下咽頭癌のTNM病期分類とは?

下咽頭癌は梨状陥凹・輪状後部 (咽頭食道接合部)・咽頭後壁の3亜部位に発生する癌腫を対象とし、 TNM分類上はHPV非関連中咽頭癌など他のウイルス非関連頭頸部扁平上皮癌と共通のN分類・病期分類が適用される¹⁾。 一方でT分類は下咽頭に固有の定義を用いる。

第9版ではT・N・Mのカテゴリー構造および病期対応表は第8版から変更されていないが、 cN3bの基準に画像上明確な節外進展 (iENE) が追加された³⁾。 本ツールでは第8版・第9版のいずれかを選択して病期を算出できる。

T分類 (原発腫瘍)

  • T1;下咽頭の1亜部位に限局し、 かつ最大径2cm以下の腫瘍
  • T2;下咽頭の2亜部位以上または隣接部位に進展する腫瘍、 または最大径2cmを超え4cm以下で片側喉頭の固定を伴わない腫瘍
  • T3;最大径4cmを超える腫瘍、 片側喉頭の固定を伴う腫瘍、 または食道粘膜へ進展する腫瘍
  • T4a;甲状軟骨/輪状軟骨、 舌骨、 甲状腺、 食道筋層、 頸部中心区域軟部組織のいずれかに浸潤する腫瘍
  • T4b;椎前筋膜に浸潤する腫瘍、 頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍、 または縦隔臓器に浸潤する腫瘍
※ 下咽頭の亜部位は咽頭食道接合部 (輪状後部)、 梨状陥凹、 咽頭後壁である

N分類 (所属リンパ節。 臨床分類)

  • N0;所属リンパ節転移なし
  • N1;同側単発のリンパ節転移で最大径3cm以下、 ENEなし
  • N2a;同側単発のリンパ節転移で最大径3cmを超え6cm以下、 ENEなし
  • N2b;同側多発のリンパ節転移で最大径がすべて6cm以下、 ENEなし
  • N2c;両側または対側のリンパ節転移で最大径がすべて6cm以下、 ENEなし
  • N3a;最大径6cmを超えるリンパ節転移で、 ENEなし
  • N3b;臨床的に明らかなENE (cENE) または画像上明確なENE (iENE) を伴うリンパ節転移 ※第8版ではcENEのみ
※ 正中リンパ節は同側リンパ節として扱う

M分類 (遠隔転移)

  • M0;遠隔転移なし
  • M1;遠隔転移あり

病期分類 (第8版・第9版で共通)

  • Stage Ⅰ:T1 N0 M0
  • Stage Ⅱ:T2 N0 M0
  • Stage Ⅲ:T3 N0 M0、 T1-3 N1 M0
  • Stage ⅣA:T4a N0-1 M0、 T1-4a N2 M0
  • Stage ⅣB:T4b (Nを問わない) M0、 N3 (Tを問わない) M0
  • Stage ⅣC:M1 (T・Nを問わない)

エビデンス

第9版では頭頸部領域のうち上咽頭癌とHPV関連中咽頭癌でN分類・病期の改訂が行われた一方、 下咽頭癌ではT・N・Mカテゴリーおよび病期グルーピングは変更されていない³⁾。

節外進展 (ENE) の取り扱い:第8版ではウイルス非関連頭頸部癌において臨床的に明らかな節外進展 (cENE) のみがcN3bの基準とされ、 画像所見による節外進展 (iENE) は含まれていなかった³⁾。 第9版では、 iENEがcENEを超える予後情報を与えるという十分なエビデンスに基づき、 画像上明確な (unequivocal) iENEもcN3を定義する基準として採用された³⁾。 これによりENEの評価が臨床所見のみに依存せず、 画像診断の実態に即した病期分類が可能となった。

なお第8版におけるENEの導入自体が第7版からの大きな改訂であり、 ENE陽性例は原発巣の進展度やリンパ節径によらず予後不良群として層別化される¹⁾³⁾。

使用上の注意点

  • 本ツールは下咽頭癌の臨床病期分類である。 T分類は下咽頭に固有であり、 中咽頭癌のT分類とは定義が異なる
  • ENEの判定は臨床所見 (cENE) と画像所見 (iENE) で基準が異なる。 第9版のiENEは画像上明確な場合に限る³⁾
  • N2a/N2b/N2cおよびN3a/N3bは病期グルーピング上は同等に扱われる (N2はⅣA、 N3はⅣB)
  • 本分類は癌腫に適用される
※ 本ツールは臨床判断の補助を目的としている

出典

1) Brierley JD, Gospodarowicz MK, Wittekind C, eds. TNM Classification of Malignant Tumours. 8th ed. Wiley Blackwell; 2017.

2) Brierley JD, Giuliani M, O'Sullivan B, Rous B, Van Eycken L, eds. TNM Classification of Malignant Tumours. 9th ed. Wiley Blackwell; 2025.

3) The 9th Edition of the UICC TNM Classification of Malignant Tumours: Updates and Rationale for Change. Int J Cancer. 2026. PMID: 42261202

最終更新 : 2026年8月13日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師

下咽頭癌のTNM臨床病期分類
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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下咽頭癌のTNM臨床病期分類

UICC 第8版/第9版 (梨状陥凹・輪状後部・咽頭後壁)
2026年08月13日更新

下咽頭癌のTNM病期分類とは?

