内容
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  1. FNと呼ばれる! (febrile neutropenia)
  2. 緊急性の高い疾患であり直ちに診断する!
  3. 緑膿菌活性のある抗菌薬投与を行う!
  4. MASCCスコアが知られているが、 外来治療選択は慎重に!

病態・疫学

発熱性好中球減少症の定義

37.5℃以上の発熱*かつ好中球数が500/μL、 または1000/μL以下で48時間以内に500/μLまで低下すると予測される病態
*日本腫瘍学会では腋窩温37.5℃以上を採用、 IDSAでは1回の口腔温38.3℃以上/38.0℃以上が1時間持続となっている.

発熱性好中球減少症(FN)は化学療法中同種造血幹細胞移植後患者における次の病態を指す¹⁾. ただしあくまで一般的な基準であって、 これらの定義を満たしていいなくても、 個々の患者の背景や状態を考慮して、 経験的抗菌薬投与を行うか判断する.

発熱性好中球減少症の原因菌

  • 熱源、原因菌が判明するのは20~30%.
  • 緑膿菌腸内細菌グラム陽性菌 (ブドウ球菌、レンサ球菌)が代表的な原因菌.
  • 他にカンジダ、 アスペルギルス属等の真菌²⁾、 ただし、発熱初期の原因なることは稀.
  • 緊急性の高い疾患であり、 リスク評価検査治療が迅速に行われる必要がある.

身体所見

感染巣をまずは検索する. 以下の覚え方「あいうえおず (AIUEOS)」が有名.

発熱性好中球減少症 (FN)

検査

  • 静脈血培養 (抗菌薬開始前に必ず2セット)血算、 生化学、 胸部X線検査、 検尿.
  • 肺炎を疑う場合は、喀痰培養、グラム染色.
  • 中心静脈カテーテルが留置されている場合、 血液培養はカテーテル内腔から1セット、 末梢静脈から1セット.

入院適応²⁾

MASCCスコア 🔢計算ツールはこちら

21点以上で低リスク、 20点以下で高リスクであり入院推奨. 低リスクで予防的抗菌薬の内服がなく、 以下すべてに該当する場合、 外来治療を考慮することができるが、 早めの専門科フォローが推奨される.
  • 好中球減少が7日以内と予想される
  • 臓器障害がない
  • 経口薬剤投与が可能
  • 経験ある治療医、 救急センターが自宅近くに24時間体制で存在する.
  • 患者や家族の病状理解が進んでおり, 外来治療を望んでいる.

以下いずれかに該当する場合、入院治療が無難.

  • 発熱時、 すでに入院していた
  • 重大な合併症が存在する
  • バイタルサインが不安定
  • 好中球<100/μLが予想される
  • 好中球減少の7日以上の持続が予想される
  • 臓器障害
  • 原病である悪性腫瘍のコントロール良好
  • 他の感染症を合併している
  • Grade3-4の粘膜障害を合併している
  • アレムツズマブ(マブキャンパス®) を使用中

初期治療 (腎機能正常の場合) ¹⁻²⁾

以下を 好中球 500-1000/μLに回復まで継続.

外来経口治療例

*¹ CPFXの保険容量は200mg2錠2xであり、 施設方針に準じる. AMPC/CVA+AMPCはオーグメンチン+サワシリンなど「オグサワ」療法と呼ばれる.

入院点滴治療例

①~③の治療をリスクに応じて組み合わせる

①緑膿菌、ブドウ球菌カバー|以下いずれか

*² ①において、 アミノグリコシドの併用療法は腎毒性のリスクが増大することから、 本邦ガイドラインでは推奨されない. ただし、 緑膿菌敗血症が確定した場合や敗血症性ショックでは考慮する. 

②MRSAの関与を疑うとき

VCM 15-20mg/kg 8-12時間毎

*³ カテーテル関連敗血症、 重篤な粘膜障害などで考慮. FN全例での投与は推奨されない. 

③バイタルサイン不安定のとき|①②に加えて

MCFG ミカファンギン100-150mg 24時間毎

関連コンテンツ

🚑 ERマニュアル|熱性好中球減少症

📝 CTCAE|熱性好中球減少症

🔢 MASCC スコア

参考文献

  1. 日本臨床腫瘍学会 発熱性好中球減少症 (FN)治療ガイドライン 改訂第2版 ※有料
  2. サンフォード抗菌薬ガイド2021

最終更新:2024年4月14日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人

発熱性好中球減少症 (FN)
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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発熱性好中球減少症 (FN)
発熱性好中球減少症 (FN)

発熱性好中球減少症 (FN)

febrile neutropenia
2022年02月28日更新
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  1. FNと呼ばれる! (febrile neutropenia)
  2. 緊急性の高い疾患であり直ちに診断する!
  3. 緑膿菌活性のある抗菌薬投与を行う!
  4. MASCCスコアが知られているが、 外来治療選択は慎重に!

