悪性リンパ腫は造血器腫瘍の中でも患者数が多く、 治療の進歩も早い領域として知られています。 そこで今回は過去記事よりNCCNガイドラインやBlood誌における治療アルゴリズムをまとめました。
①ホジキンリンパ腫
NCCNガイドライン Version 3. 2024より
②マントル細胞リンパ腫
Blood. 2024 Jul 26より
③辺縁帯リンパ腫
Br J Haematol. 2024 Jan;204(1):86-107より
④末梢性T細胞リンパ腫
Blood. 2024 Oct 31;144(18):1887-1897より
⑤中枢神経系原発悪性リンパ腫
Hemasphere. 2024 Jun 4;8(6):e89より
①ホジキンリンパ腫
NCCNガイドライン Version 3. 2024より
ホジキンリンパ腫の1次治療のフロー図をまとめた。 今回のNCCNガイドラインの改訂においては、 BrECADD (ブレンツキシマブ ベドチン+エトポシド+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ダカルバジン+デキサメタゾン) 療法とニボルマブ+AVD (ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン) 療法の2つのレジメンが1次治療の推奨レジメンとして記載された。 しかしこれらは本邦においては未承認であるため、 注意が必要である。
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(1) Stage Ⅲ・Ⅳの1次治療
NCCN Guideline Version 3.2024を基に編集部作成
(2) BV+AVD療法による治療フロー
NCCN Guideline Version 3.2024を基に編集部作成
(3) 特定の状況でのレジメン(本邦未承認)
NCCN Guideline Version 3.2024を基に編集部作成
②マントル細胞リンパ腫
Blood. 2024 Jul 26より
以下のアルゴリズムでは、 マントル細胞リンパ腫の推奨治療がまとめられている。 本邦でも新規のブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬としてピルトブルチニブ (ジャイパーカ®︎) が承認・発売 (2024年6月24日承認、 同年8月21日発売) されており、 治療の選択肢が増えてきている。
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(1) 推奨される治療アルゴリズム
Blood. 2024 Jul 26:blood.2023022353を基に編集部作成
③辺縁帯リンパ腫
Br J Haematol. 2024 Jan;204(1):86-107より
胃部の辺縁帯リンパ腫 (MZL) の治療についてまとめたアルゴリズムである。 胃部MZLではHelicobacter pyloriの除菌が重要である。 また、 治療後の再検査のタイミングが重要であることが示されている。
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(1) 推奨される治療アルゴリズム
*糞便負荷試験 (および/または尿素呼気試験)、 血清学的検査、 免疫組織化学的検査
**便潜血検査または尿素呼気試験
***明らかな進行、 深部浸潤、 リンパ節腫脹、 t(11:18)の存在など
Br J Haematol. 2024 Jan;204(1):86-107. PMID: 37957111を基に編集部作成
④末梢性T細胞リンパ腫
Blood. 2024 Oct 31;144(18):1887-1897より
末梢性T細胞リンパ腫 (PTCL) の治療の流れをまとめたアルゴリズムである。 治療においてはPTCLを未分化大細胞リンパ腫 (ALCL)、 濾胞性ヘルパーT細胞 (TFH) リンパ腫、 非特定型PTCL (PTCL-NOS) の3群に分けることとされており、 特徴的なフローとなっている。
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(1) サブタイプ別の治療アルゴリズム
Blood. 2024 Oct 31;144(18):1887-1897を基に編集部作成
⑤中枢神経系原発悪性リンパ腫
Hemasphere. 2024 Jun 4;8(6):e89より
中枢神経系原発悪性リンパ腫の1次治療、 再発・再燃時の治療についてまとめたアルゴリズムである。 本邦ではMPV (メトトレキサート、 プロカルバジン、 ビンクリスチン) 療法のような多剤併用療法が多く用いられている。 また、 PCNSLでは、 可能であれば自家造血幹細胞移植 (ASCT) が勧められる。 一部の薬剤はアルゴリズムに示された設定において未承認のため、 注意が必要である。
▼解説はコチラ
(1) 1次治療のアルゴリズム
【略語】
ASCT : 自家造血幹細胞移植、 CT : 化学療法、 CR : 完全寛解、 HD-AraC : 高用量シタラビン、 HD-MTX : 高用量メトトレキサート、 MATRix : 高用量メトトレキサート+高用量シタラビン+リツキシマブ+チオテパ、 MBVP : メトトレキサート+カルムスチン+テニポシド+メチルプレドニゾロン、 MPV : メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン、 MT : メトトレキサート+テモゾロミド、 MT-R : メトトレキサート+テモゾロミド+リツキシマブ、 PCNSL : 中枢神経系原発悪性リンパ腫、 PD : 病勢進行、 PR : 部分奏効、 PS : パフォーマンスステータス、 R : リツキシマブ、 R-MP : リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン、 RT : 放射線療法、 SD : 病勢安定、 WBRT : 全脳放射線療法
【注釈】
a : 薬剤の選択肢については参考文献1) を参照のこと。
b : リツキシマブはこの設定において欧州医薬品庁 (EMA) または米食品医薬品局 (FDA) の承認を受けていない。 導入療法における併用は依然として議論の余地があり、 忍容性と有効性のバランスについて患者およびその介護者と話し合う必要がある。
c : 低線量のWBRT。
※ () 内の情報はエビデンスレベルと推奨度
Hemasphere. 2024 Jun 4;8(6):e89.を基に編集部作成
(2) 再発・再燃時の治療アルゴリズム
【略語】
ASCT : 自家造血幹細胞移植、 BSC : ベストサポーティブケア、 CT : 化学療法、 CR : 完全寛解、 HD-AraC : 高用量シタラビン、 HD-MTX : 高用量メトトレキサート、 PCNSL : 中枢神経系原発悪性リンパ腫、 PD : 病勢進行、 PR : 部分寛解、 RT : 放射線療法、 SD : 病勢安定、 WBRT : 全脳放射線療法
【注釈】
a : 薬剤と用量は年齢、 合併症、 虚弱度によって異なる。
b : EMAまたはFDAにおいて未承認。
c : 70歳未満の健康な患者における地固め療法の選択は、 1次治療で使用された地固め戦略を考慮すべきである。 異なる地固め療法が望ましい (すなわち、 1次治療でASCTを使用した場合はWBRTによるサルベージ療法を、 その逆も同様)。 2回目のASCTは、 選択された患者、 特に1回目の治療で長期寛解が得られた患者には、 選択肢となり得る。
※ () 内の情報はエビデンスレベルと推奨度
Hemasphere. 2024 Jun 4;8(6):e89.を基に編集部作成
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