薬効分類 | 抗悪性腫瘍薬 > 白金製剤 |
一般名 | シスプラチン50mg100mL注射液 |
薬価 | 3363円 |
メーカー | 日医工 |
最終更新 | 2021年04月改訂(第8版) |
1.シスプラチン通常療法:
1).睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌には、A法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりC法を選択する。
卵巣癌には、B法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりA法、C法を選択する。
頭頚部癌には、D法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりB法を選択する。
非小細胞肺癌には、E法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりF法を選択する。
食道癌には、B法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりA法を選択する。
子宮頚癌には、A法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりE法を選択する。
神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌には、E法を選択する。
骨肉腫には、G法を選択する。
胚細胞腫瘍には、確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法として、F法を選択する。
悪性胸膜中皮腫には、ペメトレキセドとの併用療法として、H法を選択する。
胆道癌には、ゲムシタビン塩酸塩との併用療法として、I法を選択する。
A法:シスプラチンとして15〜20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
B法:シスプラチンとして50〜70mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
C法:シスプラチンとして25〜35mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも1週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
D法:シスプラチンとして10〜20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
E法:シスプラチンとして70〜90mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
F法:シスプラチンとして20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
G法:シスプラチンとして100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
なお、A〜G法の投与量は疾患、症状により適宜増減する。
H法:シスプラチンとして75mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
なお、H法の投与量は症状により適宜減量する。
I法:シスプラチンとして25mg/u(体表面積)を60分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。
なお、I法の投与量は患者の状態により適宜減量する。
2).次の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合:
(1).悪性骨腫瘍の場合:ドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。本剤単剤では、G法を選択する。なお、投与量は症状により適宜減量する。
(2).子宮体癌の場合:ドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして50mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量は症状により適宜減量する。
(3).再発・難治性悪性リンパ腫の場合:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、1日量100mg/u(体表面積)を1日間持続静注し、少なくとも20日間休薬し、これを1クールとして投与を繰り返す。又は1日量25mg/u(体表面積)を4日間連続持続静注し、少なくとも17日間休薬し、これを1クールとして投与を繰り返す。なお、投与量及び投与日数は症状、併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
(4).小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽腫、肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍、髄芽腫等)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして60〜100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。もしくは、他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量及び投与日数は疾患、症状、併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
2.M−VAC療法:メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩及びドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンとして1回70mg/u(体表面積)を静注する。標準的な投与量及び投与方法は、メトトレキサート30mg/uを1日目に投与した後に、2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/u、ドキソルビシン塩酸塩30mg(力価)/u及びシスプラチン70mg/uを静注する。15日目及び22日目にメトトレキサート30mg/u及びビンブラスチン硫酸塩3mg/uを静注する。これを1コースとし、4週毎に繰り返す。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1.シスプラチン通常療法:
1).本剤の投与時には腎毒性を軽減するために次記の処置を行う。
(1).成人の場合:
@.本剤投与前、腎毒性を軽減するために、1000〜2000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
A.本剤投与時、腎毒性を軽減するために、投与量に応じて500〜1000mLの生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
