概要
計算
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尿蛋白の選択性とは?

尿蛋白選択性指数 (Selectivity Index, SI) は、 尿中に排泄されるタンパク質の分子サイズの選択性を評価する指標で、 主に糸球体基底膜の障害の程度や性質を評価するために用いられる¹⁾²⁾。

本邦GL2020においても、SIはネフローゼ症候群患者の尿所見の一つとして記載されている²⁾。

具体的には、 尿中の高分子量タンパク質 (通常は免疫グロブリンG, IgG) と、 より低分子量のタンパク質 (アルブミンまたはトランスフェリン) のそれぞれのクリアランス比、 あるいは尿中濃度と血清中濃度の比率から算出される¹⁾²⁾。

計算方法

Selectivity Index (SI) の計算には、主に以下の2つのタンパク質の組み合わせが用いられる。

計算に必要な各濃度を以下のように略記する。

  • U-IgG: 尿中IgG濃度
  • S-IgG: 血清IgG濃度
  • U-Alb: 尿中アルブミン濃度
  • S-Alb: 血清アルブミン濃度
  • U-Tf: 尿中トランスフェリン濃度
  • S-Tf: 血清トランスフェリン濃度

IgGとアルブミンを用いる方法:

SI = (U-IgG / S-IgG) / (U-Alb / S-Alb)

IgGとトランスフェリンを用いる方法

SI = (U-IgG / S-IgG) / (U-Tf / S-Tf)

SI値の解釈例²⁾

SI値の解釈は文献によって異なるため、 実際の症例と過去の報告を基に判断を要する。

高選択性 SI ≦ 0.10

比較的小さなタンパク質 (アルブミンなど) の漏出が主で、 大きなタンパク質 (IgGなど) の漏出は少ない状態。 糸球体基底膜の荷電選択性の障害が主体と考えられ、 サイズ選択性の障害は比較的軽度であることを示唆する。

中等度選択性 0.11 ≦ SI ≦ 0.20

低選択性 SI ≧ 0.21

大小様々なタンパク質が尿中に漏出している状態。 糸球体基底膜のサイズ選択性の障害が顕著であることを示唆する。

エビデンス

この概念は1960年代に提唱され始め、 現在ではSIはネフローゼ症候群をはじめとする種々の糸球体疾患患者を対象に、 蛋白尿の原因となっている糸球体障害が、 タンパク質の分子サイズに対する選択性が保たれているか (高選択性蛋白尿)、 あるいは広範なサイズのタンパク質が漏出しているか (低選択性蛋白尿) を判断するのに持ちいられることがある。

出典

  1. Joachim GR, Cameron JS, Schwartz M, Becker EL. Selectivity of protein excretion in patients with the nephrotic syndrome. J Clin Invest. 11964;43(12):2332-2346.
  2. エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン 2020. 東京医学社

最終更新:2025年5月11日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師

Selectivity Index (SI)
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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尿蛋白の選択性
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尿蛋白の選択性とは?

尿蛋白選択性指数 (Selectivity Index, SI) は、 尿中に排泄されるタンパク質の分子サイズの選択性を評価する指標で、 主に糸球体基底膜の障害の程度や性質を評価するために用いられる¹⁾²⁾。

本邦GL2020においても、SIはネフローゼ症候群患者の尿所見の一つとして記載されている²⁾。

具体的には、 尿中の高分子量タンパク質 (通常は免疫グロブリンG, IgG) と、 より低分子量のタンパク質 (アルブミンまたはトランスフェリン) のそれぞれのクリアランス比、 あるいは尿中濃度と血清中濃度の比率から算出される¹⁾²⁾。

計算方法

Selectivity Index (SI) の計算には、主に以下の2つのタンパク質の組み合わせが用いられる。

計算に必要な各濃度を以下のように略記する。

  • U-IgG: 尿中IgG濃度
  • S-IgG: 血清IgG濃度
  • U-Alb: 尿中アルブミン濃度
  • S-Alb: 血清アルブミン濃度
  • U-Tf: 尿中トランスフェリン濃度
  • S-Tf: 血清トランスフェリン濃度

IgGとアルブミンを用いる方法:

SI = (U-IgG / S-IgG) / (U-Alb / S-Alb)

IgGとトランスフェリンを用いる方法

SI = (U-IgG / S-IgG) / (U-Tf / S-Tf)

SI値の解釈例²⁾

SI値の解釈は文献によって異なるため、 実際の症例と過去の報告を基に判断を要する。

高選択性 SI ≦ 0.10

比較的小さなタンパク質 (アルブミンなど) の漏出が主で、 大きなタンパク質 (IgGなど) の漏出は少ない状態。 糸球体基底膜の荷電選択性の障害が主体と考えられ、 サイズ選択性の障害は比較的軽度であることを示唆する。

中等度選択性 0.11 ≦ SI ≦ 0.20

低選択性 SI ≧ 0.21

大小様々なタンパク質が尿中に漏出している状態。 糸球体基底膜のサイズ選択性の障害が顕著であることを示唆する。

エビデンス

この概念は1960年代に提唱され始め、 現在ではSIはネフローゼ症候群をはじめとする種々の糸球体疾患患者を対象に、 蛋白尿の原因となっている糸球体障害が、 タンパク質の分子サイズに対する選択性が保たれているか (高選択性蛋白尿)、 あるいは広範なサイズのタンパク質が漏出しているか (低選択性蛋白尿) を判断するのに持ちいられることがある。

出典

  1. Joachim GR, Cameron JS, Schwartz M, Becker EL. Selectivity of protein excretion in patients with the nephrotic syndrome. J Clin Invest. 11964;43(12):2332-2346.
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最終更新:2025年5月11日
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