概要
計算
監修医師

PPH予測スコアとは?

本ツールは WHO (World Health Organization) による産後出血 (Postpartum Haemorrhage, PPH) 定義再評価プロジェクトにより開発され、 2025年にLancet誌に公表されたリスク予測スコアである¹⁾。

スコアの対象

産後出血が疑われる産褥早期の女性 (主に経腟分娩)、 死亡または重篤な合併症 (輸血・手術介入・ICU入室) を早期に予測する場面で利用することを目的としている。

スコアの計算方法

Decision Rule 3 (合算スコアリングシステム)  に基づき以下の合計点で評価する
PPH予測スコア (Lancet 2025)

合計2点以上で高リスク|PPH早期介入推奨

(感度 86.9–87.9%、 特異度 66.6–76.1%)

エビデンス

オリジナル文献¹⁾

WHO 主導の IPD メタ解析 (12 研究、 312,151 名) であり、 血失量・脈拍・血圧・ショックインデックスの予後予測性能を詳細に評価した最大規模のデータセットである。

従来の 「500 mL 以上=PPH」 という定義では重症化の見逃しが起こり得るため、 300 mL 以上の出血とバイタル異常の組み合わせで高リスクを検出する点が特徴である。

日本の最新報告

日本産科婦人科学会・産婦人科診療ガイドライン (2023–2024) でも Shock Index、 早期血圧低下、 頻脈を用いた PPH 早期検出の推奨は強化されているが、300 mL 閾値を明示したリスクスコアは未導入²⁾。 従って本ツールは 「国際的エビデンスに基づく先行的アプローチ」 という位置づけとなる。

使用上の注意点

  • PPH 発生そのものの予測ではなく、 重症化 (死亡・重篤合併症) の予測スコアである。
  • 出血量は必ず客観的測定に基づくべきである。 視覚評価は一貫して低精度とされる¹。
  • 帝王切開では外部検証不足 (単一研究)¹⁾。
  • バイタル異常は 「最大1点」 であり、 複数異常があっても過大評価しない。
  • 治療介入のタイミングは施設の PPH バンドル (子宮収縮薬・子宮マッサージ・IVライン確保等) に準拠する必要がある。
  • 重症化リスクが高いからといって、 全てで即時手技介入を必要とするわけではない。 早期警告としての活用 が主目的である。

出典

1) Prognostic accuracy of clinical markers of postpartum bleeding in predicting maternal mortality or severe morbidity: a WHO individual participant data meta-analysis. Lancet. 2025 Oct 25;406(10514):1969-1982. PMID: 41056961

2) 日本産科婦人科学会・産婦人科診療ガイドライン 産科編

最終更新日 : 2025年11月19日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師

PPH予測スコア (Lancet 2025)
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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PPH予測スコア (Lancet 2025)
PPH予測スコア (Lancet 2025)

PPH予測スコア (Lancet 2025)

WHOによる産後出血重症化予測スコア
2025年11月19日更新
概要
計算

PPH予測スコアとは?

本ツールは WHO (World Health Organization) による産後出血 (Postpartum Haemorrhage, PPH) 定義再評価プロジェクトにより開発され、 2025年にLancet誌に公表されたリスク予測スコアである¹⁾。

スコアの対象

産後出血が疑われる産褥早期の女性 (主に経腟分娩)、 死亡または重篤な合併症 (輸血・手術介入・ICU入室) を早期に予測する場面で利用することを目的としている。

スコアの計算方法

Decision Rule 3 (合算スコアリングシステム)  に基づき以下の合計点で評価する
PPH予測スコア (Lancet 2025)

合計2点以上で高リスク|PPH早期介入推奨

(感度 86.9–87.9%、 特異度 66.6–76.1%)

エビデンス

オリジナル文献¹⁾

WHO 主導の IPD メタ解析 (12 研究、 312,151 名) であり、 血失量・脈拍・血圧・ショックインデックスの予後予測性能を詳細に評価した最大規模のデータセットである。

従来の 「500 mL 以上=PPH」 という定義では重症化の見逃しが起こり得るため、 300 mL 以上の出血とバイタル異常の組み合わせで高リスクを検出する点が特徴である。

日本の最新報告

日本産科婦人科学会・産婦人科診療ガイドライン (2023–2024) でも Shock Index、 早期血圧低下、 頻脈を用いた PPH 早期検出の推奨は強化されているが、300 mL 閾値を明示したリスクスコアは未導入²⁾。 従って本ツールは 「国際的エビデンスに基づく先行的アプローチ」 という位置づけとなる。

使用上の注意点

  • PPH 発生そのものの予測ではなく、 重症化 (死亡・重篤合併症) の予測スコアである。
  • 出血量は必ず客観的測定に基づくべきである。 視覚評価は一貫して低精度とされる¹。
  • 帝王切開では外部検証不足 (単一研究)¹⁾。
  • バイタル異常は 「最大1点」 であり、 複数異常があっても過大評価しない。
  • 治療介入のタイミングは施設の PPH バンドル (子宮収縮薬・子宮マッサージ・IVライン確保等) に準拠する必要がある。
  • 重症化リスクが高いからといって、 全てで即時手技介入を必要とするわけではない。 早期警告としての活用 が主目的である。

出典

1) Prognostic accuracy of clinical markers of postpartum bleeding in predicting maternal mortality or severe morbidity: a WHO individual participant data meta-analysis. Lancet. 2025 Oct 25;406(10514):1969-1982. PMID: 41056961

2) 日本産科婦人科学会・産婦人科診療ガイドライン 産科編

最終更新日 : 2025年11月19日
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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