B.本剤投与終了後、腎毒性を軽減するために、1000〜2000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
C.本剤投与中は、腎毒性を軽減するために、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与する。
なお、前記の処置よりも少量かつ短時間の補液法(ショートハイドレーション法)については、最新の「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン」等を参考にし、ショートハイドレーション法が適用可能と考えられる患者にのみ実施する。
(2).小児の場合:
@.小児の場合、本剤投与前、腎毒性を軽減するために、300〜900mL/u(体表面積)の適当な輸液を2時間以上かけて投与する。
A.本剤投与時、小児の場合、腎毒性を軽減するために、投与量に応じて300〜900mL/u(体表面積)の生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
B.小児の場合、本剤投与終了後、腎毒性を軽減するために、600mL/u(体表面積)以上の適当な輸液を3時間以上かけて投与する。
C.本剤投与中は、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与する。
2).胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(BEP療法(ブレオマイシン塩酸塩、エトポシド、シスプラチン併用療法))においては、併用薬剤の添付文書を熟読する。
3).再発又は難治性の胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(VeIP療法(ビンブラスチン硫酸塩、イホスファミド、シスプラチン併用療法))においては、併用薬剤の添付文書を熟読する。
4).再発・難治性悪性リンパ腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(悪性リンパ腫)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読する。
5).小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(小児悪性固形腫瘍)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読する。
6).悪性胸膜中皮腫に対するペメトレキセドとの併用療法においては、ペメトレキセドの添付文書を熟読する。
2.M−VAC療法:シスプラチンの投与時には腎毒性を軽減するために、シスプラチン通常療法の「用法・用量に関連する使用上の注意」の1)に準じた処置を行う。
1.シスプラチン通常療法:
1).睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂腫瘍・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頚部癌、非小細胞肺癌、食道癌、子宮頚癌、神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌、骨肉腫、胚細胞腫瘍(精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍)、悪性胸膜中皮腫、胆道癌。
2).次の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法:悪性骨腫瘍、子宮体癌<術後化学療法・転移・再発時化学療法>、再発・難治性悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍(小児横紋筋肉腫、小児神経芽腫、小児肝芽腫その他小児肝原発悪性腫瘍、小児髄芽腫等)。
2.M−VAC療法:尿路上皮癌。
<効能・効果に関連する使用上の注意>
シスプラチン通常療法:胆道癌での本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
1.重大な副作用(頻度不明)
1).急性腎障害:急性腎障害等の重篤な腎障害が現れることがあるので、頻回に臨床検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、BUN値異常、血清クレアチニン値異常、クレアチニンクリアランス値異常等が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行う。
その他、血尿、尿蛋白、乏尿、無尿が現れることがある。
2).汎血球減少等の骨髄抑制:汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少等が現れることがあるので、頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
3).ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーを起こすことがあるので、観察を十分に行い、チアノーゼ、呼吸困難、胸内苦悶、血圧低下等の症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
4).聴力低下・難聴、耳鳴:高音域の聴力低下、難聴、耳鳴等が現れることがある。また、投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量では80mg/u以上で、総投与量では300mg/uを超えるとその傾向は顕著となるので十分な観察を行い投与する。
5).うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲:うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲等の視覚障害が現れることがあるので、異常が認められた場合は投与を中止する。
6).脳梗塞、一過性脳虚血発作:脳梗塞、一過性脳虚血発作が現れることがあるので、異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行う。
7).溶血性尿毒症症候群:血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする溶血性尿毒症症候群が現れることがあるので、定期的に血液検査(血小板、赤血球等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
8).心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、不整脈:心筋梗塞、狭心症(異型狭心症を含む)、うっ血性心不全、不整脈(心室細動、心停止、心房細動、徐脈等)が現れることがあるので、観察を十分に行い、胸痛、失神、息切れ、動悸、心電図異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
9).溶血性貧血:クームス陽性の溶血性貧血が現れることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止する。
