概要
計算
監修医師

Wellsスコアとは?

深部静脈血栓症 (DVT) の臨床的確率を評価するための臨床予測ルールで、 患者の症状やリスク因子に基づいてDVTの可能性を数値化する。 このスコアリングシステムは、 1995年にPhilip S. Wellsらによって初めて発表された¹⁾。その後さまざまな検証と改訂が行われ、 2003年にNEJM誌で同著者らにより発表されたバージョン²⁾が広く用いられており、 本ツールの出典としている。

計算方法

以下のような臨床所見を1点、 または-2点として加算し、 合計点を算出する²⁾   
以下の9項目は+1点
  • 活動性のがん (現在治療中、 または過去6ヵ月以内に治療・緩和目的の治療歴あり)
  • 麻痺・不全麻痺、 または最近のギプス固定 (下肢完全/不全麻痺、もしくはギプス装着)
  • 臥床安静3日以上、または4週以内の大手術 (全身麻酔または部分麻酔を伴う大手術)
  • 深部静脈走行部に沿った局所的な圧痛
  • 下肢全体の腫脹
  • 腓腹部の左右差が3cm以上 (腓骨粗面 (脛骨粗面) の10cm下の周囲径を比較)
  • 圧痕性浮腫 (pitting edema) (症状側の下肢で観察)
  • 表在静脈の側副血行路の発達 (静脈瘤によるものは除外)
  • 既住のDVT (以前に客観的所見で診断されたDVTの既往あり)
以下の1項目は-2点
  • DVTと同等以上に考えられる他の診断

合計点の解釈 (NEJM2003²⁾)

・2点未満 : DVT unlikely

  D-dimer 陰性 なら 超音波検査不要 で DVT を除外

・2点以上 : DVT likely

  超音波検査へ

合計点の解釈 (従来法¹⁾、 JAMA2006³⁾)

・3点以上: DVT 「高リスク」

・1~2点: DVT 「中リスク」

・0点以下: DVT 「低リスク」

従来の 3段階による事前確率推定を中心に解説
実臨床では、 スコアから導かれるリスク層別化とD-ダイマー検査の結果を組み合わせて診断方針を決定する。 

エビデンス

1995年オリジナル版との違い

大きな違いとして、 「過去のDVT既往あり」 を+1点に加えている点が挙げられる (オリジナル版では加算されていなかった)。 それ以外の変数や点数配分は概ね共通している。

使用上の注意点

1) 患者背景によっては、 本スコアのみではDVTを見逃すリスクがある。 特に高度肥満、 既知の悪性腫瘍、 持続する下肢痛や浮腫の他原因など、 評価に影響しうる病態には留意が必要である。

2) 過去にDVT既往がある患者に適用する場合は点数付けを修正した改訂版 (既往歴に+1点を加算するなど) を用いる研究もあるため、 適切なバージョンを選択する。

3) Wellsスコアは外来診療での迅速な振り分けに特化しており、 重症入院患者や高齢者では偽陽性や偽陰性を増やす懸念があるため、 D-dimer検査や画像所見を併用した慎重な評価が望ましい。

4) D-dimer値はさまざまな要因で上昇するため、 陽性の場合は必ず画像検査 (下肢静脈エコーなど) で確認する必要がある。

出典

1) Value of assessment of pretest probability of deep-vein thrombosis in clinical management. Lancet. 1997 Dec;350(9094):1795-8. PMID: 9428249

2) Evaluation of D-Dimer in the Diagnosis of Suspected Deep-Vein Thrombosis. N Engl J Med. 2003 Sep 25;349(13):1227-35. PMID: 14507948

2) Does this patient have deep vein thrombosis? JAMA 2006 Jan 11;295(2):199-207. PMID: 16403932

最終更新 : 2025年3月5日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

Wellsスコア for DVT
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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Wellsスコア for DVT
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深部静脈血栓症の診断予測
2025年03月05日更新
概要
計算

Wellsスコアとは?

深部静脈血栓症 (DVT) の臨床的確率を評価するための臨床予測ルールで、 患者の症状やリスク因子に基づいてDVTの可能性を数値化する。 このスコアリングシステムは、 1995年にPhilip S. Wellsらによって初めて発表された¹⁾。その後さまざまな検証と改訂が行われ、 2003年にNEJM誌で同著者らにより発表されたバージョン²⁾が広く用いられており、 本ツールの出典としている。

計算方法

以下のような臨床所見を1点、 または-2点として加算し、 合計点を算出する²⁾   
以下の9項目は+1点
  • 活動性のがん (現在治療中、 または過去6ヵ月以内に治療・緩和目的の治療歴あり)
  • 麻痺・不全麻痺、 または最近のギプス固定 (下肢完全/不全麻痺、もしくはギプス装着)
  • 臥床安静3日以上、または4週以内の大手術 (全身麻酔または部分麻酔を伴う大手術)
  • 深部静脈走行部に沿った局所的な圧痛
  • 下肢全体の腫脹
  • 腓腹部の左右差が3cm以上 (腓骨粗面 (脛骨粗面) の10cm下の周囲径を比較)
  • 圧痕性浮腫 (pitting edema) (症状側の下肢で観察)
  • 表在静脈の側副血行路の発達 (静脈瘤によるものは除外)
  • 既住のDVT (以前に客観的所見で診断されたDVTの既往あり)
以下の1項目は-2点
  • DVTと同等以上に考えられる他の診断

合計点の解釈 (NEJM2003²⁾)

・2点未満 : DVT unlikely

  D-dimer 陰性 なら 超音波検査不要 で DVT を除外

・2点以上 : DVT likely

  超音波検査へ

合計点の解釈 (従来法¹⁾、 JAMA2006³⁾)

・3点以上: DVT 「高リスク」

・1~2点: DVT 「中リスク」

・0点以下: DVT 「低リスク」

従来の 3段階による事前確率推定を中心に解説
実臨床では、 スコアから導かれるリスク層別化とD-ダイマー検査の結果を組み合わせて診断方針を決定する。 

エビデンス

1995年オリジナル版との違い

大きな違いとして、 「過去のDVT既往あり」 を+1点に加えている点が挙げられる (オリジナル版では加算されていなかった)。 それ以外の変数や点数配分は概ね共通している。

使用上の注意点

1) 患者背景によっては、 本スコアのみではDVTを見逃すリスクがある。 特に高度肥満、 既知の悪性腫瘍、 持続する下肢痛や浮腫の他原因など、 評価に影響しうる病態には留意が必要である。

2) 過去にDVT既往がある患者に適用する場合は点数付けを修正した改訂版 (既往歴に+1点を加算するなど) を用いる研究もあるため、 適切なバージョンを選択する。

3) Wellsスコアは外来診療での迅速な振り分けに特化しており、 重症入院患者や高齢者では偽陽性や偽陰性を増やす懸念があるため、 D-dimer検査や画像所見を併用した慎重な評価が望ましい。

4) D-dimer値はさまざまな要因で上昇するため、 陽性の場合は必ず画像検査 (下肢静脈エコーなど) で確認する必要がある。

出典

1) Value of assessment of pretest probability of deep-vein thrombosis in clinical management. Lancet. 1997 Dec;350(9094):1795-8. PMID: 9428249

2) Evaluation of D-Dimer in the Diagnosis of Suspected Deep-Vein Thrombosis. N Engl J Med. 2003 Sep 25;349(13):1227-35. PMID: 14507948

2) Does this patient have deep vein thrombosis? JAMA 2006 Jan 11;295(2):199-207. PMID: 16403932

最終更新 : 2025年3月5日
監修医師 : 聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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