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監修医師

呼吸困難感 / 胸痛 > 市中肺炎

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  1. 喀痰グラム染色と培養はセットで行う
  2. 非定型肺炎と定形肺炎の区別をつける
  3. 肺炎の鑑別診断を覚える
  4. 入院適応はスコアだけで決めない

1. 病態・疫学

(1) 市中肺炎の分類

市中肺炎

(2) 市中肺炎の原因微生物

市中肺炎
>> 詳細はこちらを参照ください.

(3) 市中肺炎の症状

発熱、咳嗽、喀痰増加、胸膜性胸痛、呼吸困難など

2. 診断

臨床像+胸部レントゲン写真または胸部CTで、 肺に陰影を認めることで診断. ただし、脱水が強いと陰影が見られない可能性あり.
市中肺炎

(1) 鑑別診断

▼感染症

ウイルス肺炎*、真菌性肺炎**、肺結核、MACなど

*COVID-19、ライノ、RS、コロナ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモ、アデノ **ニューモシスチス肺炎など

▼非感染症

うっ血性心不全、肺塞栓症、過敏性肺臓炎、間質性肺炎、肺がん、リンパ腫、血管内リンパ腫など

(2) 微生物検査

市中肺炎

>> 詳細はこちらを参照ください.

▼尿中肺炎球菌抗原

特異度が高く、喀痰喀出が難しい場合などに有効である

▼尿中レジオネラ抗原

感度・特異度ともに高いが、 重症例で検査体制が整っていれば、 喀痰レジオネラPCR陰性を確認するまで治療継続考慮

(3) 定形肺炎 or 非定型肺炎

学会提唱の🔢非定型肺炎スコア (マイコプラズマ肺炎予測スコア)から推定

ルーチンで非定型肺炎をカバーする必要はない
①年齢60歳未満
②基礎疾患がない、 あるいは軽微
③頑固な咳
④胸部聴診所見が乏しい
⑤迅速診断法で原因菌が証明されない*
⑥末梢白血球数が10,000/μL未満である
*マイコプラズマ抗原または遺伝子検査陽性を除く

▼判断基準

≧5項目 : マイコプラズマ肺炎疑い

3-4項目 : 鑑別困難または混合感染を考慮

≦2項目 : 細菌性肺炎疑い

成人肺炎診療ガイドライン2024.より引用

(4) その他

ブドウ球菌肺炎は稀で、 喀痰培養から検出されてもカバー不要なことが多い。 ただし、 稀に空洞病変を伴う重症肺炎をきたすので注意が必要。

レジオネラ肺炎については抗原検査の感度も高くなく、 🔢レジオネラ診断予測スコアを用いてレジオネラ肺炎を拾い上げ、 治療方針を決定することが推奨される。

・ 男性        +1点
・ 咳嗽なし        +1点
・ 呼吸困難感あり     +1点
・ CRP値≧18mg/dL  +1点
・ Na値<134 mmol/L   +1点
・ LDH 値≧ 260U/L   +1点

▼判断基準

合計3点以上でレジオネラ肺炎を疑う

J Infect Chemother. 2019 Jun;25(6):407-412より引用

3. 治療

(1) 入院加療 or 外来加療

🔢A-DROP、 🔢CURB-65などの重症度分類を活用する。 重症患者については、 🔢SOFAスコア、 🔢qSOFAによる敗血症予測も重要。

市中肺炎
0点 : 軽症 (外来治療)、 1~2点 : 中等症 (外来or入院治療)、 3点 : 重症 (入院治療)、 4~5点 : 超重症 (ICU入院) ※ただしショックがあれば超重症とする.

(1) 内服治療例

原因菌を想定し以下いずれかを選択.
BLNAR (Haemophilus influenzae) のカバー目的に併用
非定型肺炎らしいとき

(2) 入院治療例

①肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ

原因菌を想定し以下いずれかを選択.
喀痰培養判明後に必ずde-escalation. H. influenzae の 5~6 割はBLNAI/BLNARであり、 この場合CTRXが良い.

②マイコプラズマ

AZMなどマクロライド系への耐性が進んでいるため、テトラサイクリン系の投与を検討.

③レジオネラ肺炎

非定型肺炎の中でも特に重篤.

