概要
計算
監修医師

ファンコニ貧血の診断基準 (平成30年12月改訂)

なお、 厚生労働省の申請基準には旧版が用いられている。 平成30年度改訂版との違いを注釈で表記する。

診断のカテゴリー

Definite以下のいずれかを満たす場合をDefiniteとする

(1) Aの1項目以上を満たし、 Bの1または2を認め、 Cの疾患を除外できる場合

(2) Aの1項目以上を満たし、 FANCBとFANCRを除くDのいずれかの遺伝子変異を両アレルで証明、 あるいは男性でFANCBの変異を証明された場合

※旧版:Definite:以下のいずれかを満たす場合をDefiniteとする
(1) BとCを満たし、 Aの1項目以上を満たす場合 
(2) Aの1項目以上を満たし、 FANCBを除くDのいずれかをホモ接合体で証明、 あるいは男性でFANCBの変異を証明された場合

A 症状

1.汎血球減少 

国際Fanconi貧血登録の血球減少基準に準じ、 以下の基準のいずれかを認める。 

☑︎貧血:Hb <10g/dL
☑︎好中球数<1,000/μL
☑︎血小板<100,000/μL 

2. 皮膚の色素沈着 

3. 身体の先天異常 

上肢: 親指の欠損・低形成、 多指症、 橈骨・尺骨の欠損 

下肢: つま先合指、 かかとの異常、 股関節脱臼 

骨格系: 小頭症、 小顎症、 二分脊椎、 側湾症、 肋骨の変形・欠損 

性腺(男性):性器形成不全症、 停留睾丸、 尿道下裂、 小陰茎 

性腺(女性):性器形成不全症、 双角子宮、 月経異常

眼: 小眼球、 斜視、 乱視、 白内障

耳: 難聴、 外耳道閉鎖、 形態異常、 中耳の異常

腎: 低形成、 欠損、 馬蹄腎、 水腎症 

消化管: 食道閉鎖、 十二指腸閉鎖、 鎖肛、 気管食道瘻 

心: 動脈管開存、 心室中隔欠損等種々の先天性心奇形 

4.低身長半数以上は年齢相応身長の−2SD以下。 

5.性腺機能不全

※旧版:3.身体奇形:何らかの身体奇形は約 80%にみられるが、 多様である。

B 検査所見

1.染色体不安定性 (染色体脆弱) を示し、 MMCなどのDNA鎖間架橋薬剤で処理をすると、 染色体の断裂の増強やラジアル構造を持つ特徴的な染色体が観察される。 

2.FANCD2産物に対するモノユビキチン化を認めない。

※旧版:
1.染色体不安定性 (染色体脆弱) を示し、 マイトマイシンCなどのDNA鎖間架橋薬剤で処理をすると、 染色体の断裂の増強やラジアル構造を持つ特徴的な染色体が観察される。

C 鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。 

先天性角化不全症
Schwachman-Diamond症候群
先天性無巨核球性血小板減少症
Pearson症候群
色素性乾皮症
毛細血管拡張性運動失調症
Bloom症候群
Nijmegen症候群 
※旧版:先天性無巨核球性血小板減少症の記載なし

D 遺伝学的検査

ファンコニ貧血遺伝子の変異

(現時点でDNAの修復に働く22のFanconi貧血責任遺伝子が報告されている)

FANCA、 FANCB、 FANCC、 FANCD1 (BRCA2)、 FANCD2、 FANCE、 FANCF、 FANCG、 FANCI、 FANCJ (BRIP1)、 FANCL、 FANCM、 FANCN (PALB2)、 FANCO (RAD51C)、 FANCP (SLX4)、 FANCQ (XPF)、 FANCR(RAD51)、 FANCS(BRCA1)、 FANCT (UBE2T)、 FANCU(XRCC2)、 FANCV(REV7)、 FANCW(RFWD3)
※旧版:ファンコニ貧血責任遺伝子の報告数が19
FANCU(XRCC2)、 FANCV(REV7)、 FANCW(RFWD3)の記載なし

重症度分類 (平成29年度修正)

