POTENT試験リスクスコアは、 POTENT試験のpost-hoc exploratory analysisに基づく層別化指標であり、 日本人研究グループが2023年に報告した。 ER陽性・HER2陰性早期乳癌において、 術後内分泌療法へのS-1上乗せ効果を再発リスク別に評価するために作成されたものである¹⁾²⁾。
POTENT試験リスクスコアは、 5つの項目を組み合わせて診断する。
1 臨床的腫瘍ステージ
2 リンパ節転移
3 ER陽性率
4 組織学的グレード
5 Ki-67陽性率
Group1 (≦1.35): 低リスク群。 S-1併用による上乗せ効果は示されていない (HR 0.86 95%CI 0.45–1.63)。
Group2 ( >1.35~1.93): 中間リスク群。 S-1の上乗せ効果が最も顕著 (HR 0.51、 95% CI 0.33-0.78)。
Group3 (>1.93): 高リスク群。 S-1の上乗せ効果は認められるがGroup 2より小さい (HR 0.71、 95% CI 0.49-1.02)。
POTENT試験 (Toi Mら、 2021年) は、 139施設から1,930例を登録した多施設共同第III相試験である²⁾。 追跡期間中央値52.2ヵ月で、 iDFSイベントは内分泌療法単独群155例 (16%)、 S-1併用群101例 (11%) であり、 S-1併用によりiDFSが有意に改善した (HR 0.63、 95% CI 0.49-0.81、 p=0.0003)。 中間解析で主要評価項目を達成したため、 試験は早期終了となった。
Takada Mら (2023年) は、 POTENT試験の1,897例を対象にpost-hoc探索的解析を実施した¹⁾。 内分泌療法単独群のデータからCox比例ハザードモデルによるcomposite risk valueを算出し、 四分位数で3群に分類した。 S-1の治療効果はGroup 2で最も顕著であった (HR 0.51)。 また、 monarchE試験のcohort 1基準を満たすリンパ節転移1-3個の患者でもS-1の有効性が示された (HR 0.47、 95% CI 0.29-0.74)。
2025年にはpost-POTENT trial prognostic surveyが報告され、 POTENT参加者1,593例について中央値77.5か月追跡の長期予後が検討された。 6年OSはS-1群94.4%、 内分泌療法単独群93.1%であり、 OS差は有意でなかった (HR 0.89、 95%CI 0.61–1.30、 P=0.54)。 一方で、 iDFSはHR 0.80 (95%CI 0.64–1.01、 P=0.06) と改善傾向を維持し、 DDFSはHR 0.70(95%CI 0.53–0.93,P=0.01) で有意に改善していた。 すなわち、 S-1は長期OS差をまだ示していないが、 再発、 とくに遠隔再発抑制の利益は持続していると解釈できる³⁾。
日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン2022年版CQ5では、 再発リスクが高いホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後内分泌療法へのS-1の1年間併用が強く推奨されている⁴⁾。
本スコアはPOTENT試験の登録集団に基づいて開発されたものであり、 適用はER陽性HER2陰性の早期乳癌 (Stage I-IIIB、 再発中間~高リスク) に限定される。 低リスク症例 (リンパ節転移なし・プロトコル定義の低リスク特徴を有する症例) は元の試験から除外されている。
本リスクスコアはpost-hoc探索的解析の結果であり、 前向き試験での検証は行われていない。 composite risk valueの予後予測能は他のデータセットでは検証されておらず、 S-1の治療効果推定のみに使用すべきとされている²⁾。 また、 POTENT試験は中間解析で早期終了しており、 イベント数が限定されている。
本ツールは対象症例がPOTENT試験のどのリスク群に該当するかを分類するものであり、 個別の患者の予後を予測するためのものではない。 治療方針の決定は、 本ツールの結果のみに基づくのではなく、 個々の患者背景やリスク・ベネフィットを総合的に判断して行う必要がある。
1) Adjuvant S-1 plus endocrine therapy for oestrogen receptor-positive, HER2-negative, primary breast cancer: a multicentre, open-label, randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2021 Jan;22(1):74-84. PMID: 33387497
4) 日本乳癌学会 編 2022年版乳癌診療ガイドライン①治療編 金原出版株式会社. p75-77
最終更新日 : 2026年4月13日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師
POTENT試験リスクスコアは、 POTENT試験のpost-hoc exploratory analysisに基づく層別化指標であり、 日本人研究グループが2023年に報告した。 ER陽性・HER2陰性早期乳癌において、 術後内分泌療法へのS-1上乗せ効果を再発リスク別に評価するために作成されたものである¹⁾²⁾。
