内容
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

- めまいを主訴とした 「前失神」 に注意

- 神経症状を伴えば 「中枢性」 を強く疑う

- 自覚症状、発症様式からめまいを 「3分類」

- 「HINTS plus」 で0.7%の隠れ脳梗塞除外

- 「BPPV」は正確な問診と身体診察で診断

病態・疫学

- ER患者の約2.5%と、 よくある愁訴である¹⁾

- うち5~10%中枢性めまいを見逃さない²⁾

めまい

診断アルゴリズム

自覚症状に加え、症状経過や誘引など発症様式からめまいを分類するアプローチがお薦め
めまい

(1) 神経症状を伴う中枢性めまいの除外

頭頚部痛、 小脳協調運動障害、 嚥下障害、 構音障害、 複視などあれば早急に脳卒中精査³⁾

他のリスクとして、 急性発症繰り返す前駆症状50歳以上血管リスク外傷歴など⁴⁾.

(2) 前失神の否定と精査

前失神=全脳の一過性還流低下による症状

非前庭性めまいであり、眼振はみられない.

フレンツェル眼鏡を使用し確認すると良い

(3) 急性持続性めまいとHINTS

経験したことのない急性発症の激しい回転性めまいで、 嘔吐・歩行障害を伴うもの

うち、24時間以上持続し、神経症状を伴わない回転性めまい群が急性前庭症候群(AVS)

▼AVSの主な原因は前庭神経炎

ただし、 神経所見に乏しい“隠れ脳卒中”を見逃さない!これらを鑑別するスクリーニング法として“HINTS plus”を覚えておくと良い. 正しい評価ができれば、MRI以上の精度となる⁵⁾.

めまい全般で末梢性と中枢性を鑑別するものではない。 BPPVを除外したAVSにおいて適応となるスクリーニング法である。

(4) 再発性頭位性めまいとBPPV

頭位変換により繰り返し引き起こされるめまいと定義され、 その多くはBPPVである.

BPPVの多くは病歴と身体診察で診断可能。 身体診察としては誘発法が有名。 鑑別として、 稀だが、 キアリ奇形小脳腫瘍多発性硬化症など

▼Dix-Hallpike法⁶⁾

座位の状態で頭部を45度回旋、 その後1-2 秒で一気に倒す

▼Supine Roll 法⁶⁾

仰臥位で左右に顔を向け、 眼振を見る

(5) 反復性めまいとメニエール病

反復性めまいはメニエール病が多い.

- 一般的に誘因なく発症し、嘔気嘔吐を伴う

- 持続時間は数十分~数時間といわれている

- 低音域を中心とした可逆性難聴となる

- 非典型的であれば、 TIAを疑い精査を検討

持続時間や随伴症状、 血管リスクなど

治療

(1) 急性末梢性めまいの治療

慣習的には以下の治療を行う (いずれも高いエビデンスは存在しない) 

<点滴例>

- アタラックスP®50mg/1A + 生食50ml DIV

- メイロン®静注7%40m/2A 静注

- プリンペラン®10mg/1A 静注

<経口例>

- メリスロン®錠6mg6錠3x毎食後

- アデホス®︎顆粒300mg3x毎食後

- メチコバール®500μg3錠3x毎食後

- ドラマミン®50mg3錠3x毎食後 ※眠気注意

(2) BPPVの治療

BPPVの診断後に 「浮遊耳石置換法」 を検討

- 後半規管型→ Epley法

- 水平半規管型→ Gufoni法BBQ rotation法

(3) 脳卒中の治療

ERマニュアルの 脳梗塞脳出血 を参照


関連コンテンツ

🚑 ERマニュアル|失神・一過性意識障害

🚑 ERマニュアル|脳梗塞

🚑 ERマニュアル|脳出血

出典

  1. Acad Emerg Med. 2008 Aug;15(8):744-50.
  2. South Med J. 2000 Feb;93(2):160-7
  3. Emerg Med Clin North Am. 2009 Feb;27(1):39-50
  4. CMAJ. 2011 Jun 14;183(9):E571-92.
  5. Stroke. 2009 Nov;40(11):3504-10.
  6. Neurology. 2008 May 27;70(22):2067-74.