後天性再生不良性貧血の重症度分類を用いて評価し、 「stage2以上」が指定難病の対象。
上記に該当しない場合でも、 身体の先天異常や固形がんなどのために高額な医療を継続することが必要な者も対象。
なお、 厚生労働省の申請基準には「平成16年度修正版」が用いられている。 平成29年度修正版との違いを注釈で表記する。

stage 1 軽症

下記以外で輸血を必要としない

stage 2~3 中等症~やや重症

以下の2項目以上を満たし、  

stage 2a 赤血球輸血を必要としない 

stage 2b 赤血球輸血が必要(毎月<2単位)

stage 3   赤血球輸血が必要(毎月≧2単位) 

☑︎網赤血球 <60,000/μL
☑︎好中球 <1,000/μL 
☑︎血小板 <50,000/μL 
※平成16年度修正版:Stage2は細分化されていない。 Stage3は輸血頻度について記載されていない。 
・Stage2 (中等症) 
 下記の2項目以上を満たす
 好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl
・Stage3(やや重症)
 下記の2項目以上を満たし、 定期的な赤血球輸血を必要とする。 
 好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl

stage 4 重症

以下の2項目以上を満たす 

☑︎網赤血球 <40,000/μL
☑︎好中球 <500/μL
☑︎血小板 <20,000/μL
※平成16年度修正版:網赤血球<20,000/μL

stage 5 最重症

好中球200/μL 未満に加え、 以下の1項目以上を満たす 

☑︎網赤血球 <20,000/μL 
☑︎血小板 <20,000/μL

stage 6 重症特殊型

骨髄異形成症候群、 白血病、 固形がんの合併

※平成16年度修正版:stage6の記載なし

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🔢 再生不良性貧血の重症度基準

再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和1年改訂版より

📘 造血細胞移植ガイドライン|遺伝性骨髄不全症候群(第2版)

日本造血細胞移植学会

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年7月1日施行の指定難病 (告示番号111~306) ファンコニ貧血 概要・診断基準等」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157280.docx (参照2023-4-10)
  2. Fanconi貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 「Fanconi 貧血診療の参照ガイド 令和 1年改訂版」. 2019, 16p
最終更新:2023年4月10日 
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ファンコニ貧血の診断基準・重量度分類
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指定難病285
2023年11月23日更新
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ファンコニ貧血の診断基準 (平成30年12月改訂)

なお、 厚生労働省の申請基準には旧版が用いられている。 平成30年度改訂版との違いを注釈で表記する。

診断のカテゴリー

Definite以下のいずれかを満たす場合をDefiniteとする

(1) Aの1項目以上を満たし、 Bの1または2を認め、 Cの疾患を除外できる場合

(2) Aの1項目以上を満たし、 FANCBとFANCRを除くDのいずれかの遺伝子変異を両アレルで証明、 あるいは男性でFANCBの変異を証明された場合

※旧版:Definite:以下のいずれかを満たす場合をDefiniteとする
(1) BとCを満たし、 Aの1項目以上を満たす場合 
(2) Aの1項目以上を満たし、 FANCBを除くDのいずれかをホモ接合体で証明、 あるいは男性でFANCBの変異を証明された場合

