HOKUTO編集部
5日前
2024年12月、 日本血液学会による『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 (2024年版)』が公開された。 今回は、 同ガイドラインのうち慢性骨髄性白血病 / 骨髄増殖性腫瘍 (CML / MPN) の節に関して、 旧版である第3版 (2023年版) からの改訂の主なポイントを紹介する。
❶ 低リスクPV : 細胞減少療法を限定的に考慮してもよい旨追記
❷ 高リスクPV : 細胞減少療法の第一選択にropeg-IFN-α2b追記
❸ PMF : 治療選択肢として2024年承認のモメロチニブに言及
「CQ10 低リスクPV*/ET**に対して細胞減少療法は勧められるか」 について、 Answerとして 「一般的には推奨されない」 旨は2023年版から変更はないが、 2024年版では 「ただし、 瀉血継続が困難な場合 (PVのみ)、 著明な血小板数や白血球数の上昇、 脾腫の増大を認める場合は、 細胞減少療法を考慮してもよい」 旨が追記された。
関連して解説において、 低リスクPV症例に対する細胞減少療法については、 2023年版では 「ELNおよびNCCNのガイドラインでも必要ないと判断されている。 しかし、 その根拠となる臨床試験は乏しい」 と記載されていたが、 「全例には必要ないと判断されている」 との表現に改訂された。
また、 本邦において2023年3月に承認されたロペグインターフェロン-α2b (ropeg-IFN-α2b、 商品名 ベスレミ®) に関連して、 低リスクPV症例を対象に、 細胞減少療法としてropeg-IFN-α2bを用いたランダム化前方視的試験 (Low-PV試験) の最終解析結果がエビデンスとして追記された。
Low-PV試験の最終解析
その他、 低リスクPV症例の後方視的な報告として、 以下の内容が追記された。
💬 藤野先生コメント :
実臨床では、 特に若年~中年患者において低リスクとされている患者群の中にも、 ヘモグロビン値 (Hb) / Htや血小板数が非常に高くなる症例が散見される。 細胞減少療法を推奨するエビデンスはないため、 HUなどを積極使用することはないが、 一部で、 血栓症を発症後に細胞減少療法を開始する症例にしばしば遭遇する。 そういった実臨床での経験などエビデンスで割り切れない部分も鑑みた追記であろう。 エビデンスのみならず実際のさじ加減も考慮した、 隠れた良改訂と考える。
ropeg-IFN-α2b (商品名 ベスレミ®) が2023年3月に承認された。
関連して、 「CQ13 高リスクPVに対する細胞減少療法としてどのような治療が勧められるか」 において、 2023年版のAnswerが 「細胞減少療法の第一選択薬はヒドロキシウレアである。 」 であったのに対して、 2024年版では第一選択薬として 「ropeg-IFN-α2b」 が追記された。
解説において、 細胞減少療法が必要な、 あるいはHU治療を開始して3年以内のPVを対象に、 長時間作用型であるropeg-IFN-α2bとHUを比較した前方視的ランダム化比較試験PROUD-PVおよび延長試験CONTINUATION-PVの結果と解釈が以下のとおり追記された。
PROUD-PV試験
CONTINUATION-PV試験
以上を勘案すると、 ropeg-IFN-αも高リスクPVに対する第一選択薬と考えられる。
PROUD-PV および CONTINUATION-PVの3年時点の解析結果
PROUD-PV および CONTINUATION-PVの5年時点の解析結果
PROUD-PV および CONTINUATION-PVの最終解析結果
また、 HU抵抗性・不耐容PVを対象としたペグインターフェロン-α-2a (peg-IFN-α2b、 商品名 ペガシス®、 本邦では承認適応外) の第Ⅱ相試験の結果および解釈が以下のとおり追記された。
HU抵抗性・不耐容PVを対象としたPeg-IFNα-2aの第Ⅱ相試験
💬 藤野先生コメント :
ropeg-IFN-α2bは、 JAK2 V617F VAF (変異アレル頻度) を下げることが確認された薬剤であり、 分子学的寛解を達成し維持できる可能性がある。 VAFの低下が血球数コントロールのみならず、 血栓症リスクや骨髄線維症、 急性骨髄性白血病などへの疾患進行の低下につながることが明らかになりつつある*ため、 今後、 より強い根拠で推奨されるようになるだろう。
JAK1/JAK2/アクチビンA受容体1型阻害薬モメロチニブ (MMB、 商品名 オムジャラ®) が2024年6月に承認された。
「CQ17 骨髄線維症 (PMF、 post PV/post ET-MF) に対してルキソリチニブの投与は勧められるか (1) 低リスクMF症例 (2) 高リスクMF症例 (3) 同種造血細胞移植適応症例における移植前」 のAnswerは 「高リスクMFと低リスクMFで脾腫や全身症候を伴う場合にはルキソリチニブを推奨する。 同種造血細胞移植適応患者については、 移植時期を含めて投与を検討する。 」 で2023年版から変更がないが、 モメロチニブに関する以下の内容が解説において追記された。
第Ⅲ相試験SIMPLIFY-1
第Ⅲ相試験MOMENTUM
モメロチニブは骨髄線維症の治療選択肢の一つであるが、 その位置づけについては今後の検討課題である。
💬 藤野先生コメント :
モメロチニブは、 すでに骨髄線維症患者に処方されている医師も多いのではないか。 ルキソリチニブで輸血依存から脱せなかった患者において、 輸血頻度減少、 輸血依存からの離脱などが期待でき、 医師と患者双方にとってメリットを享受できる可能性のある薬剤である。 使用経験やエビデンス量などから第一選択薬として強く推奨されておらず、 また、 ルキソリチニブで問題がない患者において切り替える必要はないが、 一部の患者では少なからずメリットがあると考えられる。 服用回数が1日1回である点も、 メリットの一つであろう。
「CQ8 CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか」 について、 2023年版のAnswerが 「妊娠中および授乳中の女性CML患者に対してTKI治療は推奨されない。 妊娠中は IFN-α治療 、 もしくはTKI治療中止が推奨される。 男性患者に対してTKI治療中止を推奨する必要はない」 であったのに対して、 2024年版では後半部分が 「一方、 男性患者に対してTKI治療中止を推奨する根拠はない」 に変更された。 これに伴う解説の変更はなかった。
🔢 CMLの予後分類
🔢 Sokalスコア
🔢 ELTSスコア
添付文書
オムジャラ錠100mg / 150mg / 200mg
レジメン
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。