最終更新 : 2024年3月23日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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2022年04月08日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

- めまいを主訴とした 「前失神」 に注意

- 神経症状を伴えば 「中枢性」 を強く疑う

- 自覚症状、発症様式からめまいを 「3分類」

- 「HINTS plus」 で0.7%の隠れ脳梗塞除外

- 「BPPV」は正確な問診と身体診察で診断

病態・疫学

- ER患者の約2.5%と、 よくある愁訴である¹⁾

- うち5~10%中枢性めまいを見逃さない²⁾

めまい

診断アルゴリズム

自覚症状に加え、症状経過や誘引など発症様式からめまいを分類するアプローチがお薦め
めまい

(1) 神経症状を伴う中枢性めまいの除外

頭頚部痛、 小脳協調運動障害、 嚥下障害、 構音障害、 複視などあれば早急に脳卒中精査³⁾

他のリスクとして、 急性発症繰り返す前駆症状50歳以上血管リスク外傷歴など⁴⁾.

(2) 前失神の否定と精査

前失神=全脳の一過性還流低下による症状

非前庭性めまいであり、眼振はみられない.

フレンツェル眼鏡を使用し確認すると良い

(3) 急性持続性めまいとHINTS

経験したことのない急性発症の激しい回転性めまいで、 嘔吐・歩行障害を伴うもの

うち、24時間以上持続し、神経症状を伴わない回転性めまい群が急性前庭症候群(AVS)

▼AVSの主な原因は前庭神経炎

ただし、 神経所見に乏しい“隠れ脳卒中”を見逃さない!これらを鑑別するスクリーニング法として“HINTS plus”を覚えておくと良い. 正しい評価ができれば、MRI以上の精度となる⁵⁾.

めまい全般で末梢性と中枢性を鑑別するものではない。 BPPVを除外したAVSにおいて適応となるスクリーニング法である。

(4) 再発性頭位性めまいとBPPV

頭位変換により繰り返し引き起こされるめまいと定義され、 その多くはBPPVである.

BPPVの多くは病歴と身体診察で診断可能。 身体診察としては誘発法が有名。 鑑別として、 稀だが、 キアリ奇形小脳腫瘍多発性硬化症など

▼Dix-Hallpike法⁶⁾

座位の状態で頭部を45度回旋、 その後1-2 秒で一気に倒す

▼Supine Roll 法⁶⁾

仰臥位で左右に顔を向け、 眼振を見る

(5) 反復性めまいとメニエール病

反復性めまいはメニエール病が多い.

- 一般的に誘因なく発症し、嘔気嘔吐を伴う

- 持続時間は数十分~数時間といわれている

- 低音域を中心とした可逆性難聴となる

- 非典型的であれば、 TIAを疑い精査を検討

持続時間や随伴症状、 血管リスクなど

治療

(1) 急性末梢性めまいの治療

慣習的には以下の治療を行う (いずれも高いエビデンスは存在しない) 

<点滴例>

- アタラックスP®50mg/1A + 生食50ml DIV

- メイロン®静注7%40m/2A 静注

- プリンペラン®10mg/1A 静注

<経口例>

- メリスロン®錠6mg6錠3x毎食後

- アデホス®︎顆粒300mg3x毎食後

- メチコバール®500μg3錠3x毎食後

- ドラマミン®50mg3錠3x毎食後 ※眠気注意

(2) BPPVの治療

BPPVの診断後に 「浮遊耳石置換法」 を検討

- 後半規管型→ Epley法

- 水平半規管型→ Gufoni法BBQ rotation法

(3) 脳卒中の治療

ERマニュアルの 脳梗塞脳出血 を参照


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🚑 ERマニュアル|脳出血

出典

  1. Acad Emerg Med. 2008 Aug;15(8):744-50.
  2. South Med J. 2000 Feb;93(2):160-7
  3. Emerg Med Clin North Am. 2009 Feb;27(1):39-50
  4. CMAJ. 2011 Jun 14;183(9):E571-92.
  5. Stroke. 2009 Nov;40(11):3504-10.
  6. Neurology. 2008 May 27;70(22):2067-74.

最終更新 : 2024年3月23日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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