内容
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

  1. 抗菌薬投与前に血液培養3セット採取!
  2. 本疾患を疑ったら心臓超音波検査
  3. Peripheral signsを見逃さない!

病態・疫学

  • 発生率は3-10人/100、000人/年ほど²⁾
  • 心内膜および弁の細菌感染症である.
  • 通常の敗血症とは抗菌薬量も治療期間も異なり、 確実に診断することが肝要.

起炎菌

  • ブドウ球菌 (30%)
  • レンサ球菌 (25%)
  • 腸球菌 (10%)
  • HACEK菌 (2%)
  • 血液培養陰性 (10%) など

診断

修正Duke診断基準³⁾を用いる

  • 血液培養心臓超音波検査が診断に必須.
  • 血液培養は抗菌薬投与前に必ず採取する.

診断基準の続きはこちらをご確認下さい.

身体診察

Peripheral signsを押さえる

  • 眼瞼結膜点状出血
  • Roth's spot (眼底の点状出血)
  • 硬口蓋、 軟口蓋、 舌の点状出血
  • 手掌・足底のJaneway病変*
  • Osler結節*
  • Splinter hemorrhage (爪下の線状出血)
*Janeway病変は「じぇんじぇん」 痛くない、 Osler結節は痛いから 「押すな」 と覚える

その他

  • 心雑音の変化は重要な所見である.

検査

心臓超音波検査

  • ERでまず行うのは経胸壁心臓超音波 (TTE)である. 弁の疣贅、 逆流を見つけにいく.
  • 最初は陰性でも、 治療途中で疣贅が出現することもあるため再検査推奨.
  • 検査前確率が高ければ、経食道心臓超音波 (TEE)を行う.

全身造影CT

  • 特にブドウ球菌は遠隔病変をきたすことが多く、膿瘍椎体炎塞栓病変を否定する.

頭部単純MRI

  • 特に神経症状をきたした患者では頭蓋内病変否定目的で撮像する.

菌血症原因菌ごとのリスク評価

  • 菌血症患者におけるIEリスク評価として以下が報告されている.

- 腸球菌:NOVAスコアDENOVAスコア

- 非溶血性レンサ球菌:HANDOC スコア

- 黄色ブドウ球菌:VIRSTAスコア

治療 (腎機能正常の場合)

起炎菌不明

MRSA、MSSA、連鎖球菌のカバーで以下併用
  • MRSA: VCM 15-20mg/kg 8-12時間ごと
およそ4投ごとにトラフを測定し15-20μg/mLに保つ
  • その他: CTRX 2g 24時間ごと、 または ABPC/SBT 3g 6時間ごと、 または CEZ 2g 8時間ごと

MSSAの場合

頭蓋内病変の有無で判断する.
  • 頭蓋内病変(−):CEZ 2g 8時間ごと
  • 頭蓋内病変(+):CTRX 2g 24時間ごと、 またはABPC/SBT 3g 6時間ごと

MRSAの場合

以下のいずれかを使用する.
  • VCM 15-20mg/kg/ IV 8-12時間ごと
  • またはDAP 6-8mg/kg IV 24時間ごと

腸球菌の場合

E.faecalisなどABPC感受性の腸球菌
  • ABPC 3g 6時間ごと(または2g4時間ごと)

+ GM 1mg/kg 8時間ごとIV 4-6週間

E.faeciumなどABPC耐性の腸球菌
  • VCM 15-20mg/kg/ IV 8-12時間ごと

+ GM 1mg/kg 8時間ごとIV 4-6週間

手術適応

ときに速やかに致死的状態に至ったり、 抗菌薬が著効しないこともあるため、 外科的手術については常に念頭においておく。

日本循環器学会など本邦学会による「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」 より緊急及び準緊急適応を以下に引用する⁴⁾。 その他の手術適応例についてはガイドラインや最新の文献を参照すること。

緊急*¹

*¹ とくに断りのない場合には自己弁IE、 人工弁IEの両方についての記載である
  • 急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック [推奨Ⅰ]

準緊急*¹

*¹ とくに断りのない場合には自己弁IE、 人工弁IEの両方についての記載である
  • 高度弁機能不全、 急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全 [Ⅰ]
  • 弁輪部膿瘍、 仮性動脈瘤形成、 瘻孔形成、 増大する疣腫や房室伝導障害の出現 [Ⅰ]
  • 適切な抗菌薬開始後も持続する感染 (投与開始2~3日後の血液培養が陽性、 3~5日間以上下熱傾向を認めない)*²があり、 ほかに感染巣がない [Ⅱa]
*² 感染症状の評価は下熱の程度や白血球数、 CRPの炎症マーカーだけにとらわれず、 血液培養の陰性化を基本として総合的に判断する
  • 適切な抗菌薬後も1回以上の塞栓症が生じ、 残存(>10mm)または増大する疣腫 [Ⅰ]
  • >10mmで可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE*³ [Ⅱa]
*³ とくに手術リスクが低い場合には早い手術が望ましい
  • >30mmで非常に大きい孤発性の疣腫 [Ⅱa]
  • >10mmで可動性の疣腫*⁴ [Ⅱb]
*⁴ とくに人工弁の場合、 自己弁で僧帽弁前尖が関与する場合、 ほかに相対的な手術適応がある場合

