内容
監修医師

呼吸困難感 / 胸痛 > 院内肺炎

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  • 細菌性肺炎はCAPHAPVAPに大別!
  • 起炎菌が異なるため、 治療法も異なる!
  • HAP=PIPC/TAZではない!

病態・疫学

文字通り院内で発生する肺炎であり、 市中肺炎とは起炎菌が全く異なる. 以下それぞれの定義.

①市中肺炎(CAP)

②院内肺炎(HAP)

  • Hospital-acquired pneumonia
  • 入院後48時間以上経過して発症した肺炎

③人工呼吸器関連肺(VAP)

  • Ventilator-associated pneumonia
  • 気管挿管後から発症した肺炎

④医療・介護関連肺炎(NHCAP)

  • Nursing and healthcare-associated pneumonia
  • ④は一般診療で用いることは稀な用語

HAPにおける多剤耐性菌のリスク因子

  1. 90日以内の⼊院
  2. 5日以上の入院
  3. 居住地や病院内における耐性菌の頻度高
  4. 医療ケア関連肺炎のリスク因子の存在*
*90日以内に2日以上の入院、ナーシングホームまたは長期療養施設に居住、在宅点滴療法、30日以内の維持透析、在宅における総称治療、家族内の多剤耐性菌感染
死亡率はCAP(10%)に比べてHCAP(19.8%)、HAP(18.8%)、VAP(29.3%)と有意に高い¹⁾

診断

  • 胸部レントゲンまたは胸部単純CT、 ⾎液培養2セット喀痰グラム染⾊を行う.
院内肺炎
  • 喀痰グラム染色は必須(特にSPACEと呼ばれるグラム陰性桿菌に注意する).
  • 培養結果が出たらde-escalationを行う.
  • 院内肺炎で肺炎球菌、レジオネラ、クラミジア、マイコプラズマが起炎菌の可能性は低い.
  • 適切な喀痰が採取できていなければ、3%⾷塩⽔ネブライザーなど誘発喀痰を試みる.
  • 気管⽀鏡での採痰は、ルーチンで行わない

SPACE

  • Serratia|セラチア
  • Pseudomoas|緑膿菌
  • Acinetobacter|アシネトバクター
  • Citrobacter|サイトロバクター
  • Enterobacter|エンテロバクター

治療

エンピリックな治療例 (腎機能正常)

患者の多剤耐性菌のリスク、 重症度、 グラム染⾊所⾒から総合的に抗菌薬を決定する.

※多剤耐性菌のリスク…90⽇以内の静注抗菌薬使⽤、⼊院5⽇⽬以降、地域の耐性菌率が⾼い、免疫抑制状態、医療関連肺炎のリスクのある場合(90日以内の⼊院、高齢者施設入所、維持透析など)

(1)軽症 かつ 多剤耐性菌リスク(−) かつ 喀痰グラム染⾊で緑膿菌を疑う細いGNRを認めない

(2)重症 または 多剤耐性菌リスク(+) または 喀痰グラム染⾊で緑膿菌を疑う細いGNRを認める

(3) カルバペネムは第一選択ではないが、PIPC/TAZやCFPMを使⽤しても改善せず、かつ喀痰グラム染⾊でGNRを優位に認める場合に使用

(4)喀痰グラム染⾊で 黄色ブドウ球菌を疑うGPC clusterを大量認める場合

その他のポイント

  • 起因菌・感受性が判明し、 患者が安定していれば de-escalation を⾏う.
  • ⼀般に治療期間は7⽇間で、 呼吸状態などが改善してれば抗菌薬はここで中⽌してよい.
  • CRPやレントゲンが正常化するまで治療する必要はない.
  • 菌⾎症合併症例緑膿菌肺炎では14⽇間の治療が必要になる.
誤診が多く、他の疾患を十分除外する必要がある疾患である. 抗菌薬投与前に適切に採取された喀痰培養が陰性の場合は、肺炎ではなく その他の疾患を考える.