下咽頭癌は梨状陥凹・輪状後部 (咽頭食道接合部)・咽頭後壁の3亜部位に発生する癌腫を対象とし、 TNM分類上はHPV非関連中咽頭癌など他のウイルス非関連頭頸部扁平上皮癌と共通のN分類・病期分類が適用される¹⁾。 一方でT分類は下咽頭に固有の定義を用いる。

第9版ではT・N・Mのカテゴリー構造および病期対応表は第8版から変更されていないが、 cN3bの基準に画像上明確な節外進展 (iENE) が追加された³⁾。 本ツールでは第8版・第9版のいずれかを選択して病期を算出できる。

T分類 (原発腫瘍)

  • T1;下咽頭の1亜部位に限局し、 かつ最大径2cm以下の腫瘍
  • T2;下咽頭の2亜部位以上または隣接部位に進展する腫瘍、 または最大径2cmを超え4cm以下で片側喉頭の固定を伴わない腫瘍
  • T3;最大径4cmを超える腫瘍、 片側喉頭の固定を伴う腫瘍、 または食道粘膜へ進展する腫瘍
  • T4a;甲状軟骨/輪状軟骨、 舌骨、 甲状腺、 食道筋層、 頸部中心区域軟部組織のいずれかに浸潤する腫瘍
  • T4b;椎前筋膜に浸潤する腫瘍、 頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍、 または縦隔臓器に浸潤する腫瘍
※ 下咽頭の亜部位は咽頭食道接合部 (輪状後部)、 梨状陥凹、 咽頭後壁である

N分類 (所属リンパ節。 臨床分類)

  • N0;所属リンパ節転移なし
  • N1;同側単発のリンパ節転移で最大径3cm以下、 ENEなし
  • N2a;同側単発のリンパ節転移で最大径3cmを超え6cm以下、 ENEなし
  • N2b;同側多発のリンパ節転移で最大径がすべて6cm以下、 ENEなし
  • N2c;両側または対側のリンパ節転移で最大径がすべて6cm以下、 ENEなし
  • N3a;最大径6cmを超えるリンパ節転移で、 ENEなし
  • N3b;臨床的に明らかなENE (cENE) または画像上明確なENE (iENE) を伴うリンパ節転移 ※第8版ではcENEのみ
※ 正中リンパ節は同側リンパ節として扱う

M分類 (遠隔転移)

  • M0;遠隔転移なし
  • M1;遠隔転移あり

病期分類 (第8版・第9版で共通)

  • Stage Ⅰ:T1 N0 M0
  • Stage Ⅱ:T2 N0 M0
  • Stage Ⅲ:T3 N0 M0、 T1-3 N1 M0
  • Stage ⅣA:T4a N0-1 M0、 T1-4a N2 M0
  • Stage ⅣB:T4b (Nを問わない) M0、 N3 (Tを問わない) M0
  • Stage ⅣC:M1 (T・Nを問わない)

エビデンス

第9版では頭頸部領域のうち上咽頭癌とHPV関連中咽頭癌でN分類・病期の改訂が行われた一方、 下咽頭癌ではT・N・Mカテゴリーおよび病期グルーピングは変更されていない³⁾。

節外進展 (ENE) の取り扱い:第8版ではウイルス非関連頭頸部癌において臨床的に明らかな節外進展 (cENE) のみがcN3bの基準とされ、 画像所見による節外進展 (iENE) は含まれていなかった³⁾。 第9版では、 iENEがcENEを超える予後情報を与えるという十分なエビデンスに基づき、 画像上明確な (unequivocal) iENEもcN3を定義する基準として採用された³⁾。 これによりENEの評価が臨床所見のみに依存せず、 画像診断の実態に即した病期分類が可能となった。

なお第8版におけるENEの導入自体が第7版からの大きな改訂であり、 ENE陽性例は原発巣の進展度やリンパ節径によらず予後不良群として層別化される¹⁾³⁾。

使用上の注意点

  • 本ツールは下咽頭癌の臨床病期分類である。 T分類は下咽頭に固有であり、 中咽頭癌のT分類とは定義が異なる
  • ENEの判定は臨床所見 (cENE) と画像所見 (iENE) で基準が異なる。 第9版のiENEは画像上明確な場合に限る³⁾
  • N2a/N2b/N2cおよびN3a/N3bは病期グルーピング上は同等に扱われる (N2はⅣA、 N3はⅣB)
  • 本分類は癌腫に適用される
※ 本ツールは臨床判断の補助を目的としている

出典

1) Brierley JD, Gospodarowicz MK, Wittekind C, eds. TNM Classification of Malignant Tumours. 8th ed. Wiley Blackwell; 2017.

2) Brierley JD, Giuliani M, O'Sullivan B, Rous B, Van Eycken L, eds. TNM Classification of Malignant Tumours. 9th ed. Wiley Blackwell; 2025.

3) The 9th Edition of the UICC TNM Classification of Malignant Tumours: Updates and Rationale for Change. Int J Cancer. 2026. PMID: 42261202

最終更新 : 2026年8月13日
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