概要
計算
監修医師

厚生労働省作成の概要 / 診断基準等及び臨床調査個人票はこちらよりご確認いただけます

厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用 へ遷移します

再生不良性貧血とは¹⁾

末梢血での全て血球の減少(汎血球減少) と骨髄の細胞密度の低下(骨髄低形成) を特徴とする一つの症候群である。 実際にはこれらの検査所見を示す疾患は数多くあるため、 その中から、 概念がより明確な他の疾患を除外することによって初めて再生不良性貧血と診断することができる。

病気の本態は 「骨髄毒性を示す薬剤の影響がないにもかかわらず、 造血幹細胞が持続的に減少した状態」 ということができる。

診断基準 (平成28年度改定版)

①、②によって再生不良性貧血を疑い、 
③によって他の疾患を除外し診断する。 
④によって診断を更に確実なものとする。 
なお、 厚生労働省の申請基準には「平成22年度改定版」が用いられている。 平成28年度改訂版との違いを注釈で表記する。

①臨床所見

貧血、 出血傾向、 ときに発熱を認める。

②検査所見

以下の3項目のうち、 少なくとも2つを満たす。

1. Hb濃度<10.0g/dL
2. 好中球<1,500/µL
3. 血小板<10 万/µL

③汎血球減少の他の原因疾患を認めない

白血病、 骨髄異形成症候群、 骨髄線維症、 発作性夜間ヘモグロビン尿症、 巨赤芽球性貧血、 癌の骨髄転移、 悪性リンパ腫、 多発性骨髄腫、 脾機能亢進症 (肝硬変、 門脈圧亢進症など) 、 全身性エリテマトーデス、 血球貪食症候群、 感染症など

④以下の検査所見で診断の確実性が増す

  • 網赤血球や未成熟血小板割合の増加なし
※平成22年度改定版:網赤血球増加がない
  • 骨髄穿刺所見 (クロット標本を含む) は、 重症例では有核細胞の減少がある。 非重症例では、 穿刺部位によっては有核細胞の減少がないこともあるが、 巨核球は減少している。 細胞が残存している場合、 赤芽球にはしばしば異形成があるが、 顆粒球の異形成は顕著ではない
※平成22年度改定版:骨髄穿刺所見 (クロット標本を含む。 ) で、 有核細胞は原則として減少するが、 減少がない場合も巨核球の減少とリンパ球比率の上昇がある。 造血細胞の異形成は顕著でない。
  • 骨髄生検所見で造血細胞割合の減少あり
  • 血清鉄値上昇と不飽和鉄結合能低下あり
  • 胸腰椎体のMRIで造血組織の減少と脂肪組織の増加を示す所見あり
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症形質の血球が検出される
   ※平成22年度改定版:記載なし

⑤診断カテゴリー

診断について

診断に際しては、 ① ②によって再生不良性貧血を疑い、 ③によって他の疾患を除外し、 ④によって診断をさらに確実なものとする。 再生不良性貧血の診断は基本的に他疾患の除外による。 ただし、 非重症例では骨髄細胞にしばしば形態異常がみられるため、 芽球・環状鉄芽球の増加や染色体異常がない骨髄異形成症候群との鑑別は困難である。 

※平成22年度改定版:診断に際しては、 ① ②によって再生不良性貧血を疑い、 ③によって他の疾患を除外し、 診断する。 ④によって診断を更に確実なものとする。 再生不良性貧血の診断は基本的に他疾患の除外によるが、 一部に骨髄異形成症候群の不応性貧血と鑑別が困難な場合がある。

治療方針について

このため治療方針は病態に応じて決定する必要がある。 免疫病態による (免疫抑制療法が効きやすい) 骨髄不全かどうかの判定に有用な可能性がある検査所見として、 PNH型血球・HLAクラス I アレル欠失血球の増加、 血漿トロンボポエチン高値 (≧320 pg/ml) などがある。

※平成22年度改定版:記載なし

重症度分類(平成29年度修正版)

指定難病申請は「Stage2以上」が対象

stage 1 軽症

下記以外で輸血を必要としない。  

stage 2~3  中等症~やや重症

以下の2項目以上を満たし、

☑ 網赤血球 <60,000/μl 
☑ 好中球 <1,000/μl 
☑ 血小板 <50,000/μl 

stage 2a:赤血球輸血を必要としない

stage 2b:赤血球輸血が必要(毎月<2単位)

stage 3  :赤血球輸血が必要(毎月≧2単位) 

※平成16年度修正版:Stage2 (中等症) 下記の2項目以上を満たす 
好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl

stage 4 重症

以下の2項目以上を満たす

☑ 網赤血球 <40,000/μl 
☑ 好中球 <500/μl 
☑ 血小板 <20,000/μl 
※平成16年度修正版:網赤血球<20,000/μL

stage 5 最重症

好中球<200/μlに加え、以下1項目以上を満たす

☑ 網赤血球 <20,000/μl 
☑ 血小板 <20,000/μl 

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📘 再生不良性貧血診療の参照ガイド

令和1年改訂

📘 再生不良性貧血 (成人) 第2版

造血細胞移植ガイドライン

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 再生不良性貧血 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157706.docx (参照2023-2-28)
  2. 再生不良性貧血の診断基準と診療の参照ガイド作成のためのワーキンググループ 『再生不良性貧血診療の参照ガイド令和1年改訂版』. 2020, 308p
 