10).間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行う。
11).抗利尿ホルモン不適合分泌症候群:低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が現れることがあるので、このような症状が現れた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行う。
12).劇症肝炎、肝機能障害、黄疸:劇症肝炎、肝機能障害、黄疸が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
13).消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔:消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
14).急性膵炎:急性膵炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、血清アミラーゼ値異常、血清リパーゼ値異常等が認められた場合には投与を中止する。
15).高血糖、糖尿病の悪化:高血糖、糖尿病悪化が現れることがあり、昏睡、ケトアシドーシスを伴う重篤な症例も報告されているので、血糖値や尿糖に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う。
16).横紋筋融解症:横紋筋融解症が現れることがあるので、CK上昇(CPK上昇)、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
17).白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む):白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む)が現れることがあるので、歩行時のふらつき、舌のもつれ、痙攣、頭痛、錯乱、視覚障害等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
18).静脈血栓塞栓症:肺塞栓症、深部静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
2.その他の副作用:次のような症状が現れた場合には、症状に応じて適切な処置を行う。
1).消化器:(頻度不明)悪心・嘔吐[処置として制吐剤等の投与を行う]、食欲不振、下痢、口内炎、イレウス、腹痛、便秘、腹部膨満感、口角炎。
2).過敏症:(頻度不明)発疹、ほてり[このような症状が現れた場合には投与を中止する]。
3).精神神経系:(頻度不明)末梢神経障害(しびれ、麻痺等)、言語障害、頭痛、味覚異常、意識障害、見当識障害、痙攣、レールミッテ徴候。
4).肝臓:(頻度不明)AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al−P上昇、LDH上昇、ビリルビン上昇、γ−GTP上昇。
5).循環器:(頻度不明)動悸、頻脈、心電図異常、レイノー様症状。
6).電解質:(頻度不明)血清ナトリウム異常、血清カリウム異常、血清クロル異常、血清カルシウム異常、血清リン異常、血清マグネシウム異常等、テタニー様症状。
7).皮膚:(頻度不明)脱毛、皮膚そう痒、皮膚色素沈着、紅斑。
8).その他:(頻度不明)全身倦怠感、注射部位反応(注射部位発赤、注射部位腫脹、注射部位疼痛、注射部位壊死、注射部位硬結等)、血圧上昇、発熱、眩暈、疼痛、全身浮腫、血圧低下、吃逆、高尿酸血症、胸痛、脱水。
1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施する。適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意する。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与する。
2.本剤を含む小児悪性固形腫瘍に対するがん化学療法は、小児のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施する。
1.重篤な腎障害のある患者[腎障害を増悪させることがあり、また、腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現することがある]。
2.本剤又は他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者。
3.妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
1.腎障害のある患者[腎機能が低下しているので、副作用が強く現れることがある]。
2.肝障害のある患者[代謝機能等が低下しているので、副作用が強く現れることがある]。
3.骨髄抑制のある患者[骨髄抑制を増悪させることがある]。
4.聴器障害のある患者[聴器障害を増悪させることがある]。
5.感染症を合併している患者[骨髄抑制により、感染症を増悪させることがある]。
6.水痘患者[致命的全身症状が現れる恐れがある]。
7.高齢者。
8.小児。
9.長期間使用している患者[腎障害、骨髄抑制等が強く現れ、遷延性に推移することがある]。
(重要な基本的注意)
1.悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状がほとんど全例に起こるので、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行う。
2.急性腎障害等の腎障害、骨髄抑制等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(腎機能検査、血液検査、肝機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。また、使用が長期間にわたると副作用が強く現れ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行う。なお、フロセミドによる強制利尿を行う場合は腎障害、聴器障害が増強されることがあるので、輸液等による水分補給を十分行う。
3.感染症の発現又は感染症増悪、出血傾向の発現又は出血傾向増悪に十分注意する。
4.小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与する。
5.小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮する。
6.本剤の投与にあたってはG−CSF製剤等の適切な使用に関しても考慮する。
7.胆道癌に本剤を使用する際には、関連文献(「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書:シスプラチン(胆道癌)」等)を熟読する。
併用注意:
1.抗悪性腫瘍剤、放射線照射[骨髄抑制を増強することがあるので、併用療法を行う場合は、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意する(ともに骨髄抑制作用を有する)]。
