INCAT (Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment) Disability Scaleは、 CIDPなどの慢性炎症性脱髄性ニューロパチー患者やギラン・バレー症候群患者の能力障害度を定量的に評価するために、 INCATグループによって2000年前後に開発されたツールである。
上肢と下肢のスコアを合計した0~10点の範囲が最終的な障害度スコアとなる
▼上肢の障害 (Arm Disability)
0点 : 障害はない
1点 : 片側ないし両側の上肢の障害があるが、 以下のいずれの上肢機能も損なわれていない
2点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのいずれかに影響があるが遂行できないものはない
3点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのうち1つないし2つが遂行できない
4点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのうち3つないしすべてが遂行できない
5点 : いずれの上肢でも目的を持った動きが不能
▼下肢の障害 (Leg Disability)
0点 : 歩行障害はない
1点 : 歩行障害がある。 しかし戸外で独歩可能
2点 : 戸外の歩行に日常的に片側のサポート (、 松葉杖、 1本の腕) を必要とする
3点 : 戸外の歩行に日常的に両側のサポート (2本杖、 2本の松葉杖、 歩行補助器、 2本の腕の支持) を必要とする
4点 : 戸外の移動には日常的に車椅子が必要。 しかし、 助けがあれば立位や数歩の歩行が可能
5点 : 移動は車椅子に限定され、 助けがあっても立位や数歩の歩行は不能
▼総合障害スコア (Overall Disability)
上肢スコア+下肢スコアの合計 [最大10点]
INCATグループは、 CIDP患者を対象に経口プレドニゾロンと免疫グロブリン静注療法を比較検討するランダム化比較試験を実施し、 いずれの治療でもINCAT Disability Scaleを用いた障害度が2週間で有意に改善することを示した¹⁾。
INCAT disability scale 1点以上の改善があれば有意な改善と評価することができるとされる²⁾³⁾。 その他の評価指標の基準は以下の通り。
治療反応性の目安となる評価パラメータ変化²⁾³⁾
- I-RODS : 4%㌽以上の上昇
- INCAT disability scale : 1点以上の低下*
- mISS : 2点以上の低下
- MRC sum score : 2~4点以上の上昇**
- 握力の変化
Martin型握力計 : 8~14kPA以上の上昇**
Jamar型握力計 : 10%以上の上昇***
多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024²⁾においても、 能力障害スケールの推奨例として、 本スコアとI-RODSが掲載されている。 わずかな変化を捉えにくい場合もあるため、 他の詳細な検査所見と組み合わせて総合的に判断することが望ましい。
なお、 INCATは順序尺度であり、 線形度ではないため、 INCAT1→2点の変化と、 2→3点の変化とでは臨床的に異なる意義づけてあることに注意を要する。
adjusted INCAT の登場
順序尺度特有の問題 (特に 「上肢 0→1点」 の変化が大きく見え過ぎる等) を是正するために改良が加えられた。 adjusted・・ (調整版) では、 上肢 0→1点の変化は必ずしも有意な変化とはみなさない。 これにより 「臨床現場での実質的な改善」 をより正確に反映できるようになった。
さらなる改良 (Rasch解析等)
項目の線形化や最小臨床的有意差 (MCID) の設定をめざしてラッシュ解析が導入され、 評価項目の特性を再検証する取り組みが進んでいる。
2) 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024
最終更新日点 : 2025年4月14日
監修医師点 : HOKUTO編集部監修医師
INCAT (Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment) Disability Scaleは、 CIDPなどの慢性炎症性脱髄性ニューロパチー患者やギラン・バレー症候群患者の能力障害度を定量的に評価するために、 INCATグループによって2000年前後に開発されたツールである。
上肢と下肢のスコアを合計した0~10点の範囲が最終的な障害度スコアとなる
▼上肢の障害 (Arm Disability)
0点 : 障害はない
1点 : 片側ないし両側の上肢の障害があるが、 以下のいずれの上肢機能も損なわれていない
2点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのいずれかに影響があるが遂行できないものはない
3点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのうち1つないし2つが遂行できない
4点 : 片側ないし両側の上肢の障害があり、 上記の4つのうち3つないしすべてが遂行できない
5点 : いずれの上肢でも目的を持った動きが不能
▼下肢の障害 (Leg Disability)
0点 : 歩行障害はない
1点 : 歩行障害がある。 しかし戸外で独歩可能
2点 : 戸外の歩行に日常的に片側のサポート (、 松葉杖、 1本の腕) を必要とする
3点 : 戸外の歩行に日常的に両側のサポート (2本杖、 2本の松葉杖、 歩行補助器、 2本の腕の支持) を必要とする
4点 : 戸外の移動には日常的に車椅子が必要。 しかし、 助けがあれば立位や数歩の歩行が可能
5点 : 移動は車椅子に限定され、 助けがあっても立位や数歩の歩行は不能
▼総合障害スコア (Overall Disability)
上肢スコア+下肢スコアの合計 [最大10点]
INCATグループは、 CIDP患者を対象に経口プレドニゾロンと免疫グロブリン静注療法を比較検討するランダム化比較試験を実施し、 いずれの治療でもINCAT Disability Scaleを用いた障害度が2週間で有意に改善することを示した¹⁾。
INCAT disability scale 1点以上の改善があれば有意な改善と評価することができるとされる²⁾³⁾。 その他の評価指標の基準は以下の通り。
治療反応性の目安となる評価パラメータ変化²⁾³⁾
- I-RODS : 4%㌽以上の上昇
- INCAT disability scale : 1点以上の低下*
- mISS : 2点以上の低下
- MRC sum score : 2~4点以上の上昇**
- 握力の変化
Martin型握力計 : 8~14kPA以上の上昇**
Jamar型握力計 : 10%以上の上昇***
多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024²⁾においても、 能力障害スケールの推奨例として、 本スコアとI-RODSが掲載されている。 わずかな変化を捉えにくい場合もあるため、 他の詳細な検査所見と組み合わせて総合的に判断することが望ましい。
なお、 INCATは順序尺度であり、 線形度ではないため、 INCAT1→2点の変化と、 2→3点の変化とでは臨床的に異なる意義づけてあることに注意を要する。
adjusted INCAT の登場
順序尺度特有の問題 (特に 「上肢 0→1点」 の変化が大きく見え過ぎる等) を是正するために改良が加えられた。 adjusted・・ (調整版) では、 上肢 0→1点の変化は必ずしも有意な変化とはみなさない。 これにより 「臨床現場での実質的な改善」 をより正確に反映できるようになった。
さらなる改良 (Rasch解析等)
項目の線形化や最小臨床的有意差 (MCID) の設定をめざしてラッシュ解析が導入され、 評価項目の特性を再検証する取り組みが進んでいる。
2) 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024
最終更新日点 : 2025年4月14日
監修医師点 : HOKUTO編集部監修医師
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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