最終更新:2023年3月3日
監修医師:HOKUTO編集部医師

再生不良性貧血の診断基準
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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監修・協力医一覧
再生不良性貧血の診断基準
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厚生労働省 指定難病60
2024年05月05日更新
概要
計算

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再生不良性貧血とは¹⁾

末梢血での全て血球の減少(汎血球減少) と骨髄の細胞密度の低下(骨髄低形成) を特徴とする一つの症候群である。 実際にはこれらの検査所見を示す疾患は数多くあるため、 その中から、 概念がより明確な他の疾患を除外することによって初めて再生不良性貧血と診断することができる。

病気の本態は 「骨髄毒性を示す薬剤の影響がないにもかかわらず、 造血幹細胞が持続的に減少した状態」 ということができる。

診断基準 (平成28年度改定版)

①、②によって再生不良性貧血を疑い、 
③によって他の疾患を除外し診断する。 
④によって診断を更に確実なものとする。 
なお、 厚生労働省の申請基準には「平成22年度改定版」が用いられている。 平成28年度改訂版との違いを注釈で表記する。

①臨床所見

貧血、 出血傾向、 ときに発熱を認める。

②検査所見

以下の3項目のうち、 少なくとも2つを満たす。

1. Hb濃度<10.0g/dL
2. 好中球<1,500/µL
3. 血小板<10 万/µL

③汎血球減少の他の原因疾患を認めない

白血病、 骨髄異形成症候群、 骨髄線維症、 発作性夜間ヘモグロビン尿症、 巨赤芽球性貧血、 癌の骨髄転移、 悪性リンパ腫、 多発性骨髄腫、 脾機能亢進症 (肝硬変、 門脈圧亢進症など) 、 全身性エリテマトーデス、 血球貪食症候群、 感染症など

④以下の検査所見で診断の確実性が増す

  • 網赤血球や未成熟血小板割合の増加なし
※平成22年度改定版:網赤血球増加がない
  • 骨髄穿刺所見 (クロット標本を含む) は、 重症例では有核細胞の減少がある。 非重症例では、 穿刺部位によっては有核細胞の減少がないこともあるが、 巨核球は減少している。 細胞が残存している場合、 赤芽球にはしばしば異形成があるが、 顆粒球の異形成は顕著ではない
※平成22年度改定版:骨髄穿刺所見 (クロット標本を含む。 ) で、 有核細胞は原則として減少するが、 減少がない場合も巨核球の減少とリンパ球比率の上昇がある。 造血細胞の異形成は顕著でない。
  • 骨髄生検所見で造血細胞割合の減少あり
  • 血清鉄値上昇と不飽和鉄結合能低下あり
  • 胸腰椎体のMRIで造血組織の減少と脂肪組織の増加を示す所見あり
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症形質の血球が検出される
   ※平成22年度改定版:記載なし

⑤診断カテゴリー

診断について

診断に際しては、 ① ②によって再生不良性貧血を疑い、 ③によって他の疾患を除外し、 ④によって診断をさらに確実なものとする。 再生不良性貧血の診断は基本的に他疾患の除外による。 ただし、 非重症例では骨髄細胞にしばしば形態異常がみられるため、 芽球・環状鉄芽球の増加や染色体異常がない骨髄異形成症候群との鑑別は困難である。 

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治療方針について

このため治療方針は病態に応じて決定する必要がある。 免疫病態による (免疫抑制療法が効きやすい) 骨髄不全かどうかの判定に有用な可能性がある検査所見として、 PNH型血球・HLAクラス I アレル欠失血球の増加、 血漿トロンボポエチン高値 (≧320 pg/ml) などがある。

※平成22年度改定版:記載なし

重症度分類(平成29年度修正版)

指定難病申請は「Stage2以上」が対象

stage 1 軽症

下記以外で輸血を必要としない。  

stage 2~3  中等症~やや重症

以下の2項目以上を満たし、

☑ 網赤血球 <60,000/μl 
☑ 好中球 <1,000/μl 
☑ 血小板 <50,000/μl 

stage 2a:赤血球輸血を必要としない

stage 2b:赤血球輸血が必要(毎月<2単位)

stage 3  :赤血球輸血が必要(毎月≧2単位) 

※平成16年度修正版:Stage2 (中等症) 下記の2項目以上を満たす 
好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl

stage 4 重症

以下の2項目以上を満たす

☑ 網赤血球 <40,000/μl 
☑ 好中球 <500/μl 
☑ 血小板 <20,000/μl 
※平成16年度修正版:網赤血球<20,000/μL

stage 5 最重症

好中球<200/μlに加え、以下1項目以上を満たす

☑ 網赤血球 <20,000/μl 
☑ 血小板 <20,000/μl 

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再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和1年改訂版より

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令和1年改訂

📘 再生不良性貧血 (成人) 第2版

造血細胞移植ガイドライン

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 再生不良性貧血 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157706.docx (参照2023-2-28)
  2. 再生不良性貧血の診断基準と診療の参照ガイド作成のためのワーキンググループ 『再生不良性貧血診療の参照ガイド令和1年改訂版』. 2020, 308p
 
最終更新:2023年3月3日
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