その他

血液培養陰性心内膜炎

  • 血液培養陰性心内膜炎 (blood culture negative endocarditis) の原因は血液培養採取前の抗菌薬投与である.
  • 他HACEK菌、 Tropheryma whipplei (Whipple病原因菌)などが原因となりうる.

コンタミネーションについて

  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は、 別の血液培養ペアで陽性とならない場合コンタミネーションの可能性が高い(9割)⁵⁾⁶⁾ .
  • ただし、S.lugdunensisについてはブドウ球菌と同様の高病原性があり、 真の菌血症として扱う⁷⁾.

培養陽性までの期間

  • 真の菌血症である場合、 血液培養はおよそ2-3日で陽性となる.
  • HACEK菌 (~5日)や Helicobacter cinaedi(1~2週間)などは、陽性になるまでより長期となる場合もある.

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感染性心内膜炎

🚑 ERマニュアル | 感染性心内膜炎

聖路加国際病院救急部医師監修

📝 修正Duke診断基準

感染性心内膜炎の診断基準

🔢 NOVAスコア

腸球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 DENOVAスコア

腸球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 HANDOC スコア

非溶血性連鎖球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 VIRSTAスコア

黄色ブドウ球菌菌血症のIEリスク評価

📘 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)

日本循環器学会編

参考文献

  1. Lancet. 2016 Feb 27;387(10021):882-93
  2. Clin Infect Dis . 2000 Apr;30(4):633-8.
  3. Clin Microbiol Rev. 2006 Oct;19(4):788-802. 
  4. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)
  5. Clin Infect Dis.1997;24:584-602.
  6. J Microbiol Immunol Infect. 2010 Dec;43(6):478-84.
  7. Int J Infect Dis. 2015 Dec;41:6-10.

最終更新:2022年11月22日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ポイント

  1. 抗菌薬投与前に血液培養3セット採取!
  2. 本疾患を疑ったら心臓超音波検査
  3. Peripheral signsを見逃さない!

病態・疫学

  • 発生率は3-10人/100、000人/年ほど²⁾
  • 心内膜および弁の細菌感染症である.
  • 通常の敗血症とは抗菌薬量も治療期間も異なり、 確実に診断することが肝要.

起炎菌

  • ブドウ球菌 (30%)
  • レンサ球菌 (25%)
  • 腸球菌 (10%)
  • HACEK菌 (2%)
  • 血液培養陰性 (10%) など

診断

修正Duke診断基準³⁾を用いる

  • 血液培養心臓超音波検査が診断に必須.
  • 血液培養は抗菌薬投与前に必ず採取する.

診断基準の続きはこちらをご確認下さい.

身体診察

Peripheral signsを押さえる

  • 眼瞼結膜点状出血
  • Roth's spot (眼底の点状出血)
  • 硬口蓋、 軟口蓋、 舌の点状出血
  • 手掌・足底のJaneway病変*
  • Osler結節*
  • Splinter hemorrhage (爪下の線状出血)
*Janeway病変は「じぇんじぇん」 痛くない、 Osler結節は痛いから 「押すな」 と覚える

その他

  • 心雑音の変化は重要な所見である.

検査

心臓超音波検査

  • ERでまず行うのは経胸壁心臓超音波 (TTE)である. 弁の疣贅、 逆流を見つけにいく.
  • 最初は陰性でも、 治療途中で疣贅が出現することもあるため再検査推奨.
  • 検査前確率が高ければ、経食道心臓超音波 (TEE)を行う.

全身造影CT

  • 特にブドウ球菌は遠隔病変をきたすことが多く、膿瘍椎体炎塞栓病変を否定する.

頭部単純MRI

  • 特に神経症状をきたした患者では頭蓋内病変否定目的で撮像する.

菌血症原因菌ごとのリスク評価

  • 菌血症患者におけるIEリスク評価として以下が報告されている.

