HOKUTO編集部
2ヶ月前
本連載では、 2022年10月に発刊された『がん薬物療法時の腎障害ガイドライン2022』の要点を解説する。 第1回は、 同ガイドラインが作成された背景と、 薬物療法開始前にみられる腎機能障害、 および関連する抗がん薬について概説する (解説 : 愛知県がんセンター 呼吸器内科部長/ガイドライン作成委員 藤原豊氏)。
がん薬物療法における多様な進歩の結果、 進行がんであっても患者の予後は著しく改善されてきています。 しかしながら、 がん薬物療法の重要な有害事象に腎障害があり、 患者の高齢化に伴い、 特に慢性腎臓病 (CKD) の合併患者を診療する機会は増えています。
「がん薬物治療時の腎障害診療ガイドライン2022」 は、 がん薬物療法中のさまざまな腎障害に関する日常診療上の課題と臨床的質問に対し、 具体的に回答することで、 医療従事者の臨床決断を支援する目的で作成されました。
今回は上記一覧の中から、 ①がん薬物療法開始前にみられる腎障害について解説します。
発症要因
CKDは腎障害や腎機能の低下が持続して認められる疾患であり、 発症には、 加齢に伴う腎機能低下や生活習慣病の影響が関係します。 高齢化に伴うがん患者の増加により、 CKDを有するがん患者の数は増加しています。
がん薬物療法開始前に見られる腎機能低下の要因は、
など多様です。
これらのがん患者特有の要因が、 CKD を進展させるとされています。
発症要因
がん患者における腎性蛋白尿の病態は、 腎前性、 腎後性のほか、 糸球体性、 尿細管性の腎性蛋白尿が挙げられます。
糸球体係蹄壁の透過性亢進や傷害による糸球体性蛋白尿は、 各種糸球体腎炎のほか、 糖尿病性腎症、 腎硬化症などさまざまな腎疾患により発症します。
このうち尿細管性蛋白尿は、 近位尿細管における再吸収障害と細胞傷害による尿細管間質性腎炎が代表です。 再吸収障害によりアルブミン、 β2ミクログロブリン (MG) などの小分子蛋白質が漏出し、 細胞傷害によりN-アセチルグルコサミニダーゼ (NAG) などの尿細管酵素の逸脱が認められます。
がん薬物療法開始前に見られる腎障害は、 CKDの合併か、 急性期の病態 (脱水や水腎症など) か、 あるいは併用薬の影響かなどを総合的に評価し、 がん薬物療法を行う上で、 治療効果と腎機能低下リスクとのバランスを十分に検討する必要があります。
代表的ながん治療薬と、 関連する腎障害、 およびその他の臨床的特徴は以下の表1~3のとおりです。
本解説は、 腫瘍内科医の視点で日本腎臓学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本腎臓病薬物療法学会編 「がん薬物治療時の腎障害診療ガイドライン2022」 (ライフサイエンス出版 第1章) を一部抜粋、 加筆し、 その要点を解説したものです。
がん専門病院として肺癌および胸部悪性腫瘍の標準的診療および治験など治療開発を行っているほか、 若い先生の研修および教育支援も行っています。
薬物療法部など他診療科でのフレキシブルな研修により、 消化器悪性腫瘍、 乳がん含む各種固形がん、 肉腫の内科的治療を学ぶことも可能です。 各個人に合わせた研修後のキャリアサポートも相談可能です。
興味のある先⽣はぜひ、 E-mail: y.fujiwara@aichi-cc.jpまでご連絡ください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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