概要
計算
監修医師

ARC-HBRとは?

ARC-HBR基準とは、 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) 患者における高出血リスク (HBR)の評価スコアである。 

欧米、 日本、 韓国の専門家、 政府機関、 企業らの協力により構成される 「学術研究コンソーシアム (Academic Research Consortium for High Bleeding Risk)」 により策定された¹⁾。 定義を明確にするとともに、 大基準14項目と小基準6項目を専門家のコンセンサスとして示した。

定義と評価項目

HBRの定義

高出血リスクとは1または2の場合を指す
  1. PCI後1年以内にBARC出血基準のType 3またはType 5の出血リスク4%以上
  2. PCI後1年以内に頭蓋内出血リスク1%以上
   参考:BARC出血基準
Type 0:出血なし
Type 1:医学的問題とならない出血
Type 2:明らかで医学的に対応すべき出血
Type 3 : 明らかな出血とHb↓、 頭蓋内出血
Type 4:以下のいずれか
− CABG関連出血
− 48時間以内の周術期頭蓋内出血
− 出血管理のための胸骨閉鎖後の再手術
− 48時間以内の全血かRBC≧5Uの輸血
− 24時間以内の胸腔チューブからの2L以上の出血
Type 5 : 致死的出血

評価基準

大基準1個以上または小基準2個以上を満たす場合、 高出血リスクとする

 <大基準>

  • 長期の経口抗凝固薬使用
  • eGFR<30mL/min/1.73m²
  • Hb < 11g/dL
  • 入院/輸血が必要な非外傷性出血の既往 (6か月以内、または再発性では時期を問わない)
  • Plt <10万/dL
  • 慢性的な出血傾向
  • 門脈圧亢進症を伴う肝硬変
  • 12ヶ月以内の活動性の悪性腫瘍 (非黒色腫皮膚癌を除く)
  • 特発性脳出血の既往、12ヶ月以内の外傷性脳出血の既往、 脳動静脈奇形の合併、 6ヶ月以内の中等度または重度の脳卒中既往
  • DAPT期間中の延期不可能な大手術
  • PCI施行前30日以内の大きな外傷または大手術歴

 <小基準>

  • 75歳以上
  • eGFR<60mL/min/1.73m²
  • Hb 男性<13g/dL、女性<12g/dL
  • 入院/輸血が必要な非外傷性出血 (6~12ヶ月以内、初回)
  • NSAIDsまたは経口ステロイドの長期使用
  • 主要項目に該当しない脳梗塞の既往

エビデンス

策定の背景

これまでの研究、文献では出血リスク評価に複数の指標が存在しており、 データの整合性が取れなかった。 ARC-HBR評価基準により、 HBR患者を対象にした臨床試験の実施やそれらのデータ解釈が円滑に進むことが期待される。

使用上の注意点

日本版HBR評価基準

本邦に特徴的なリスク因子を含んだ 「日本版HBR評価基準」 も報告されている²⁾。  大項目として、 低体重・フレイル、 透析、 心不全、 PVD (末梢血管疾患)、 小項目として80歳以上のリスクが高いことが追加で示されている。

参考文献

  1. Defining high bleeding risk in patients undergoing percutaneous coronary intervention: a consensus document from the Academic Research Consortium for High Bleeding Risk.Eur Heart J. 2019 Aug 14;40(31):2632-2653.PMID: 31116395
  2. 日本循環器学会、日本冠疾患学会、日本胸部外科学会、日本集中治療医学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心臓血管外科学会日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本不整脈心電学会. 2020年 JCS ガイドラインフォーカスアップデート版. 冠動脈疾患患者における抗血栓療法.

最終更新:2023年4月6日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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監修・協力医一覧

ARC-HBR基準

PCI患者の出血リスク評価
2023年09月08日更新
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ARC-HBRとは?

ARC-HBR基準とは、 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) 患者における高出血リスク (HBR)の評価スコアである。 

欧米、 日本、 韓国の専門家、 政府機関、 企業らの協力により構成される 「学術研究コンソーシアム (Academic Research Consortium for High Bleeding Risk)」 により策定された¹⁾。 定義を明確にするとともに、 大基準14項目と小基準6項目を専門家のコンセンサスとして示した。

定義と評価項目

HBRの定義

高出血リスクとは1または2の場合を指す
  1. PCI後1年以内にBARC出血基準のType 3またはType 5の出血リスク4%以上
  2. PCI後1年以内に頭蓋内出血リスク1%以上
   参考:BARC出血基準
Type 0:出血なし
Type 1:医学的問題とならない出血
Type 2:明らかで医学的に対応すべき出血
Type 3 : 明らかな出血とHb↓、 頭蓋内出血
Type 4:以下のいずれか
− CABG関連出血
− 48時間以内の周術期頭蓋内出血
− 出血管理のための胸骨閉鎖後の再手術
− 48時間以内の全血かRBC≧5Uの輸血
− 24時間以内の胸腔チューブからの2L以上の出血
Type 5 : 致死的出血

評価基準

大基準1個以上または小基準2個以上を満たす場合、 高出血リスクとする

 <大基準>

  • 長期の経口抗凝固薬使用
  • eGFR<30mL/min/1.73m²
  • Hb < 11g/dL
  • 入院/輸血が必要な非外傷性出血の既往 (6か月以内、または再発性では時期を問わない)
  • Plt <10万/dL
  • 慢性的な出血傾向
  • 門脈圧亢進症を伴う肝硬変
  • 12ヶ月以内の活動性の悪性腫瘍 (非黒色腫皮膚癌を除く)
  • 特発性脳出血の既往、12ヶ月以内の外傷性脳出血の既往、 脳動静脈奇形の合併、 6ヶ月以内の中等度または重度の脳卒中既往
  • DAPT期間中の延期不可能な大手術
  • PCI施行前30日以内の大きな外傷または大手術歴

 <小基準>

  • 75歳以上
  • eGFR<60mL/min/1.73m²
  • Hb 男性<13g/dL、女性<12g/dL
  • 入院/輸血が必要な非外傷性出血 (6~12ヶ月以内、初回)
  • NSAIDsまたは経口ステロイドの長期使用
  • 主要項目に該当しない脳梗塞の既往

エビデンス

策定の背景

これまでの研究、文献では出血リスク評価に複数の指標が存在しており、 データの整合性が取れなかった。 ARC-HBR評価基準により、 HBR患者を対象にした臨床試験の実施やそれらのデータ解釈が円滑に進むことが期待される。

使用上の注意点

日本版HBR評価基準

本邦に特徴的なリスク因子を含んだ 「日本版HBR評価基準」 も報告されている²⁾。  大項目として、 低体重・フレイル、 透析、 心不全、 PVD (末梢血管疾患)、 小項目として80歳以上のリスクが高いことが追加で示されている。

参考文献

  1. Defining high bleeding risk in patients undergoing percutaneous coronary intervention: a consensus document from the Academic Research Consortium for High Bleeding Risk.Eur Heart J. 2019 Aug 14;40(31):2632-2653.PMID: 31116395
  2. 日本循環器学会、日本冠疾患学会、日本胸部外科学会、日本集中治療医学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心臓血管外科学会日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本不整脈心電学会. 2020年 JCS ガイドラインフォーカスアップデート版. 冠動脈疾患患者における抗血栓療法.

最終更新:2023年4月6日
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