内容
監修医師

胸痛 / 呼吸困難感 > 肺血栓塞栓症

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  1. 軽症PEの場合、 典型的な症状は乏しい!
  2. 常に疑いの眼を持つことが肝要!
  3. 臨床予測ルールとDダイマーを用いた漏れのない診察を心がける!

病態・疫学

多彩な臨床症状を呈する

  • 呼吸困難(73%)、 胸痛(66%)、 (37%)が主¹⁾.
  • その他、 起座呼吸(28%)、 下肢痛(44%)、 喘鳴(21%)、 喀血(13%)など¹⁾
  • 10%以下の頻度で、 AFなどの不整脈、失神(前失神)、 ショック、 心停止²⁻³⁾

ただし、無症状のこともある

  • 28研究5233例の検証で約1/3は無症状⁴⁾.
  • 中枢PEであれば呼吸困難など症状を呈しやすいが、 末梢PEでは有症状は10%程度.
  • 常に疑いの眼を持つことが肝要!

心電図変化はいずれも非特異的

  • 最も多い変化は頻脈と非特異的ST-T変化⁵⁾.
  • SⅠQⅢTⅢ右心負荷IRBBBなどが有名だが出現頻度は10%に満たず低い⁶⁾.

  • ただし、新規に上記所見や、 心房性不整脈、 下壁Q波、 前壁陰性T波などが出現した場合は、 PE予後不良のサインである⁷⁾.

CXp所見もいずれも非特異的

典型的な症状、 身体所見、 検査所見に乏しく、 常に疑いの眼を持つことが肝要!ショック、呼吸不全、 心エコー異常など重症PEの可能性がある患者では必ず除外を. 軽症患者に対しては、 臨床予測ルールとDダイマーを用いて漏れのない診察を行う.

診断アルゴリズム例

ショック、呼吸不全、 心エコー異常

肺血栓塞栓症を強く疑う場合はDダイマー不要ですぐに造影CTを行う.

その他の軽症例

PERCルールYEARSアルゴリズム、 Dダイマーから造影CTによる確定診断を行う.

その他の診断スコア

 🔢 modified Wellsスコア for PE

 🔢 YEARS アルゴリズム

 🔢 改訂Genevaスコア

 🔢 Padua 予測スコア

 🔢 PESI スコア

 🔢 PESI スコア (簡易版)

🔢 modified Wellsスコア for PE

  • 肺血栓塞栓症の診断予測スコアのひとつ.
  • もともとの3分法を2分法にしたもの.

エビデンス

  • 合計4点以上ならPEの可能性あり. 造影CT、 肺換気血流シンチグラム、 肺動脈造影等の追加の評価が必要となる.
  • 一方、合計4点未満ではPEの可能性は低いと評価し、 Dダイマーも基準値以下であれば慎重な経過観察下でCTは不要となる.
  • 過去の報告では、 4点未満の場合、 PEの確率は3%で、 4点以上では28%であった.
  • オリジナルのWellsスコアは、 低リスク(<2点)、 中等度リスク(2~6点)、 高リスク(≧6.5点)の三分法である.

原著論文

治療

  1. バイタルPESIスコア、 心エコー心筋バイオマーカーより、 早期死亡率に基づく4つの重症度分類を行う(ESCガイドライン2019).
  2. 重症度分類に応じて抗凝固療法, 再灌流療法(血栓溶解療法あるいは血栓摘除術)、入院加療外来加療を決定する.
  3. tPAを行う場合禁忌事項を確認 (消化管/尿路/後腹膜/頭蓋内/気道の出血、 2ヶ月以内の頭蓋内/脊髄手術、 2ヶ月以内の頭蓋内/脊髄障害、 頭蓋内腫瘍、 動静脈奇形、 頭蓋内動脈瘤、出血性素因、重篤な高血圧、その他慎重投与事項を確認する)
  4. 治療と同時に原因の検索も行う、 可能であればヘパリン投与前にスピッツ保存検体を採取しておく

High risk

  • 抗凝固療法 + 積極的な再灌流療法
  • tPA、外科手術、 カテーテル血栓除去

Intermediate-high risk

  • 厳重なモニター下の抗凝固療法
  • +再灌流療法の追加を検討

Intermediate-low risk

  • 抗凝固療法 (入院加療)

Low risk

  • 抗凝固療法 (可能なら外来通院、 早期退院) 

