HOKUTO編集部
13日前
2025年3月に 『帯状疱疹診療ガイドライン2025』が日本皮膚科学会より発刊された¹⁾。 ガイドラインを基に、 検査や治療、 ワクチンなどについて概説する。
帯状疱疹の典型的な症例は、 臨床症状のみで診断可能であり、 神経支配領域に一致する片側性の紅斑・水疱・疼痛の存在で診断する。
一方、 帯状疱疹は病態が水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) の再活性化であるため、 初感染時に有効な血清抗体価測定による診断は困難であり、 以下の病原診断が有用である。
❶ Tzanckテスト
水疱内容物を塗抹し、 ウイルス性巨細胞を確認する。 10~15分で判定可能だが、 単純ヘルペスウイルス (HSV) との鑑別はできない。
❷ 免疫染色法
蛍光抗体法、 酵素抗体法、 ELISA法などがある。 蛍光抗体法では感染細胞を蛍光顕微鏡下で確認でき、 HSVとの鑑別も可能である。
❸ 核酸増幅法
PCR、 リアルタイムPCR、 LAMPがある。 感度・特異度ともに高いが、 保険適用外である。 なお、 リアルタイムPCRはウイルス量の定量が可能であり、 病勢評価にも有用である。
❹ 分離培養法
偽陽性がなく確定診断が可能だが、 感度はやや低く時間を要する。 保険適用はない。
❺ 病理組織学的検査
HE染色のみではVZVとHSVの鑑別は難しく、 確定にはVZV特異的免疫染色が必要となる。
❻ イムノクロマト法
10分以内に判定可能なVZV抗原検出キットであり、 感度・特異度ともに高い。
❼ 血清診断
帯状疱疹はVZVの再活性化であるため、 IgMの上昇のみで診断はできない。 IgG抗体のペア血清による評価が参考になる。
治療目標は皮膚病変の早期治癒と瘢痕の予防、 急性期疼痛の軽減と帯状疱疹後神経痛 (PHN) 予防、 合併症の発症予防と早期治療、 そして水痘伝播の防止である。
急性期帯状疱疹の診断が確定した場合、 速やかに抗ウイルス薬による全身治療を開始する。 薬剤投与は、 発症5日以内の開始が推奨されている。
治療期間は通常7日間であり、 免疫不全や重症例では延長を検討する。 現在使用可能である薬剤として、 アシクロビル、 ビダラビン、 バラシクロビル、 ファムシクロビル、 アメナメビルなどが挙げられる。
アシクロビルとビダラビンは静脈内投与が可能であり、 重症例で推奨される。
アシクロビル
点滴 : 1回5mg/kg、 1日3回、 8時間ごとに1時間以上かけて7日間
内服 : 1回800mg 、 1日5回、 7日間
ビダラビン
点滴 : 1日1回5~10 mg/kg、 輸液500mLあたり2~4時間かけて5日間
バラシクロビル
内服 : 1回1,000 mg、 1日3回、 7日間
ファムシクロビル
内服 : 1回500mg、 1日3回、 7日間
アメナメビル
内服 : 1回400 mg、 1日1回、 7日間
アシクロビルなどの核酸系抗ウイルス薬は腎排泄型であり、 高齢者や腎機能障害を有する患者では投与量の調整や併用薬剤の慎重な選択 (特に消炎鎮痛薬) が必要である。
一方、 非核酸類似体のアメナメビルなどは肝代謝型であり、 腎機能の影響を受けにくい。
Hunt症候群、 眼合併症、 排尿障害などの合併症については、 専門科への早期紹介とステロイド併用を考慮する。
急性期帯状疱疹の疼痛には、 痛みの病態に応じた治療選択が重要である。 治療は薬物療法と神経ブロックが中心であり、 各種ガイドライン*に準じた治療が推奨される。
急性期痛には、 まず非オピオイド鎮痛薬 (アセトアミノフェンやNSAIDs) を使用する。 帯状疱疹の好発年齢が高齢であるため、 アセトアミノフェンが第1選択となる。
無効な場合は弱オピオイド (トラマドールやコデイン)、 さらに必要に応じて強オピオイドの使用も検討されるが、 使用に精通した医師への相談が望ましい。
薬物療法の効果が不十分な場合は、 神経ブロックを考慮し、 精通した医師に相談する。
PHNは神経障害性疼痛であり、 神経の走行に一致して 「針で刺されるような痛み」 「電気が走るような痛み」 などと表される疼痛が出現する。
急性期の適切な抗ウイルス薬の全身投与、 また急性期疼痛の適切な管理 (特に神経ブロック) がPHN予防に有効とされる。
PHNの治療では、 NSAIDsやアセトアミノフェンは無効であることが多く、 神経障害性疼痛薬物療法アルゴリズムに示されている薬を第一選択から順に使用していく。
まずは三環系抗うつ薬やCaチャネルα2δリガンド (プレガバリンなど) を使用し、 無効な場合はトラマドールが推奨され、 強オピオイドを選択する場合は処方に精通した医師に相談する。 薬物療法の効果が乏しい場合は神経ブロックを検討する。
ガイドラインに記載されているアルゴリズムの推奨を以下に示す。
帯状疱疹は、 50歳を過ぎると発症率が上昇する。 帯状疱疹も水痘ワクチンと同様に、 帯状疱疹やPHNの発症予防や重症化の阻止を目的として、 ワクチン接種が行われている。
帯状疱疹生ワクチン (Zostavax®) は、 帯状疱疹およびPHNの発症率を低下させることが示されており、 米国などでは50歳以上の帯状疱疹予防に使用されている。
日本ではZostavax®と同様のOka株を用いた乾燥弱毒生水痘ワクチン (乾燥弱毒生水痘ワクチン 「ビケン」) が使用されており、 2016年に50歳以上を対象とした帯状疱疹予防の効能追加が承認された。 なお、 生ワクチンであるため、 免疫抑制状態の患者には接種できないという制約がある。
これに対し、 新規開発されたサブユニットワクチンであるシングリックス®は、 免疫抑制患者での安全性と、 高齢者における有効性が確認されている。 さらに発症阻止率も帯状疱疹 91.3%、 PHN 88.8%と極めて高く²⁾、 日本でも50歳以上もしくは帯状疱疹罹患リスクの高い18歳以上の症例で承認されている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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