISHLT)以上の急性拒絶反応発現率26.4%(111/420);副作用発現率66.2%(278/420)。
*本剤の平均血中トラフ濃度は、副作用発現例については投与開始から発現までの平均、副作用非発現例では投与開始からカットオフ日(最大450日)までの平均。
*副作用は投与開始からカットオフ日(最大450日)まで、もしくは中止後7日以内に発現したもの。
7.9.2. 〈心移植〉移植後1年間の時期別副作用発現率
1). 〈心移植〉本剤1.5mg/日投与:移植後経過期間〜5日、15.8%(33/209);移植後経過期間6日〜14日(2週)、9.3%(19/204);移植後経過期間15日〜30日(1ヵ月)、23.1%(46/199);移植後経過期間31日〜90日(3ヵ月)、23.0%(44/191);移植後経過期間91日〜365日(1年)、40.1%(73/182)。
2). 〈心移植〉本剤3mg/日投与:移植後経過期間〜5日、13.7%(29/211);移植後経過期間6日〜14日(2週)、13.5%(28/207);移植後経過期間15日〜30日(1ヵ月)、30.7%(62/202);移植後経過期間31日〜90日(3ヵ月)、36.1%(69/191);移植後経過期間91日〜365日(1年)、49.1%(84/171)。
*副作用発現率(%)=(移植後経過期間中に1回以上副作用を発現した例数/移植後経過期間中に1日以上本剤を投与された例数)×100。
7.9.3. 〈心移植〉本剤の血中トラフ濃度の経時推移
1). 〈心移植〉本剤1.5mg/日投与:本剤の投与期間2日目、血中トラフ濃度1.8±2.7ng/mL、例数148;本剤の投与期間1週目、血中トラフ濃度5.4±3.7ng/mL、例数159;本剤の投与期間2週目、血中トラフ濃度5.4±4.0ng/mL、例数159;本剤の投与期間3週目、血中トラフ濃度5.2±4.4ng/mL、例数155;本剤の投与期間1ヵ月目、血中トラフ濃度5.4±3.9ng/mL、例数147;本剤の投与期間2ヵ月目、血中トラフ濃度5.1±3.5ng/mL、例数152;本剤の投与期間3ヵ月目、血中トラフ濃度5.1±3.8ng/mL、例数143;本剤の投与期間6ヵ月目、血中トラフ濃度4.8±3.3ng/mL、例数108。
2). 〈心移植〉本剤3mg/日投与:本剤の投与期間2日目、血中トラフ濃度4.2±3.6ng/mL、例数157;本剤の投与期間1週目、血中トラフ濃度10.2±6.8ng/mL、例数159;本剤の投与期間2週目、血中トラフ濃度10.0±7.2ng/mL、例数173;本剤の投与期間3週目、血中トラフ濃度10.2±6.6ng/mL、例数150;本剤の投与期間1ヵ月目、血中トラフ濃度8.9±6.0ng/mL、例数135;本剤の投与期間2ヵ月目、血中トラフ濃度8.7±5.1ng/mL、例数141;本剤の投与期間3ヵ月目、血中トラフ濃度9.1±6.3ng/mL、例数133;本剤の投与期間6ヵ月目、血中トラフ濃度8.5±5.6ng/mL、例数109。
(血中トラフ濃度は平均値±SD)。
次記の臓器移植における拒絶反応の抑制:心移植、腎移植、肝移植。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 腎障害(10.6%):腎尿細管壊死等の腎障害があらわれることがある〔7.6、8.5、9.2腎機能障害患者の項参照〕(蛋白尿が認められることがあり、本剤の血中濃度の上昇がリスクとして考えられている)。
11.1.2. 感染症(23.1%):細菌、真菌あるいはウイルスによる重篤な感染症(肺炎、敗血症、尿路感染症、単純疱疹、帯状疱疹、腎盂腎炎等)を併発することがある。また、免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリア又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎やC型肝炎悪化があらわれることがあり、強力な免疫抑制下では急激に重症化することがある〔9.1.1、9.1.2参照〕。
11.1.3. 移植腎血栓症(0.4%:腎移植患者での頻度):腎移植患者において、腎の動脈及び静脈の血栓症のリスク増加により、多くは移植後30日以内に移植腎廃絶に至ったとの報告があるので、本剤の投与に際しては、腎血流量低下、尿量減少等異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
11.1.4. 肝動脈血栓症(0.2%:肝移植患者での頻度):本剤の類薬(シロリムス)の肝移植患者を対象とした海外臨床試験において、肝動脈血栓症の発現頻度がシロリムスを投与しなかった対照群に比べて高く、その多くは移植後30日以内に発現し、移植肝廃絶や死亡に至った例も報告されている。
11.1.5. 悪性腫瘍(1.8%):悪性リンパ腫、リンパ増殖性疾患、悪性腫瘍(特に皮膚悪性腫瘍)があらわれることがある。
11.1.6. 創傷治癒不良:創傷治癒不良(1.3%)や創傷治癒不良による創傷感染(1.0%)、瘢痕ヘルニア(0.7%)、創離開(0.6%)等の合併症があらわれることがある。