- 腸球菌:NOVAスコアDENOVAスコア

- 非溶血性レンサ球菌:HANDOC スコア

- 黄色ブドウ球菌:VIRSTAスコア

治療 (腎機能正常の場合)

起炎菌不明

MRSA、MSSA、連鎖球菌のカバーで以下併用
  • MRSA: VCM 15-20mg/kg 8-12時間ごと
およそ4投ごとにトラフを測定し15-20μg/mLに保つ
  • その他: CTRX 2g 24時間ごと、 または ABPC/SBT 3g 6時間ごと、 または CEZ 2g 8時間ごと

MSSAの場合

頭蓋内病変の有無で判断する.
  • 頭蓋内病変(−):CEZ 2g 8時間ごと
  • 頭蓋内病変(+):CTRX 2g 24時間ごと、 またはABPC/SBT 3g 6時間ごと

MRSAの場合

以下のいずれかを使用する.
  • VCM 15-20mg/kg/ IV 8-12時間ごと
  • またはDAP 6-8mg/kg IV 24時間ごと

腸球菌の場合

E.faecalisなどABPC感受性の腸球菌
  • ABPC 3g 6時間ごと(または2g4時間ごと)

+ GM 1mg/kg 8時間ごとIV 4-6週間

E.faeciumなどABPC耐性の腸球菌
  • VCM 15-20mg/kg/ IV 8-12時間ごと

+ GM 1mg/kg 8時間ごとIV 4-6週間

手術適応

ときに速やかに致死的状態に至ったり、 抗菌薬が著効しないこともあるため、 外科的手術については常に念頭においておく。

日本循環器学会など本邦学会による「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」 より緊急及び準緊急適応を以下に引用する⁴⁾。 その他の手術適応例についてはガイドラインや最新の文献を参照すること。

緊急*¹

*¹ とくに断りのない場合には自己弁IE、 人工弁IEの両方についての記載である
  • 急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック [推奨Ⅰ]

準緊急*¹

*¹ とくに断りのない場合には自己弁IE、 人工弁IEの両方についての記載である
  • 高度弁機能不全、 急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全 [Ⅰ]
  • 弁輪部膿瘍、 仮性動脈瘤形成、 瘻孔形成、 増大する疣腫や房室伝導障害の出現 [Ⅰ]
  • 適切な抗菌薬開始後も持続する感染 (投与開始2~3日後の血液培養が陽性、 3~5日間以上下熱傾向を認めない)*²があり、 ほかに感染巣がない [Ⅱa]
*² 感染症状の評価は下熱の程度や白血球数、 CRPの炎症マーカーだけにとらわれず、 血液培養の陰性化を基本として総合的に判断する
  • 適切な抗菌薬後も1回以上の塞栓症が生じ、 残存(>10mm)または増大する疣腫 [Ⅰ]
  • >10mmで可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE*³ [Ⅱa]
*³ とくに手術リスクが低い場合には早い手術が望ましい
  • >30mmで非常に大きい孤発性の疣腫 [Ⅱa]
  • >10mmで可動性の疣腫*⁴ [Ⅱb]
*⁴ とくに人工弁の場合、 自己弁で僧帽弁前尖が関与する場合、 ほかに相対的な手術適応がある場合

その他

血液培養陰性心内膜炎

  • 血液培養陰性心内膜炎 (blood culture negative endocarditis) の原因は血液培養採取前の抗菌薬投与である.
  • 他HACEK菌、 Tropheryma whipplei (Whipple病原因菌)などが原因となりうる.

コンタミネーションについて

  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は、 別の血液培養ペアで陽性とならない場合コンタミネーションの可能性が高い(9割)⁵⁾⁶⁾ .
  • ただし、S.lugdunensisについてはブドウ球菌と同様の高病原性があり、 真の菌血症として扱う⁷⁾.

培養陽性までの期間

  • 真の菌血症である場合、 血液培養はおよそ2-3日で陽性となる.
  • HACEK菌 (~5日)や Helicobacter cinaedi(1~2週間)などは、陽性になるまでより長期となる場合もある.

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📝 修正Duke診断基準

感染性心内膜炎の診断基準

🔢 NOVAスコア

腸球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 DENOVAスコア

腸球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 HANDOC スコア

非溶血性連鎖球菌菌血症のIEリスク評価

🔢 VIRSTAスコア

黄色ブドウ球菌菌血症のIEリスク評価

📘 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)

日本循環器学会編

参考文献

  1. Lancet. 2016 Feb 27;387(10021):882-93
  2. Clin Infect Dis . 2000 Apr;30(4):633-8.
  3. Clin Microbiol Rev. 2006 Oct;19(4):788-802. 
  4. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)
  5. Clin Infect Dis.1997;24:584-602.
  6. J Microbiol Immunol Infect. 2010 Dec;43(6):478-84.
  7. Int J Infect Dis. 2015 Dec;41:6-10.

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