2.放射線照射[胸部への放射線照射の併用療法を行った場合に、重篤な皮膚炎、食道炎、嚥下障害又は肺臓炎が発現したとの報告があるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、肺陰影等が出現した場合には、本剤の投与及び放射線照射を直ちに中止し、適切な処置を行う(機序は不明であるが、動物試験(マウス)で本剤による放射線感受性増加が認められている)]。
3.パクリタキセル:
1).パクリタキセル[併用時、本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、逆の順序で投与した場合より骨髄抑制が増強する恐れがあるので、併用療法を行う場合には、本剤をパクリタキセルの後に投与する(本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、パクリタキセルのクリアランスが低下し、パクリタキセルの血中濃度が上昇する)]。
2).パクリタキセル[併用により末梢神経障害が増強する恐れがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(ともに末梢神経障害を有する)]。
4.アミノグリコシド系抗生物質、バンコマイシン塩酸塩、注射用アムホテリシンB、フロセミド[腎障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(ともに腎障害を有する)]。
5.頭蓋内放射線照射[聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(機序は不明)]。
6.アミノグリコシド系抗生物質、バンコマイシン塩酸塩、フロセミド、ピレタニド[聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(ともに聴器障害を有する)]。
7.フェニトイン[フェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告があるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(機序は不明)]。
(高齢者への投与)
高齢者では、一般に生理機能(骨髄機能、肝機能、腎機能等)が低下しているので、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)
1.妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しない。また、妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導する[妊娠中に本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用された患者で、児の奇形及び胎児毒性が報告されている。また、動物実験で、ラットにおいて催奇形性、胎仔致死率増加、ウサギにおいて胎仔致死率の増加が認められ、マウスにおいて催奇形性、胎仔致死作用が報告されている]。
2.パートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導する[細菌を用いた復帰突然変異試験、ラットを用いた小核試験及びマウスを用いた染色体異常試験において、遺伝毒性が報告されている]。
3.授乳婦に投与する場合には、授乳を中止させる[母乳中に移行することが報告されている]。
(小児等への投与)
1.外国で、聴器障害が高頻度に発現するとの報告があるので、小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
2.小児胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、併用療法に付随する副作用(消化器障害、骨髄抑制、肺障害等)の発現に十分注意し、慎重に投与する。
3.小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、骨髄抑制、腎機能障害の発現に十分注意し、慎重に投与する(また、血球貪食症候群、好酸球増多、心嚢液貯留、ファンコニー症候群、小脳出血、脳浮腫、てんかん、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、無月経、呼吸窮迫症候群等が発現したとの報告があるので、発現に十分注意し、慎重に投与する)。
(適用上の注意)
1.調製時:
1).本剤を点滴静注する際、クロルイオン濃度が低い輸液を用いる場合には、活性が低下するので必ず生理食塩液と混和する。
2).本剤を点滴静注する際、アミノ酸輸液、乳酸ナトリウムを含有する輸液を用いると分解が起こるので避ける。
3).本剤は、アルミニウムと反応して沈殿物を形成し活性が低下するので、使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いない。
4).本剤は、錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混注しない。
5).本剤は、細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚に薬液が付着した場合には、直ちに多量の流水でよく洗い流す。
2.投与時:
1).本剤は、生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和後、できるだけ速やかに投与する。
2).本剤は、光により分解するので直射日光を避ける。また、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
3).静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死等を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与する。
1.本剤は輸液と混和した後、できるだけ速やかに使用する。
2.包装開封後もバイアルを箱に入れて保存する。
3.冷蔵庫保存では結晶が析出することがある。
4.安定性試験:本品について加速試験(40℃、相対湿度75%、6カ月)を行った結果、シスプラチン注10mg「日医工」、シスプラチン注25mg「日医工」及びシスプラチン注50mg「日医工」は通常の市場流通下において3年間安定であることが推測された。
1.小児悪性固形腫瘍において、小児肝芽腫に対し1歳未満又は体重10kg未満の小児等にはシスプラチンとして1日量を3mg/kgとした報告がある。
2.本剤は、細菌を用いた復帰突然変異試験、ラットを用いた小核試験及びマウスを用いた染色体異常試験において、遺伝毒性が報告されている。
3.マウスに腹腔内投与した実験で、肺腺腫及び皮膚腫瘍が発生したとの報告がある。
4.本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用により、急性白血病(前白血病相を伴う場合もある)、骨髄異形成症候群(MDS)が発生したとの報告がある。
5.進行精巣腫瘍患者に対して本剤を総量として400mg/u以上で治療した場合には、精子濃度の回復は認められなかったとの報告がある。