11.1.7. 汎血球減少(1.0%)、白血球減少(8.6%)、貧血(6.3%)、血小板減少(5.8%)、好中球減少(0.9%):血小板減少が生じた結果、消化管出血等の出血に至った症例も報告されている〔8.6参照〕。
11.1.8. 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明):本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.9. BKウイルス腎症(0.1%未満)。
11.1.10. 血栓性微小血管障害(0.7%):溶血性尿毒症症候群(HUS:血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする)、血栓性血小板減少性紫斑病様症状(TTP様症状)(血小板減少、微小血管性溶血性貧血、腎機能障害、精神症状を主徴とする)等の血栓性微小血管障害があらわれることがある。
11.1.11. 間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎)(0.6%):死亡に至った例も報告されている。
11.1.12. 肺胞蛋白症(0.1%未満)。
11.1.13. 心嚢液貯留(9.9%:心移植患者での頻度):特に心移植患者において、心嚢液貯留があらわれることがある〔8.7参照〕。
11.1.14. 高血糖(1.0%)、糖尿病の発症(2.1%)又は糖尿病増悪(頻度不明)〔8.8参照〕。
11.1.15. 肺塞栓症(0.1%未満)、深部静脈血栓症(0.2%)。
11.1.16. 急性呼吸窮迫症候群(頻度不明):急速に進行する呼吸困難、低酸素症、両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(頻度不明)凝血異常、溶血。
2). 内分泌障害:(1%未満)男性性腺機能低下(テストステロン減少、黄体形成ホルモン増加、卵胞刺激ホルモン増加)。
3). 代謝及び栄養障害:(5%以上)高脂血症(16.0%)、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、(1%〜5%未満)脂質異常症、(1%未満)低カリウム血症、高尿酸血症。
4). 血管障害:(1%〜5%未満)高血圧、リンパ嚢腫。
5). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(1%〜5%未満)胸水[心移植患者での頻度]、咳嗽、(1%未満)咽頭炎。
6). 胃腸障害:(5%以上)下痢、(1%〜5%未満)悪心、嘔吐、口内炎、口腔内潰瘍、(1%未満)腹痛、消化不良、膵炎。
7). 肝胆道系障害:(1%〜5%未満)肝機能検査値異常、肝障害、(1%未満)黄疸、肝炎。
8). 皮膚及び皮下組織障害:(1%〜5%未満)ざ瘡、(1%未満)血管神経性浮腫、発疹、(頻度不明)白血球破砕性血管炎。
9). 筋骨格系及び結合組織障害:(1%〜5%未満)関節痛、(1%未満)筋痛。
10). 腎及び尿路障害:(1%〜5%未満)血中クレアチニン増加。
11). 全身障害及び投与局所様態:(5%以上)浮腫、(1%〜5%未満)発熱、(1%未満)疼痛。
12). 神経系障害:(1%〜5%未満)振戦。
13). その他:(頻度不明)無精子症、卵巣嚢胞。
1.1. 心移植、腎移植、肝移植における本剤の投与は、免疫抑制療法及び移植患者の管理に精通している医師又はその指導のもとで行うこと。
2.1. 本剤の成分、シロリムス又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
2.3. 生ワクチンを接種しないこと〔10.1参照〕。
8.1. シクロスポリン、タクロリムス及び副腎皮質ホルモン剤との併用に際しては、各薬剤の添付文書に記載されている「警告」、「禁忌」、「併用禁忌」、「重要な基本的注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」、「重大な副作用」等の使用上の注意を必ず確認すること。
8.2. シクロスポリンの併用により本剤のバイオアベイラビリティは有意に増加する(健康成人を対象とした単回投与試験において、本剤にシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を併用投与したところ、単独投与時に比べて本剤のAUCは168%(範囲46%〜365%)、Cmaxは82%(範囲25%〜158%)増加した)、従って、シクロスポリンの用量を変更する場合には、本剤の用量調節が必要であると考えられる〔7.4、16.7.1参照〕。なお、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤を投与中の心移植患者において、シクロスポリンの薬物動態に対する本剤の臨床的影響はごく軽微であった。
8.3. ダイレクトクロスマッチ陽性等、抗ドナー抗体等の拒絶反応のリスク因子を有する患者を対象とした適切な臨床試験は実施されていない。
8.4. 定期的に血清脂質の検査を行い、高脂血症がみられた場合には、適切な食事指導を実施し、必要により高脂血症用剤を投与するなど適切な処置を行うこと〔9.1.3参照〕。
