概要
計算
監修医師

点滴速度と滴下量の計算法は?

成人への点滴、 特に自然滴下 (クレンメ調整) を行う際、 正確な滴下速度の計算と調整は、 適切な薬物投与と治療効果の確保、 および副作用リスク軽減のために極めて重要である。 本ツールでは、 時間あたりの指示量 (mL/時) から臨床現場で実際に確認する 「何秒に1滴」 という具体的な滴下間隔への換算方法と、 逆に観察された滴下間隔からおおよその投与速度 (mL/時) を推定する方法を概説する。

主に 「分あたりの滴下数」 と、 それを基にした 「秒あたりの滴下間隔」 で調整・評価する。

1. 基本となる計算式

分あたりの滴下数 (滴/分) = (総輸液量 (mL) × 輸液セット規格 (滴/mL)) / 総投与時間 (分)

※輸液セットの規格の確認が必須:

 - 成人用 : 一般的に20滴/mL
 - 微 量 : 一般的に60滴/mL
 - 小児用 : 一般的に60滴/mL

2. 時間あたりの指示量 (mL/h) から 「秒あたりの滴下間隔」 への換算

現場では 「〇mL/h」 という指示から、 具体的な滴下間隔 (「△秒に1滴」) を把握する必要がある。

ステップ1: mL/h を mL/分 に変換

投与量 (mL/分) = 指示投与量 (mL/h) / 60

ステップ2: mL/分 を 滴/分 に変換

投与速度 (滴/分) = 投与量 (mL/分) × 輸液セット規格 (滴/mL)

ステップ3: 滴/分 を 秒/滴 (滴下間隔) に変換

滴下間隔 (秒/滴) = 60 (秒/分) / 投与速度 (滴/分)

※「1滴が何秒ごとであれば良いか」 を示す

計算例 (成人用20滴/mL輸液セットを使用する場合)

例1: 指示量が 「60mL/h」 の場合

  • mL/分に変換: 60 (mL/h) / 60 = 1 (mL/分)
  • 滴/分に変換: 1 (mL/分) × 20 (滴/mL) = 20 (滴/分)
  • 秒/滴に変換: 60 (秒/分) / 20 (滴/分) = 3 (秒/滴)→ 約3秒に1滴で滴下する。

例2: 指示量が 「100mL/h」 の場合

  • mL/分に変換: 100 (mL/h) / 60 ≈ 1.67 (mL/分)
  • 滴/分に変換: 1.67 (mL/分) × 20 (滴/mL) ≈ 33.3 (滴/分)
  • 秒/滴に変換: 60 (秒/分) / 33.3 (滴/分) ≈ 1.8 (秒/滴)→ 約2秒弱 (1.8秒) に1滴で滴下する。 (臨床的には 「10秒間に5~6滴」 などと調整)

3. 観察された滴下間隔 (秒/滴) から時間あたりの投与量 (mL/時) への換算 (推定)

自然滴下中に観察される 「△秒に1滴」 という実際の滴下間隔から、 おおよその投与速度 (mL/時) を推定する方法。

ステップA: 秒/滴 を 滴/分 に変換

推定投与速度 (滴/分) = 60 (秒/分) / 観察された滴下間隔 (秒/滴)

ステップB: 滴/分 を mL/分 に変換

推定投与量 (mL/分) = 推定投与速度 (滴/分) / 輸液セット規格 (滴/mL)

ステップC: mL/分 を mL/時 に変換

推定投与速度 (mL/時) = 推定投与量 (mL/分) × 60 (分/時)

計算例 (成人用20滴/mL輸液セットを使用する場合)

例3: 観察された滴下間隔が 「3秒に1滴」 の場合

  • 滴/分に変換: 60 (秒/分) / 3 (秒/滴) = 20 (滴/分)
  • mL/分に変換: 20 (滴/分) / 20 (滴/mL) = 1 (mL/分)
  • mL/時に変換: 1 (mL/分) × 60 (分/時) = 60 (mL/時)→ 約60mL/時で投与されていると推定される。

例4: 観察された滴下間隔が 「5秒に1滴」 の場合

  • 滴/分に変換: 60 (秒/分) / 5 (秒/滴) = 12 (滴/分)
  • mL/分に変換: 12 (滴/分) / 20 (滴/mL) = 0.6 (mL/分)
  • mL/時に変換: 0.6 (mL/分) × 60 (分/時) = 36 (mL/時)→ 約36mL/時で投与されていると推定される。

使用上の注意点

手計算の場合は、 計算ミスを防ぐため可能な限りダブルチェックを行う。 また、 自然滴下時は、 必ず使用する輸液セットの規格 (20滴/mLか60滴/mLか等) を確認し、 計算に正しく用いる。

患者の体動、 穿刺部位、 輸液ラインの高さ等で速度は変動しやすい。 時計で実際の滴下数を定期的に確認し、 微調整する。

最終更新 : 2025年5月11日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師

成人点滴速度 (○秒に1滴→○mL/h)
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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成人点滴速度の推算式
2025年05月11日更新
概要
計算

点滴速度と滴下量の計算法は?

