内容
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

外傷初期診療

- Primary surveyはABCDEアプローチで迅速に

- 致命的な緊急疾患の速やかな同定と治療を

  TAFな3X MAPDの語呂あわせをマスター

- Secondary surveyで見逃しやすい損傷を確認

- 適切な専門科へのコンサルト、根本治療を

- 診療中の定期的な再評価を欠かさない

一次評価|Primary survey

生命維持のため“ABCDE”順で評価

ABCDアプローチで致命的な緊急疾患 (TAFな3X MAPD) を速やかに同定する。 以下の語呂合わせを用いるとよいだろう。

ABCDアプローチ
外傷初期診療
TAFな3X MAPD (外傷緊急疾患)
外傷初期診療
*切迫するD : GCS≦8点、GCS2点以上の低下、ヘルニア徴候

Airway|気道評価

“会話可能”なら気道開通OK!

- 会話可能かどうか

- 吸気時喘鳴、 tracheal tugging サインなど

上気道閉塞疑い吸引そして確実な気動確保。 気道緊急の状態ならすみやかに挿管。 気道閉塞→挿管→輪状甲状靱帯穿刺→輪状甲状靱帯切開の順で確実な気道確保を考慮。

頸部は “4項目観察”

  1. 頸静脈怒張
  2. 呼吸補助筋の使用
  3. 気管偏位
  4. 皮下気腫

Breathing|呼吸評価

肺は“視て聴いて触って叩いてバイタル”

視) 胸郭運動左右差, 呼吸様式, 数

聴) 前胸部と側胸部で聴診

触) 動揺性, 皮下気腫確認

打) 前胸部鼓音, 側胸部濁音は異常

バイタル) SpO₂

気管偏位、 頚静脈怒張、 皮下気腫、 片側胸郭挙上があれば、 緊張性気胸。  動揺性胸郭の場合は、 挿管し陽圧呼吸。

Circulation|循環評価

観察項目を“SHOCKな画像”で覚える!

Skin (冷感, 湿潤の有無)

HR (脈の強弱, 速さ)

Outer bleeding (全身の活動性出血)

CRT (感度特異度低い)

Ketsuatu (これだけ日本語(笑))

画像 (FASTと胸部,骨盤部Xp)

ショックは血圧低下よりも皮膚冷汗湿潤や頻脈, 頻呼吸が先行する。 CRTは爪を5秒押して, 2秒以内に血色が戻ればOK、 ただし感度特異度は低い。  初期輸液に反応しなければ、 30~40%以上の出血があり、 気管挿管の適応。 

FAST

Focused Assessment with Sonography in Trauma

- 上腹部で心嚢液

- 右側腹部でモリソン窩右胸水

- 左側腹部で脾周囲左胸水

- 下腹部でダグラス窩

外傷初期診療

出血性ショックの原因である“MAP”除外

Massive hemothorax (大量血胸)

Abdominal hemorrhage (腹腔内出血)

Pelvic fracture (骨盤骨折)

外傷によるショックのほとんどが出血性ショックであり、 これらを認めない場合、 次に閉塞性ショックを考慮する

Primary Surveyでのレントゲン読影

- 胸部では大量血胸多発肋骨骨折

- 骨盤では明らかな不安定型骨盤骨折

Dysfunction of CNS|神経評価

“まいど” もしくは “LLL” で 覚える!

ま) 麻痺の有無 Laterality

い) 意識レベル Level of cons.

ど) 瞳孔径 Light of reflex, pupil size

“切迫するD” には早期介入 (GCS≦8、 GCS2点以上の低下、 ヘルニア徴候を“切迫するD”と呼ぶ)。 緊急気管挿管の適応, 脳外科コール!バイタル安定すればSecondary Surveyの前に頭部CTが優先される

Exposure & Environmental Control|全身評価・体温管理

“脱衣” と “体温管理” も忘れずに

体温測定(保温に努める)

二次評価 (Secondary survey)

頭部から四肢末梢まで系統的に身体診察を行い、 見逃しを防ぐ。 背面の評価を忘れず行う (ログロールを用いて背部の損傷確認)

診断・治療

必要に応じて画像検査 (X線、 CT、 FAST検査) を実施。 損傷の種類や程度に応じて専門科への速やかなコンサルト (外科、 整形外科、 脳神経外科)

治療の原則

重篤な病態への即時介入 (気道確保、 胸腔ドレナージ、 輸液輸血) を最優先し、 手術適応がある場合は速やかな手術室への搬送を検討する。

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最終更新 : 2025年3月29日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

外傷初期診療
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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監修・協力医一覧
外傷初期診療
外傷初期診療