4. 関連コンテンツ

🚑 ERマニュアル|呼吸困難感

🚑 ERマニュアル|胸痛

🚑 ERマニュアル|市中肺炎

🚑 ERマニュアル|院内肺炎

🚑 ERマニュアル|COVID-19

🔢 A-DROP スコア

🔢 CURB-65 スコア

🔢 PSI (Pneumonia Severity Index)

最終更新 : 2024年3月23日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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市中肺炎

Community-acquired pneumonia
2022年06月27日更新

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本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  1. 喀痰グラム染色と培養はセットで行う
  2. 非定型肺炎と定形肺炎の区別をつける
  3. 肺炎の鑑別診断を覚える
  4. 入院適応はスコアだけで決めない

1. 病態・疫学

(1) 市中肺炎の分類

市中肺炎

(2) 市中肺炎の原因微生物

市中肺炎
>> 詳細はこちらを参照ください.

(3) 市中肺炎の症状

発熱、咳嗽、喀痰増加、胸膜性胸痛、呼吸困難など

2. 診断

臨床像+胸部レントゲン写真または胸部CTで、 肺に陰影を認めることで診断. ただし、脱水が強いと陰影が見られない可能性あり.
市中肺炎

(1) 鑑別診断

▼感染症

ウイルス肺炎*、真菌性肺炎**、肺結核、MACなど

*COVID-19、ライノ、RS、コロナ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモ、アデノ **ニューモシスチス肺炎など

▼非感染症

うっ血性心不全、肺塞栓症、過敏性肺臓炎、間質性肺炎、肺がん、リンパ腫、血管内リンパ腫など

(2) 微生物検査

市中肺炎

>> 詳細はこちらを参照ください.

▼尿中肺炎球菌抗原

特異度が高く、喀痰喀出が難しい場合などに有効である

▼尿中レジオネラ抗原

感度・特異度ともに高いが、 重症例で検査体制が整っていれば、 喀痰レジオネラPCR陰性を確認するまで治療継続考慮

(3) 定形肺炎 or 非定型肺炎

学会提唱の🔢非定型肺炎スコア (マイコプラズマ肺炎予測スコア)から推定

ルーチンで非定型肺炎をカバーする必要はない
①年齢60歳未満
②基礎疾患がない、 あるいは軽微
③頑固な咳
④胸部聴診所見が乏しい
⑤迅速診断法で原因菌が証明されない*
⑥末梢白血球数が10,000/μL未満である
*マイコプラズマ抗原または遺伝子検査陽性を除く

▼判断基準

≧5項目 : マイコプラズマ肺炎疑い

3-4項目 : 鑑別困難または混合感染を考慮

≦2項目 : 細菌性肺炎疑い

成人肺炎診療ガイドライン2024.より引用

(4) その他

ブドウ球菌肺炎は稀で、 喀痰培養から検出されてもカバー不要なことが多い。 ただし、 稀に空洞病変を伴う重症肺炎をきたすので注意が必要。

レジオネラ肺炎については抗原検査の感度も高くなく、 🔢レジオネラ診断予測スコアを用いてレジオネラ肺炎を拾い上げ、 治療方針を決定することが推奨される。

・ 男性        +1点
・ 咳嗽なし        +1点
・ 呼吸困難感あり     +1点
・ CRP値≧18mg/dL  +1点
・ Na値<134 mmol/L   +1点
・ LDH 値≧ 260U/L   +1点

▼判断基準

合計3点以上でレジオネラ肺炎を疑う

J Infect Chemother. 2019 Jun;25(6):407-412より引用

3. 治療

(1) 入院加療 or 外来加療

🔢A-DROP、 🔢CURB-65などの重症度分類を活用する。 重症患者については、 🔢SOFAスコア、 🔢qSOFAによる敗血症予測も重要。

市中肺炎
0点 : 軽症 (外来治療)、 1~2点 : 中等症 (外来or入院治療)、 3点 : 重症 (入院治療)、 4~5点 : 超重症 (ICU入院) ※ただしショックがあれば超重症とする.

(1) 内服治療例

原因菌を想定し以下いずれかを選択.
BLNAR (Haemophilus influenzae) のカバー目的に併用
非定型肺炎らしいとき

(2) 入院治療例

①肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ

原因菌を想定し以下いずれかを選択.
喀痰培養判明後に必ずde-escalation. H. influenzae の 5~6 割はBLNAI/BLNARであり、 この場合CTRXが良い.

②マイコプラズマ

AZMなどマクロライド系への耐性が進んでいるため、テトラサイクリン系の投与を検討.

③レジオネラ肺炎

非定型肺炎の中でも特に重篤.

4. 関連コンテンツ

🚑 ERマニュアル|呼吸困難感

🚑 ERマニュアル|胸痛

🚑 ERマニュアル|市中肺炎

🚑 ERマニュアル|院内肺炎

🚑 ERマニュアル|COVID-19

🔢 A-DROP スコア

🔢 CURB-65 スコア

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最終更新 : 2024年3月23日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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