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厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用 へ遷移します
PNHの診断基準 (令和元年度改訂)
①臨床所見 ②検査所見よりPNHを疑い (Possible) 、
③検査所見により診断を確定する (Definite)
なお、 厚生労働省の申請基準には改訂前の診断基準が用いられている。 令和元年度改訂版との違いを注釈で表記する。
①臨床所見
貧血、 黄疸のほか肉眼的ヘモグロビン尿 (淡赤色尿~暗褐色尿) を認めることが多い。
ときに静脈血栓、 出血傾向、 易感染性を認める。 先天発症はないが、 青壮年を中心に広い年齢層で発症する。
②検査所見
下記がしばしばみられる。
- 貧血および白血球、 血小板の減少
- 血清間接ビリルビン値上昇、 LDH値上昇、 ハプトグロビン値低下
- 尿ヘモグロビン(+)、 尿沈渣のヘモジデリン(+)
- 好中球アルカリホスファターゼスコア低下、 赤血球アセチルコリンエステラーゼ低下
- 骨髄赤芽球増加 (骨髄は過形成が多いが低形成もある)
- Ham (酸性化血清溶血) 試験(+)または砂糖水試験(+)
- 直接クームス試験(−)
※ 旧版:7.の記載なし
③検査所見
グリコシルホスファチヂルイノシトール (GPI) アンカー型タンパク質の欠損血球 (PNHタイプ赤血球) の検出と定量
※ 旧版:
1.直接クームス試験が陰性
2.グリコシルホスファチジルイノシトール (GPI) アンカー型膜蛋白の欠損血球 (PNH タイプ赤血球) の検出と定量
④骨髄穿刺、 骨髄生検、 染色体検査等によって下記病型分類を行うが、 必ずしもいずれかに分類する必要はない。
- 古典的 PNH
- 骨髄不全型 PNH
- 混合型 PNH
※ 旧版:
1.臨床的 PNH (溶血所見がみられる。 )
(1)古典的 PNH
(2)骨髄不全型 PNH
(3)混合型 PNH
2.溶血所見が明らかでない PNHタイプ血球陽性の骨髄不全症 (臨床的PNHとは区別し、 医療費助成の対象としない。 )
⑤参考
- 確定診断のための溶血所見としては、 血清LDH値上昇、 網赤血球増加、 間接ビリルビン値上昇、 血清ハプトグロビン値低下が参考になる。 PNHタイプ赤血球 (II 型+III型) が 1%以上で、 血清LDH値が正常上限の1.5倍以上であれば、 臨床的PNHと診断してよい。
- 国際分類では、 GPIアンカー型タンパク質の欠損赤血球が検出されればPNHとされるが、 溶血所見が明らかでない微少PNHタイプ血球陽性の骨髄不全症 (subliclinical PNH: PNHsc) は、 臨床的PNHとは区別する。
- PNHscはPNHではないが、 経過観察中にPNHに移行することがある。 このため、 骨髄不全患者をみた場合には、 高リスクMDS例を除くすべての例に対して高感度フローサイトメトリーを行い、 PNHタイプ血球の有無を調べる必要がある。
- 直接クームス試験は、 エクリズマブまたはラブリズマブ投与中の患者や自己免疫性溶血性貧血を合併した PNH患者では陽性となることがある。
- 混合型PNHとは、 古典的PNHと骨髄不全型PNHの両者の特徴を兼ね備えたり、 いずれの特徴も不十分で、 いずれかの分類に苦慮したりする場合に便宜的に用いる。
※旧版:確定診断のための溶血所見としては、 血清 LDH値上昇、 網赤血球増加、 間接ビリルビン値上昇、 血清ハプトグロビン値低下が参考になる。 PNHタイプ赤血球 (III型) が1%以上で、 血清LDH値が正常上限の1.5倍以上であれば、 臨床的PNH と診断してよい。
重症度分類 (令和元年度改訂)
指定難病申請は「中等症以上」が対象
なお、 厚生労働省の申請基準には「平成26年度改定版」が用いられている。 令和元年度改訂版との違いを注釈で表記する。
軽 症
下記以外
中等症
以下のいずれかを認める
溶血
・中等度溶血、 または時に溶血発作を認める
溶血に伴う以下の臓器障害・症状
- 急性腎障害、 または慢性腎障害のstageの進行
- 平滑筋調節障害:胸腹部痛や嚥下障害 (嚥下痛、 嚥下困難) などはあるが日常生活が可能な程度、 または男性機能不全
重症
以下のいずれかを認める
溶血
- 高度溶血、 または恒常的に肉眼的ヘモグロビン尿を認めたり頻回に溶血発作を繰り返す
- 定期的な輸血を必要とする
溶血に伴う以下の臓器障害・症状
- 血栓症またはその既往 (妊娠を含む)
- 透析が必要な腎障害
- 平滑筋調節障害:日常生活が困難で、 入院を必要とする胸腹部痛や嚥下障害 (嚥下痛、 嚥下困難)
- 肺高血圧症
注1 中等度溶血の目安は、 血清LDH 値で正常上限の 3~5 倍程度。 高度溶血の目安は、 血清LDH 値で正常上限の 8~10 倍程度
注2 溶血発作とは、 肉眼的ヘモグロビン尿を認める状態を指す。 時にとは年に 1〜2 回程度、 頻回とはそれ以上を指す。
注3 定期的な赤血球輸血とは毎月2単位以上の輸血が必要なときを指す。
注4 妊娠は溶血発作、 血栓症のリスクを高めるため、 重症として扱う。
※平成26年度改訂版:
中等症 以下の2項目を満たす。
• ヘモグロビン濃度:10 g/dL 未満
• 中等度溶血を認める。 又は 時に溶血発作を認める。
重 症 以下の2項目を満たす。
• ヘモグロビン濃度 7g/dL 未満 又は 定期的な赤血球輸血を必要とする。
• 高度溶血を認める。 又は 恒常的に肉眼的ヘモグロビン尿を認めたり 頻回に溶血発作を繰り返す。
注1 中等度溶血の目安は、 血清LDH 値で正常上限の4~5倍程度、 高度溶血の目安は、 血清LDH 値で正常上限の8~10 倍程度
注2 定期的な赤血球輸血とは毎月2単位以上の輸血が必要なときを指す。 溶血発作とは、 発作により輸血が必要となったり入院が必要となる状態を指す。 時にとは年に1~2回程度、 頻回とはそれ以上を指す。
注3 血栓症は既往・合併があれば重症とする。
注4 重症ではエクリズマブの積極的適応、 中等症では相対的適応と考えられるが、 軽症にも適応となる症例が存在する。
参考文献
- 厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 発作性夜間ヘモグロビン尿症 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157767.docx (参照2023-3-6)
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH) の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 「発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和 1 年改訂版」. 2020, 39p
最終更新:2024年5月5日
監修医師:HOKUTO編集部医師