概要
計算
監修医師

※特発性間質性肺炎の診断基準、 重症度分類は2024年4月より改訂されます。 詳細は厚生労働省ホームページをご確認ください。


特発性間質性肺炎の重症度分類

IPF では労作時の動脈血酸素分圧の低下が高率に認められるため、 安静時の動脈血酸素分圧に加えて、 6分間歩行試験におけるdesaturationの有無を組み込んだ重症度分類が用いられている¹⁾.
  • 安静時動脈血酸素分圧が80Torr以上をI度、 70Torr以上80Torr未満をII度、 60Torr以上70Torr未満をIII度、 60Torr未満をIV度とする.
  • 重症度II度以上で6分間歩行時SpO₂が90%未満となる場合は、 重症度を1段階高くする. ただし、 安静時動脈血酸素分圧が70Torr未満の時には、 6分間歩行時SpO₂は必ずしも測定する必要はない.
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

★2024年4月以降

  • 安静時動脈血酸素分圧が80Torr以上をⅠ度、 70Torr以上80Torr未満をⅡ度、 60Torr以上70Torr未満をⅢ度、 60Torr未満をⅣ度とする
  • 安静時動脈血酸素分圧がⅠ又はⅡ度の場合、 6分間歩行時の最低SpO2が90%未満となる場合は、 重症度をⅢ度とする。 また、 安静時動脈血酸素分圧がⅢ度の場合、 6分間歩行時の最低SpO2が90%未満となる場合は、 重症度をⅣ度とする。 ただし、 安静時動脈血酸素分圧が70Torr未満の時には、 6分間歩行時SpO2は必ずしも測定する必要はない
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

使用上の注意

治療開始後における重症度分類については、 適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、 直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする.

症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、 高額な医療を継続することが必要なものについては、 医療費助成の対象とする.

公的支援について²⁾

難病医療費助成制度

抗線維化薬治療や検査、 入院などで医療費が高額になることがあるため、 経済的な負担を軽減する支援制度が設けられている. 「難病の患者に対する医療等に関する法律 (難病法)」 で定められた 「指定難病」 には、 IIPs、 膠原病に伴うILD、 サルコイドーシスなどが含まれるが、 HPや関節リウマチに伴うILDなどは 「指定難病」 には指定されていない. 指定難病に該当する疾患と診断された場合は、 条件を満たせば難病医療費助成制度を利用できる.

対象となる患者

難病医療費助成制度は難病の診療にかかる医療費の一部を助成する制度である. 月のはじめから月末までの1ヵ月に支払う指定難病の医療費にかかる自己負担に上限額が定められ (世帯の所得によって決まる)、 それを超えた場合に助成が受けられる. IIPsでは重症度3または4のように重症度が一定以上の患者が対象となる. また、 軽症であっても (IIPsでは重症度1または2) 申請を行う月から12ヵ月前までの期間に、 診療にかかった医療費総額が、 33,330円 (医療費の自己負担割合が3割の場合は、 自己負担額が10,000円) を超える月が3回以上ある場合に対象となる (軽症高額).

高額かつ長期の場合

難病医療費助成制度の申請をしてから医療受給者証が交付されるまでに支払った医療費のうち、 自己負担の上限額を超えた分については、 後から手続きをすることで払い戻しを受けることができる. 所得の階層区分について一般所得Ⅰ以上の患者が、 支給認定を受けた指定難病に係る月ごとの医療費総額について5万円を超える月が年間6回以上ある場合は、 月額の医療費の自己負担が軽減される (高額かつ長期) .

高額療養費制度

高額療養費制度は医療費が高額になった場合の経済的な負担を軽くする制度である. 月のはじめから月末までの1ヵ月の医療費の自己負担に限度額が定められ (年齢と所得によって決まる)、 その額を超えた医療費の支給が受けられる. 難病医療費助成制度の対象とならない疾患の診療や、 自己負担の限度額を超えた場合に利用することができる. また、 同じ月の複数の医療機関の合算額が上限額を超えれば高額療養費の対象となる.

略称

  • ILD : 間質性肺疾患
Interstitial lung disease
  • IIPs : 特発性間質性肺炎
Idiopathic interstitial pneumonias
  • IPF : 特発性肺線維症
idiopathic pulmonary fibrosis
  • UIP : 通常型間質性肺炎
usual interstitial pneumonia
  • INSIP : 特発性非特異性間質性肺炎
idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
  • RB-ILD : 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎
respiratory bronchiolitis-interstitial lung disease
  • DIP : 剥離性間質性肺炎
desquamative interstitial pneumonia
  • COP : 特発性器質化肺炎
cryptogenic organizing pneumonia
  • AIP : 急性間質性肺炎
acute interstitial pneumonia
  • DAD : びまん性肺胞傷害
diffuse alveolar damage

参考文献

  1. 厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用. [最終閲覧 2024/3/13]
  2. HOKUTO内記事『後期研修医のための呼吸器内科現場診療: 間質性肺疾患』より解説引用 (日赤医療センター呼吸器内科副部長 猪俣稔先生)
最終更新日 : 2024年3月17日
後期研修医のための呼吸器内科現場診療: 間質性肺疾患より解説引用 (日赤医療センター呼吸器内科副部長 猪俣稔先生)

