HOKUTO編集部
10ヶ月前
3月29日、 一部報道機関で 小林製薬の紅麹製品には、 天然化合物の 「プベルル酸 (puberulic acid)」 が含まれていたと相次ぎ報告された。 2024年3月29日現在、 4名の死亡と93名の入院患者が確認されている本事例。プベルル酸は急性腎障害を引き起こし得る化合物なのか?編集部では、 過去の生物・医学分野の文献を調査した (最終閲覧:2024/03/29)
プベルル酸 (puberulic acid)は、 1930年代、 青カビが作る天然化合物として発見され、 近年では特にマラリア治療においてその潜在的な価値が研究されているようである。 最近の研究では、 この化合物及びその派生体がマラリア原虫に対する顕著な活性を示したという。 以下に、 その特性と研究成果、 そして"毒性"に関する報告のある3報を簡潔に紹介する。
Saitoらによる研究では、 プベルル酸のカルボキシル基をエステル、 アミド、 ケトンに変換した新規誘導体が抗マラリア活性を示した。 これらの誘導体の中には、 プベルル酸自体よりも毒性が高いものもあったが、 プベルル酸自体の細胞毒性はIC50値=4,180ng/mLと比較的低いことが示された。
Sennariらによる研究では、 プベルル酸の全合成過程で得られる中間体から合成した7-ヒドロキシトロポロン誘導体や6,7-ジヒドロキシトロポロン誘導体が、 強い抗マラリア活性を持つ一方で、 細胞毒性も高いことが明らかになった。
Iwatsukiらによる研究では、 Penicillium sp. FKI-4410からプベルル酸とその新規化合物viticolin A-Cが単離された。 プベルル酸は強力な抗マラリア活性を示し、 その活性はアルテミシニンやアルテスネートと同等であると報告された。 また、 プベルル酸の細胞毒性は57.2μg/mLと低めであることが示された。
これらの研究において、 AKIを引き起こす可能性については、 明確には言及されていなかった。 医療関係者の中でも、 注目が高い本報道であるが、 プベルル酸の安全性プロファイルについてはさらなる詳細な調査が必要となりそうだ。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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