
悪性リンパ腫は造血器腫瘍の中でも患者数が多く、 治療の進歩も早い領域として知られています。 今回は、 過去記事よりNCCNガイドライン等における治療指針をまとめました。
① 濾胞性リンパ腫 (FL)
② びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL)
③ バーキットリンパ腫 (BL)
④ マントル細胞リンパ腫 (MCL)
⑤ 辺縁帯リンパ腫 (MZL)
⑥ 末梢性T細胞リンパ腫 (PTCL)
⑦ 中枢神経系原発悪性リンパ腫 (PCNSL)
⑧ ホジキンリンパ腫 (HL)
① FLの治療指針
2025年、 抗CD20/CD3二重特異性抗体 (BsAb) エプコリタマブ、 モスネツズマブがFLに対して日本で承認され、 再発・難治性FLに対する新たな治療選択肢が加わった。
📌 詳細解説は >>こちら
以下、 NCCNガイドライン Version 2.2025¹⁾を基に作成 (閲覧日 : 2025年4月2日)。 一部、 日本の承認状況と異なる点に注意。
進行期の推奨レジメンは?

参考文献¹⁾を基に編集部作成
再発・難治性の推奨レジメンは?

参考文献¹⁾を基に編集部作成
3次治療以降は、 未使用の2次治療レジメンに加えて、 CAR-T細胞療法やBsAb (エプコリタマブ、 モスネツズマブ) が推奨されている。
② DLBCLの治療指針
NCCNガイドラインでは、 再発・難治例に対する救援治療において、 BsAb併用レジメンの選択肢が拡充されている点が注目される。
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以下、 NCCNガイドライン Version 2.2025¹⁾を基に作成 (閲覧日 : 2025年4月2日)。 一部、 日本の承認状況と異なる点に注意。
進行期の推奨レジメンは?
救援治療の推奨レジメンは?
再発までの期間や、 CAR-T細胞療法 / 移植予定を考慮してレジメンを選択する。 3次治療以降は、 これまで使用されていない2次治療レジメンや、 BsAb (エプコリタマブ、 glofitamab) が選択できる。
CAR-T細胞療法の対象
アキシカブタゲン シロルユーセル
リソカブタゲン マラルユーセル
- Tisa-cel : キムリア® (3次治療以降)
チサゲンレクルユーセル
イエスカルタ®を2次治療で使用する場合は、 再発まで12ヵ月未満に限る。
CAR-T細胞療法・自家移植の予定なし
”Preferred regimens”を抜粋
GemOx : ゲムシタビン、 オキサリプラチン
*抗CD20/CD3二重特異性抗体
- Pola+BR
- ポラツズマブ ベドチン+モスネツズマブ
- tafasitamab**+レナリドミド
**抗CD19モノクローナル抗体
③ BLの治療指針
BLは早期診断・早期治療が重要である。 組織診・免疫組織化学・遺伝子検査を総合的に評価し、 適切な治療レジメンを選択する。
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診断から治療決定までの流れは?

参考文献²⁾を基に編集部作成
BLの鑑別診断は?
BLと、 MYC再構成を伴う他のアグレッシブリンパ腫の鑑別は以下の通り。

参考文献²⁾を基に編集部作成。 原著には上記疾患の他に、 その他のHGBL (MYC再構成あり)、 MYC再構成を伴うDLBCL、 MYC再構成を伴うBリンパ芽球性リンパ腫/白血病、 MYC再構成を伴うマントル細胞リンパ腫blastoid variantの特徴も記載されている。
④ MCLの治療指針
新規ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬であるピルトブルチニブが、 2024年8月に日本でも使用可能となり、 治療選択肢の一つとして加わった。
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以下、 Blood誌の総説³⁾を基に作成
再発・難治例への治療指針は?

参考文献³⁾を基に編集部作成
⑤ MZLの治療指針
胃部MZLでは、 Helicobacter pyloriの除菌が重要であり、 治療後の再評価のタイミングにも留意が必要である。
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以下、 Br J Haematol誌の総説⁴⁾を基に作成
H.pylori除菌後の検査頻度は?

*糞便負荷試験 (および/または尿素呼気試験)、 血清学的検査、 免疫組織化学的検査
**便潜血検査または尿素呼気試験
***明らかな進行、 深部浸潤、 リンパ節腫脹、 t(11:18)の存在など
参考文献⁴⁾を基に編集部作成
⑥ PTCLの治療指針
PTCLは未分化大細胞リンパ腫 (ALCL)、 濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫、 非特定型PTCL (PTCL-NOS) の3群に大別できる。
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以下、 Blood誌の総説⁵⁾を基に作成
サブタイプ別の推奨レジメンは?