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出典

  1. Chest 2005;128:3854-3862.

最終更新:2023年3月23日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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院内肺炎

Hospital-acquired pneumonia
2022年06月28日更新

呼吸困難感 / 胸痛 > 院内肺炎

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  • 細菌性肺炎はCAPHAPVAPに大別!
  • 起炎菌が異なるため、 治療法も異なる!
  • HAP=PIPC/TAZではない!

病態・疫学

文字通り院内で発生する肺炎であり、 市中肺炎とは起炎菌が全く異なる. 以下それぞれの定義.

①市中肺炎(CAP)

②院内肺炎(HAP)

  • Hospital-acquired pneumonia
  • 入院後48時間以上経過して発症した肺炎

③人工呼吸器関連肺(VAP)

  • Ventilator-associated pneumonia
  • 気管挿管後から発症した肺炎

④医療・介護関連肺炎(NHCAP)

  • Nursing and healthcare-associated pneumonia
  • ④は一般診療で用いることは稀な用語

HAPにおける多剤耐性菌のリスク因子

  1. 90日以内の⼊院
  2. 5日以上の入院
  3. 居住地や病院内における耐性菌の頻度高
  4. 医療ケア関連肺炎のリスク因子の存在*
*90日以内に2日以上の入院、ナーシングホームまたは長期療養施設に居住、在宅点滴療法、30日以内の維持透析、在宅における総称治療、家族内の多剤耐性菌感染
死亡率はCAP(10%)に比べてHCAP(19.8%)、HAP(18.8%)、VAP(29.3%)と有意に高い¹⁾

診断

  • 胸部レントゲンまたは胸部単純CT、 ⾎液培養2セット喀痰グラム染⾊を行う.
院内肺炎
  • 喀痰グラム染色は必須(特にSPACEと呼ばれるグラム陰性桿菌に注意する).
  • 培養結果が出たらde-escalationを行う.
  • 院内肺炎で肺炎球菌、レジオネラ、クラミジア、マイコプラズマが起炎菌の可能性は低い.
  • 適切な喀痰が採取できていなければ、3%⾷塩⽔ネブライザーなど誘発喀痰を試みる.
  • 気管⽀鏡での採痰は、ルーチンで行わない

SPACE

  • Serratia|セラチア
  • Pseudomoas|緑膿菌
  • Acinetobacter|アシネトバクター
  • Citrobacter|サイトロバクター
  • Enterobacter|エンテロバクター

治療

エンピリックな治療例 (腎機能正常)

患者の多剤耐性菌のリスク、 重症度、 グラム染⾊所⾒から総合的に抗菌薬を決定する.

※多剤耐性菌のリスク…90⽇以内の静注抗菌薬使⽤、⼊院5⽇⽬以降、地域の耐性菌率が⾼い、免疫抑制状態、医療関連肺炎のリスクのある場合(90日以内の⼊院、高齢者施設入所、維持透析など)

(1)軽症 かつ 多剤耐性菌リスク(−) かつ 喀痰グラム染⾊で緑膿菌を疑う細いGNRを認めない

(2)重症 または 多剤耐性菌リスク(+) または 喀痰グラム染⾊で緑膿菌を疑う細いGNRを認める

(3) カルバペネムは第一選択ではないが、PIPC/TAZやCFPMを使⽤しても改善せず、かつ喀痰グラム染⾊でGNRを優位に認める場合に使用

(4)喀痰グラム染⾊で 黄色ブドウ球菌を疑うGPC clusterを大量認める場合

その他のポイント

  • 起因菌・感受性が判明し、 患者が安定していれば de-escalation を⾏う.
  • ⼀般に治療期間は7⽇間で、 呼吸状態などが改善してれば抗菌薬はここで中⽌してよい.
  • CRPやレントゲンが正常化するまで治療する必要はない.
  • 菌⾎症合併症例緑膿菌肺炎では14⽇間の治療が必要になる.
誤診が多く、他の疾患を十分除外する必要がある疾患である. 抗菌薬投与前に適切に採取された喀痰培養が陰性の場合は、肺炎ではなく その他の疾患を考える.

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出典

  1. Chest 2005;128:3854-3862.

最終更新:2023年3月23日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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