遮光。
薬効分類 | 抗悪性腫瘍薬 > 白金製剤 |
一般名 | シスプラチン50mg100mL注射液 |
薬価 | 3363円 |
メーカー | 日医工 |
最終更新 | 2021年04月改訂(第8版) |
1.シスプラチン通常療法:
1).睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌には、A法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりC法を選択する。
卵巣癌には、B法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりA法、C法を選択する。
頭頚部癌には、D法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりB法を選択する。
非小細胞肺癌には、E法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりF法を選択する。
食道癌には、B法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりA法を選択する。
子宮頚癌には、A法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりE法を選択する。
神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌には、E法を選択する。
骨肉腫には、G法を選択する。
胚細胞腫瘍には、確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法として、F法を選択する。
悪性胸膜中皮腫には、ペメトレキセドとの併用療法として、H法を選択する。
胆道癌には、ゲムシタビン塩酸塩との併用療法として、I法を選択する。
A法:シスプラチンとして15〜20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
B法:シスプラチンとして50〜70mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
C法:シスプラチンとして25〜35mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも1週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
D法:シスプラチンとして10〜20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
E法:シスプラチンとして70〜90mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
F法:シスプラチンとして20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
G法:シスプラチンとして100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
なお、A〜G法の投与量は疾患、症状により適宜増減する。
H法:シスプラチンとして75mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
なお、H法の投与量は症状により適宜減量する。
I法:シスプラチンとして25mg/u(体表面積)を60分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。
なお、I法の投与量は患者の状態により適宜減量する。
2).次の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合:
(1).悪性骨腫瘍の場合:ドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。本剤単剤では、G法を選択する。なお、投与量は症状により適宜減量する。
(2).子宮体癌の場合:ドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして50mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量は症状により適宜減量する。
(3).再発・難治性悪性リンパ腫の場合:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、1日量100mg/u(体表面積)を1日間持続静注し、少なくとも20日間休薬し、これを1クールとして投与を繰り返す。又は1日量25mg/u(体表面積)を4日間連続持続静注し、少なくとも17日間休薬し、これを1クールとして投与を繰り返す。なお、投与量及び投与日数は症状、併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
(4).小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽腫、肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍、髄芽腫等)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして60〜100mg/u(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。もしくは、他の抗悪性腫瘍剤との併用において、シスプラチンの投与量及び投与方法は、シスプラチンとして20mg/u(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量及び投与日数は疾患、症状、併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
2.M−VAC療法:メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩及びドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンとして1回70mg/u(体表面積)を静注する。標準的な投与量及び投与方法は、メトトレキサート30mg/uを1日目に投与した後に、2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/u、ドキソルビシン塩酸塩30mg(力価)/u及びシスプラチン70mg/uを静注する。15日目及び22日目にメトトレキサート30mg/u及びビンブラスチン硫酸塩3mg/uを静注する。これを1コースとし、4週毎に繰り返す。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1.シスプラチン通常療法:
1).本剤の投与時には腎毒性を軽減するために次記の処置を行う。
(1).成人の場合:
@.本剤投与前、腎毒性を軽減するために、1000〜2000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
