レジオネラ症とは¹⁾
- Legionella属菌による感染症である.
- Legionella属菌は自然界に広く生息しており、 国内では温泉・入浴施設での集団発生事例が特に多い.
- レジオネラ症は肺炎 (肺炎型) とPontiac熱 (非肺炎型) が主要な病型である.
- 潜伏期は2-10日程度である¹⁾.
- 臨床症状では他の細菌性肺炎との区別は困難である²⁾.
- 全身性倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、乾性咳嗽(2~3日後には膿性~赤褐色の比較的粘稠性に乏しい痰の喀出)、38℃以上の高熱、悪寒、胸痛、呼吸困難が見られる²⁾.
- 傾眠、昏睡、幻覚、四肢の振せんなどの中枢神経症状や下痢も見られるのも本症の特徴²⁾.
- 適切な治療がなされない場合、 1週間以内の経過で急速に進行し、呼吸不全や腎不全、 さらに多臓器不全を呈することがある¹⁾.
WUHスコア(修正版)とは?³⁾
レジオネラ病を診断するためのWinthrop-University Hospitalのスコアリング(修正版)は、 感度と特異度が非常に優れており、 現在でもレジオネア病を診断するための最良のシステムのひとつである.
臨床症状
- 体温≧39.5℃* (比較的徐脈を伴う) +5
- 頭痛 (急性発症) +2
- 精神錯乱/嗜眠* (薬剤誘発性でなく、代謝性/低酸素性血症でない) +4
- 耳痛 (急性発症) -3
- 非滲出性咽頭炎 (急性発症) -3
- 嗄声 (慢性ではなく急性) -3
- 膿性喀痰 (慢性気管支炎を除く) -3
- 喀血* (軽度/中等度) -3
- 胸膜炎性胸痛 (急性発症) -3
- 軟便/水様性下痢* (薬剤誘発性でない) +3
- 腹痛* (下痢を伴う/伴わない) +5
- 腎不全 * (慢性ではなく急性) +3
- ショック/低血圧* (心臓が原因ではない) -5
- ショック/低血圧* (肺が原因ではない) +5
- 脾腫 (CAP以外の原因を除く) -5
- β-ラクタムに対する反応の欠如 (72時間後、ウイルス性肺炎を除く) +5
臨床検査
- 胸部X線 (急速に進行する非対称性の浸潤*、重症のインフルエンザ/SARSを除く) +3
- ↓ PO₂ /↑ A-a 勾配(>35)* (重症インフルエンザ/SARS を除く) -5
- ↓ Na+ (急性発症) +1
- ↓ PO₄ * (急性発症) +5
- ↑ SGOT/SGPT (早期は軽度/一過性) 急性発症 +4
- ↑ 総ビリルビン (他に説明不能) +1
- ↑ LDH(>400) * (HIV/PCPを除く) -5
- ↑ CPK/アルドラーゼ (他に説明不能) +4
- ↑ CRP (> 30) (急性発症) +5
- 寒冷凝集素↑ (≧11:64) 急性発症 -5
- ↑ クレアチニン (急性発症 )+ 2
- 顕微鏡的血尿* (外傷、BPH、フォーリーカテーテル、膀胱/腎の新生物を除く) +2
*他に説明不能 (急性および肺炎関連)
レジオネラの可能性
- >15点 レジオネラの可能性が極めて高い
- 5-15点 レジオネラの可能性が高い
- < 5点 レジオネラの可能性は低い
エビデンス
尿中抗原陽性で診断されたレジオネラ肺炎37例と血液培養で診断された肺炎球菌性肺炎31例を対象にすると、WUHスコアの 感度78% 特異度65% 陽性的中率 42% 陰性的中率90%であった⁴⁾.
参考文献
- 日本感染症学会. 感染症クイック・リファレンス
- 国立感染症研究所. レジオネラ症
- The atypical pneumonias: clinical diagnosis and importance. Clin Microbiol Infect. 2006 May;12 Suppl 3:12-24.PMID: 16669925
- Evaluation of the Winthrop-University Hospital criteria to identify Legionella pneumonia.Chest. 2001 Oct;120(4):1064-71.PMID: 11591540
最終更新:2023年1月24日
監修医師:聖路加国際病院 清水真人