関連コンテンツ

参考文献

  1. Clinical, laboratory, roentgenographic, and electrocardiographic findings in patients with acute pulmonary embolism and no pre-existing cardiac or pulmonary disease. Chest 1991 Sep;100(3):598-603. PMID: 1909617
  2. Significance of a syncopal event. Pulmonary embolism. Postgrad Med. 2002 Jan;111(1):19-20. PMID: 11810748
  3. Syncope in patients with pulmonary embolism: comparison between patients with syncope as the presenting symptom of pulmonary embolism and patients with pulmonary embolism without syncope. Vasc Med. 2003 Nov;8(4):257-61. PMID: 15125486
  4. Silent pulmonary embolism in patients with deep venous thrombosis: a systematic review. Am J Med. 2010 May;123(5):426-31. PMID: 20399319
  5. Clinical decision rules for excluding pulmonary embolism: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2011 Oct 4;155(7):448-60.PMID: 21969343
  6. The electrocardiographic manifestations of pulmonary embolism. J Emerg Med. Jul-Aug 1988;6(4):301-7. PMID: 3225435
  7. Syncope in patients with pulmonary embolism. JAMA. 1977 Dec 5;238(23):2509-11. PMID: 578884
最終更新:2021年10月17日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人
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聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
聖路加国際病院
救急部 清水真人先生

2013年慶應義塾大学医学部を卒業。初期臨床研修修了後、2015年聖路加国際病院救急部入局。就任間もなく聖路加ベストティーチャー賞を連続受賞。救急・集中治療、 医学教育を専門とする他、Webツールの医療現場での利用に精通し、 複数の雑誌で連載を行う。

聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
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救急部 清水真人先生

2013年慶應義塾大学医学部を卒業。初期臨床研修修了後、2015年聖路加国際病院救急部入局。就任間もなく聖路加ベストティーチャー賞を連続受賞。救急・集中治療、 医学教育を専門とする他、Webツールの医療現場での利用に精通し、 複数の雑誌で連載を行う。

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ポイント

  1. 軽症PEの場合、 典型的な症状は乏しい!
  2. 常に疑いの眼を持つことが肝要!
  3. 臨床予測ルールとDダイマーを用いた漏れのない診察を心がける!

病態・疫学

多彩な臨床症状を呈する

  • 呼吸困難(73%)、 胸痛(66%)、 (37%)が主¹⁾.
  • その他、 起座呼吸(28%)、 下肢痛(44%)、 喘鳴(21%)、 喀血(13%)など¹⁾
  • 10%以下の頻度で、 AFなどの不整脈、失神(前失神)、 ショック、 心停止²⁻³⁾

ただし、無症状のこともある

  • 28研究5233例の検証で約1/3は無症状⁴⁾.
  • 中枢PEであれば呼吸困難など症状を呈しやすいが、 末梢PEでは有症状は10%程度.
  • 常に疑いの眼を持つことが肝要!

心電図変化はいずれも非特異的

  • 最も多い変化は頻脈と非特異的ST-T変化⁵⁾.
  • SⅠQⅢTⅢ右心負荷IRBBBなどが有名だが出現頻度は10%に満たず低い⁶⁾.

  • ただし、新規に上記所見や、 心房性不整脈、 下壁Q波、 前壁陰性T波などが出現した場合は、 PE予後不良のサインである⁷⁾.

CXp所見もいずれも非特異的

典型的な症状、 身体所見、 検査所見に乏しく、 常に疑いの眼を持つことが肝要!ショック、呼吸不全、 心エコー異常など重症PEの可能性がある患者では必ず除外を. 軽症患者に対しては、 臨床予測ルールとDダイマーを用いて漏れのない診察を行う.

診断アルゴリズム例

ショック、呼吸不全、 心エコー異常

肺血栓塞栓症を強く疑う場合はDダイマー不要ですぐに造影CTを行う.

その他の軽症例

PERCルールYEARSアルゴリズム、 Dダイマーから造影CTによる確定診断を行う.

その他の診断スコア

 🔢 modified Wellsスコア for PE

 🔢 YEARS アルゴリズム

 🔢 改訂Genevaスコア

 🔢 Padua 予測スコア

 🔢 PESI スコア

 🔢 PESI スコア (簡易版)

🔢 modified Wellsスコア for PE

  • 肺血栓塞栓症の診断予測スコアのひとつ.
  • もともとの3分法を2分法にしたもの.