A.本剤投与時、腎毒性を軽減するために、投与量に応じて500〜1000mLの生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
B.本剤投与終了後、腎毒性を軽減するために、1000〜2000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
C.本剤投与中は、腎毒性を軽減するために、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与する。
なお、前記の処置よりも少量かつ短時間の補液法(ショートハイドレーション法)については、最新の「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン」等を参考にし、ショートハイドレーション法が適用可能と考えられる患者にのみ実施する。
(2).小児の場合:
@.小児の場合、本剤投与前、腎毒性を軽減するために、300〜900mL/u(体表面積)の適当な輸液を2時間以上かけて投与する。
A.本剤投与時、小児の場合、腎毒性を軽減するために、投与量に応じて300〜900mL/u(体表面積)の生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
B.小児の場合、本剤投与終了後、腎毒性を軽減するために、600mL/u(体表面積)以上の適当な輸液を3時間以上かけて投与する。
C.本剤投与中は、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与する。
2).胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(BEP療法(ブレオマイシン塩酸塩、エトポシド、シスプラチン併用療法))においては、併用薬剤の添付文書を熟読する。
3).再発又は難治性の胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(VeIP療法(ビンブラスチン硫酸塩、イホスファミド、シスプラチン併用療法))においては、併用薬剤の添付文書を熟読する。
4).再発・難治性悪性リンパ腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(悪性リンパ腫)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読する。
5).小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(小児悪性固形腫瘍)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読する。
6).悪性胸膜中皮腫に対するペメトレキセドとの併用療法においては、ペメトレキセドの添付文書を熟読する。
2.M−VAC療法:シスプラチンの投与時には腎毒性を軽減するために、シスプラチン通常療法の「用法・用量に関連する使用上の注意」の1)に準じた処置を行う。
1.シスプラチン通常療法:
1).睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂腫瘍・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頚部癌、非小細胞肺癌、食道癌、子宮頚癌、神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌、骨肉腫、胚細胞腫瘍(精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍)、悪性胸膜中皮腫、胆道癌。
2).次の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法:悪性骨腫瘍、子宮体癌<術後化学療法・転移・再発時化学療法>、再発・難治性悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍(小児横紋筋肉腫、小児神経芽腫、小児肝芽腫その他小児肝原発悪性腫瘍、小児髄芽腫等)。
2.M−VAC療法:尿路上皮癌。
<効能・効果に関連する使用上の注意>
シスプラチン通常療法:胆道癌での本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
1.重大な副作用(頻度不明)
1).急性腎障害:急性腎障害等の重篤な腎障害が現れることがあるので、頻回に臨床検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、BUN値異常、血清クレアチニン値異常、クレアチニンクリアランス値異常等が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行う。
その他、血尿、尿蛋白、乏尿、無尿が現れることがある。
2).汎血球減少等の骨髄抑制:汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少等が現れることがあるので、頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
3).ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーを起こすことがあるので、観察を十分に行い、チアノーゼ、呼吸困難、胸内苦悶、血圧低下等の症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
4).聴力低下・難聴、耳鳴:高音域の聴力低下、難聴、耳鳴等が現れることがある。また、投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量では80mg/u以上で、総投与量では300mg/uを超えるとその傾向は顕著となるので十分な観察を行い投与する。
5).うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲:うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲等の視覚障害が現れることがあるので、異常が認められた場合は投与を中止する。
6).脳梗塞、一過性脳虚血発作:脳梗塞、一過性脳虚血発作が現れることがあるので、異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行う。
7).溶血性尿毒症症候群:血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする溶血性尿毒症症候群が現れることがあるので、定期的に血液検査(血小板、赤血球等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
8).心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、不整脈:心筋梗塞、狭心症(異型狭心症を含む)、うっ血性心不全、不整脈(心室細動、心停止、心房細動、徐脈等)が現れることがあるので、観察を十分に行い、胸痛、失神、息切れ、動悸、心電図異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