成人への点滴、 特に自然滴下 (クレンメ調整) を行う際、 正確な滴下速度の計算と調整は、 適切な薬物投与と治療効果の確保、 および副作用リスク軽減のために極めて重要である。 本ツールでは、 時間あたりの指示量 (mL/時) から臨床現場で実際に確認する 「何秒に1滴」 という具体的な滴下間隔への換算方法と、 逆に観察された滴下間隔からおおよその投与速度 (mL/時) を推定する方法を概説する。

主に 「分あたりの滴下数」 と、 それを基にした 「秒あたりの滴下間隔」 で調整・評価する。

1. 基本となる計算式

分あたりの滴下数 (滴/分) = (総輸液量 (mL) × 輸液セット規格 (滴/mL)) / 総投与時間 (分)

※輸液セットの規格の確認が必須:

 - 成人用 : 一般的に20滴/mL
 - 微 量 : 一般的に60滴/mL
 - 小児用 : 一般的に60滴/mL

2. 時間あたりの指示量 (mL/h) から 「秒あたりの滴下間隔」 への換算

現場では 「〇mL/h」 という指示から、 具体的な滴下間隔 (「△秒に1滴」) を把握する必要がある。

ステップ1: mL/h を mL/分 に変換

投与量 (mL/分) = 指示投与量 (mL/h) / 60

ステップ2: mL/分 を 滴/分 に変換

投与速度 (滴/分) = 投与量 (mL/分) × 輸液セット規格 (滴/mL)

ステップ3: 滴/分 を 秒/滴 (滴下間隔) に変換

滴下間隔 (秒/滴) = 60 (秒/分) / 投与速度 (滴/分)

※「1滴が何秒ごとであれば良いか」 を示す

計算例 (成人用20滴/mL輸液セットを使用する場合)

例1: 指示量が 「60mL/h」 の場合

  • mL/分に変換: 60 (mL/h) / 60 = 1 (mL/分)
  • 滴/分に変換: 1 (mL/分) × 20 (滴/mL) = 20 (滴/分)
  • 秒/滴に変換: 60 (秒/分) / 20 (滴/分) = 3 (秒/滴)→ 約3秒に1滴で滴下する。

例2: 指示量が 「100mL/h」 の場合

  • mL/分に変換: 100 (mL/h) / 60 ≈ 1.67 (mL/分)
  • 滴/分に変換: 1.67 (mL/分) × 20 (滴/mL) ≈ 33.3 (滴/分)
  • 秒/滴に変換: 60 (秒/分) / 33.3 (滴/分) ≈ 1.8 (秒/滴)→ 約2秒弱 (1.8秒) に1滴で滴下する。 (臨床的には 「10秒間に5~6滴」 などと調整)

3. 観察された滴下間隔 (秒/滴) から時間あたりの投与量 (mL/時) への換算 (推定)

自然滴下中に観察される 「△秒に1滴」 という実際の滴下間隔から、 おおよその投与速度 (mL/時) を推定する方法。

ステップA: 秒/滴 を 滴/分 に変換

推定投与速度 (滴/分) = 60 (秒/分) / 観察された滴下間隔 (秒/滴)

ステップB: 滴/分 を mL/分 に変換

推定投与量 (mL/分) = 推定投与速度 (滴/分) / 輸液セット規格 (滴/mL)

ステップC: mL/分 を mL/時 に変換

推定投与速度 (mL/時) = 推定投与量 (mL/分) × 60 (分/時)

計算例 (成人用20滴/mL輸液セットを使用する場合)

例3: 観察された滴下間隔が 「3秒に1滴」 の場合

  • 滴/分に変換: 60 (秒/分) / 3 (秒/滴) = 20 (滴/分)
  • mL/分に変換: 20 (滴/分) / 20 (滴/mL) = 1 (mL/分)
  • mL/時に変換: 1 (mL/分) × 60 (分/時) = 60 (mL/時)→ 約60mL/時で投与されていると推定される。

例4: 観察された滴下間隔が 「5秒に1滴」 の場合

  • 滴/分に変換: 60 (秒/分) / 5 (秒/滴) = 12 (滴/分)
  • mL/分に変換: 12 (滴/分) / 20 (滴/mL) = 0.6 (mL/分)
  • mL/時に変換: 0.6 (mL/分) × 60 (分/時) = 36 (mL/時)→ 約36mL/時で投与されていると推定される。

使用上の注意点

手計算の場合は、 計算ミスを防ぐため可能な限りダブルチェックを行う。 また、 自然滴下時は、 必ず使用する輸液セットの規格 (20滴/mLか60滴/mLか等) を確認し、 計算に正しく用いる。

患者の体動、 穿刺部位、 輸液ラインの高さ等で速度は変動しやすい。 時計で実際の滴下数を定期的に確認し、 微調整する。

最終更新 : 2025年5月11日
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