膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025、 改訂の要点は?
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HOKUTO編集部

7日前

膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025、 改訂の要点は?

膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025、 改訂の要点は?
日本呼吸器学会および日本リウマチ学会は4月11日、 『膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025』のPDFデータを公式サイトにて発表した (PDFは両学会員のみ閲覧可、 全国書店では4月18日発売予定)。 同指針は2020年の初版から約5年ぶりの改訂となり、 より実臨床に即した内容へと整理されている。 本稿では同指針における主要な9つの改訂ポイントを紹介する。

指針の概要

本指針は2020年に初版が発行されて以来、 世界初の膠原病に伴う間質性肺疾患 (CTD-ILD) に関する診療指針として注目を集めてきた。 初版の公表から5年が経過し、 国際的な知見の蓄積や本邦の保険・医療事情の変化に対応するため、 このたび大幅な改訂が実施された。 特に診療現場での使いやすさを重視した項目の整理や新規章の追加、 アルゴリズムの見直し・新規提案など多角的な見直しが行われている。

主な改訂ポイントは9つ

1: 実臨床の流れに即し、 総論を再構成

CTD-ILDの初期評価から治療方針立案までのステップを順序立てて理解できるよう、 第I章 (総論) の項目順を見直した。 診療フローチャートや管理アルゴリズムも掲載することで、 医師が直感的に診療プロセスを追えるようになり、 診療において実施すべきポイントが一目で把握しやすくなった。

2: 国内コンセンサスステートメントや海外最新GL・推奨を反映

2025年版では、 国内のコンセンサスステートメント、 および米国胸部学会 (ATS)、 欧州リウマチ学会 (EULAR)、 米国リウマチ学会 (ACR) 等欧米のガイドラインや推奨 (レコメンデーション) が積極的に取り入れられた。 第Ⅱ章 (各論) では、 より的確な治療選択を考慮できるように、 国外ガイドラインと本指針における推奨が併記されている。 また特に免疫抑制療法や抗線維化薬など、 治療薬に関するエビデンスが強化されている。

3: 診療の実態を踏まえ、 新規項目が追加

より診療現場でニーズのあるテーマを掘り下げるため、 以下の4項目が新設された。

総論 : 膠原病に伴う間質性肺疾患のとらえ方
総論 : スクリーニング・リスク因子
合併症 : 急性増悪
薬物療法以外 : 包括リハビリテーション

各項目には、 最新のエビデンスを基にした診療の要点等が記載されている。

4: PM/DM、 SScの治療アルゴリズムを更新・正式化

多発性筋炎 (PM) や皮膚筋炎 (DM)、 全身性硬化症 (SSc) などの治療アルゴリズムが、 最新の研究成果および当該疾患のガイドライン内容も踏まえ、 さらに実践的なものへと大幅に更新された。 今回の改訂により 「 (案) 」 の記載が削除され、 初版で試案的に提示されていた部分も正式な推奨として提示されている。

5: 関節リウマチ合併ILDの治療アルゴリズム案を新たに掲載

2025年版では、 関節リウマチ合併間質性肺疾患 (RA-ILD) に対する包括的な治療アルゴリズムが初めて掲載された。 『関節リウマチ診療ガイドライン』との整合性が考慮され、 RA治療薬の選択に関する考え方等も含め、 実臨床に即したRA-ILD診療の流れが示されている。

6: PF-ILDに代わる用語 「進行性肺線維症 (PPF) 」 について詳説

日本において従来抗線維化薬の適応疾患名とされてきた 「進行性肺線維化を伴う間質性肺疾患 (PF-ILD) 」 に代わり、 国際的に使用されている 「進行性肺線維症 (PPF) 」 の用語変更の背景やPPFの概念、 PF-ILDとの類似点や相違点等が詳説された。

7: 多分野での集学的検討 (MDD) の重要性を明示

診断や治療方針を決定する際に呼吸器科・リウマチ科・放射線科・病理医など、 さまざまな領域の専門家が協議する 「多分野による集学的検討 (MDD) 」 の重要性が強調された。 また、 多分野でのカンファレンス実施に伴う推奨事項も追記されている。

8: 「患者中心型アウトカム」 の内容を充実

2025年版では、 臨床的指標のみならず、 患者報告アウトカム (PRO) やリハビリテーション効果など、 多様な視点から治療を評価できるように、 実臨床の流れに即して記載順や内容が再編成されている。

9: 抗線維化薬など治療薬に関する新エビデンスの追加

初版から現在までに承認された薬剤や適応拡大の動向が詳述され、 各薬剤における使用上の留意点もより詳細に記載された。 また、 抗線維化薬による治療については、 最新のエビデンスを基にした現在までの状況に関して報告されている。

まとめ

『膠原病による間質性肺疾患診療指針2025』における最大の特徴は、 急速なエビデンスの蓄積を踏まえつつ、 日本の実臨床での使いやすさが追求された点である。 また、 新設された項目やアルゴリズムの再編によって、 CTD-ILD診療に携わる医師がより適切な判断を行えるように工夫が施されており、 今回の改訂により患者の生命予後改善およびQOL向上への貢献が期待される。

参考文献

膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025, 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会, 2025

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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