9).溶血性貧血:クームス陽性の溶血性貧血が現れることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止する。
10).間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行う。
11).抗利尿ホルモン不適合分泌症候群:低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が現れることがあるので、このような症状が現れた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行う。
12).劇症肝炎、肝機能障害、黄疸:劇症肝炎、肝機能障害、黄疸が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
13).消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔:消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。
14).急性膵炎:急性膵炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、血清アミラーゼ値異常、血清リパーゼ値異常等が認められた場合には投与を中止する。
15).高血糖、糖尿病の悪化:高血糖、糖尿病悪化が現れることがあり、昏睡、ケトアシドーシスを伴う重篤な症例も報告されているので、血糖値や尿糖に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う。
16).横紋筋融解症:横紋筋融解症が現れることがあるので、CK上昇(CPK上昇)、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
17).白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む):白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む)が現れることがあるので、歩行時のふらつき、舌のもつれ、痙攣、頭痛、錯乱、視覚障害等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
18).静脈血栓塞栓症:肺塞栓症、深部静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
2.その他の副作用:次のような症状が現れた場合には、症状に応じて適切な処置を行う。
1).消化器:(頻度不明)悪心・嘔吐[処置として制吐剤等の投与を行う]、食欲不振、下痢、口内炎、イレウス、腹痛、便秘、腹部膨満感、口角炎。
2).過敏症:(頻度不明)発疹、ほてり[このような症状が現れた場合には投与を中止する]。
3).精神神経系:(頻度不明)末梢神経障害(しびれ、麻痺等)、言語障害、頭痛、味覚異常、意識障害、見当識障害、痙攣、レールミッテ徴候。
4).肝臓:(頻度不明)AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al−P上昇、LDH上昇、ビリルビン上昇、γ−GTP上昇。
5).循環器:(頻度不明)動悸、頻脈、心電図異常、レイノー様症状。
6).電解質:(頻度不明)血清ナトリウム異常、血清カリウム異常、血清クロル異常、血清カルシウム異常、血清リン異常、血清マグネシウム異常等、テタニー様症状。
7).皮膚:(頻度不明)脱毛、皮膚そう痒、皮膚色素沈着、紅斑。
8).その他:(頻度不明)全身倦怠感、注射部位反応(注射部位発赤、注射部位腫脹、注射部位疼痛、注射部位壊死、注射部位硬結等)、血圧上昇、発熱、眩暈、疼痛、全身浮腫、血圧低下、吃逆、高尿酸血症、胸痛、脱水。
1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施する。適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意する。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与する。
2.本剤を含む小児悪性固形腫瘍に対するがん化学療法は、小児のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施する。
1.重篤な腎障害のある患者[腎障害を増悪させることがあり、また、腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現することがある]。
2.本剤又は他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者。
3.妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
1.腎障害のある患者[腎機能が低下しているので、副作用が強く現れることがある]。
2.肝障害のある患者[代謝機能等が低下しているので、副作用が強く現れることがある]。
3.骨髄抑制のある患者[骨髄抑制を増悪させることがある]。
4.聴器障害のある患者[聴器障害を増悪させることがある]。
5.感染症を合併している患者[骨髄抑制により、感染症を増悪させることがある]。
6.水痘患者[致命的全身症状が現れる恐れがある]。
7.高齢者。
8.小児。
9.長期間使用している患者[腎障害、骨髄抑制等が強く現れ、遷延性に推移することがある]。
(重要な基本的注意)
1.悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状がほとんど全例に起こるので、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行う。
2.急性腎障害等の腎障害、骨髄抑制等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(腎機能検査、血液検査、肝機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。また、使用が長期間にわたると副作用が強く現れ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行う。なお、フロセミドによる強制利尿を行う場合は腎障害、聴器障害が増強されることがあるので、輸液等による水分補給を十分行う。
3.感染症の発現又は感染症増悪、出血傾向の発現又は出血傾向増悪に十分注意する。
4.小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与する。
5.小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮する。
6.本剤の投与にあたってはG−CSF製剤等の適切な使用に関しても考慮する。
7.胆道癌に本剤を使用する際には、関連文献(「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書:シスプラチン(胆道癌)」等)を熟読する。
併用注意:
1.抗悪性腫瘍剤、放射線照射[骨髄抑制を増強することがあるので、併用療法を行う場合は、患者の状態を観察しながら、減量するなど用量に注意する(ともに骨髄抑制作用を有する)]。