病態・疫学

発熱性好中球減少症の定義

37.5℃以上の発熱*かつ好中球数が500/μL、 または1000/μL以下で48時間以内に500/μLまで低下すると予測される病態
*日本腫瘍学会では腋窩温37.5℃以上を採用、 IDSAでは1回の口腔温38.3℃以上/38.0℃以上が1時間持続となっている.

発熱性好中球減少症(FN)は化学療法中同種造血幹細胞移植後患者における次の病態を指す¹⁾. ただしあくまで一般的な基準であって、 これらの定義を満たしていいなくても、 個々の患者の背景や状態を考慮して、 経験的抗菌薬投与を行うか判断する.

発熱性好中球減少症の原因菌

  • 熱源、原因菌が判明するのは20~30%.
  • 緑膿菌腸内細菌グラム陽性菌 (ブドウ球菌、レンサ球菌)が代表的な原因菌.
  • 他にカンジダ、 アスペルギルス属等の真菌²⁾、 ただし、発熱初期の原因なることは稀.
  • 緊急性の高い疾患であり、 リスク評価検査治療が迅速に行われる必要がある.

身体所見

感染巣をまずは検索する. 以下の覚え方「あいうえおず (AIUEOS)」が有名.

発熱性好中球減少症 (FN)

検査

  • 静脈血培養 (抗菌薬開始前に必ず2セット)血算、 生化学、 胸部X線検査、 検尿.
  • 肺炎を疑う場合は、喀痰培養、グラム染色.
  • 中心静脈カテーテルが留置されている場合、 血液培養はカテーテル内腔から1セット、 末梢静脈から1セット.

入院適応²⁾

MASCCスコア 🔢計算ツールはこちら

21点以上で低リスク、 20点以下で高リスクであり入院推奨. 低リスクで予防的抗菌薬の内服がなく、 以下すべてに該当する場合、 外来治療を考慮することができるが、 早めの専門科フォローが推奨される.
  • 好中球減少が7日以内と予想される
  • 臓器障害がない
  • 経口薬剤投与が可能
  • 経験ある治療医、 救急センターが自宅近くに24時間体制で存在する.
  • 患者や家族の病状理解が進んでおり, 外来治療を望んでいる.

以下いずれかに該当する場合、入院治療が無難.

  • 発熱時、 すでに入院していた
  • 重大な合併症が存在する
  • バイタルサインが不安定
  • 好中球<100/μLが予想される
  • 好中球減少の7日以上の持続が予想される
  • 臓器障害
  • 原病である悪性腫瘍のコントロール良好
  • 他の感染症を合併している
  • Grade3-4の粘膜障害を合併している
  • アレムツズマブ(マブキャンパス®) を使用中

初期治療 (腎機能正常の場合) ¹⁻²⁾

以下を 好中球 500-1000/μLに回復まで継続.

外来経口治療例

*¹ CPFXの保険容量は200mg2錠2xであり、 施設方針に準じる. AMPC/CVA+AMPCはオーグメンチン+サワシリンなど「オグサワ」療法と呼ばれる.

入院点滴治療例

①~③の治療をリスクに応じて組み合わせる

①緑膿菌、ブドウ球菌カバー|以下いずれか

*² ①において、 アミノグリコシドの併用療法は腎毒性のリスクが増大することから、 本邦ガイドラインでは推奨されない. ただし、 緑膿菌敗血症が確定した場合や敗血症性ショックでは考慮する. 

②MRSAの関与を疑うとき

VCM 15-20mg/kg 8-12時間毎

*³ カテーテル関連敗血症、 重篤な粘膜障害などで考慮. FN全例での投与は推奨されない. 

③バイタルサイン不安定のとき|①②に加えて

MCFG ミカファンギン100-150mg 24時間毎

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🔢 MASCC スコア

参考文献

  1. 日本臨床腫瘍学会 発熱性好中球減少症 (FN)治療ガイドライン 改訂第2版 ※有料
  2. サンフォード抗菌薬ガイド2021

最終更新:2024年4月14日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人

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