A 症状

1.汎血球減少 

国際Fanconi貧血登録の血球減少基準に準じ、 以下の基準のいずれかを認める。 

☑︎貧血:Hb <10g/dL
☑︎好中球数<1,000/μL
☑︎血小板<100,000/μL 

2. 皮膚の色素沈着 

3. 身体の先天異常 

上肢: 親指の欠損・低形成、 多指症、 橈骨・尺骨の欠損 

下肢: つま先合指、 かかとの異常、 股関節脱臼 

骨格系: 小頭症、 小顎症、 二分脊椎、 側湾症、 肋骨の変形・欠損 

性腺(男性):性器形成不全症、 停留睾丸、 尿道下裂、 小陰茎 

性腺(女性):性器形成不全症、 双角子宮、 月経異常

眼: 小眼球、 斜視、 乱視、 白内障

耳: 難聴、 外耳道閉鎖、 形態異常、 中耳の異常

腎: 低形成、 欠損、 馬蹄腎、 水腎症 

消化管: 食道閉鎖、 十二指腸閉鎖、 鎖肛、 気管食道瘻 

心: 動脈管開存、 心室中隔欠損等種々の先天性心奇形 

4.低身長半数以上は年齢相応身長の−2SD以下。 

5.性腺機能不全

※旧版:3.身体奇形:何らかの身体奇形は約 80%にみられるが、 多様である。

B 検査所見

1.染色体不安定性 (染色体脆弱) を示し、 MMCなどのDNA鎖間架橋薬剤で処理をすると、 染色体の断裂の増強やラジアル構造を持つ特徴的な染色体が観察される。 

2.FANCD2産物に対するモノユビキチン化を認めない。

※旧版:
1.染色体不安定性 (染色体脆弱) を示し、 マイトマイシンCなどのDNA鎖間架橋薬剤で処理をすると、 染色体の断裂の増強やラジアル構造を持つ特徴的な染色体が観察される。

C 鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。 

先天性角化不全症
Schwachman-Diamond症候群
先天性無巨核球性血小板減少症
Pearson症候群
色素性乾皮症
毛細血管拡張性運動失調症
Bloom症候群
Nijmegen症候群 
※旧版:先天性無巨核球性血小板減少症の記載なし

D 遺伝学的検査

ファンコニ貧血遺伝子の変異

(現時点でDNAの修復に働く22のFanconi貧血責任遺伝子が報告されている)

FANCA、 FANCB、 FANCC、 FANCD1 (BRCA2)、 FANCD2、 FANCE、 FANCF、 FANCG、 FANCI、 FANCJ (BRIP1)、 FANCL、 FANCM、 FANCN (PALB2)、 FANCO (RAD51C)、 FANCP (SLX4)、 FANCQ (XPF)、 FANCR(RAD51)、 FANCS(BRCA1)、 FANCT (UBE2T)、 FANCU(XRCC2)、 FANCV(REV7)、 FANCW(RFWD3)
※旧版:ファンコニ貧血責任遺伝子の報告数が19
FANCU(XRCC2)、 FANCV(REV7)、 FANCW(RFWD3)の記載なし

重症度分類 (平成29年度修正)

後天性再生不良性貧血の重症度分類を用いて評価し、 「stage2以上」が指定難病の対象。
上記に該当しない場合でも、 身体の先天異常や固形がんなどのために高額な医療を継続することが必要な者も対象。
なお、 厚生労働省の申請基準には「平成16年度修正版」が用いられている。 平成29年度修正版との違いを注釈で表記する。

stage 1 軽症

下記以外で輸血を必要としない

stage 2~3 中等症~やや重症

以下の2項目以上を満たし、  

stage 2a 赤血球輸血を必要としない 

stage 2b 赤血球輸血が必要(毎月<2単位)

stage 3   赤血球輸血が必要(毎月≧2単位) 

☑︎網赤血球 <60,000/μL
☑︎好中球 <1,000/μL 
☑︎血小板 <50,000/μL 
※平成16年度修正版:Stage2は細分化されていない。 Stage3は輸血頻度について記載されていない。 
・Stage2 (中等症) 
 下記の2項目以上を満たす
 好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl
・Stage3(やや重症)
 下記の2項目以上を満たし、 定期的な赤血球輸血を必要とする。 
 好中球<1,000/µl、 血小板<50,000/µl、 網赤血球<60,000/µl

stage 4 重症

以下の2項目以上を満たす 

☑︎網赤血球 <40,000/μL
☑︎好中球 <500/μL
☑︎血小板 <20,000/μL
※平成16年度修正版:網赤血球<20,000/μL

stage 5 最重症

好中球200/μL 未満に加え、 以下の1項目以上を満たす 

☑︎網赤血球 <20,000/μL 
☑︎血小板 <20,000/μL

stage 6 重症特殊型

骨髄異形成症候群、 白血病、 固形がんの合併

※平成16年度修正版:stage6の記載なし

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再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和1年改訂版より

📘 造血細胞移植ガイドライン|遺伝性骨髄不全症候群(第2版)

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参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年7月1日施行の指定難病 (告示番号111~306) ファンコニ貧血 概要・診断基準等」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157280.docx (参照2023-4-10)
  2. Fanconi貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 「Fanconi 貧血診療の参照ガイド 令和 1年改訂版」. 2019, 16p
最終更新:2023年4月10日 
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