2.放射線照射[胸部への放射線照射の併用療法を行った場合に、重篤な皮膚炎、食道炎、嚥下障害又は肺臓炎が発現したとの報告があるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、肺陰影等が出現した場合には、本剤の投与及び放射線照射を直ちに中止し、適切な処置を行う(機序は不明であるが、動物試験(マウス)で本剤による放射線感受性増加が認められている)]。
3.パクリタキセル:
1).パクリタキセル[併用時、本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、逆の順序で投与した場合より骨髄抑制が増強する恐れがあるので、併用療法を行う場合には、本剤をパクリタキセルの後に投与する(本剤をパクリタキセルの前に投与した場合、パクリタキセルのクリアランスが低下し、パクリタキセルの血中濃度が上昇する)]。
2).パクリタキセル[併用により末梢神経障害が増強する恐れがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する(ともに末梢神経障害を有する)]。
4.アミノグリコシド系抗生物質、バンコマイシン塩酸塩、注射用アムホテリシンB、フロセミド[腎障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(ともに腎障害を有する)]。
5.頭蓋内放射線照射[聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(機序は不明)]。
6.アミノグリコシド系抗生物質、バンコマイシン塩酸塩、フロセミド、ピレタニド[聴器障害が増強することがあるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(ともに聴器障害を有する)]。
7.フェニトイン[フェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告があるので、併用療法を行う場合は慎重に投与する(機序は不明)]。
(高齢者への投与)
高齢者では、一般に生理機能(骨髄機能、肝機能、腎機能等)が低下しているので、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)
1.妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しない。また、妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導する[妊娠中に本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用された患者で、児の奇形及び胎児毒性が報告されている。また、動物実験で、ラットにおいて催奇形性、胎仔致死率増加、ウサギにおいて胎仔致死率の増加が認められ、マウスにおいて催奇形性、胎仔致死作用が報告されている]。
2.パートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導する[細菌を用いた復帰突然変異試験、ラットを用いた小核試験及びマウスを用いた染色体異常試験において、遺伝毒性が報告されている]。
3.授乳婦に投与する場合には、授乳を中止させる[母乳中に移行することが報告されている]。
(小児等への投与)
1.外国で、聴器障害が高頻度に発現するとの報告があるので、小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
2.小児胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、併用療法に付随する副作用(消化器障害、骨髄抑制、肺障害等)の発現に十分注意し、慎重に投与する。
3.小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては、骨髄抑制、腎機能障害の発現に十分注意し、慎重に投与する(また、血球貪食症候群、好酸球増多、心嚢液貯留、ファンコニー症候群、小脳出血、脳浮腫、てんかん、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、無月経、呼吸窮迫症候群等が発現したとの報告があるので、発現に十分注意し、慎重に投与する)。
(適用上の注意)
1.調製時:
1).本剤を点滴静注する際、クロルイオン濃度が低い輸液を用いる場合には、活性が低下するので必ず生理食塩液と混和する。
2).本剤を点滴静注する際、アミノ酸輸液、乳酸ナトリウムを含有する輸液を用いると分解が起こるので避ける。
3).本剤は、アルミニウムと反応して沈殿物を形成し活性が低下するので、使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いない。
4).本剤は、錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混注しない。
5).本剤は、細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚に薬液が付着した場合には、直ちに多量の流水でよく洗い流す。
2.投与時:
1).本剤は、生理食塩液又はブドウ糖−食塩液に混和後、できるだけ速やかに投与する。
2).本剤は、光により分解するので直射日光を避ける。また、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
3).静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死等を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与する。
1.本剤は輸液と混和した後、できるだけ速やかに使用する。
2.包装開封後もバイアルを箱に入れて保存する。
3.冷蔵庫保存では結晶が析出することがある。
4.安定性試験:本品について加速試験(40℃、相対湿度75%、6カ月)を行った結果、シスプラチン注10mg「日医工」、シスプラチン注25mg「日医工」及びシスプラチン注50mg「日医工」は通常の市場流通下において3年間安定であることが推測された。
1.小児悪性固形腫瘍において、小児肝芽腫に対し1歳未満又は体重10kg未満の小児等にはシスプラチンとして1日量を3mg/kgとした報告がある。
2.本剤は、細菌を用いた復帰突然変異試験、ラットを用いた小核試験及びマウスを用いた染色体異常試験において、遺伝毒性が報告されている。
3.マウスに腹腔内投与した実験で、肺腺腫及び皮膚腫瘍が発生したとの報告がある。
4.本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用により、急性白血病(前白血病相を伴う場合もある)、骨髄異形成症候群(MDS)が発生したとの報告がある。
5.進行精巣腫瘍患者に対して本剤を総量として400mg/u以上で治療した場合には、精子濃度の回復は認められなかったとの報告がある。
遮光。
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