概要
計算
監修医師

PECARN腹部外傷ルールとは?

2024年、 Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN) により報告された小児腹部外傷において、 腹部CTが正当化されない患者を特定するための予測ルールである¹⁾。

小児外傷患者に対するCT撮影は、 被爆による悪性腫瘍リスクがある。 そこで、 6つの小児外傷センターに来院した子供に対して前向き他施設共同研究を行い、 本ツールが作成、検証された¹⁾。

対象患者¹⁾

腹部鈍的外傷を受け、 下記の項目のいずれかを満たす18歳未満の患者
  • 下記のメカニズムによる鈍的な体幹外傷
  • 自動車事故 : 時速96kmを超える、 車から放り出される、 または車が横転する
  • 自動車と歩行者または自転車事故 : 自動車の時速40km以上の場合
  • 高さ6m以上からの転落
  • 体幹の圧迫損傷
  • 腹部を含む暴行外傷
  • 意識レベルの低下 (GCS<15) と鈍的な体幹外傷が関連している場合
  • 四肢の麻痺または複数の長骨骨骨折を伴う鈍的外傷
  • 鈍的な体幹外傷後に腹部損傷が疑われる病歴と身体所見がある場合

なお、 以下の患者が除外された¹⁾

✕ 貫通外傷 (例 : 銃創または刺創)

✕ 救急外来到着前に24時間以上経過した外傷

✕ 前医でCTまたはMRIを撮影済みの患者

✕ 妊婦

✕ 診察を困難にする既存の神経障害

✕ 非偶発的な外傷の疑いが強い患者

緊急介入の定義

いずれか満たすものが緊急介入と定義された¹⁾

  • 治療的開腹術
  • 血管内塞栓術
  • 輸血
  • 膵また消化管損傷に対する2日以上の輸液
  • 腹部外傷による死亡

評価方法

1つも満たさない場合、CTは正当化されない  (原著では "CT not warranted" という表現)

- 腹痛

- 外傷後の嘔吐

- GCS<14

- 呼吸音の減弱または消失

- 胸壁の外傷痕

例: 発赤、擦過傷、皮下気腫、斑状出血、裂傷

- 腹壁の外傷痕

  例: シートベルト痕、発赤、擦過傷、斑状出血、皮下気腫、裂傷

- 腹部の圧痛

エビデンス

オリジナル文献¹⁾

この前向き多施設共同研究では、 2016年12月27日から21年9月1日までの間に、 6つの小児外傷センターに来院した子供腹部外傷7,542例において、 PECARNの腹部外傷ルールが検証された。

結果、 感度、 陰性的中率は100%であった。

- 感度100% (95%CI 98.0-100.0)

- 陰性的中率 100% (95%CI 99.9-100.0)

使用上の注意点

上記の適応対象、除外対象を必ず確認すること。

本ツールのアウトカムは "緊急介入が必要な腹部外傷" であり、 介入が不要な臓器損傷を見つけ出すことを目的としておらず介入不要であった42人の腹腔内臓器損傷は検出されていない¹⁾。

1点以上だからといって、 全例でCTを要するわけではない。 本ツールで、 CT撮像が必須となる患者群の特定はできない。

関連コンテンツ

🔢 PECARN 小児頭部外傷ルール

🔢 CATCH 小児頭部外傷ルール

🔢 CHALICE 小児頭部外傷ルール

出典

1) PECARN prediction rules for CT imaging of children presenting to the emergency department with blunt abdominal or minor head trauma: a multicentre prospective validation study. Lancet Child Adolesc Health. 2024 May;8(5):339-347. PMID: 38609287

最終更新 : 2024年6月21日
監修医師 : HOKUTO監修医師

PECARN 小児腹部外傷ルール
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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PECARN 小児腹部外傷ルール
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PECARN 小児腹部外傷ルール

小児腹部外傷患者のCT適応基準
2024年07月06日更新
概要
計算

PECARN腹部外傷ルールとは?

2024年、 Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN) により報告された小児腹部外傷において、 腹部CTが正当化されない患者を特定するための予測ルールである¹⁾。

小児外傷患者に対するCT撮影は、 被爆による悪性腫瘍リスクがある。 そこで、 6つの小児外傷センターに来院した子供に対して前向き他施設共同研究を行い、 本ツールが作成、検証された¹⁾。

対象患者¹⁾

腹部鈍的外傷を受け、 下記の項目のいずれかを満たす18歳未満の患者
  • 下記のメカニズムによる鈍的な体幹外傷
  • 自動車事故 : 時速96kmを超える、 車から放り出される、 または車が横転する
  • 自動車と歩行者または自転車事故 : 自動車の時速40km以上の場合
  • 高さ6m以上からの転落
  • 体幹の圧迫損傷
  • 腹部を含む暴行外傷
  • 意識レベルの低下 (GCS<15) と鈍的な体幹外傷が関連している場合
  • 四肢の麻痺または複数の長骨骨骨折を伴う鈍的外傷
  • 鈍的な体幹外傷後に腹部損傷が疑われる病歴と身体所見がある場合

なお、 以下の患者が除外された¹⁾

✕ 貫通外傷 (例 : 銃創または刺創)

✕ 救急外来到着前に24時間以上経過した外傷

✕ 前医でCTまたはMRIを撮影済みの患者

✕ 妊婦

✕ 診察を困難にする既存の神経障害

✕ 非偶発的な外傷の疑いが強い患者

緊急介入の定義

いずれか満たすものが緊急介入と定義された¹⁾

  • 治療的開腹術
  • 血管内塞栓術
  • 輸血
  • 膵また消化管損傷に対する2日以上の輸液
  • 腹部外傷による死亡

評価方法

1つも満たさない場合、CTは正当化されない  (原著では "CT not warranted" という表現)

- 腹痛

- 外傷後の嘔吐

- GCS<14

- 呼吸音の減弱または消失

- 胸壁の外傷痕

例: 発赤、擦過傷、皮下気腫、斑状出血、裂傷

- 腹壁の外傷痕

  例: シートベルト痕、発赤、擦過傷、斑状出血、皮下気腫、裂傷

- 腹部の圧痛

エビデンス

オリジナル文献¹⁾

この前向き多施設共同研究では、 2016年12月27日から21年9月1日までの間に、 6つの小児外傷センターに来院した子供腹部外傷7,542例において、 PECARNの腹部外傷ルールが検証された。

結果、 感度、 陰性的中率は100%であった。

- 感度100% (95%CI 98.0-100.0)

- 陰性的中率 100% (95%CI 99.9-100.0)

使用上の注意点

上記の適応対象、除外対象を必ず確認すること。

本ツールのアウトカムは "緊急介入が必要な腹部外傷" であり、 介入が不要な臓器損傷を見つけ出すことを目的としておらず介入不要であった42人の腹腔内臓器損傷は検出されていない¹⁾。

1点以上だからといって、 全例でCTを要するわけではない。 本ツールで、 CT撮像が必須となる患者群の特定はできない。

関連コンテンツ

🔢 PECARN 小児頭部外傷ルール

🔢 CATCH 小児頭部外傷ルール

🔢 CHALICE 小児頭部外傷ルール

出典

1) PECARN prediction rules for CT imaging of children presenting to the emergency department with blunt abdominal or minor head trauma: a multicentre prospective validation study. Lancet Child Adolesc Health. 2024 May;8(5):339-347. PMID: 38609287

最終更新 : 2024年6月21日
監修医師 : HOKUTO監修医師

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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