外傷初期診療

Primary survey
2021年08月01日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

外傷初期診療

- Primary surveyはABCDEアプローチで迅速に

- 致命的な緊急疾患の速やかな同定と治療を

  TAFな3X MAPDの語呂あわせをマスター

- Secondary surveyで見逃しやすい損傷を確認

- 適切な専門科へのコンサルト、根本治療を

- 診療中の定期的な再評価を欠かさない

一次評価|Primary survey

生命維持のため“ABCDE”順で評価

ABCDアプローチで致命的な緊急疾患 (TAFな3X MAPD) を速やかに同定する。 以下の語呂合わせを用いるとよいだろう。

ABCDアプローチ
外傷初期診療
TAFな3X MAPD (外傷緊急疾患)
外傷初期診療
*切迫するD : GCS≦8点、GCS2点以上の低下、ヘルニア徴候

Airway|気道評価

“会話可能”なら気道開通OK!

- 会話可能かどうか

- 吸気時喘鳴、 tracheal tugging サインなど

上気道閉塞疑い吸引そして確実な気動確保。 気道緊急の状態ならすみやかに挿管。 気道閉塞→挿管→輪状甲状靱帯穿刺→輪状甲状靱帯切開の順で確実な気道確保を考慮。

頸部は “4項目観察”

  1. 頸静脈怒張
  2. 呼吸補助筋の使用
  3. 気管偏位
  4. 皮下気腫

Breathing|呼吸評価

肺は“視て聴いて触って叩いてバイタル”

視) 胸郭運動左右差, 呼吸様式, 数

聴) 前胸部と側胸部で聴診

触) 動揺性, 皮下気腫確認

打) 前胸部鼓音, 側胸部濁音は異常

バイタル) SpO₂

気管偏位、 頚静脈怒張、 皮下気腫、 片側胸郭挙上があれば、 緊張性気胸。  動揺性胸郭の場合は、 挿管し陽圧呼吸。

Circulation|循環評価

観察項目を“SHOCKな画像”で覚える!

Skin (冷感, 湿潤の有無)

HR (脈の強弱, 速さ)

Outer bleeding (全身の活動性出血)

CRT (感度特異度低い)

Ketsuatu (これだけ日本語(笑))

画像 (FASTと胸部,骨盤部Xp)

ショックは血圧低下よりも皮膚冷汗湿潤や頻脈, 頻呼吸が先行する。 CRTは爪を5秒押して, 2秒以内に血色が戻ればOK、 ただし感度特異度は低い。  初期輸液に反応しなければ、 30~40%以上の出血があり、 気管挿管の適応。 

FAST

Focused Assessment with Sonography in Trauma

- 上腹部で心嚢液

- 右側腹部でモリソン窩右胸水

- 左側腹部で脾周囲左胸水

- 下腹部でダグラス窩

外傷初期診療

出血性ショックの原因である“MAP”除外

Massive hemothorax (大量血胸)

Abdominal hemorrhage (腹腔内出血)

Pelvic fracture (骨盤骨折)

外傷によるショックのほとんどが出血性ショックであり、 これらを認めない場合、 次に閉塞性ショックを考慮する

Primary Surveyでのレントゲン読影

- 胸部では大量血胸多発肋骨骨折

- 骨盤では明らかな不安定型骨盤骨折

Dysfunction of CNS|神経評価

“まいど” もしくは “LLL” で 覚える!

ま) 麻痺の有無 Laterality

い) 意識レベル Level of cons.

ど) 瞳孔径 Light of reflex, pupil size

“切迫するD” には早期介入 (GCS≦8、 GCS2点以上の低下、 ヘルニア徴候を“切迫するD”と呼ぶ)。 緊急気管挿管の適応, 脳外科コール!バイタル安定すればSecondary Surveyの前に頭部CTが優先される

Exposure & Environmental Control|全身評価・体温管理

“脱衣” と “体温管理” も忘れずに

体温測定(保温に努める)

二次評価 (Secondary survey)

頭部から四肢末梢まで系統的に身体診察を行い、 見逃しを防ぐ。 背面の評価を忘れず行う (ログロールを用いて背部の損傷確認)

診断・治療

必要に応じて画像検査 (X線、 CT、 FAST検査) を実施。 損傷の種類や程度に応じて専門科への速やかなコンサルト (外科、 整形外科、 脳神経外科)

治療の原則

重篤な病態への即時介入 (気道確保、 胸腔ドレナージ、 輸液輸血) を最優先し、 手術適応がある場合は速やかな手術室への搬送を検討する。

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最終更新 : 2025年3月29日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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