参考文献⁵⁾を基に編集部作成
⑦ PCNSLの治療指針
日本では、 MPV (メトトレキサート、 プロカルバジン、 ビンクリスチン) 療法のような多剤併用療法が広く用いられている。 また、 PCNSLにおいては、 可能であれば自家造血幹細胞移植 (ASCT) が推奨されている。
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以下、 欧州血液学会 (EHA) ・欧州臨床腫瘍学会 (ESMO) 診療ガイドライン⁶⁾を基に作成。 一部、 日本の承認状況と異なる点に注意。
初発時の推奨治療は?

【略語】
ASCT : 自家造血幹細胞移植、 CT : 化学療法、 CR : 完全寛解、 HD-AraC : 高用量シタラビン、 HD-MTX : 高用量メトトレキサート、 MATRix : 高用量メトトレキサート+高用量シタラビン+リツキシマブ+チオテパ、 MBVP : メトトレキサート+カルムスチン+テニポシド+メチルプレドニゾロン、 MPV : メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン、 MT : メトトレキサート+テモゾロミド、 MT-R : メトトレキサート+テモゾロミド+リツキシマブ、 PCNSL : 中枢神経系原発悪性リンパ腫、 PD : 病勢進行、 PR : 部分奏効、 PS : パフォーマンスステータス、 R : リツキシマブ、 R-MP : リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン、 RT : 放射線療法、 SD : 病勢安定、 WBRT : 全脳放射線療法
【注釈】
a : 薬剤の選択肢については参考文献1) を参照のこと。
b : リツキシマブはこの設定において欧州医薬品庁 (EMA) または米食品医薬品局 (FDA) の承認を受けていない。 導入療法における併用は依然として議論の余地があり、 忍容性と有効性のバランスについて患者およびその介護者と話し合う必要がある。
c : 低線量のWBRT。
※ () 内の情報はエビデンスレベルと推奨度
参考文献⁶⁾を基に編集部作成
再発・難治性の推奨治療は?

【略語】
ASCT : 自家造血幹細胞移植、 BSC : ベストサポーティブケア、 CT : 化学療法、 CR : 完全寛解、 HD-AraC : 高用量シタラビン、 HD-MTX : 高用量メトトレキサート、 PCNSL : 中枢神経系原発悪性リンパ腫、 PD : 病勢進行、 PR : 部分寛解、 RT : 放射線療法、 SD : 病勢安定、 WBRT : 全脳放射線療法
【注釈】
a : 薬剤と用量は年齢、 合併症、 虚弱度によって異なる。
b : EMAまたはFDAにおいて未承認。
c : 70歳未満の健康な患者における地固め療法の選択は、 1次治療で使用された地固め戦略を考慮すべきである。 異なる地固め療法が望ましい (すなわち、 1次治療でASCTを使用した場合はWBRTによるサルベージ療法を、 その逆も同様)。 2回目のASCTは、 選択された患者、 特に1回目の治療で長期寛解が得られた患者には、 選択肢となり得る。
※ () 内の情報はエビデンスレベルと推奨度
参考文献⁶⁾を基に編集部作成
⑧ HLの治療指針
NCCNガイドラインでは、 BrECADD (ブレンツキシマブ ベドチン+エトポシド+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ダカルバジン+デキサメタゾン) 療法およびニボルマブ+AVD (ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン) 療法の2レジメンが、 1次治療の推奨レジメンとして記載されている。
📌 詳細解説は >>こちら
以下、 NCCNガイドライン Version 3.2024⁷⁾を基に作成 (閲覧日 : 2024年9月12日)。 一部、 日本の承認状況と異なる点に注意。
進行期の推奨レジメンは?

参考文献⁷⁾を基に編集部作成
出典
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®), B-Cell Lymphomas, Version 2.2025
- Lancet Haematol. 2025;12(2):e138–50.
- Blood. 2025;145(7):673-682.
- Br J Haematol. 2024;204(1):86-107
- Blood. 2024;144(18):1887-1897
- Hemasphere. 2024;8(6):e89
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®), Hodgkin Lymphoma, Version 3.2024
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