本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
ポイント
- まずは、緊急性の高い血管障害を除外!
- 手の痺れは、①頚椎症 ②神経絞扼を考慮!
- 手掌・口症候群は、多くが口の痺れを伴う!
- 末梢神経障害が手から起こることは稀!
- 末梢神経障害は語呂合わせを上手に活用!
緊急性のある疾患
- 動脈閉塞
- 急性大動脈解離
- 脳出血、 脳梗塞
- 脊髄硬膜外膿瘍、 脊髄硬膜外血腫
- 稀だが呼吸筋麻痺を起こし得る脱髄性疾患*
*GB症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎
診断アルゴリズム
①血管病変の除外
- 動脈閉塞や解離に伴う痺れは, しばしばバイタル変化を伴い緊急を要する
- 急性動脈閉塞の主要徴候として「5P」を確認し, 血管病変を否定する.
②大脳、脳幹病変を見逃さない
ERでの極論
- 半身の痺れ : 多くが中枢性(大脳、脳幹).
- 手足単独の痺れ : 脳卒中は第一に考えなくても良い. ただし、随伴症状があれば話は別!運動神経障害、脳神経障害を注意深く確認 (触覚だけでなく、 温痛覚も必ず確認).
- 口周囲と片手の痺れ : 視床や脳幹のラクナ梗塞 Pure sensory strokeに注意. これを手掌・口症候群COS (cheiro-oral syndrome) と呼ぶ. てんかん後、 多発性硬化症、 アルコール離脱症状, 変性疾患などが鑑別だが、 画像による除外と十分な問診で判断していく.
③脊髄以下の末梢性は4分類
- 脊髄障害 Myopathy
- 神経根障害 Radiculopathy
- 神経絞扼障害 Entrap syndrome
- 末梢神経障害 Neuropathy
ERでの極論
- 上肢の痺れ : ①頚椎症、②神経絞扼障害*
- 下肢の痺れ : ①多発神経炎、②脊髄病変
- 顎周囲の痺れ : Numb chin syndrome**
*神経絞扼障害は手根管症候群、肘部管症候群など. **NCSは悪性腫瘍の下顎骨転移などで起こる.
④デルマトームを意識して障害部位特定
(1) デルマトーム領域か、末梢神経領域か?
- 脊髄障害 : 多分節、 膀胱直腸、 巧緻運動障害
- 神経根障害 : 単分節、 頚椎症なら肩の痛み
- 末梢神経障害 : 下肢末梢→近位→上肢の順でデルマトームには沿わないことが多い (境界はっきり)
(2) 合併する運動障害は?
- 上位運動ニューロン障害 ⇛ 多発性硬化症、 Devic病(視神経炎+横断性脊髄炎)
- 下位運動ニューロン障害 ⇛ ギランバレー症候群、 Fisher syndrome(全外眼筋麻痺、 運動失調、 深部腱反射消失)
⑤ほとんどの診断は診察と問診で決まる
- 外傷 (頚椎症、 破裂骨折、 腕神経叢損傷)
- 怒責による症状変化 (脊椎症性神経根症)
- 職業 (重金属)
- 家族歴 (重金属、 遺伝性疾患)
- アルコール飲酒 (栄養失調)
- 使用薬物 (イソニアジド)
感覚障害型ニューロパチー『ABCD』
- Alcoholic(アルコール離脱、アルコール中毒)
- Amyloidosis (アミロイドーシス)
- Beriberi (脚気)
- Collagen disease (PN, SLE)
- Carcinoma (癌性ニューロパチー)
- Chemical substance (硫黄, 水銀, タリウム, スチレン, n-ヘキサン)
- DM (糖尿病)
- Drug (INHイソニアジド, ビンクリスチン)
『病態による4分類』
- 末梢神経の栄養: ビタミン類
- 末梢循環不全: DM、 血管炎
- 末梢神経障害: アルコ-ル、アミロイド、中毒
- 末梢神経脱髄: ギランバレ-、 CIDP
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最終更新 : 2024年3月23日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人