POTENT試験リスクスコアは、 5つの項目を組み合わせて診断する。
1 臨床的腫瘍ステージ
2 リンパ節転移
3 ER陽性率
4 組織学的グレード
5 Ki-67陽性率
Group1 (≦1.35): 低リスク群。 S-1併用による上乗せ効果は示されていない (HR 0.86 95%CI 0.45–1.63)。
Group2 ( >1.35~1.93): 中間リスク群。 S-1の上乗せ効果が最も顕著 (HR 0.51、 95% CI 0.33-0.78)。
Group3 (>1.93): 高リスク群。 S-1の上乗せ効果は認められるがGroup 2より小さい (HR 0.71、 95% CI 0.49-1.02)。
POTENT試験 (Toi Mら、 2021年) は、 139施設から1,930例を登録した多施設共同第III相試験である²⁾。 追跡期間中央値52.2ヵ月で、 iDFSイベントは内分泌療法単独群155例 (16%)、 S-1併用群101例 (11%) であり、 S-1併用によりiDFSが有意に改善した (HR 0.63、 95% CI 0.49-0.81、 p=0.0003)。 中間解析で主要評価項目を達成したため、 試験は早期終了となった。
Takada Mら (2023年) は、 POTENT試験の1,897例を対象にpost-hoc探索的解析を実施した¹⁾。 内分泌療法単独群のデータからCox比例ハザードモデルによるcomposite risk valueを算出し、 四分位数で3群に分類した。 S-1の治療効果はGroup 2で最も顕著であった (HR 0.51)。 また、 monarchE試験のcohort 1基準を満たすリンパ節転移1-3個の患者でもS-1の有効性が示された (HR 0.47、 95% CI 0.29-0.74)。
2025年にはpost-POTENT trial prognostic surveyが報告され、 POTENT参加者1,593例について中央値77.5か月追跡の長期予後が検討された。 6年OSはS-1群94.4%、 内分泌療法単独群93.1%であり、 OS差は有意でなかった (HR 0.89、 95%CI 0.61–1.30、 P=0.54)。 一方で、 iDFSはHR 0.80 (95%CI 0.64–1.01、 P=0.06) と改善傾向を維持し、 DDFSはHR 0.70(95%CI 0.53–0.93,P=0.01) で有意に改善していた。 すなわち、 S-1は長期OS差をまだ示していないが、 再発、 とくに遠隔再発抑制の利益は持続していると解釈できる³⁾。
日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン2022年版CQ5では、 再発リスクが高いホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後内分泌療法へのS-1の1年間併用が強く推奨されている⁴⁾。
本スコアはPOTENT試験の登録集団に基づいて開発されたものであり、 適用はER陽性HER2陰性の早期乳癌 (Stage I-IIIB、 再発中間~高リスク) に限定される。 低リスク症例 (リンパ節転移なし・プロトコル定義の低リスク特徴を有する症例) は元の試験から除外されている。
本リスクスコアはpost-hoc探索的解析の結果であり、 前向き試験での検証は行われていない。 composite risk valueの予後予測能は他のデータセットでは検証されておらず、 S-1の治療効果推定のみに使用すべきとされている²⁾。 また、 POTENT試験は中間解析で早期終了しており、 イベント数が限定されている。
本ツールは対象症例がPOTENT試験のどのリスク群に該当するかを分類するものであり、 個別の患者の予後を予測するためのものではない。 治療方針の決定は、 本ツールの結果のみに基づくのではなく、 個々の患者背景やリスク・ベネフィットを総合的に判断して行う必要がある。
1) Adjuvant S-1 plus endocrine therapy for oestrogen receptor-positive, HER2-negative, primary breast cancer: a multicentre, open-label, randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2021 Jan;22(1):74-84. PMID: 33387497
4) 日本乳癌学会 編 2022年版乳癌診療ガイドライン①治療編 金原出版株式会社. p75-77
最終更新日 : 2026年4月13日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
・編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師
・各領域の第一線の専門医が複数在籍
・最新トピックに関する独自記事を配信中
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
臨床支援アプリHOKUTOでご利用いただける医療計算ツールのご紹介