概要
計算
監修医師

IPSMとは?

IPSMは、 ウィーン医科大学のWolfgang R. Sperrらによって2019年に開発され、 The Lancet Haematology誌で発表された¹⁾。 このスコアリングシステムは、 WHO分類のもとでも予後のばらつきが大きいことから、 特に非進行期 (non-advanced) と進行期 (advanced) の全身性肥満細胞症の患者の予後を予測し、 治療方針の決定を支援するために設計された¹⁾。

IPSM : International Prognostic Scoring System for Mastocytosis

スコアの計算方法

非進行期全身性肥満細胞症

以下の2つの項目の合計点で計算される
  • 年齢:≧60歳 +1
  • ALP:≧100U/L +1

スコアの解釈¹⁾

  • 0点:lowリスク
10年OS 98.1% (95%CI:95.2~99.3) 、10年PFS 96.3% (95%CI:92.2~98.3)
  • 1点:int-1リスク
10年OS 87.1% (95%CI:77.2~91.9) 、10年PFS 86.7% (95%CI:79.2~92.2)
  • 2点:int-2リスク
10年OS 52.1% (95%CI:29.4~70.7) 、10年PFS 76.3% (95%CI:52.2~89.4)
int:intermediate OS:Overall Survival PFS:Progression Free Survival

進行期全身性肥満細胞症

以下の6つの項目の合計点で計算される
  • 年齢:≧60歳 +1
  • トリプターゼ:≧125μg/L +1
  • 白血球数:≧16,000/μL +1
  • Hb:≦11g/dL +1
  • 血小板数:≦10万/μL +1
  • 皮膚病変あり:-1

スコアの解釈

AdvSMは原著でスコアごとの詳細なOSやFPSの記載はない。 AdvSM全体として10年OS 22.0% (95%CI:13.9~21.2)、 10年PFS 61.1% (95%CI:42.0~75.6)であった¹⁾。
  • -1~0点:AdvSM-1 リスク
  • 0点     :AdvSM-2 リスク
  • 2~3点:AdvSM-3 リスク
  • 4~5点:AdvSM-4 リスク
AdvSM:Advanced systemic mastocytosis

エビデンス¹⁾

European Competence Network on Mastocytosis (ECNM) のレジストリデータから1639名の患者が解析に用いられた¹⁾。 また、 独立した検証コホートとして、 Red Española de Mastocitosis (REMA) の462名のデータを用いてバリデーションが行われた。 検証においても、 非進行期および進行期の患者の全生存期間 (OS) および無進行生存期間 (PFS) において統計的に有意な差が認められた (p < 0.0001)¹⁾。

使用上の注意点

IPSMは日常診療での簡便なリスク層別化を目的としているが、 診断精度の向上にはWHO分類と組み合わせた多面的なアプローチが必要である。 一部のリスク因子 (例:KIT Asp816Val変異や分子プロファイリング) は本スコアには含まれていないため、 これらの分子的要因の考慮も補助的に行うことが推奨される。 特に進行期 (AdvSM) の患者のスコアリング結果が治療方針に直接影響を与える可能性があるため、 慎重な解釈と専門家の判断が必要である¹⁾。 小児 (17歳未満) の肥満細胞症に関しては異なる病態生理を有するため、 本スコアの適用は限定的である¹⁾。

出典

1) International prognostic scoring system for mastocytosis (IPSM): a retrospective cohort study. Lancet Haematol. 2019 Dec; 6(12):e638-e649. PMID: 31676322

最終更新日 : 2025年2月7日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師

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IPSM

全身性肥満細胞症の予後予測
2025年02月07日更新
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IPSMとは?

IPSMは、 ウィーン医科大学のWolfgang R. Sperrらによって2019年に開発され、 The Lancet Haematology誌で発表された¹⁾。 このスコアリングシステムは、 WHO分類のもとでも予後のばらつきが大きいことから、 特に非進行期 (non-advanced) と進行期 (advanced) の全身性肥満細胞症の患者の予後を予測し、 治療方針の決定を支援するために設計された¹⁾。

IPSM : International Prognostic Scoring System for Mastocytosis

スコアの計算方法

非進行期全身性肥満細胞症

以下の2つの項目の合計点で計算される
  • 年齢:≧60歳 +1
  • ALP:≧100U/L +1

スコアの解釈¹⁾

  • 0点:lowリスク
10年OS 98.1% (95%CI:95.2~99.3) 、10年PFS 96.3% (95%CI:92.2~98.3)
  • 1点:int-1リスク
10年OS 87.1% (95%CI:77.2~91.9) 、10年PFS 86.7% (95%CI:79.2~92.2)
  • 2点:int-2リスク
10年OS 52.1% (95%CI:29.4~70.7) 、10年PFS 76.3% (95%CI:52.2~89.4)
int:intermediate OS:Overall Survival PFS:Progression Free Survival

進行期全身性肥満細胞症

以下の6つの項目の合計点で計算される
  • 年齢:≧60歳 +1
  • トリプターゼ:≧125μg/L +1
  • 白血球数:≧16,000/μL +1
  • Hb:≦11g/dL +1
  • 血小板数:≦10万/μL +1
  • 皮膚病変あり:-1

スコアの解釈

AdvSMは原著でスコアごとの詳細なOSやFPSの記載はない。 AdvSM全体として10年OS 22.0% (95%CI:13.9~21.2)、 10年PFS 61.1% (95%CI:42.0~75.6)であった¹⁾。
  • -1~0点:AdvSM-1 リスク
  • 0点     :AdvSM-2 リスク
  • 2~3点:AdvSM-3 リスク
  • 4~5点:AdvSM-4 リスク
AdvSM:Advanced systemic mastocytosis

エビデンス¹⁾

European Competence Network on Mastocytosis (ECNM) のレジストリデータから1639名の患者が解析に用いられた¹⁾。 また、 独立した検証コホートとして、 Red Española de Mastocitosis (REMA) の462名のデータを用いてバリデーションが行われた。 検証においても、 非進行期および進行期の患者の全生存期間 (OS) および無進行生存期間 (PFS) において統計的に有意な差が認められた (p < 0.0001)¹⁾。

使用上の注意点

IPSMは日常診療での簡便なリスク層別化を目的としているが、 診断精度の向上にはWHO分類と組み合わせた多面的なアプローチが必要である。 一部のリスク因子 (例:KIT Asp816Val変異や分子プロファイリング) は本スコアには含まれていないため、 これらの分子的要因の考慮も補助的に行うことが推奨される。 特に進行期 (AdvSM) の患者のスコアリング結果が治療方針に直接影響を与える可能性があるため、 慎重な解釈と専門家の判断が必要である¹⁾。 小児 (17歳未満) の肥満細胞症に関しては異なる病態生理を有するため、 本スコアの適用は限定的である¹⁾。

出典

1) International prognostic scoring system for mastocytosis (IPSM): a retrospective cohort study. Lancet Haematol. 2019 Dec; 6(12):e638-e649. PMID: 31676322

最終更新日 : 2025年2月7日
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