8.5. 腎障害があらわれることがあるので、頻回に腎機能検査(クレアチニン、BUN、クレアチニンクリアランス等)及び尿検査(尿蛋白等)を行うこと〔7.6、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1参照〕。
8.6. 汎血球減少、白血球減少、貧血、血小板減少、好中球減少があらわれることがあるので定期的に血液検査(血球数算定等)を実施すること〔11.1.7参照〕。
8.7. 特に心移植患者において、心嚢液貯留があらわれることがあるので、使用に際しては心電図、心エコー、胸部X線検査等を行うこと〔11.1.13参照〕。
8.8. 高血糖の発現、糖尿病の発症又は糖尿病増悪することがあるので、定期的に空腹時血糖値の測定等を行うこと〔11.1.14参照〕。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 感染症を合併している患者:免疫抑制により感染症が悪化するおそれがある〔11.1.2参照〕。
9.1.2. 肝炎ウイルスキャリアの患者:肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化やC型肝炎悪化の徴候や症状の発現に注意すること。免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎があらわれることがある。また、HBs抗原陰性の患者において、免疫抑制剤の投与開始後にB型肝炎ウイルス再活性化による肝炎を発症した症例が報告されている。また、C型肝炎ウイルスキャリアの患者において、免疫抑制剤の投与開始後にC型肝炎悪化がみられることがある〔11.1.2参照〕。
9.1.3. 高脂血症を合併している患者:治療上の有益性が、危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(症状が悪化するおそれがある)〔8.4参照〕。
(腎機能障害患者)
腎機能障害患者:シクロスポリンの腎毒性を増強するおそれがある〔7.6、8.5、11.1.1参照〕。
(肝機能障害患者)
肝機能障害患者:血中濃度が上昇するおそれがある〔7.5、16.6.2参照〕。
本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4によって代謝され、腸管に存在するCYP3A4によっても代謝され、また、本剤はP糖蛋白(Pgp)の基質でもあるため、本剤経口投与後の吸収と消失は、CYP3A4又はPgpに影響を及ぼす薬剤により影響を受けると考えられるので、CYP3A4を誘導する薬剤又はCYP3A4を阻害する薬剤を併用したり中止する場合は、必ず本剤の血中トラフ濃度(C0)をモニタリングすること。
10.1. 併用禁忌:
生ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン、経口生ポリオワクチン、乾燥BCG等)〔2.3参照〕[免疫抑制下で生ワクチンを接種すると発症するおそれがあるので併用しないこと(免疫抑制下で生ワクチンを接種すると増殖し、病原性をあらわす可能性がある)]。
10.2. 併用注意:
1). リファンピシン[本剤の血中濃度が低下することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること(これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
2). 抗てんかん剤(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン等)、抗HIV剤(エファビレンツ、ネビラピン等)[本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、併用する場合には血中濃度を参考に投与量を調節すること(これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
3). アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、フルコナゾール等)[本剤の血中濃度が上昇することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること(代謝酵素(CYP3A4等)の抑制又は競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
4). マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)、カルシウム拮抗剤(ベラパミル、ニカルジピン、ジルチアゼム等)、HIVプロテアーゼ阻害剤(ネルフィナビル、インジナビル、ホスアンプレナビル、リトナビル等)[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、併用する場合には血中濃度を参考に投与量を調節すること(代謝酵素(CYP3A4等)の抑制又は競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
5). オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル[本剤のAUCが27倍・Cmaxが4.7倍に上昇したとの報告があるので、やむを得ない場合を除き併用は避けるが、やむを得ず併用する場合には、本剤の血中濃度をモニタリングするなど患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること(リトナビルのCYP3A4阻害作用により、本剤の代謝が阻害される)]。
6). 不活化ワクチン(不活化インフルエンザワクチン等)[ワクチンの効果が得られないおそれがある(免疫抑制作用によってワクチンに対する免疫が得られないおそれがある)]。
7). セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)[本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること(セイヨウオトギリソウの代謝酵素誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
8). グレープフルーツジュース[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤服用時は飲食を避けることが望ましい(グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することによると考えられる)]。
9). シクロスポリン〔7.2、7.4、7.6−7.8、8.1、8.2参照〕[シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤との併用により、本剤のバイオアベイラビリティが有意に増加したとの報告があるので、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤との併用に際しては7.2、7.4、7.6−7.8及び8.1、8.2項を参照し投与すること(代謝酵素(CYP3A4等)の競合により、本剤の代謝が阻害されると考えられる)]。
10). 抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン<サイモグロブリン>[過度の免疫抑制が起こることがある(共に免疫抑制作用を有するため)。海外で実施された新規心移植患者を対象とした臨床試験において、本剤、シクロスポリン(腎移植よりも高い血中トラフ濃度)及び副腎皮質ホルモン剤を併用し、サイモグロブリン(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン)導入療法を受けた患者集団において、移植後の3ヵ月間に重大な感染症の増加がみられ、特に過剰な免疫抑制状態となりやすい移植前の入院及び心室補助循環装置を必要とする患者においてより高い死亡率との関連が認められた(共に免疫抑制作用を有するため)]。
11). ミダゾラム(経口剤:国内未販売)[ミダゾラムの血中濃度が上昇するおそれがある(本剤がCYP3A4の基質となる薬剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある)]。
9.8.1. 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能(腎機能、肝機能、免疫機能等)が低下している)。
9.8.2. 腎移植患者を対象とした臨床試験における母集団薬物動態解析の結果、本剤の薬物動態に65〜70歳の患者(18例)と母集団(673例)との明らかな差は認められていない〔16.6.4参照〕。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験(ラット及びウサギ)で胚毒性・胎仔毒性を含む生殖発生毒性が認められたとの報告がある)。
(授乳婦)
授乳しないことが望ましい(動物実験(ラット)において乳汁中に移行することが報告されている)。
小児等の心移植、腎移植及び肝移植患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。また、乳児の肝移植、幼児の肝移植及び小児の肝移植患者を対象とした海外臨床試験において、成人での臨床試験と比較して移植後リンパ増殖性障害や重篤な感染症、胃腸障害の発現頻度が高いことが報告されている。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
(取扱い上の注意)
光及び湿気を避けるため、PTP包装のまま保存すること。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
ラットを用いた雄性授胎能試験では、0.5mg/kg以上の用量で精巣の形態に影響が認められたほか、5mg/kg用量(治療量の範囲内)で精子運動能減少、精子数減少及び血漿中テストステロン濃度減少し、これに伴って雄の授胎能が低下した(これらの所見は休薬による回復傾向がみられた)。
(保管上の注意)
室温保存。
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