エビデンス

  • 合計4点以上ならPEの可能性あり. 造影CT、 肺換気血流シンチグラム、 肺動脈造影等の追加の評価が必要となる.
  • 一方、合計4点未満ではPEの可能性は低いと評価し、 Dダイマーも基準値以下であれば慎重な経過観察下でCTは不要となる.
  • 過去の報告では、 4点未満の場合、 PEの確率は3%で、 4点以上では28%であった.
  • オリジナルのWellsスコアは、 低リスク(<2点)、 中等度リスク(2~6点)、 高リスク(≧6.5点)の三分法である.

原著論文

治療

  1. バイタルPESIスコア、 心エコー心筋バイオマーカーより、 早期死亡率に基づく4つの重症度分類を行う(ESCガイドライン2019).
  2. 重症度分類に応じて抗凝固療法, 再灌流療法(血栓溶解療法あるいは血栓摘除術)、入院加療外来加療を決定する.
  3. tPAを行う場合禁忌事項を確認 (消化管/尿路/後腹膜/頭蓋内/気道の出血、 2ヶ月以内の頭蓋内/脊髄手術、 2ヶ月以内の頭蓋内/脊髄障害、 頭蓋内腫瘍、 動静脈奇形、 頭蓋内動脈瘤、出血性素因、重篤な高血圧、その他慎重投与事項を確認する)
  4. 治療と同時に原因の検索も行う、 可能であればヘパリン投与前にスピッツ保存検体を採取しておく

High risk

  • 抗凝固療法 + 積極的な再灌流療法
  • tPA、外科手術、 カテーテル血栓除去

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  • 厳重なモニター下の抗凝固療法
  • +再灌流療法の追加を検討

Intermediate-low risk

  • 抗凝固療法 (入院加療)

Low risk

  • 抗凝固療法 (可能なら外来通院、 早期退院) 

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参考文献

  1. Clinical, laboratory, roentgenographic, and electrocardiographic findings in patients with acute pulmonary embolism and no pre-existing cardiac or pulmonary disease. Chest 1991 Sep;100(3):598-603. PMID: 1909617
  2. Significance of a syncopal event. Pulmonary embolism. Postgrad Med. 2002 Jan;111(1):19-20. PMID: 11810748
  3. Syncope in patients with pulmonary embolism: comparison between patients with syncope as the presenting symptom of pulmonary embolism and patients with pulmonary embolism without syncope. Vasc Med. 2003 Nov;8(4):257-61. PMID: 15125486
  4. Silent pulmonary embolism in patients with deep venous thrombosis: a systematic review. Am J Med. 2010 May;123(5):426-31. PMID: 20399319
  5. Clinical decision rules for excluding pulmonary embolism: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2011 Oct 4;155(7):448-60.PMID: 21969343
  6. The electrocardiographic manifestations of pulmonary embolism. J Emerg Med. Jul-Aug 1988;6(4):301-7. PMID: 3225435
  7. Syncope in patients with pulmonary embolism. JAMA. 1977 Dec 5;238(23):2509-11. PMID: 578884
最終更新:2021年10月17日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人
こちらの記事の監修医師
聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
聖路加国際病院
救急部 清水真人先生

2013年慶應義塾大学医学部を卒業。初期臨床研修修了後、2015年聖路加国際病院救急部入局。就任間もなく聖路加ベストティーチャー賞を連続受賞。救急・集中治療、 医学教育を専門とする他、Webツールの医療現場での利用に精通し、 複数の雑誌で連載を行う。

聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
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救急部 清水真人先生

2013年慶應義塾大学医学部を卒業。初期臨床研修修了後、2015年聖路加国際病院救急部入局。就任間もなく聖路加ベストティーチャー賞を連続受賞。救急・集中治療、 医学教育を専門とする他、Webツールの医療現場での利用に精通し、 複数の雑誌で連載を行う。

聖路加国際病院
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聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
聖路加国際病院
救急部 清水真人先生

聖路加国際病院救急部 医員

日本救急医学会 専門医

聖路加ベストティーチャー賞受賞

聖路加国際病院 救急部 清水真人先生
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救急部 清水真人先生

2013年慶應義塾大学医学部を卒業。初期臨床研修修了後、2015年聖路加国際病院救急部入局。就任間もなく聖路加ベストティーチャー賞を連続受賞。救急・集中治療、 医学教育を専門とする他、Webツールの医療現場での利用に精通し、 複数の雑誌で連載を行う。

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