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監修医師

胸痛 / 背部痛 > 急性大動脈解離

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

突然発症、 激しい痛み (胸部・背部)、 移動痛、 血圧高値、 左右差などの特徴的病歴や、 心電図、心エコーなどの画像検査をもとに、 胸部造影CTで確定診断する。 ただし以下に注意を要する。

 ⚠ 10%は無痛性とされる
 ⚠ 失神、意識障害、脳卒中で受診することも
 ⚠ また、 半数が血圧正常または低値である

各種検査と特徴的所見

心電図

ACS除外のため必須。 Ⅱ、Ⅲ、aVF上昇は大動脈解離+ACS合併の可能性を考慮すること。

エコー

急性の心タンポナーデ、 大動脈弁逆流があれば、 速やかな降圧、鎮痛、脈拍管理へ移行する。

胸部レントゲン

縦隔拡大やカルシウム徴候 (大動脈石灰化の壁からの解離所見)、 胸水貯留などが疑い所見。

スクリーニングに異常がなくても、 疑わしければ、 ADDリスクスコア+Dダイマーで除外

診断アルゴリズム例

ADDリスクスコア+Dダイマー

急性大動脈解離

ADD-RSとは

Aortic dissection detection risk scoreの略で、 大動脈解離の診断予測スコアのひとつである。 2010年にAHA/ACCなどのガイドラインで提唱された¹⁾。 身体所見、 痛みの症状、 患者背景の3カテゴリー、合計0~3点で評価される¹⁾。

急性大動脈解離

エビデンス

欧米のガイドラインでは、 ADD-RSとDダイマーとを組み合わせたアルゴリズムが検査前診断確率を高めるとし推奨されている²⁾。

▼ADD-RS 0~1点、 Dダイマー<0.5μg/mL

大動脈解離の除外が可能で、 CT検査を省略できるとしている (感度99%、特異度35%³⁾)

▼ADD-RS 0点、Dダイマー<0.5μg/mL

大動脈解離を除外とした場合は、感度100%、特異度15%とされる³⁾

▼ADD-RS 2~3点

Dダイマーを測定することなくCT 検査を施行すべきである³⁾

Dダイマーの閾値は?

Dダイマーは加齢に伴い上昇傾向にある。 Dダイマーを年齢で調整した閾値 (年齢×0.01μg/mL)を用いた場合、 ADD-RS 0点、かつDダイマー<0.5μg/mLもしくは年齢調整閾値未満 (年齢×0.01μg/mL)の場合、 感度99.9%であった⁴⁾。

治療方針

速やかな降圧、鎮痛、脈拍管理

  • 収縮期血圧100~120mmHg以下が目標.
  • β遮断薬Ca拮抗薬のニフェジピンを使用.
  • 頻脈は避けること. β遮断薬による積極的脈拍管理<60回/分が推奨されることも.
  • フェンタニルなどでしっかりと鎮痛することも降圧の一因に.

Stanford分類A型の治療方針

  • 偽腔開存型→原則緊急手術
  • 血栓閉塞型→施設ごと検討

Stanford分類B型の治療方針

  • 安定したもの→保存加療
  • 不安定なもの→血管内治療または手術検討

関連コンテンツ

🚑 ERマニュアル|胸痛

🚑 ERマニュアル|急性大動脈解離

🔢 ADD-RS

出典

  1. Circulation. 2010 Apr 6;121(13):e266-369. PMID: 20233780
  2. Eur Heart J. 2014 Nov 1;35(41):2873-926. PMID: 25173340
  3. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2020 Oct;9(3_suppl):S32-S39. PMID: 31970996
  4. Acad Emerg Med. 2020 Oct;27(10):1013-1027. PMID: 32187432
最終更新 : 2024年3月24日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

急性大動脈解離
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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急性大動脈解離

Acute aortic dissection
2022年05月19日更新

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ポイント

突然発症、 激しい痛み (胸部・背部)、 移動痛、 血圧高値、 左右差などの特徴的病歴や、 心電図、心エコーなどの画像検査をもとに、 胸部造影CTで確定診断する。 ただし以下に注意を要する。

 ⚠ 10%は無痛性とされる
 ⚠ 失神、意識障害、脳卒中で受診することも
 ⚠ また、 半数が血圧正常または低値である

各種検査と特徴的所見

心電図

ACS除外のため必須。 Ⅱ、Ⅲ、aVF上昇は大動脈解離+ACS合併の可能性を考慮すること。

エコー

急性の心タンポナーデ、 大動脈弁逆流があれば、 速やかな降圧、鎮痛、脈拍管理へ移行する。

胸部レントゲン

縦隔拡大やカルシウム徴候 (大動脈石灰化の壁からの解離所見)、 胸水貯留などが疑い所見。

スクリーニングに異常がなくても、 疑わしければ、 ADDリスクスコア+Dダイマーで除外

診断アルゴリズム例

ADDリスクスコア+Dダイマー

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ADD-RSとは

Aortic dissection detection risk scoreの略で、 大動脈解離の診断予測スコアのひとつである。 2010年にAHA/ACCなどのガイドラインで提唱された¹⁾。 身体所見、 痛みの症状、 患者背景の3カテゴリー、合計0~3点で評価される¹⁾。

急性大動脈解離

エビデンス

欧米のガイドラインでは、 ADD-RSとDダイマーとを組み合わせたアルゴリズムが検査前診断確率を高めるとし推奨されている²⁾。

▼ADD-RS 0~1点、 Dダイマー<0.5μg/mL

大動脈解離の除外が可能で、 CT検査を省略できるとしている (感度99%、特異度35%³⁾)

▼ADD-RS 0点、Dダイマー<0.5μg/mL

大動脈解離を除外とした場合は、感度100%、特異度15%とされる³⁾

▼ADD-RS 2~3点

Dダイマーを測定することなくCT 検査を施行すべきである³⁾

Dダイマーの閾値は?

Dダイマーは加齢に伴い上昇傾向にある。 Dダイマーを年齢で調整した閾値 (年齢×0.01μg/mL)を用いた場合、 ADD-RS 0点、かつDダイマー<0.5μg/mLもしくは年齢調整閾値未満 (年齢×0.01μg/mL)の場合、 感度99.9%であった⁴⁾。

治療方針

速やかな降圧、鎮痛、脈拍管理

  • 収縮期血圧100~120mmHg以下が目標.
  • β遮断薬Ca拮抗薬のニフェジピンを使用.
  • 頻脈は避けること. β遮断薬による積極的脈拍管理<60回/分が推奨されることも.
  • フェンタニルなどでしっかりと鎮痛することも降圧の一因に.

Stanford分類A型の治療方針

  • 偽腔開存型→原則緊急手術
  • 血栓閉塞型→施設ごと検討

Stanford分類B型の治療方針

  • 安定したもの→保存加療
  • 不安定なもの→血管内治療または手術検討

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  1. Circulation. 2010 Apr 6;121(13):e266-369. PMID: 20233780
  2. Eur Heart J. 2014 Nov 1;35(41):2873-926. PMID: 25173340
  3. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2020 Oct;9(3_suppl):S32-S39. PMID: 31970996
  4. Acad Emerg Med. 2020 Oct;27(10):1013-1027. PMID: 32187432
最終更新 : 2024年3月24日
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