特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

本邦の重症度分類 2024年4月版
2024年03月17日更新
概要
計算

※特発性間質性肺炎の診断基準、 重症度分類は2024年4月より改訂されます。 詳細は厚生労働省ホームページをご確認ください。


特発性間質性肺炎の重症度分類

IPF では労作時の動脈血酸素分圧の低下が高率に認められるため、 安静時の動脈血酸素分圧に加えて、 6分間歩行試験におけるdesaturationの有無を組み込んだ重症度分類が用いられている¹⁾.
  • 安静時動脈血酸素分圧が80Torr以上をI度、 70Torr以上80Torr未満をII度、 60Torr以上70Torr未満をIII度、 60Torr未満をIV度とする.
  • 重症度II度以上で6分間歩行時SpO₂が90%未満となる場合は、 重症度を1段階高くする. ただし、 安静時動脈血酸素分圧が70Torr未満の時には、 6分間歩行時SpO₂は必ずしも測定する必要はない.
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

★2024年4月以降

  • 安静時動脈血酸素分圧が80Torr以上をⅠ度、 70Torr以上80Torr未満をⅡ度、 60Torr以上70Torr未満をⅢ度、 60Torr未満をⅣ度とする
  • 安静時動脈血酸素分圧がⅠ又はⅡ度の場合、 6分間歩行時の最低SpO2が90%未満となる場合は、 重症度をⅢ度とする。 また、 安静時動脈血酸素分圧がⅢ度の場合、 6分間歩行時の最低SpO2が90%未満となる場合は、 重症度をⅣ度とする。 ただし、 安静時動脈血酸素分圧が70Torr未満の時には、 6分間歩行時SpO2は必ずしも測定する必要はない
特発性間質性肺炎 (IIPs) の重症度分類

使用上の注意

治療開始後における重症度分類については、 適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、 直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする.

症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、 高額な医療を継続することが必要なものについては、 医療費助成の対象とする.

公的支援について²⁾

難病医療費助成制度

抗線維化薬治療や検査、 入院などで医療費が高額になることがあるため、 経済的な負担を軽減する支援制度が設けられている. 「難病の患者に対する医療等に関する法律 (難病法)」 で定められた 「指定難病」 には、 IIPs、 膠原病に伴うILD、 サルコイドーシスなどが含まれるが、 HPや関節リウマチに伴うILDなどは 「指定難病」 には指定されていない. 指定難病に該当する疾患と診断された場合は、 条件を満たせば難病医療費助成制度を利用できる.

対象となる患者

難病医療費助成制度は難病の診療にかかる医療費の一部を助成する制度である. 月のはじめから月末までの1ヵ月に支払う指定難病の医療費にかかる自己負担に上限額が定められ (世帯の所得によって決まる)、 それを超えた場合に助成が受けられる. IIPsでは重症度3または4のように重症度が一定以上の患者が対象となる. また、 軽症であっても (IIPsでは重症度1または2) 申請を行う月から12ヵ月前までの期間に、 診療にかかった医療費総額が、 33,330円 (医療費の自己負担割合が3割の場合は、 自己負担額が10,000円) を超える月が3回以上ある場合に対象となる (軽症高額).

高額かつ長期の場合

難病医療費助成制度の申請をしてから医療受給者証が交付されるまでに支払った医療費のうち、 自己負担の上限額を超えた分については、 後から手続きをすることで払い戻しを受けることができる. 所得の階層区分について一般所得Ⅰ以上の患者が、 支給認定を受けた指定難病に係る月ごとの医療費総額について5万円を超える月が年間6回以上ある場合は、 月額の医療費の自己負担が軽減される (高額かつ長期) .

高額療養費制度

高額療養費制度は医療費が高額になった場合の経済的な負担を軽くする制度である. 月のはじめから月末までの1ヵ月の医療費の自己負担に限度額が定められ (年齢と所得によって決まる)、 その額を超えた医療費の支給が受けられる. 難病医療費助成制度の対象とならない疾患の診療や、 自己負担の限度額を超えた場合に利用することができる. また、 同じ月の複数の医療機関の合算額が上限額を超えれば高額療養費の対象となる.

略称

  • ILD : 間質性肺疾患
Interstitial lung disease
  • IIPs : 特発性間質性肺炎
Idiopathic interstitial pneumonias
  • IPF : 特発性肺線維症
idiopathic pulmonary fibrosis
  • UIP : 通常型間質性肺炎
usual interstitial pneumonia
  • INSIP : 特発性非特異性間質性肺炎
idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
  • RB-ILD : 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎
respiratory bronchiolitis-interstitial lung disease
  • DIP : 剥離性間質性肺炎
desquamative interstitial pneumonia
  • COP : 特発性器質化肺炎
cryptogenic organizing pneumonia
  • AIP : 急性間質性肺炎
acute interstitial pneumonia
  • DAD : びまん性肺胞傷害
diffuse alveolar damage

参考文献

  1. 厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用. [最終閲覧 2024/3/13]
  2. HOKUTO内記事『後期研修医のための呼吸器内科現場診療: 間質性肺疾患』より解説引用 (日赤医療センター呼吸器内科副部長 猪俣稔先生)
最終更新日 : 2024年3月17日
後期研修医のための呼吸器内科現場診療: 間質性肺疾患より解説引用 (日赤医療センター呼吸器内科副部長 猪俣稔先生)

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